2008年1月29日火曜日

大学連携

大学間連携の動きがにわかに激しくなってきています。
国の政策動向を先取りした戦略的な動きと見るべきでしょう。


県内の4年制7大学と放送大 連携強化へ(2008年1月26日信濃毎日新聞)


信大(信州大学)など県内の4年制7大学と放送大学長野学習センター(諏訪市)は25日、松本市の信大松本キャンパスで副学長らによる会合を開き、各大学を光ファイバーで結んでネットワーク化するなど、連携を強化することで一致した。

今年5月ごろまでに具体的な事業内容を決め、文部科学省が来年度から始める大学間の連携支援事業の採択を目指す。

構想では、ネットワークを生かし相互に遠隔授業などを行う。

7大学は2005年度に単位交換制度を導入したが、大学が各地に分散していて通いにくいことなどから本年度の制度利用者は12人にとどまる。遠隔授業の導入で、利用者の拡大を目指す。

このほか、大学の枠を超えて学生同士が交流する機会をつくることや、教職員研修の合同開催、県内大学への進学率を高めるための高校側との連携強化なども検討課題とする。

連携強化は、7大学の学長で構成し、放送大学長野学習センター長がオブザーバー参加する「県大学連絡協議会」が昨年10月の会合で確認。文科省が来年度から始める「戦略的大学連携支援事業」の活用を目指すことも決めた。

信大の小坂共栄理事(教学担当)は「大学間のネットワーク化は、教育や研究など互いに利用価値が高い。地方大学の生き残り競争が激しくなる中、大学同士が力を合わせ、できることから進めたい」と話している。


静岡大と県立大が連合大学院新設 地域貢献めざし来春開学へ(2008年1月25日中日新聞)


静岡大と静岡県立大は24日、共同で「静岡連合大学院(仮称)」を新設する構想を明らかにした。2009年4月の開学を目指す。

得意分野を補完し合うことで、単独では実現の難しい幅広い専門教育を提供する狙い
県内私立大にも参加を働き掛けており、自治体や産業界を巻き込んだ地域密着型の教育研究機関が最終目標という。

静岡連合大学院では地域社会への貢献を主眼に、実践的な職業人の育成を目指す。
現在計画している研究テーマは「国際経営」と「新公共経営」の二分野。

国際経営では、アジアを中心に海外経済に精通した人材を育成。県内企業の海外進出に役立てるほか、留学生教育も重視する。新公共経営では、地域社会の諸課題を調査し、行政職員も積極的に受け入れる。

今後はよりニーズの高い研究テーマを拡充するため、県内自治体や産業界に意見を求め、研究そのものへの参画も要請していく。
協力企業への就職を条件にした奨学金制度や、インターンシップ制度の充実などを検討しているという。

受講の利便性を高めるため、設置場所はJR静岡駅などの周辺に確保し、夜間も開講する。

24日、県庁で記者会見した静岡大の興直孝学長と県立大の西垣克学長は「既存の教育資源を有効活用し、社会の要請に応えられる魅力ある大学院をつくりたい」などと抱負を述べた。

文部科学省は教育水準の向上などを目的に、複数大学が学部や大学院を共同設置できるよう、2008年度中に制度改正する方針単独で新設するよりも負担が少なくなり、企業からの協賛金が集めやすくなるなどのメリットが見込まれ、全国規模で同様の大学間連携が進んでいる

少子化等の中で、地方の、特に私立大学等がおかれている小規模化、経営困難等の厳しい状況を踏まえ、限られた資源の最大限の活用を図るため、大学院や学部、研究所での活動の共同・連携を思い切って促進する


これまで文部科学省は、国公私立大学間の競争的環境を醸成することにより各大学の教育改革を推進するため、「国公私立大学を通じた大学教育改革の支援事業」(いわゆるGP)に多額の予算を投じてきましたが、ここにきて、「地方私立大学の経営破綻」という危機に直面し、「競わせる」だけでなく、「連携」という手法により当面の難局を乗り切る政策に転換したようです。(もちろんねらいは一つではなく、「大学の統合」を促進することができれば・・・という文部科学省の思惑も含まれているのでしょうが。)

現に、先日このブログ*1でもご紹介したように、文部科学省の高等教育局長は、年頭の挨拶として3つの重点目標を示し、そのうちの一つとして「少子化等の中で、地方の、特に私立大学等がおかれている小規模化、経営困難等の厳しい状況を踏まえ、限られた資源の最大限の活用を図るため、大学院や学部、研究所での活動の共同・連携を思い切って促進する。」としています。

そのための具体的な施策の一つが、平成20年度の新規事業として30億円という多額の予算の確保が見込まれる「戦略的大学連携支援事業」です。
文部科学省が作成した資料を基に事業概要をご紹介します。


戦略的大学連携支援事業


国公私を超えた大学間の戦略的な連携の取組を支援し、地方の大学教育を一層充実するために、平成20年度予定額30億円(概算要求時は50億円)を新規に措置するものであること。

■背景

国公私立大学の連携による地方の大学教育の充実 (「経済財政改革の基本方針2007」(平成19年6月19日閣議決定))
  • 国公私を通じた地方の「大学地域コンソーシアム」の形成を支援するための措置を平成20年度から講ずる。

  • 国公私を通じ、複数の大学が大学院研究科等を共同で設置できる仕組みを平成20年度中に創設することを目指す。

■事業目的
  • 各大学の資源の有効活用による地域における国公私立大学の教育研究環境等の充実

  • 大学間の連携強化による個性化・特色化の加速、教育研究水準の更なる高度化

■現状・課題
  • 地方の大学、特に地方の私立大学が地域活性化等に果たす役割は大きい

  • 現存する大学コンソーシアムの機能は限定的であり、多様なニーズに対応することは困難

  • 地方小規模大学単独の人的・物的資源では地域の知の拠点としての対応に限界

  • 地域における各大学の資源の有効活用、教育研究環境の整備が不十分

  • 大学の機能別分化を推進するため、個性・特色ある複数大学間の連携強化が必要

■事業内容
  • 戦略的な連携により事業目的を達成するため、将来目標を含む具体的な「大学間連携戦略」を策定

  • IT等を活用した教育研究設備のネットワーク構築(教育研究設備の新規整備と共用促進)

  • 大学連携による共通・専門教育の先進的なプログラム開発(複数大学の共同による学位授与、連合大学院等)

  • 地域の教育研究資源の結集による知の拠点としての機能を強化(産学官連携、豊富な生涯学習教育の提供、国際交流など)

  • 大学間の連携による効率的かつ効果的な大学運営(事務局機能の強化)

■支援内容

全国の各地域において、「広域型」、「地元密着型」、「教育研究高度化型」など、多様で特色ある大学間の戦略的な連携の取組を促進するため、今後3年間継続して支援(概算要求時には、今後5年間で200件程度の取組を3年間継続して支援)


*1:「高等教育政策の動向」:http://daisala.blogspot.jp/2008/01/blog-post_7416.html

2008年1月28日月曜日

続・ディグリー・ミル

いわゆる「にせ学位」の問題。なかなか沈静化しませんね。

この問題、以前このブログ*1でもご紹介しましたが、文部科学省の調査が昨年の夏、公表は年末。公表までに相当の時間が費やされていたにもかかわらず、未だにずるずると出てくるわ出てくるわ。やはり「氷山の一角」でした。

おまけに、「にせ学位」保有の教員の処分をいち早く公表したはいいが、なんと同じ教員を審査もしないで再雇用していた大学も出てくる始末です。

この国の高等教育は一体全体どうなっているのでしょうか。
折りしも入試シーズン。これまでがんばってきた受験生に与える不安は誰が責任を持つのでしょうか。なんともさなけない時代になったもんです。


非認定学位で教授昇進 金沢大 米の大学で「博士号」 (2008年1月27日読売新聞)


金沢大学医学部の男性教授(理学療法)と女性准教授(看護学)が昇進の際、米国の非認定大学で取得した「博士号」などの学位を経歴として使っていたことが26日、分かった。

文部科学省は07年12月、国内各大学に、「大学の信頼低下につながる」として、非認定大学の学位の扱いについて厳正な対応を求める通知をしている。金沢大は2教員の処分は考えていないとしている。

男性教授は2002年、米国の非認定大学「ニューポート大」の日本校に論文などを提出し、人間行動学の「博士号」を取得。翌03年に助教授から教授に昇進した。男性教授は、最終学歴・学位を大学の公式ホームページに掲載している。教授は同大に対し、「非認定校とは知らなかった」と話しているという。
女性准教授は97年にニューポート大で「修士号」を取得し、99年に金沢大講師から助教授に昇進した。

金沢大では、業績、博士号、教育経験を昇進の判断材料にしている。
同大は、2教員の昇進は「業績を重視した」とし、今後は非認定校の学位は昇進を決める材料にしないとしている。

非認定校は政府が認めていない学校で、修了しても学位は公に通用しない。文部科学省によると、米国では非認定校で学位を数十万円程度で売買するところもあり、取得した学位を就職などに悪用する例がある。

51人目の不正規学位利用教員 (2008年1月27日産経新聞)


公的な認定を受けていない米国の大学の「学位」を採用や昇進に使用した教員がさらに2人増え、合計46校の51人になりました。
文部科学省が昨日、訂正発表したものです。

また、同発表によると、報告を求めている平成18年度の対外広報に使用した教員も一人増え、48校50人になりました。
共同通信も短い記事で配信し、だいぶフツウのニュースになった感があります。

一方、同様の「学位」を利用した49人目の教員が、中部地方のある国立大学だったことも、これまでの取材の結果、分かりました。
同大学はこの教員(教授)から事情聴取をしたうえで、「不正規な学位(博士号)は昇進審査に大きな影響を与えたなかった」として、特に処分を下さなかったとのことです。ちなみに、当該教授は東大の博士号を持っていたといいます。

これに対し、すでに報告済みの九州産業大学は、ディプロマ・ミル(DM、学位工場)とされる機関の「学位」を使用した教授について、調査委員会で検討した結果、「学位に関する認識が甘かった」として反省の意を示したとのことです。
当該教授は、大学内の要職についていましたが、その辞表が受理されたそうです。
大学は、この博士号を一切使わないよう厳重注意しました。

ケースにより扱いの差はありますが、大学ごとにそれぞれの結論を出しているようです。
「常識の変わり目」というものがあります。今までまかり通ってきたことが、いつまでも続くとは限りません。
機敏に、かつ適切に対応できるか・・・大学の組織としての力と、品位が試されています。


「学歴詐称」で退職の准教授 大分大が講師採用 「学士資格あり問題ない」 (2008年1月27日西日本新聞)


大分大学(大分市旦野原)が、採用条件の修士号を取得していなかったため雇用契約を昨年取り消した外国人の元准教授を、今月1日から新たに常勤講師として採用していたことが26日、分かった。

元准教授は工学部福祉環境工学科に所属していた50代の男性。昨年10月、米国の公的機関が正規の大学と認めていない教育機関から修士号を得ていたことが発覚した。
同大は「詐称の積極的な意図は認められない」として懲戒処分にせず、「雇用契約の合意解約」で決着を図った。

同大によると、元准教授の代わりとなる教員を探したが「急なことで適任者も見つからなかった」ことから講師として契約した。

採用は一般的に公募して決めるが、関係者は「おそらく(公募を)していない」と話している。元准教授は現在、「ネーティブ工業英語」を担当している。

講師は学士の資格があれば可能。同大の責任者は「資格はある。修士号の学歴問題を解決した上での新規採用であり、問題はない」と説明している。

 ◇

報道を読む限りにおいては、ディグリー・ミル問題が、いかに我が国の高等教育の信用を失墜させたか、また、その原因を作ったのは自分達だという認識のかけらもない対応をしている大学ばかりで、言葉だけの反省は行うが責任の所在を全く明確にせず、当事者である教員の処分に寛容な対応を示しているという現実は、一社会民として納得のいくものではありません。

特に、最後の記事の大学などは、大学として教員採用時の適正な審査を怠るだけでなく、求める教員としての要件を満たさない「にせ学位教員」を雇用しておきながら、事態が発覚すると当該教員には非がなかったことを理由に、関係者の処分を全く行わずに、当該教員の契約の解除のみという形で円満解決を図りました。

にもかかわらず、報道によれば3月も経たないうちに、同じ教員を公募も行わずに代わりがいないからという理由で再雇用するという常識的には信じがたいことを堂々とやってのけています。「出来レース」だったのではと思われても仕方ないでしょう。(もしそうだったら、極めて悪質であり、国民をひどく愚弄したことになりますね。)

当該大学は、当該大学なりの事情や理屈があるのでしょうが、それは「井の中の蛙」の論理であり、全く世の中に通用するものではないと思います。
ところで、事件発生時にお約束された再発防止策「教員採用時の審査の厳格化」はいつ公表されるのでしょうか?

