2007年11月14日水曜日

税金の無駄遣い

税の無駄遣い―検査院は侮られるな

残業をしていないのに、残業代をつける。予算を流用して裏金をつくる。入札をせず随意契約で発注する――。

会計検査院の昨年度の検査報告には、公務員による税金の無駄遣いや不正経理の事例がずらりと並んでいる。その数は451件、総額310億円にのぼる。
毎年のことだが、こんなにでたらめに税金が使われているのかと思うと、驚いてしまう。
さらに今年の報告で驚かされるのは、検査院が無駄遣いなどを指摘していたにもかかわらず、それを無視する事例があることだ。

山形県の置賜(おきたま)農業共済組合による補助金の不正受給もその一つだ。組合の加入者を水増しする手口で、国から負担金を余計に引き出していたことが指摘されたのは、3年前のことだった。
ところが、農林水産省も山形県もほったらかしにしていた。今年になって検査院から再び問題にされ、ようやく県と組合が調査に乗り出した。しかし、国への返還が決まったのは、不正受給が報道されたあとだ。この問題では組合長の遠藤武彦・前農水相が大臣を辞任した。

検査院は3年前、国立大学に対し、教員個人が受けた教育・研究への寄付金についても、大学で経理処理をするよう求めた。それにもかかわらず、いまだに教員が自分で処理をしていた事例が見つかった。検査院は再度是正を求めた

無視だけでなく、検査を妨害するところまで出てきた。
カラ残業の問題で、長野労働局では局長が証拠となる文書を破棄するよう職員に指示していた。各県にある労働局は厚生労働省の傘下だが、今年の報告では、22の労働局がカラ残業を続けていたことを検査院から指摘されている。

こうした役所の対応を見ると、会計検査院は侮られているのではないかと心配になる。
検査院は指摘したあとも、きちんと是正されるまで何度でも指摘し続けなければならない。それでも改めなかったり、証拠を隠したりする公務員について、所管する省庁に懲戒処分を求めるのは当然のことだ。
だが、それだけでは手ぬるい。

会計検査院法では、検査の結果、犯罪があると認めたときは検察庁に通告しなければならないと定められている。ところが、この半世紀、通告は一件もない。悪質な不正をした公務員については、検査院は積極的に通告し、刑事罰を求めるべきではないか。

一方で、会計検査院は我が身を律することを忘れてはならない。検査対象の独立行政法人などに、検査院の職員が天下るケースがある。そうした天下り先には手心を加えるのではないか。そんな疑いの目で見られかねない。
他の省庁から軽んじられないためにも、不正を調べる側の厳しい節度が求められている。(平成19年11月13日付朝日新聞社説)

例年のことながらこの時期になると類似の記事が新聞に並びます。納税者としては憤りを通り越してもはや諦めの境地です。
これまで、会計検査院も検査手法を進化させ、税金の無駄使いの抑止に努めておられるのでしょうが、まだまだ検査の深化が足りないように感じます。検査報告に掲載されるのは、検査院が把握した不正のごく一部、氷山の一角だからです。

会計検査院の検査対象は、税金が投入されている組織、つまり公務員組織あるいはそれに準じる公的組織ですが、彼らは、会計検査院の検査となると必ずといっていいほど組織防衛に徹します。不正あるいはそれに近い不適切な処理をしているという自覚がありながら、会計検査院の指摘を受けることを極度に嫌い徹底して抵抗します。悪しき慣行です。

彼らとて公務員ではありますがれっきとした納税者であり、一納税者の立場で考えれば、是は是、非は非としての判断ができるはずなのですが。

公務員体質に起因する怠慢、あるいは組織防衛的な利己主義はこの世から断固排除する必要がありますし、それができるのは、独立した強固な地位や権限を与えられた会計検査院しか現行制度上ありません。

大学に関して言えば、今年も例年のように一部の国立大学における不正の数々が検査報告により明らかにされました。
しかし、検査報告そのものが、納税者である国民に容易に理解しやすい姿で書かれていないし、直接目に触れる機会も十分に用意されていません。
また、より深刻なのは、氷山の一角とはいえ、検査報告により指摘を受けた大学が、国民から負託された税金の不適切な使途について、どれだけ真面目に罪の意識を持っているのか、あるいはそれを恥辱だと認識し改善しようとしているのかが国民には皆目わかるようにはなっていません。

このことを納税者の目にわかるようにすることこそが、今後の再発防止にとって真に必要なことではないでしょうか。
また、仮に会計検査院のフォローアップの結果、改善されていないような悪質な状況であれば、当該組織あるいは当事者に対して、会計検査院に与えられた権限を駆使して強制力を持った厳罰を課すべきだと思うのですがいかがでしょうか。