■真正な学位と紛らわしい呼称等の取得者への対応について
選考の段階でこのことが判明しなかった点で,本学の教員採用時の調査不足は否めず,真摯に受け止める必要があり,大いに反省すべきことと思っています。今後は,二度とこのようなことが起こらないように,教員採用時の審査を一層厳格化していきたいと思います。
http://www.oita-u.ac.jp/top/shinsei.html

これからまさに入試の山場。受験生の心をつかむのは、高等教育機関としての自覚、責任感、そして実行なのだろうと思います。
「大学の常識は、社会の非常識」をいつまで続けるおつもりですか?

2008年1月25日金曜日

求められる大学教員の倫理観

医学部教授、9割が企業から寄付金 厚労省調査

インフルエンザ治療薬タミフルの副作用を国の補助金で研究していた大学教授が、輸入販売元の製薬会社から多額の寄付金を受けていた問題を受け、厚生労働省が調査を行ったところ、医学部教授の9割が製薬会社から寄付金を受けている実態が明らかになった。
厚労省は22日、公的研究の中立性を確保するため、監視する委員会を各大学に設置するよう求める指針を決めた。

調査は昨年8月、無作為抽出した43の大学医学部・薬学部の教授215人を対象に行い、91人が回答。
医学部教授の91%、薬学部教授の44%が06年度に製薬会社から「奨学寄付金」を受け、寄付1回あたりの平均額は約60万円だった。
医学部教授の3割余は年間の寄付金総額が1000万円以上で、3000万円以上の教授も1人いた。

指針では、特定企業に便宜を図るなどの不適切な研究を監視する委員会を各大学に設置し、国の補助金を受ける教授らは企業からの寄付などを委員会に報告しなければならない。
報告基準は各大学で定めるが、指針では「同一企業・団体からの収入が年間100万円を超える場合」などの目安を示した。

不適切事例があれば、大学が厚労省に報告、厚労省が調査や指導を行う。
改善しなければ補助打ち切りや研究費の返還請求などの制裁措置をとるという。(2008年1月23日朝日新聞)


大学教員と寄付金

我が国の大学医学部・薬学部には数多くの医師(教員)が勤務しており、その中のわずか91人が回答した調査の結果のみをもって、上記のような国の政策が決まるとはとても思えませんが、素人的に見て、医師(教員)と製薬会社のもたれあいの関係が、社会の側からきれいな関係には見えていないし、報道された数字から察するに、大学病院を含む医学部や薬学部の多くの医師(教員)が、大学から支給される報酬や研究費以外に多額の資金を受けていること、また、その資金の使途が社会に明らかにされていないことはまぎれもなく事実なのでしょう。

医師(教員)と製薬会社は、患者の命を救うという共通の使命を持ち、これまでもそれぞれの努力や相互の連携によって多くの人命が救われてきているのですから、両者の関係を完全に否定することはできません。

しかしながら、上記の報道が伝えているように、両者の間に不透明な資金の流れや、そのことによる何がしかの不正が存在している場合、さらに、一方の医師(教員)が、国立大学に勤務する者であったり、国からの補助金を受けていたりする場合には、国民の税金の使い方として大きな問題があります。

医師(教員)と製薬会社との間に発生した寄付金を媒介とした犯罪的行為は、氷山の一角ではありましょうが、これまでにも数多く報道されてきました。

例えば、最近紙面をにぎわせた事例として、このブログ*1でもご紹介しましたが、某国立大学で、医療機器販売会社が大学への多額の寄付を足がかりに関連病院への販売実績を上げようとした営業攻勢を背景として、大学病院の手術室工事の過程に法令・内規違反があったとする報道がありました。

また、医療機器の購入に関する不正としては、医師(教員)の側が、医療機器を買ってもいないのに買ったことにして、いったん企業にお金を支払い(正確にはお金を預け)、しばらくした後にそれを寄付金として受け入れるやり方も一般的によく見受けられる事例ですし、摘発を避けるために、支払ったお金を複数の企業に迂回させ、購入した企業ではない別の企業から寄付金を受けるという悪質なやり方も使われています。

さらに、大学には企業との共同研究という制度がありますが、相互の経費負担や知的財産権の所在などをどうするかといった煩雑な手続きを避けるため、あるいは資金の使途の柔軟性や非公開性といった面で医師(教員)にとって得策なため、多くの医学部や大学病院では、共同研究という形態をとらずに寄付金として資金を受け入れる傾向が強いようです。

このように、大学医学部・病院の医師(教員)には、様々な理由や手法により、利害関係者である製薬会社などから資金が入っています。


研究費不正

大学教員が大学外から受け入れる研究資金の代表的なものに文部科学省が用意する「科学研究費補助金」というものがあります。
平成19年度現在で、総額1900億円ほどの予算規模になっていますが、このような研究資金は、運営費交付金のように、国から大学という機関に対し配分される資金と異なり、個人向けの補助金という性格上、その管理の透明性や、法令等に従った誠実な事業遂行についての国民や社会に対する説明責任が強く求められています。

例えば、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」に違反し、獲得した資金を他の用途へ使用する等不正な使用を行った場合には、身分上の処分や資金等の返還のほか、例えば、資金等の申請を数年間辞退せざるを得なくなるなど厳しい社会状況になっています。

研究費の不正については、昨年、数多くの報道がありました。

これまで、資金を受ける研究機関である大学においては、例えば、
  1. 知識不足や不慣れから生じる不適切な管理を防止するとともに、資金等の適切な管理を行う上で必要な知識や情報の提供等を行う支援組織(相談窓口)を設置したり、

  2. 資金等の適正な管理に関する周知を徹底するために、外部資金等の管理に関係する教職員向けの研修会や説明会を定期的に実施したり、

  3. 外部資金等の管理を適切に実施するための教職員向けマニュアルを、初心者にも理解しやすい豊富な事例や、質疑応答を盛り込むなどして作成し周知したり、

  4. 取引企業等が関与した資金等の不適切な管理が発生している事例があるため、関係企業等に対し、会計制度、経理事務の適正な手続き等についての周知を徹底したり
といった様々な不正防止対策が講じられてきています。

しかしながら、教員自身の意識、モラルの低下という根元的な問題がなかなか解決できないということもあり改革が思うように進んでいません。

参考までに、研究費不正の手口のうち代表的なものをご紹介しましょう。(※決して手口を推奨するために書くのではありません。)

■賃金・謝金、旅費の現金払、代理受領に起因する不正

実態のない賃金・謝金、旅費を支払うことにより資金等をプールし、他の用途に使用する、いわゆる「名義貸し」「カラ雇用」「カラ出張」というものがあります。これは、「現金払い」や「代理受領」を行っていたことに起因して発生しています。

■勤務実績の未確認に起因する不正

いわゆる「カラ雇用」といわれるものがあります。雇用関係書類、支出関係書類等については、本来、被雇用者が自ら署名・押印しなければならないことになっているのですが、賃金・謝金等の受け取りのために開設した預貯金口座に係る預貯金通帳、銀行等届出印を研究室等において一元的に管理していたり、勤務実績の確認も、研究室だけで行っているために発生する不正です。

■債務完了確認の不徹底に起因する不正

取引企業等に架空の品目名義で支出し、実際は別の品目を納品させる、いわゆる「預け金」や「品名替え」は、物品の納品検査や役務提供の完了確認等を適切に行っていなかったことに起因して発生する不正です。債務完了の確認を研究室だけで行っていることが不正の原因になっています。

いずれも悪質な手口であり、司法のお世話になったケースもたくさんあるようです。


倫理観と説明責任

最近、製薬会社や医療法人との関係が問題視されている医学部(又は附属病院)への寄付金に関する情報公開(寄付者名、寄付金額、受入教員名などの開示)を報道機関から求められているケースが増えていること、しかし、残念ながら現状においては、透明性の確保に向けた大学教員の意識レベルがまだまだ低く、情報公開法で義務付けられている「情報を国民に公開し説明責任を果たすこと」ができていないことについて大いなる反省をすべきことについては、既にこのブログ*2でも述べました。

大学教員の使命達成に必要なお金の入り口と出口については、今後とも厳正な管理、透明性の確保、そして教員への厳正な処分を徹底することが何より必要ですし、公的セクターである大学、そこに勤める教職員は、社会の常識に目線を置いた倫理観を持ち、社会への説明責任を果たすことを常に心がけておかなければなりません。


参考までに、約1年前に報道された記事をご紹介しておきます。

タミフル研究者に1000万 危うい奨学寄付金(東京新聞)

インフルエンザ治療薬「タミフル」と異常行動の関連性が疑われている問題で、聞き慣れない言葉が紙面を飾った。「奨学寄付金」。

民間企業が大学教授などの研究者に提供する資金だ。近ごろもてはやされる「産学連携」のキーワードともされるが、ひも付きの資金だけに、研究成果にスポンサーの意向が反映されないか懸念が残る。危うくはないか-。

今回の問題でクローズアップされた「奨学寄付金」という制度。文部科学省は「現在、国の制度としては存在しません」という。どういうことなのか。

独立行政法人化する前の国立大学では、教育・研究の奨励などを目的とする奨学寄付金は、国立学校特別会計法などに基づき、国の歳入にいったん計上され、文科相が学長に寄付金相当額を交付して経理を委任していた。教員個人への寄付でも、いったん教員が国に寄付する形をとっていた。

しかし、独立行政法人化で同法は廃止。後は「各大学が同様の制度を独自に存続させている」のが現状だという。

■産学連携の落とし穴

こうした流れの中で、各国立大は企業との共同研究など産学連携や寄付金獲得に躍起となっている。特にありがたがられるのが「奨学寄付金」であるという。

旧帝大の大学病院に長く勤務していた医師は「科研費など国からの助成金は限りがあるし、年度内に使わなくてはならないなどの制約があり使いにくいが、企業からの寄付は自由がきく」と話す。また「企業からの援助としては、特定の研究課題のために企業から受ける『委託研究費』と、自由に研究費として使える研究寄付金と呼ばれる『奨学寄付金』があるが、自由に使える研究寄付金ほどありがたいものはない。製薬会社は、自社の薬を(病院や研究室で)使ってほしいから、寄付金を出したりする」とも打ち明ける。

それだけに「(医学部では)どれだけ企業から寄付金を集められるかで教授の力が決まる」とも。
「教授が有名になるほど寄付金は集まるようになり、企業の方から寄付を申し出るが、『こういう研究がしたいんだよね』と教授側から懇意の企業担当者にそれとはなしに話すこともある」という。

寄付集めに血眼になる背景には大学間の格差の顕在化もある。

ある国立大工学部教授は「年間2百50万円あった研究費が2年前から30万円になり、コピー代にしかならない。各研究室が大学図書館に置く専門書や資料代として年間25万円を出していたが、今はゼロ。地域の“知の拠点”としての環境も崩れてしまった」と嘆く。もはや寄付は研究になくてはならないものだという。

■教員個人に寄付 透明性は怪しく

しかし、国立学校特別会計法の廃止にともなって、学校側は教員個人への寄付を大学が把握する法的根拠もなくなっており、その透明性が怪しくなっているのも事実だ。

会計検査院は2003年度の決算検査報告で、東京大など9国立大学で教員個人への寄付計約3億5千万円(2年間)が大学の会計に入っていなかったとして、旧制度と同様にいったん教員から大学法人に寄付させる規則の整備を求めている。

東京大広報課は「教員または研究室への寄付は法人への寄付として受け入れている」とするものの、「寄付目的別での金額の整理は行っていない」として、教員個人あての寄付の総額も把握していない。

■疑われる関係やめよ

もうひとつの問題は、研究成果にスポンサーの意向が影響を及ぼすことがないかどうかだ。

横田俊平・横浜市立大教授の講座に01年から1千万円を寄付していた、タミフル輸入販売元の中外製薬はどういう意図で寄付していたのか。同社広報グループは「同大の小児科学講座は自己免疫疾患や難治性疾患に有数の研究をしているため寄付先に選んだ。そもそも奨学寄付金は成果を求める性質のものではなく、成果を期待する場合は受託研究として行っている」と、副作用研究との関連づけは心外という様子で話す。

新薬開発をする製薬会社が加盟する日本製薬工業協会も「新薬の開発には、国の厳しい審査を通らなくてはならず、純粋なデータを出さないと途中で駄目になる」と研究に余分な意思は働かないと主張する。

大手検査会社の社員は「自社で解析すると都合のいいデータではないかとみられるし、薬の解析は患者が集まる医療機関が入らないとできない。いいデータを出してほしいのはやまやまだが、客観性を担保するためにも、委託して大学と共同研究するのが普通の流れ。データを誰が評価するかも重要」と必要性を強調する。

しかし、ある私大工学系の教授は「人間ですから、企業と一緒に開発したり研究していた製品をかばいたくなる気持ちはある。だからこそ、お金のやりとりがあるときは審査や検証する立場になるのは避けるべきだ。また、寄付金を個人で管理させていた大学もあるが、大学が管理すべきだ」と苦しい胸の内を語る。

前出の医師は「企業の寄付金が純粋に研究を推進しているのは確か。(研究に自由に使える寄付で)データのねつ造が起きることはないが、何か起きたときに火消しを期待される可能性は否定できない。実際にバイアスがかかったかどうかを証明することは難しい。だからこそ、疑われるような状況での寄付を受け取るべきじゃなかった」。

金沢大病院の打出喜義医師は、同病院でインフォームドコンセント(十分な説明と同意)なしに臨床試験が行われたとされる損害賠償訴訟で、内部告発を行い、原告側に協力した経歴を持つ。その打出医師は「製薬会社から医者に渡るお金は、どこの大学でもある。奨学寄付金自体が大きな問題になるわけではない。むしろ製薬会社のお金に頼らなければ研究ができない大学の研究体制の方が問題」と指摘する。

しかし一方で「(企業と研究者の関係は)一般人の目でみれば適正な関係ではない」として、「例えば政党助成金は特定企業と政治家の癒着など政治腐敗を防ぐために導入された。本来、こうした形にすべきだ。企業のサポートがなければできない研究体制でいいのか、社会的・国民的に考えないといけないのではないか」と提案する。

■企業からの寄付 米では論文公開

「米国でも数年前、たばこに害はないと発表した研究グループが大手たばこメーカーからお金をもらっていた問題で、研究者と企業の利益相反が問題となり、企業から寄付をもらっている場合には論文にそのことを公開しようという流れになってきている」。その流れで見ると、今回のケースには疑問符も付く。

「(利害関係のある)製薬会社から1千万円の寄付を受けていた人が研究班長では困るというのが普通の人の感覚でしょう。厚労省が研究班メンバーを選ぶときに寄付を受けているかチェックしたり、メンバー自身も任命されるときに『いいのか』と確認するぐらいの慎重さがあってもよかったのではないか。異常行動で亡くなった子どもの遺族の気持ちを考えれば、疑われて怒るという反応はよくない」。確かに10代の子どもを持つ親にとっては人ごとではない問題なのだ。

■問題の背景

インフルエンザ治療薬「タミフル」の服用と異常行動の関連性を調べている厚生労働省の研究班の主任研究者で、横浜市立大の横田俊平教授の講座に、同薬輸入販売元の中外製薬(東京都中央区)から「奨学寄付金」として2001年度から06年度までに計約1000万円が支払われていることが判明した。昨年10月、教授らは約2800人の患者を対象とした調査結果として「タミフル服用の有無によって異常行動の現れ方に差は見られない」と発表。厚労省はこの結果などから、タミフルと異常行動の因果関係を否定した。

<デスクメモ>
新型インフルエンザの流行を迎え撃つために、政府は膨大な量のタミフルを備蓄しているはず。もしも、わが子が新型インフルエンザにかかったらタミフルを飲ませるべきか否か、市民が求めているのは、そうした切羽詰まった場面で生きる情報だ。疑心暗鬼の種をまくのは、それだけで罪だと知ってほしい。


*1随意契約-天下り-不正

2008年1月24日木曜日

教員と職員

大学の使命や役割の達成には「教職協働」が不可欠であることが、大学現場で実証されている一つの例が報道されました。
「部局自治」の牙城である教授会に職員が乗り込むという、一昔前では予想もできなかったことが現実のものとなりました。
時代の大きなうねりが大学を変えようとしています。


教授会も経営感覚 京産大が「学部長補佐制」


大学の学部の最高議決機関である教授会に、「学部長補佐」として登用した発言権のある職員を出席させる制度を、京都産業大(京都市北区)が導入した。

教授を中心とした大学運営に経営感覚を取り入れ、「事務方」としてのイメージが強かった職員の意識を高めるのが狙い。

教授会に、教員以外の職員が発言権を持って同席するのは、「全国的にも例がないのではないか」といい、新たな試みが他大学の注目を集めている。

京産大は昨年10月、7つの全学部と、全学生の共通科目を運営する「全学共通センター」、大学院の「法務研究科」に、職員を対象にした役職である学部長補佐を設けた。

これまでも、各学部の事務長が教授会に出席していたが発言権はなく、書記としての役割しか任されていなかった。

学部長補佐は各学部に所属していた事務長と異なり、学長を補佐する「学長室」に所属し、学長と学部長のパイプ役も担う。

学部長補佐を設けたのを機に、事務長は廃止した。

経営学部の西浩司学部長補佐は就任後、月1回の教授会に出席しているが、43人の教員を前に「緊張する。求められて発言したことはあるが、自ら発言したことはまだない」という。

ただ「事務的な役割だけでなく、自らが学部改革などの大学運営に携わっているという意識は高まった」と効果を強調する。

一部の教授から「大学の経営面での効率が優先され、学部の自治が保たれない恐れがあるのではないか」との声も聞かれるが、大学によると、教員からの大きな反発はないという。
京産大学長室は「学部長補佐には、教員と互して発言することを期待している。教職員が一体となって大学改革を進める起爆剤にしたい」としている。(2008年1月11日京都新聞)


大学特有の「組織風土」


上記のような教職協働に関する記事が社会に発信されるようになることは、大学人としては真に喜ばしいことですし、このような取り組みの積み重ねが、社会に理解される大学ととして発展していく礎になると思います。

しかしながら、大学というところには、昔から社会の皆様にとって理解しがたい「部局自治という特殊な組織風土」が存在しており、これが教員と職員の関係や相互の意識の乖離をもたらし、積極的な教職協働の妨げになってきたのではないかと思います。

この組織風土について、ある国立大学の経営に外部人材として参画されている方は、次のように発言*1されています。

大学にいて、私が強い不満を感じることをひとつ話しておきたいと思います。

大学では、会議、委員会とかがすごくたくさんあります。ところがそのメンバーに、自分たちが決めたことに対する責任意識が希薄に思われてならないんですね。

例えば、自学の場合、○○長会議というのがあって各部局長が正式メンバーとして参加します。従って、部局長はそこで決定されたことを自分の部局で確実に実行する義務があると言いたいのですが、必ずしもそうはいかない。自分の部局に持ち帰って、そこの教授会ではかばかしい反応が得られないと「当面実施を見合わせる」という選択をしても、責任を問われることもない。

そんなことで、大学では往々にして物事にスピード感がなく、後ろへ後ろへと際限なくずれていく結果になる。しかも、それが問題視されることはほとんどないといってよい。

調達改善のような効率化案件は、実施が延びればそれだけ効果も失われるということで、私は焦るわけですが、あたかも大学にとってもっと大事な何かを守るためであるかのように、物事が遅れることをあえて問題視しない感じがあります。

法人化の際には「大学の特殊性」ということが随分と強調されたようですが、大学にとって大事なものとは何なのか、またどこまでが「大学の特殊性」として説明できるのか。

やはり、学内で当然のように受け取られていること、大学が正しいと思ってきたことについても、我々はいろいろと疑問をなげかけていかなくてはならないと思います。

確かに昔、大学に勤め始めた頃、大学内の意思決定権限が、企業でいえば社長に当たる学長ではなく、実質的には各部局の教授会にあることが不思議でなりませんでした。

各部局の代表者で構成された会議で決定されたことが、教授会でいとも簡単にひっくり返ることも少なくありませんでした。

この慣習や風土は、今でも完全にななくなってはいないようです。


「学問の自由」と「部局自治」


引き続き、座談会の様子を見てみましょう。

改善を進める中で痛切に感じさせられたのが、大学における「部局自治」というものでした。

学長のリーダーシップ、大学本部が強力に施策を進めることへの隠然たる反発、また部局ごとに業務体制がマチマチであることなど、部局自治の影響はさまざまなかたちでいわば障害となりました。

部局自治は、本来大学における「学問の自由」を守るための重要な原則なのでしょうが、長い時代この伝統に従ってきた中で、細かな事務手続きに至るまで部局ごとに別々の仕組みが育ってきた実態があります。

学問の自由を守るために大学として断固として守るべき「部局自治」はそれとして、効率性の観点から「ひとつの法人」として全学統一の基準・手続きによるべき部分が区分けされなければならないように強く感じるのですが、なかなかそれが進みません。

法人化後、大学本部主導で全学的な何かをやろうとすると、まずは部局自治を冒すものではないかという警戒心が先立つ傾向がある。

やはり、何までが部局の自治に委ねられるべきなのかの精査が必要だと思うんですね。ひとつの法人になった中で、今後「協調」の部分がどうなっていくかが経営上の課題だと思っています。

もう一つは、繰り返しになりますが、学問の自由という亡霊を恐れてはいかん。

個々の研究教育の内容に立ち入り、干渉することは避けるべきであろうけれども、学問の自由という名に隠れて、何でもかんでも部局主義だという。

だが、これを恐れちゃいかん。ところが現実は、たぶん、弊学の学長さんだって、ギリギリのところで遠慮しています。

僕は自分の大学の自慢するのはいやだけど、学長さんは随分頑張ってやっていると思うし、やり方も上手い。でも、もう一歩踏み込めば、という感じがする。


「大学の自治」という言葉の持つ本当の意味


それでは「大学の自治」とは何か少し考えてみましょう。

大学に勤務していると、大学が持つ多くの機能、役割、使命などについて研修を受ける機会があります。さらに、日常の業務を進める中で、同様のことについて上司や先輩方から指導を受けることもあります。

その中で「大学自治」という言葉の持つ意味を学習する機会もあるわけですが、現実は、言葉本来の意味とは大きく異なるもののように思います。

学問の自由を保障する崇高な理念や大学全体の最適化よりも、教授会の最適、組織防衛が優先され、本来の「大学の自治」がいつのまにが「教授会による部局自治」にすり替えられているのではないかと思うのです。

「大学の自治」とは、簡単に言ってしまえば、「憲法に裏づけされた大学における「学問の自由」を保障*2するために、長い間大事に守られてきた大学の自主性を尊重する制度あるいは慣行」であるはずなのです。

若い頃学習した古ぼけた資料をひっくり返してみると、「大学の自治の目的や具体的内容」について、次のようなことが書かれてありました。

大学における学問の研究とその成果の教授は、外部の政治的、経済的、社会的、宗教的などの諸勢力の干渉を受けることなく自由に自主的に行われることが必要であるが、「大学の自治」はこれを保障するために認められているものである。

その主要な点を国立大学についてみると次のとおりである。
  1. 大学においては、研究並びに教授の自由が保障されること。
  2. 学長、教員等の教育研究に携わる者の人事は、大学の自主的決定に委ねられること。
  3. 大学の教育研究は、大学が自主的に決定した方針にしたがって行われるべきこと。


「教授会」というところ


聞くところによれば、教授会の会議は、昔はびっくりするほどの時間がかかっていたようです。例えば、午後3時からスタートして、議論が延々と続き結論も出ないままに午後9時頃終了とか。お腹がすいて途中退席して夕食をとってまた戻って参加するといった人もいたようです。

教授会のお世話をしている職員から聞く話では、会議では、学部や大学の執行部への批判など一部教員のガス抜きの場面が少なくなかったようです。事実だとすれば大変虚しい話ですね。

議論の内容にもよると思いますが、教育研究を使命とする教員がこのような会議に貴重な多くの時間やコストを消費することが、果たして国民や学生の付託に応えることになるのかどうかとても疑問に思います。

法人化された現在では状況も少しずつ改善されてきているようですが、もともと教授会は本来行うべき審議事項以外に多くのことを議論してきたような気がします。

これまで、文部科学省はそのような状況を改善すべく、国の審議会による答申や学校教育法の改正などを通じて教授会の権限を少しずつ形骸化させ力を弱める戦略をとってきました。

また、法人化後は、従来の最高意思決定機関であった評議会を廃止し、学長や役員会に大学の意思決定や経営に関する多くの権限を与え、その下に、法人経営に関する重要事項を審議する「経営協議会」と、教学に関する重要事項を審議する「教育研究評議会」を並列的に設置することとしました。

このように、これまでの教授会による大学運営支配は、制度上は完璧に骨抜きにされているのです。

しかし、こういった制度改善が図られながらも、いまだに大学における教授会の力はすさまじいようです。

例えば、役員会など国立大学法人法で設置や審議すべき事項が定められている会議であっても、この教授会の開催日を中心にスケジュール調整がなされている大学もあるとか。

おそらく教員も教授会の問題点がどこにあるかは認識しているはずなのですが、なかなか改善していないようです。

国立大学の場合、約4年前までは、教育研究を行う大学でありながら、文部科学省の出先行政機関として位置づけられ、勤務する教職員は国家公務員だったわけですから、性格や体質を急に変えることは大変な苦労が伴うことは確かです。

ですが、国民の尊い税金をいただいて営んでいるという国立大学の不変の公的性格から考えれば、組織風土の改革は当然のこととして取り組まなければならない課題なのではないかと思います。

心ある教員の方々には是非勇気をもって改革していってほしいと思います。

参考までに「大学の自治」に関する政府の国会答弁と、教授会の運営に関する大学審議会答申をご紹介したいと思います。

約4年前の法人化によってはじめて可能になった制度改革の一部は、実は昭和40年代から既に国会において議論されていたこと、しかしながらそのような大学を良くする重要な取り組みが、「部局自治」による執拗な抵抗によって何年もの間実現できなかったことがおわかりいただけると思います。


「大学の自治」に関する政府の国会答弁

■大学の自治について

大学の自治は、これまでは学部の教授会が中心に運営してきたものであるが、学部割拠の大学自治で、全学的な大学自治になっていない欠陥も露呈している。

学部中心のものでなければ大学の自治がないのではなく、その欠陥を是正する、そして教育研究に直接責任を負う教員及び教員の組織が基盤となっている限りは、いろいろな大学自治のあり方を工夫すべき。(昭和48年5月9日、衆議院・文教委員会)

■大学の管理運営の改善について

教授会を中心とした従来の国公立大学の管理運営のあり方については、閉鎖的、独善的な運営に陥りやすいという批判が以前からあった。責任体制がどうも明確ではないではないかというふうな欠陥が指摘をされてきているところ。

大学が閉鎖的、独善的な運営に陥ることなく、開かれた大学として国民の声を反映して、社会の要請に即して運営されるようになるためには、一つの方法として、大学の運営に学外者を参加させるということも一つの考え方。

そういう工夫を検討しなければならないが、過去の立法の試みでは、大学の管理運営組織の中に直接学外者を参加させる方式を考えたことが何度かあった。

しかし、これは大学関係者のコンセンサスをどうしても得ることができずにそのまま終わっている。
しかし、学園紛争のあの40年代の大紛争を経験した各大学の中に、自主的に管理運営のあり方を工夫しなければいけないという動きもまたあらわれてきていることも事実。

文部省としても、このような動きを助長するために、副学長とか参与等が置けるように法令の改正を行った。(昭和53年5月12日、参議院・決算委員会)

益々急激に変化する現代社会にあって、大学の教育研究に対する社会の期待も大きくなると同時に、複雑化、多様化していると考えられる。

大学の社会的責務の重要さに鑑み、大学が自らこれらの状況を十分に把握しつつ教育研究を推進することが必要となっており、これを効果的に行う見地から、例えば、必要に応じ学外有識者の意見を教育研究に反映させる仕組み、外部との人事交流や研究協力の推進、教育研究活動に関する不断の評価等、種々の工夫が行われることも大切となっていると考える。(昭和62年7月31日、衆議院・文教委員会)


部局自治の中心となる「教授会」の越権をいさめる答申

■学部教授会

教授会については、学校教育法において、「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」と定められている。

学部教授会については、国公立大学の教員等の人事に関する規定を除けば法令の規定が簡潔であるために、実際の審議事項が多くなりすぎたり、本来執行機関が行うべき大学運営に関する事項や執行の細目にわたる事項についても、学部教授会の審議や了解を得なければならないといったような運用が行われている場合が見受けられる。(「21世紀の大学像と今後の改革方策について-競争的環境の中で個性が輝く大学-」(平成10年10月26日大学審議会答申)(抜粋)



*1:「国立大学法人における外部人材活用方策に関する調査研究」(2007.4月、法人化後の国立大学運営における外部人材活用方策に関する調査研究プロジェクト研究代表者 本間政雄)から引用

*2:憲法23条「学問の自由は、これを保障する。」:憲法23条は、学問の自由を広く全ての国民に保障するとともに、特に「学術の中心として広く知識を授けるとともに深く専門の学芸を教授研究する」ことを目的とする大学について保障したものと解されている。

2008年1月21日月曜日

高等教育政策の動向

このブログでは恒例になりつつありますが、文部科学省高等教育局が配信しているメルマガ「高等教育政策情報」第19号の主要な記事(抜粋)をご紹介します。

新年のあいさつ(高等教育局長)

わが国の成長、発展にとって、大学・大学院の改革は喫緊の課題であり、今年度は次の3つを重点に取り組んで行く。
  1. 学位の水準の維持・向上に向けた枠組み作りを通じて、学士課程教育の構築を図る。学士号が保証する能力、すなわち「学習成果」を明確化し、それを保証していく。既に欧米諸国でも様々な取り組みが行われており、去る1月11、12日に東京で開催されたOECD非公式教育大臣会合においても高等教育による学習成果の評価やその国際比較が議題としてとりあげられたところ。

  2. 大学院教育の実質化を図るとともに、世界的な教育研究の拠点やグローバル化に対応した教育研究の推進を図る観点から、外国の優れた大学院との共同学位の授与プログラムなどの戦略的な推進を図る。

  3. 少子化等の中で、地方の、特に私立大学等がおかれている小規模化、経営困難等の厳しい状況を踏まえ、限られた資源の最大限の活用を図るため、大学院や学部、研究所での活動の共同・連携を思い切って促進する。


中央教育審議会の動向について

1 中央教育審議会教育振興基本計画特別部会について

昨年12月27日に中央教育審議会教育振興基本計画特別部会(第11回)が開催された。
この会合では、昨年11月から12月にかけて行われた同特別部会における審議の状況に関する公聴(地方公聴会、関係団体ヒアリング、国民からの意見募集)において寄せられた意見の概要が報告された。
また、教育振興基本計画の策定に向けて今後検討が必要な「施策の総合的かつ計画的な推進のために必要な事項について(案)」について検討を行い、教育に対する公財政支出の充実や地方公共団体の役割、進捗状況の点検等について意見交換が行われた。
今回の部会の中で、委員からは、高等教育財政を充実すべき、施策の重点化や数値目標の設定が重要である等の意見が出された。
教育振興基本計画特別部会では、今後、答申案に関する具体的な検討を進めていくこととなっている。

2 留学生ワーキング・グループの発足について

平成19年10月29日に開催された中央教育審議会大学分科会の制度・教育部会において、留学生政策について集中的な議論を行うための「留学生ワーキング・グループ」が設置され、12月25日に第1回が開催された。
中教審で留学生政策について集中的に議論するのは、平成14年から15年にかけて設置された留学生部会以来のこと。
当該留学生部会を中心に取りまとめられた、平成15年の中教審答申「新たな留学生政策の展開について」では、留学生受入10万人計画の達成を受け、「今後5年程度を目途に」早期に実現すべき施策について取りまとめたもので、平成20年度がその5年度目となるため、答申に掲げられた施策についてフォローアップをし、各施策の実施状況を確認するとともに、今後の施策の在り方に反映させる必要が出ている。
また、最近では、アニメ、マンガなどの日本のポップカルチャーへの関心の高まりが日本への留学の動機の一つとなっていることなど、留学生交流の状況は変わりつつあり、昨年5月に発表された「アジア・ゲートウェイ構想」では、日本文化の魅力を活かした留学生獲得といった新たな留学生交流を提唱している。
このように急速に変化する留学生交流の状況に合わせて、平成15年の答申を基にしつつ議論を行い、平成21年度以降の留学生政策に反映させる必要があることが、今回の留学生WG設置の理由として挙げられる。
主な検討事項として、
  1. 外交戦略に対応した柔軟な留学生受入れの展開、学種や学問分野の特性に着目した留学生受入れなど新たな留学生交流の意義・形態等に着目した留学生交流の在り方

  2. ダブル・ディグリーや国際コンソーシアムなど大学の人材獲得インセンティブがより発揮されるような各大学の国際戦略に基づく受入から卒業後の一貫した留学生交流の在り方

  3. 宿舎やカウンセリングなど生活者の側面での留学生支援の在り方

  4. 世界で活躍できる日本人を育てるため、短期留学プログラムや博士課程学生の派遣などを含め、日本人の海外留学機会の拡大
などが考えられる。
また、昨年、アジア・ゲートウェイ戦略会議や教育再生会議で話題となった我が国の留学生数の将来予測についても議論がなされる見込み。
留学生WG今後、毎月1回のペースで開催され、概ね1年間に渡って議論を重ねて、年末を目途に報告書を出す予定にしている。会議資料等留学生WGに関することは文部科学省のホームページでも掲載し公表することとしている。


総合科学技術会議「大学・大学院改革の研究システム改革」について

平成19年11月28日に第71回総合科学技術会議において、「大学・大学院の研究システム改革」が提言された。
これは、「経済財政改革の基本方針2007」(平成19年6月19日閣議決定)をふまえ、学術研究の国際競争力を高めるために提言されたもの。
  1. 研究人材育成の改革としては、人材の国際的好循環を構築するために、我が国の研究人材の海外での活躍の場を拡大するとともに、優れた外国人研究者及び外国人留学生を日本に積極的に受け入れのさらなら拡大を同時に進めること

  2. 大学院教育においては、入口管理と出口管理を徹底し、博士の質の国際的通用性を向上させることにより、多様なキャリアパスを開いて、博士及びポスドクの社会的好循環を構築すること

  3. 国際的に魅力ある研究環境基盤の整備として、柔軟な編成等により大学内の研究・組織マネジメントの体制を整備すること、若手研究者の自立的環境の整備を図ること、中・大型研究設備の整備方策を検討すること、電子ジャーナル等の学術情報基盤整備をすること、大学横断的な研究支援者養成システムを構築すること

  4. 研究の進展に応じたシームレスな支援、ハイリスク研究の推進、間接経費30%の確実な措置等、競争的資金の拡充と効率的な配分を図るとともに、寄附を促進するためのインセンティブシステム構築の検討と、地方公共団体から国立大学への寄附の範囲の明確化、手続の簡素化等を行うことによって、財政面での自助努力の推進を図ること
が提言された。

政策担当者の目(大臣官房審議官(高等教育局担当)

先週11日(金)と12日(土)に、東京お台場にて、渡海文部科学大臣が議長を務められて、OECD非公式教育大臣会合が開催された。
本会合には、19カ国及びECが参加し、高等教育の学習成果の評価について活発な議論がなされた。
我が国をはじめ各国の問題意識は、高等教育は、社会経済の発展の原動力として重要性は増大しているが、社会の期待に応えているかとの点。
会合では、高等教育に対する社会の期待は多様であるとともに、期待自体を測ることも難しい面もあり、成果の評価のためには多くの課題があるが、適切に評価を行うことは、高等教育の質の向上を図る上で極めて重要であるとの観点に立って、議論された。
議論のまとめとしては、各国における評価の改善に資するため、高等教育の学習成果の国際的な評価に関する検討の可能性調査研究の具体化を図ることとなったが、国毎の差異や多様な側面を有する点などに十分留意するとともに、次段階については調査研究の結果を踏まえて行われることになった。
議長サマリーを取りまとめられた大臣は、記者会見において、グローバリゼーションが進展する中、教育研究活動は国内にとどまることなく、ボーダーレスに展開しており、高等教育の評価について、国際的な取り組みが行われる中で考えていくことは重要である旨所感を述べられ、我が国として調査研究に参加の方向で検討していきたいと表明された。
なお、調査研究について、OECDでは、学生に対する試行的なテストと言う形で実施する予定とのこと。
また、OECDから、本調査研究は、“高等教育版PISA”と呼ばれることもあるが、PISA*1とは異なるものであり、個々の大学が教育における自らの強みや課題を把握することが目的である旨説明があった。
今回会合に参加した各国の共通認識は、研究成果の評価に比べ、学習成果の評価は難しいが、学生を教育することは基本であり、一層の改善に向け積極的に取り組むべきとの考えだった。
中教審において学習成果の国際的通用性確保や質の向上に関する提言がなされ、今後、教育力強化を目指し抜本的な改革が必要な我が国にとって、本会合は、参考となる意見が多く出され、非常に有意義なものだった。

2008年1月16日水曜日

業務改革の視点

国立大学が法人化され、国立大学法人法の下で新しい国立大学法人の業務が開始され4年が経過しようとしています。

この間、各大学はそれぞれの理念や目標の実現に向け、いわゆる「PDCAマネジメントサイクル」による経営改革を進めています。

このサイクルのうち、「C:Check」に相当するものが、国立大学法人評価委員会等による「評価」であり、法人化後新たな仕組みとして導入された「監事による監査」ではないかと思います。

いずれも、国立大学法人法に定められた国立大学法人の業務が適切かつ効果的に遂行されているかどうかを検証する仕組みですが、「監事監査」については、国立大学法人法第11条第4項で、「監事は、国立大学法人の業務を監査する」と規定されているだけで、監査を行うに当たっての指針やガイドライン等は一切無く、これまで各法人の監事が模索し、試行錯誤を重ねながら監査を行ってきました。

そこで、全国組織である「国立大学法人等監事協議会」は、タスクフォースを設置し、このたび(平成19年11月)、業務監査の視点や項目についての指針を策定しました。

この指針は、もっぱら監事が業務監査を行う際の指針として作成されたものですが、監査を受ける側の国立大学自身にとっても、業務改革の推進状況を自己点検する際に活用できる内容に仕上がっていると思います。以下に主な視点をご紹介したいと思います。


中期計画・年度計画及び中長期行動指針、評価
  1. 達成目標が具体的に明示されているか。
  2. 年度計画の進捗状況、達成状況はどうか。
  3. 役員会が各部局の進捗状況を定期的に把握できるシステムになっているか。
  4. 「我が国の高等教育の将来像」(平成17年1月中央教育審議会答申)等の文教政策の動向を踏まえた中長期的基本戦略や中長期行動指針の策定等の取り組みが行われているか。
  5. 大学改革のために適切な評価体制が整備され、評価結果を大学改革に活かす積極的な取り組みが行われているか。

法人経営
  1. 法人役員の職務執行に関して不正行為や法令・規程違反はないか。
  2. 法人役員の職務執行(法人経営の方針・大学改革の方向の理解、担当業務の執行状況の掌握、企画立案、教職員への指示等)が適切に行われているか。
  3. 役員会における議案提出、審議手順、施策決定の時期等が合理的かつ適法、適正に行われているか。
  4. 学長は経営・教学双方の最終責任者として、経営手腕の発揮を含む強いリーダーシップを発揮しているか。
  5. 学長がリーダーシップを発揮し易い環境(学長裁量定員や学長裁量経費の確保等)になっているか。
  6. 副学長・学長特別補佐等、学長の補佐体制が十分機能しているか。
  7. 法人の役員又は職員以外の委員が半数以上を占める経営協議会が、設置目的どおりに機能しているか、また、機能するような努力がなされているか(法人業務を理解してもらうための努力、報告や説明に時間をかけないで実質的な討議や意見交換の時間を確保する努力等)
  8. 教育研究評議会では、定められた範囲を踏まえた審議が行われているか。(経営に関する事項を審議し、役員会の議決を実質的に縛ることになっていないか。)
  9. 法人経営能力を有する人材を確保するために、教職員からの人材発掘や育成のための仕組み作りなどに積極的に取り組んでいるか。
  10. 教職員に対する脱国立大学の意識改革や経営参画意識の醸成に積極的に取り組んでいるか。
  11. 事務職員が法人経営に積極的に参画する仕組みの導入及び事務職員の経営への参加意識の向上に努めているか。
  12. 法人の経営が透明になっているか。(諸情報が構成員である教職員に周知されているか。)

規程等の整備・遵守状況
  1. 規程類が整備されており相互に矛盾はないか、業務が規程どおりに行われているか。
  2. 規程類が主務官庁の指針どおりに作成されているか。
  3. 規程類が実質従来の国立大学のままで(組織や職名を変えただけ)、現状に合わなくなっているものはないか。

人事管理、組織管理
  1. 労働基準法、労働安全衛生法への対応は適切に行われているか。
  2. 労働時間管理は適切に行われているか、また裁量労働制を適用する教員について、「使用者」として労働時間の把握が行われているか。
  3. 法人化により可能になった様々な人事制度を有効に活用しているか。
  4. 優秀な教職員を確保するために採用方法の工夫がなされているか。
  5. 研修制度の充実を含め、職員の育成プログラムが設けられているか。
  6. 事務職員の戦略的、重点的配置が行われているか。
  7. 教職員の評価システムを整備し、適正な評価を行っているか。
  8. 評価が処遇に適正に反映される仕組みになっているか。
  9. 教員と事務職員との連携協力関係がうまく取れているか。
  10. 事務本部(事務局)と部局事務部との役割分担及び連携協力関係はうまく取れているか。
  11. 「法人経営のスペシャリスト」や「教員の優れたパートナー」を育成するために、職員の意識を変える取り組みや能力開発に積極的に取り組んでいるか。
  12. 業務量増大や長時間労働等により、心身に障害をきたす職員が増えてはいないか、防止するための取り組みは十分か。

業務改革、業務効率化
  1. 組織・事務処理体制・業務の見直しが恒常的に行われているか。
  2. 業務改善、事務改善の取り組みが教員も含めた全学的取り組みとなっているか。
  3. 事務組織が柔軟で効率的な組織体制になっているか。
  4. 膨大な時間と労力が費やされている全学・学部の委員会、小委員会、ワーキンググループ等の整理統合は進んでいるか、また、会議時間の短縮や会議の実質化、経費の節減等が図られているか。
  5. ITの活用、アウトソーシング等の取り組み状況は適切か。


広報活動、情報公開
  1. 積極的に情報発信・情報公開を行っているか。(業務の透明性確保、社会に対する説明責任など)
  2. 法人化に伴い広報活動が益々重要になってきているが、大学が掲げる将来像の実現を目指した戦略性を持った広報を行っているか。
  3. 情報発信媒体の整理、統合を行い効率的な情報発信が行われているか。
  4. 各学部・各部局がバラバラに広報活動を行い非効率になっていないか。

教育、研究
  1. 優れた教育を行うために全学を挙げた取り組みが行われているか。
  2. 学内において「教育の質」、「学生の満足度」、「卒業生に対する社会的評価」等の把握や改善のための議論が積極的に行われているか。
  3. FD(ファカルティ・ディベロップメント)等教員の教育力向上の取り組みが積極的に行われているか。
  4. 教員の担当授業科目数や履修生数は適切か。
  5. 遠隔講義システム、授業情報通知システム、自学自習システム等のITの整備や有効活用が図られているか。
  6. シラバスが学生にとって単なる履修科目選択のための一覧表ではなく、意欲的な学習を行うための重要な教育情報(授業の狙いと到達目標、授業計画及び授業方法、成績評価方法等)の提供になっているか。
  7. 評価など法人化による新たな業務のために、本来の教育研究にしわ寄せが来ていないか、そうしたことを解消する取り組みが行われているか。
  8. 中教審の答申で言われている大学院教育の充実に向けた取り組みが行われているか。
  9. 学生の自学自習のためのスペースが十分に確保されているか、大学院生が増加しているが、大学院生用のスペースなどは十分に確保されているか、また、研究科間でアンバランスになってはいないか。
  10. グローバル化が進む中にあって外国語教育は適切か。
  11. 学生による授業評価等並びに授業評価を教育に反映させることに積極的に取り組んでいるか。
  12. 運営費交付金が年々減少する中で、(教育)研究資金を確保するためには、益々競争的研究資金の獲得が重要になってくるが、全学的支援体制がとられているか。(支援体制の弱さが応募に二の足を踏ませることになっていないか。)
  13. 研究活動を活発化させるための取り組みがなされているか、研究助成の制度が整備されているか。
  14. 現代GP、特色GP採択などに向けて積極的な取り組みが行われているか。
  15. 研究活動不正行為防止のために、全学的取り組みが行われているか。(研究活動に関する倫理規定や行動規範は制定されているか。)
  16. 学生が教員と共同で創出した発明や著作などの知的財産が守られる仕組みがとられているか。

学生確保、学生支援
  1. 入試改善や入学者の確保対策に積極的に取り組んでいるか。(志願者の推移は?)
  2. 全入時代を迎え戦略を持って入試対策に当たっているか。
  3. 受験生への情報提供、オープンキャンパス、選抜方法の改善等の取り組みが積極的に行われているか。
  4. アドミッションポリシー(入学者受入方針)が全ての学部で定められ、学外者が容易にわかるようになっているか。
  5. 学部、学科、大学院の定員充足率の把握及び充足に向けた取り組みは行われているか。
  6. 大学は教育機関であるという意識を持って教職員は学生に接しているか。(学生中心の大学になっているか、教職員の意識改革は進んでいるか。)
  7. 学生支援策が「学生の視点」に立ったものになっているか。
  8. 学生のキャンパスライフを充実させるための取り組みは活発か。
  9. 社会人学生、留学生等多様な学生に対応した学習支援体制が構築されているか。
  10. 学生満足度を高めるために積極的に学生の声を聞く等の取り組みを行っているか、「学生の声」を大学運営に反映させる仕組みを講じているか。
  11. 学生の意見が集約できる学生組織はあるか。
  12. 課外活動活性化のための積極的な支援が行われているか。
  13. 学生の就職活動に対して積極的な支援を行っているか。
  14. キャリア教育への取り組み状況は適切か。
  15. 休学者・退学者等が増加してはいないか、また、それらを減らすための取り組みを行っているか。
  16. 医師国家試験合格率・教員就職率向上等に向けた取り組みが行われているか。
  17. 学生相談体制は整備されているか。
  18. 学生寮、自習室、課外活動施設等の整備に力を入れているか。

社会連携、産学連携、外部資金
  1. 地域社会や自治体との連携の取り組みは活発か。(公開講座など各種事業の実施状況)
  2. 共同研究、受託研究等が活発に行われているか。
  3. 研究費の確保のみならず大学財政運営の面からも外部資金獲得は欠かせないが、外部資金獲得に向けて大学全体が取り組む体制になっているか。
  4. 外部資金獲得のためにどのような取り組みを行っているか。(競争的資金の早い段階での情報入手、大学の研究シーズ・アイデアの提案等の取り組み)
  5. 応募率、採択率、獲得額の把握及びそれを向上させるための取り組みが行われているか。
  6. 外部資金執行に関するルールは整備されているか、それが周知徹底されているか。
  7. 科学研究費補助金などの執行が適正に行われているか。
  8. 知的財産の管理体制は整備されているか。□利益相反マネジメント体制が整備されているか。

国際交流
  1. 明確なビジョンを持って国際交流に取り組んでいるか。(交流締結大学等を増やすことが目的化していないか。)
  2. 留学生派遣について、障害となる語学力、単位取得、留学資金等への配慮が行われているか。
  3. 在籍する留学生についての支援が適切に行われているか。
  4. 海外に設けた大学の拠点が、法的位置づけや職員の勤務形態、勤務条件、公金の扱い等について問題のない形になっているか。

財務及び予算
  1. 予算が大学の目指す施策、方針、計画を反映したものになっているか(適正な予算編成方針が策定されているか。)
  2. 効率的な予算の執行及び経費節減に努めているか。
  3. 長期財政計画の策定を行うなど、将来を見据えた財政運営が行われているか。
  4. 安全で効率的な資金運用が行われているか。
  5. 物品購入の仕組み及び契約、価格等は適正なものになっているか。
  6. 発注等における業者選定は公平性、公正性、効率性を踏まえたものになっているか。
  7. 授業料・寄宿料・病院治療費等の未納対策は適正に行われているか。
  8. 法人が遊休の土地や建物を抱えてはいないか。
  9. 資産の取得、管理及び処分は適正に行われているか。

図書館、共同教育研究施設、附属学校
  1. 学生の要望等を反映した図書の購入や利便性を反映した開館時間になっているか。
  2. 図書、学術雑誌、視聴覚資料等が全学的・系統的に整備されているか。
  3. 図書館が地域に開放され、実態としても利用に供されているか。
  4. 共同教育研究施設が設置目的に合致するような業務運営を行っているか。
  5. 附属学校が設置目的に合致するよう、大学(学部)との密接な連携が図られているか。
  6. 附属学校との共同の取り組みが積極的に行われているか。

施 設
  1. 施設マネジメントの実施状況はどうか。
  2. 保守点検等で不備や改善点が指摘された場合、速やかな対応がとられているか。
  3. 施設・設備・共同利用施設の利用状況はどうか、利用状況が問題となる施設はないか。

附属病院
  1. 附属病院の基本理念が制定されているか、また、それをどのようにして病院内外に周知しているか。
  2. 基本理念を実現するための具体的な経営方針を策定しているか、また、教職員へは周知徹底されているか。
  3. 病院長と病院経営担当理事の役割分担(権限・責任)は明確になっているか、意思決定や指揮命令がその通りに行われているか。
  4. 病院長、病院経営担当理事、医学部長の緊密な連携が図られているか。
  5. 経営改善係数・診療報酬の切り下げ等厳しい経営環境の中にある付属病院の経営状況の分析並びに将来を見据えた経営計画の策定を行っているか。
  6. 診療科毎に数ヶ月単位の経営分析(1年単位では対応が手遅れになる恐れ有り)が行われているか。
  7. 収支改善のための取り組み(収入向上や経費縮減のための具体的な取り組み)状況はどうか。
  8. 病院は大学の他の部門と異なり、投資が収入に直接的に反映されやすい部門であるが、費用対効果を分析した上で投資が行われているか。
  9. 医療機器、診療材料等の購入は、公平・公正かつ経済性を考慮したものになっているか。(機器・材料選定、業者選定、契約方式、随意契約、納入検査他)
  10. 未収金(延滞金)についての回収体制はできているか。
  11. 患者の声を病院運営へ反映させることや職員に対する接遇教育など、患者サービス向上のための取り組みを積極的に行っているか。
  12. 薬品や診療材料などの在庫管理が適正かつ効率的に行われているか。
  13. 診療録、手術記録、看護記録等が適正に管理、保存されているか、病院治療に対する透明性が確保されているか。
  14. 患者の個人情報に対して十分な保護体制がとられているか。
  15. 安全教育の実施や医療過誤等の防止対策は徹底されているか。
  16. インシデント報告や医療事故等を参考にした医療事故防止マニュアル等が作成されているか。

安全衛生管理
  1. 有資格職員の配置、定期的確認体制等、労働安全衛生管理体制の整備状況は適正か。
  2. 各管理者等は職責を正しく理解し、職責を全うしているか。

リスクマネージメント
  1. セキュリティポリシーは確立されているか。
  2. 「事故は起こり得るもの」を前提にした危機管理体制が整備されているか。
  3. 危機対応マニュアルなどは策定されているか。
  4. 事故等が発生した場合、対応が速やかに行われているか。
  5. 事故等が発生した場合の情報公開は適正に行われているか、また、関係者の処分は適正か。(身内に甘いという批判を受けるようなことはないか。)
  6. 個人情報保護等情報管理体制が整備され、それが機能しているか。
  7. 論文盗用やソフトの盗用等の不当行為の防止策・対応策は講じられているか。
  8. 訴訟に対する対応は適切か。
  9. 事故等が発生した場合、監事への報告が速やかに行われているか。

内部統制
  1. 内部統制システムが構築され、それが有効に機能しているか。
  2. 内部統制の重要な構成要素である内部監査体制が整備されているか。
  3. 監事の職務遂行を補助する体制の整備や内部監査部門との連携等、監事の監査環境の整備が図られているか。
  4. 監査を忌避する風潮はないか。
  5. 監査指摘事項に対応する仕組みは出来ているか、また、迅速な対応がなされているか。
キャンパス・ハラスメントの防止
  1. キャンパス・ハラスメントのない大学等にするために積極的な取り組みが行われているか。
  2. 「ハラスメントの防止・対策に関する指針」や「相談員マニュアル」等が作られているか、また、ハラスメント相談窓口が設けられ、それが機能しているか。
  3. 管理職に対する研修の徹底や教員の研修義務化などの取り組みが行われているか。
  4. 学生に対する指導が十分に行われているか。
  5. ポスター、ホームページ等によるキャンペーンが恒常的に行われているか。
  6. ハラスメントが発生した場合、対応が速やかに行われているか。

その他
  1. 大学と同窓生(会)との結びつきを強化する取り組みは行われているか。


非常に膨大なチェック項目数になっていますが、大学で行われる多様な業務をよく理解した上で、押さえなければならない重要項目が明確にされていると思います。これらの項目を一つでも多く実現できれば、自ずと大学の評価も高まっていくことでしょうし、大学の果たすべき役割として極めて重要とされている「大学の社会的責任」(University Social Responsibility:USR)を果たすことができるのではないでしょうか。


社会は大学に、民間企業以上に高い倫理性・社会性を求め、経営責任も求めている。
しかし、不祥事の増加に見られるリスクマネジメント能力の欠如、不的確な情報開示等、社会的責任に対する認識不足が指摘をされており、これらに起因する不信感の払拭と不祥事等の未然の防止が、現在の大学マネジメントの共通課題である。

大学は、大学本来の役割である教育と研究を的確に行って、地域に根ざした社会貢献を果たせば、自ずからUSR が全うされ得る。
しかし、加えて、学生、教職員、企業はじめ多くのステークホルダーの要請を把握してそれに応えるとともに意識を共有することが、USR、GCRの確かな実践の前提となる。

的確な情報公開、それに対するステークホルダーの意向への対応、大学の運営、法令遵守、危機管理、環境保全等に関わるガバナンスのシステムの構築は、USR の推進にきわめて重要である。(国立大学法人等監事協議会業務監査タスクフォースチーム報告書)

2008年1月15日火曜日

大学経営改革の促進剤

地方再生の観点から、地方公共団体と国立大学の連携を促進するため、制度運用の弾力化が図られることになりました。

国立大への寄付規制が緩和、無償貸与可能に 喜ぶ自治体(2008年01月09日朝日新聞)


地方自治体が国立大を誘致する際の「壁」となっていた地方財政再建促進特別措置法(地財特法)*1の寄付規制が1月、大幅に緩和された。

総務省は現行制度の運用を弾力化することによって、自治体が国立大に寄付できる範囲を広げた。同省は、自治体が国立大に施設を無償貸与することなど、今回の緩和で可能になる寄付の例をすでに自治体に通知。さらに緩和の幅を広げる政令改正の検討も始めた。

地財特法は55年、国が整備すべき施設まで自治体が造って国に寄付をしたことによって、当時の自治体財政が悪化した反省から生まれた。04年に法人化した国立大への寄付も、国に準じて禁じられている。

制定から半世紀、自治体が支出を厳選するようになった現在、規制緩和を求める声は自治体側から高まっている。02年には施行令を改正して国立大の研究開発などに限って寄付を認めた。しかし、学生の教育に使う施設については「整備するのは国立大の本来業務だ」として、無償で貸したり譲渡したりすることは禁じたままだった

だが、07年11月、政府の地域活性化統合本部が規制緩和の必要性を提言。総務省は制度の運用による緩和に踏み切った。施設の無償貸与のほか、国立大が行う公開講座などの事業の経費負担や、ベンチャー企業などを育成する施設への国立大の入居などが可能になる

今回の緩和を喜ぶ自治体の一つが、愛媛県南部の愛南町。04年の5町村による合併で使われなくなった旧西海町役場の元議場や車庫などを、愛媛大に無料で貸して水産研究センターを誘致しようとして、総務省に「待った」をかけられていた。

今回の緩和で無償貸与が実現する見込みだ。同町企画財政課の長田岩喜課長補佐は「学生たちが来てくれれば、過疎高齢化が進んだ町が活性化する。施設料を取ると大学が長く使ってくれるか心配だったので、緩和は大歓迎だ」と話す。

東京芸術大から2施設の使用料として年1400万円を受け取っている横浜市の担当者も「もともと無償で貸すつもりだったので、実現できるか検討を始めた」と話す。

さらに総務省は政令改正を行う検討も始めた。実現すれば、自治体から国立大への土地や建物の無償譲渡や、国立大付属病院の運営費に対する補助金支出などが可能になる。規制緩和の幅が広がることで、地域活性化の手段として国立大を誘致する動きが活発化しそうだ。


地財特法施行令改正と運用の弾力化


上記記事にもありましたが、地財特法第24条では、地方公共団体は、原則として国立大学法人に対して「寄付金等」を支出してはならないこととされています。しかしながら、以下のような事情を背景として、平成14年11月1日付けで地財特法施行令の一部が改正されました。

  • 総合科学技術会議をはじめ、経済財政諮問会議や地方分権改革推進会議など様々な場において、科学技術の振興、地域経済の活性化や地方自治体と国立大学等との連携強化の必要性が相次いで指摘されたこと。

  • 構造改革特区構想においで地方公共団体の要望が多数寄せられたこと。

  • 「国立大学の法人化に関する調査検討会議の最終報告」において「国立大学への地方公共団体からの寄付金等については、一定の要件のもとに可能とすべき」との提言があったこと。

平成14年の改正は、地財特法施行令第12条の3に第7号として、次のような「寄付金等の支出の制限の特例」を追加する形で行われました。

第12条の3 法第24条ただし書に規定する政令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
7 国立大学法人が、地方公共団体の要請に基づき、科学技術に関する研究若しくは開発又はその成果の普及(以下この号において「研究開発等」という。)で、地域における産業の振興その他住民の福祉の増進に寄与し、かつ、当該地方公共団体の重要な施策を推進するために必要であるものを行う場合に、当該研究開発等(当該特定法人において通常行われる研究開発等と認められる部分を除く。)の実施に要する経費を当該地方公共団体が負担しようとするとき。


これにより、次の要件を満たす場合については、地方公共団体から国立大学法人への支出が可能となったのです。
1 対象事業
 科学技術に関する研究若しくは開発又はその成果の普及

2 条件等
 1)地方公共団体の要請に基づくこと。
 2)地域における産業の振興その他住民の福祉の増進に寄与するものであること。
 3)地方公共団体の重要な施策を推進するために必要であるもの。

3 負担範囲
 1)研究開発等の実施に要する経費
 2)通常行われる研究開発等と認められる部分を除く


このうち、上記第12条の3第7号に示された対象事業については、これまで、地域における産業振興等との関係が不明確なことや、一般に学生への教育は国立大学の本来業務である可能性が高いことから厳しく運用されてきましたが、このたびの弾力化により、「地域における産業の振興や住民福祉の増進に寄与する特定の人材育成のために、新たに行われる部分や拡充される部分については原則対象」とされました。

具体的には、次のような事例が対象になりました。
  • 地域のものづくり振興の観点から、そのために必要な人材を育成するための講座や課程に必要な施設の無償貸与(通常より廉価での貸与を含む。以下同じ)

  • 地域の農林水産業振興の観点から、そのために必要な人材を育成するための遊休施設の無償貸与

  • 地域の食品産業の振興の観点から、地方公共団体が要請した研究開発等とともにその成果を学生に教育する経費を含む寄付講座への支出

また、次の事例についても原則として寄付金等の支出が可能となりました。
  • 国立大学法人が行う地域の活性化につながる研究開発等の経費負担や当該研究開発等の用に供される研究施設に対する土地、建物等の無償貸与(「経費負担」の場合も想定される。)

  • 国立大学法人と公立大学が連携して実施される研究開発等に対する経費負担や土地・建物等の無償貸与

  • 地域における産学官連携の推進や住民の福祉の向上を図るため設置される国立大学法人へのサテライトオフィス、社会人等を対象とするサテライト教室等に係る経費負担や土地、建物等の無償貸与

  • 地方公共団体の施設を活用した産学連携型のインキュベーション施設への国立大学法人の入居への無償貸与

  • 地域における産学官連携の推進や住民の福祉の向上を図るため実施される公開講座等各種事業に係る経費負担や建物等の無償貸与

  • 科学技術の理解増進を図るための各種イベントの開催、展示施設整備等のための経費負担や土地、建物等の無償貸与


これまで認められた(総務大臣の同意がなされた)事例は、50件に上っており、寄付内容、金額は、総務省のホームページで紹介されています。
http://www.soumu.go.jp/iken/zaisei/pdf/nuc_kifu.pdf

総務省では、今後、1)土地・建物の無償譲渡や、2)大学附属病院への施設整備・運営費補助等についても、地方団体関係者等の意見を伺いつつ必要な政令改正等を検討することとしているようです。


地方自治体の財政状況の悪化も懸念される今日ですが、国立大学法人についても、運営費交付金の効率化減や総人件費改革による減など骨太方針によりさらなる運営費の減が政府として決定されており、今後、特に地方に位置する大学は、民間企業との連携のみならず、地域に根ざす地域の知の拠点として、自治体との強力な連携関係の下に教育研究、そして社会貢献活動を維持・発展していかなければならない状況に置かれています。

国立大学の法人化そのものが、ある意味では規制緩和の側面を持つわけですが、国立大学に関わる様々な規制緩和や制度運用の弾力化の推進が、今後、国立大学における財政基盤の強化を図ると同時に、名実共に自主的・自律的な経営改革を進めていく一つの促進剤として重要な意味を持つことになるのかもしれません。



*1:地方公共団体の財政再建の促進、財政の健全性確保のための特別措置を規定する日本の法律。赤字の地方公共団体が、財政再建計画の承認を受けることで財政再建団体として財政の再建を目指す場合に用いられる。地方公共団体の倒産法ともいえる。特別措置法であり、昭和29年ないしは昭和30年における地方自治体の財政の再建のために制定された法律であるが、昭和30年以降も同様の旨を準用し適用することが可能とされているために平成に入ってからも適用を受ける団体が存在する。(出典:ウィキペディア)

2008年1月11日金曜日

山形大学の取り組み(2)

就任時には、「天下り学長」として揶揄された結城氏でしたが、わずか4か月で見事なリーダーシップを発揮され、学内の混乱を収め、改革に邁進しておられるようです。
就任時にこぞって批判の的とした報道は、少し反省しなければなりませんね。
最近報じられた結城氏へのインタビュー記事をご紹介します。

「学生中心主義」目指す 「天下り」批判から4カ月、結城・山形大学長に聞く


文部科学次官だった結城章夫氏(59)が9月に山形大の学長に就任して、4カ月近くがたった。
学内外から「天下り」と批判され、投票で対立候補に敗れながらも「逆転勝ち」した学長選。しこりは残っていないか。大学は何かが変わったのか。山形大で結城学長に聞いた。

《交付金減、厳しい現場実感》

▼学長就任から3カ月がたちました

運営費交付金が減り、さらに(独立行政法人と同様に)5年で5%の人件費カットもあり、大学への締め付けが現場に効いているな、と実感しています。思い切った選択と集中をしないと、大きな効率化はできない。やりたくはないですが、このままでは、いずれ学科やコースの一つをあきらめざるを得ません。

▼学長として取り組んでいることは

教育、研究、社会貢献どれも大事ですが、山形大は教養教育で勝負しようと思っています。教養教育の充実には、カリキュラムを変え、先生の考え方を「学生中心」に変えないといけない。2年くらいかかる仕事かなと思います。どこをどう変えればいいかをじっくり考えています。学生と直接話をしたり、米沢市(工学部)や鶴岡市(農学部)のキャンパスに出向いたりすることにも力を入れています。

▼公約に掲げた事務の効率化は進んでいますか

事務の効率化や意思決定の迅速化の経験は、私は大学の先生よりも長(た)けていると思います。現在、事務手続きを大幅に見直す案を考えており、08年度はすっきりした簡素な体制で始めたいと考えています。
月~木曜の朝10時から、私と5人の副学長で「コーヒータイム」という時間を作りました。ごく簡単に30分ほど議論することで情報や問題意識を共有でき、すばやい意思決定ができるようになりました。

▼学長選の対立候補2人を副学長にしました

小山清人さん(前工学部長)は学内意向投票であれだけの票が入る人望、能力がある人。「使わない手はない」と思っていました。ああいう(意向投票で敗れたが学長選考会議で逆転で当選した)経緯があったので「工学部から1人副学長を出してほしい」と相談しました。結局、本人が入ってくれたので、「我が意を得たり」です。
中島勇喜さん(前農学部長)は学長選の公開討論会で人柄がよくわかった。農学部から副学長が欲しかったので、直談判してお迎えしました。

▼学長選のしこりは

少なくとも私はほとんど感じていません。小山さん、中島さんも私の執行部で活躍してもらっていますし。
学長選のあり方は、学長選考会議が全責任を持って決めるのが大原則です。学内意向投票をやるのか、その結果に縛られるのか参考にするだけなのか、この点も選考会議が決めることです。

▼文科省出身者が国立大学長に就くケースは続くと思いますか

それは各大学の判断ですね。経済界や別の省庁の役人がやったっていい。だんだんそうなっていくのではないでしょうか。それでも文科省出身者ばかりになるのはまずい。また、そんなことにはならないですよ。

▼「天下り」批判をどう思いますか

私は、文科省にコネを使うつもりはまったくありません。研究費は研究者の実力で取ってくるべきだし、私がいるから運営費交付金が増えるとは思いません。交付金は、その大学の努力と成果に応じて配分されるべきです。ただ、相談があれば、「こうしたら補助金を取りやすいですよ」というアドバイスはしていきたいと思います。

《混乱収め、学内好意的に》

結城学長に対する教職員の評価は4カ月の間に急上昇した。ある副学長は「腰が軽くごり押しもしない。それでも意思決定はしっかりやる。学長選考会議は見る目があった」と絶賛する。学長選で結城氏を「天下り」と批判し対立候補を支援した教授も、新学長の言動に好意的だ。ただ、「大学の常識」を知らないと実感したこともあった。

山形大では、警察官が学内に入ると、いつどこで何をしたのかといった情報を、学長や学部長らの会議に報告する。結城学長は9月の会議で中止を求めた。しかし、「大学の自治の歴史を見れば、警察と緊張関係になることもある。報告するのが筋だ」と教員に説得されると、あっさり報告の継続に応じたという。

教職員らの意向投票で敗れた結城氏が最終的に学長に選ばれた直後、対立候補だった小山前工学部長は法的措置も辞さない構えを見せた。しかし、1カ月後、小山氏は結城学長の要請に応えて副学長に就任した。「混乱の長期化は学生に悪影響を及ぼす。周囲にも『執行部に入って学内の意見を大学経営に反映すべきだ』という意見が多かった」と説明する。

結城氏の学長就任について、他の国立大の学長はどう考えているのか。ある学長は「保身のためなら許されないが、不退転の意志を持ってやるなら問題ない」などと賛成する。しかし、別の学長は「補助金を多く欲しい、という狙いが露骨すぎる。国立大にとって自殺行為だ」と問題視するなど、賛否は分かれる。

ただ、国立大の学長が文科省出身者ばかりになることには反対の意見が強い。ある学長は「3分の1を超えたら、時には国と一線を画す国大協の姿勢も変わってしまう」と心配する。 (2007年12月25日)



就任時には、元事務次官が国立大学の学長になることの是非について、多くのマスコミが批判的に報じていましたが、結局は一過性のものとなりました。

当時は、以下のようなあまりにも厳しすぎる論調の報道もありました。
個人的には、言論の自由は認めながらも、偏った方向に世論を誘導する危険性をはらんでいるなあと感じていましたし、そもそも山形大学自身の判断として、学外者の入った透明性の高い学長選考会議で決定され、手続き等においても法的に何ら問題がないとされているのに、なぜ、そこまで批判の的とするのだろうととても不思議でした。

天下り学長が示す危機 公共事業化する研究開発


官僚の天下りに、政治家の口利き、そして各種の談合。このトライアングルが税金を浪費する公共事業の基本骨格だが、国の科学技術予算にも、同じ負の構造が浮かんできた。研究教育事業の発注官庁である文部科学省の前事務次官が、受注業者である国立大学法人山形大学長に就任した。究極の天下り。政府の研究開発政策が公共事業化している実態を、これほど明白に示すものはない。

投票結果はライバルに完敗なのに、強引にトップの座についても居心地は良くないに違いない。参院選の大敗後も続投を決めた安倍晋三首相の場合は突然、職責を放り出してしまった。

安倍続投の根拠として、盛んに「参院選は政権選択の選挙ではない」といわれた。法制度上は負けても辞めなくていいという程度の話なのに、自民を大敗に追いやった民意を軽んじてもいいと勘違いしたのが、破綻の始まりではないだろうか。

山形大学の場合は、教職員の投票では、次点だった候補者、一月前まで文部科学事務次官だった結城章夫氏が、外部有識者と学部長らで構成する学長選考会議で逆転選出された。

山形大に限らず、法人化された国立大の場合は、教職員の投票はあくまで参考で、学長選考会議が最終的に決める。この制度は国立大学の法人化に際して、従来の「教職員自治」の継続を嫌った文科省が強く推し進めて導入したもの。実際に、教職員の投票結果とは違う結論が出るケースがいくつも出てきて、滋賀医大、新潟大などでは訴訟になっている。

文科省が力を入れて導入した学長選考法によって、文科省の高級官僚の学長への天下りが可能になったというのでは、語るに落ちたといわれてもしかたない。閉鎖的な教職員の自治を脱して、外部の知恵や感覚を大学経営に反映させたいというのなら、選考会議は公平で透明でなければならない。

山形大の選考会議の外部委員は、結城前次官をスカウトした前学長が指名したのだという。まるで前任者が後継者を決めて、それを会議が承認するかのような不透明さが、お手盛りという批判を浴びている。

結城氏自身も、伊吹文明文科相も、文科省やその職員が学長就任を働きかけたのなら別だが、個人が応募して正統な手続きで選ばれた以上問題ない、と天下りを否定している。

だが、これは国土交通省の事務次官がゼネコンの社長に就任するのよりもっと直接的な天下りといっていい。国家公務員法で、直接的に利害関係のある企業等への再就職は退職後2年間は制限されている。文科省はいまや地方国立大学の生殺与奪の権限を手にする官庁である。

プライドの高い大学人は、学問的な業績のない行政官が、大学の学長や理事になるのは「天上がり」だというかもしれないが、そういうプライドなら早く捨てた方がいい。国立大学が法人化されて、文部科学省は運営費交付金のさじ加減から、大学評価、競争的資金の配分、そして人事まで、大学への支配力を飛躍的に高めている。

87の国立大学法人のうち、50を超す大学が事務局長を役員の理事とし、文科省から受け入れている。3年前の法人化で、経営に余裕のない地方国立大学が、こぞって文科官僚を理事として迎えることは予測されたが、旧帝大などの有力大学も戦略的に、文科省との関係を強めている図が見てとれる。

まさに国立大学から文科省立大へのまっしぐらの中で、天下り学長騒動は起きた。今回は医学部が一丸となって結城前次官の学長就任に動いたことから、重粒子線治療装置など大型医療施設の山形大への誘致計画が背後にあるのではないか、という指摘もされている。

重粒子線治療装置については、他の国立大学に導入された際にも、学術振興より地域振興などへの政治的配慮が大きく働いたのではないか、ともいわれた。この分野は肝心の医学的な研究や検証よりも、公共事業として議論されることが多いのが気になるところだ。

閉鎖的な独善を排し、自立的で開かれた大学をどうつくるのか。「研究バブル」の潤沢な予算、目前で揺れるニンジンに飛びつくと、大学人の自由からの逃走という図が見えてくる。(2007年9月23日 日本経済新聞)



おそらく元事務次官が国立大学の学長になったのは歴史的に見て初めてのケースであり、文部科学省と国立大学の利害関係に着目しての非難だったのでしょうが、今や国立大学に対する国の財政支援は、機関補助から個人補助へ、あるいは国公私立大学間の競争的環境の中での資源配分へのシフトが加速しており、昔のように役所の担当者が、配分先の文部科学省OBの顔を思い浮かべながら鉛筆をなめていた時代と違って、第三者機関によるレビューや審査を通じた透明性の高い配分方式が採用されています。

したがって、中央の役所から予算を獲る学長、そのためには中央に顔が利く学長が有利という発想はもはや通用しなくなってきているのではないかと思うのですが。

繰り返しになりますが、山形大学における学長選考は適正な手続きにより行われ、最終的には学外者が半数を占める学長選考会議で決定されました。例え、国の時代から続けてきた人気投票(現在では意向調査という言葉が多く使われているようですが)で、次点だったとしても、学長選考会議において、山形大学の学長としてその手腕を見込まれたのは結城氏であったわけですから、このことを十分尊重することが大事なのではないだろうかと思います。

余談になりますが、仮に、結城氏の心の中に従来の天下りに乗りたいとの気持ちがあったとしたら、おそらく山形大学の学長選には出馬しなかったのではないかと個人的には思います。自分の故郷のためにできることは何か、純粋に考えられたのではないだろうかと思います。

なぜならば、法人化後の国立大学の学長は極めて激務ですし、私立大学のように法人経営の責任者である理事長と教学組織の責任者である学長がいる組織と違い、1人で全ての責任を負わなければならない立場に置かれているからです。

いわゆる「天下り」とは、そんな国立大学の学長になることではなく、従来からの悪しき慣例、つまりは、中央のお役所が所管している旧特殊法人や関連民間法人等に再就職し、仕事の割にはお高い報酬をいただくことをいうのではないでしょうか。

2008年1月10日木曜日

山形大学の取り組み(1)

地方に位置するハンデにも負けないでがんばっている国立大学のひとつだと個人的には評価している山形大学。
このブログでも特色ある取組みについて何度か取り上げました。最近の状況をご紹介したいと思います。

山形大が「結城プラン」発表 課題と目標、初の年間計画


山形大は8日、2008年の取り組むべき課題と目標をまとめた行動計画「結城プラン」を発表した。

山形市の小白川キャンパスにある3学部が連携する大学院創設への検討や、海外サテライトの設置などを盛り込んでいる。同大が年間計画を策定するのは、初めての試み。

同プランは、結城章夫学長が就任時に大学運営方針として掲げた▽学生が主役となる大学創(づく)り▽教養教育の充実-の2点を基本方針にした。
その上で重点事項として、教育や学生支援、研究、キャンパス環境、社会連携など10項目を挙げ、それぞれ具体的な施策を打ち出している。

このうち、教育では、教養教育を学士課程教育の核に据え、高年次教養教育の展開などを含むカリキュラムの再構築を進めるため、学長をトップにした検討組織を設置する方針を表明。

また、組織運営・人事面では、既に設置が既定路線となっている教職大学院とは別に、人文、地域教育文化、理の3学部の連携による大学院新設の検討をスタートする。検討組織を設け、今年9月に第1次の結論を出す方針だ。

学生支援では学生のコミュニケーション能力の育成に向け、09年度までに4つのキャンパスにサークル棟を新設。学長裁量経費を用いて、全体で100の部室を整備する。

研究分野は、科学研究費補助金の09年度申請件数を1000件以上(08年度約730件)にする目標を設定。

さらに、学生交流などの拠点として、海外サテライトの複数設置を盛り込んだ。アジアに1カ所、ヨーロッパに1カ所の設置を考えているという。

このプランは、08年末に達成状況を検証することにしている。
結城学長は記者会見で「1年間の行動計画だが、すべてが今年中にできるとは考えていない。7、8割の達成を目標にしていく」と語った。(2008年1月8日山形新聞)



この「結城プラン2008-学生が主役の大学創り-」は、山形大学のホームページにて公表されています。
http://www.yamagata-u.ac.jp/jpn/yu/modules/university1/index.php?id=77&yu_m=1_4

お読みいただくとおわかりになりますが、単なるアクションプランやPRペーパーではなく、ある種の「マニュフェスト」として受け止めることもできます。結城学長の年頭に当たっての熱い決意と改革意欲が伝わってくるようです。

また、最近では、上記プランでも触れられていましたが、大学教育の質の確保を図る上で極めて重要であり、昨年夏に公布され本年4月から施行される大学設置基準の改正において、努力義務から義務化された、いわゆるFD(ファカルティ・ディベロップメント)の専門家を養成するための全国初の専門職大学院の設置を決めた記事が報じられました。

「大学教師力」磨く大学院…山形大が設置方針


全入時代を迎えた大学の教師力向上に向けた取り組み(FD)*1が大学設置基準で今春義務化されるのを受け、山形大学(山形市)は、FDの専門家を養成する全国初の専門職大学院を設ける方針を決めた。

大学の教職員らを対象に、板書の仕方や学生とのコミュニケーションの取り方など、授業改善の手法を基本から教える。2010年春の設立を目指す。

同大では、7年前から取り組んできたFDの実績をもとに04年、山形県内の公立大や私立大、短大計6校で「FDネットワーク樹氷」を結成し、共同して国内外の先進大学の視察や研究会を重ねてきた。
昨年4月からは、授業の問題点を洗い出し、“処方せん”を出す「授業改善クリニック」を学内外向けに始め、全国的な関心を集めている。

取り組みを通して、FDを組織的に進めるには経済的、人的な手当てが不可欠で、時には大学の理念や経営方針の見直しも必要になるといった認識が大学の経営者に不足しており、具体的な授業改善法がわからない教員が多いこともわかってきた。FD専門の教員増を図ることも難しいため、授業改善のノウハウ共有を進める専門職大学院の設立構想を抱くようになった。

山形大でFDを担当する小田隆治学長特別補佐のほか、同大の高等教育研究企画センターの教員が中心となり、学外の専門家と連携し、カリキュラム開発や人材の養成に取り組む。

会話能力や板書、教材教具の開発、授業評価アンケートの作り方など授業技術を磨く一方、科目内容の整備やFD研修を徹底させるための経営術も学ぶ。このため対象を事務職員にも広げる。

同大の結城章夫学長は「国内の大学が競争ばかりしていては共倒れになる。大学は学生のためにあるという共通認識のもと、連携して教育力を向上させたい」と話している。 (2008年1月9日 読売新聞)


*1:FD(Faculty Development):多様な学生に対応するため、授業の内容や方法の改善を図る組織的な研修や研究を指す。文部科学省の2005年度調査では、全国713大学の8割が実施しているが、大半が講演会の開催程度。どうやって実効性を上げる内容にするかが課題になっている。

2008年1月9日水曜日

いわゆる、ディグリー・ミル

ちょうど2週間ほど前になりますが、12月27日、文部科学省は、7月から9月にかけ、短期大学を含む全国の国公私立大学約1千校強を対象に実施した「真正な学位と紛らわしい呼称等についての大学における状況に係る実態調査」の集計結果を発表しました。

調査結果はようやく1月9日に文部科学省のホームページで公表されました。
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/19/12/08010803.htm

事が事だけに、夏に行われた調査の結果公表がこの時期になったのはそれなりの理由があったのかもしれませんが、お正月休みに入る直前のプレスリリースは、反響の大きさを想定したお役所特有の戦略だったのかもしれません。

ニセ学位で採用・昇進 全国4大学で4教員 文科省調べ


出所が疑わしい「ニセ学位」をもとに04~06年度に採用されたり昇進したりしていた教員が、全国の4大学に4人いたことが27日、文部科学省の初めての調査でわかった。同省は全大学・短大に厳正な対応を求める通知を送ったが、関係者は「判明したのは氷山の一角」として、追加調査の必要性を指摘している。

欧米や中国などには、ニセ学位を発行する「ディグリー・ミル」(学位工場)と呼ばれる組織がある。国内でも、インターネットなどで入手したニセ学位を示して大学の教員に採用されたり、教員採用後に経歴の箔(はく)付けで入手したりするケースも出ている。

このため文科省は7月、すべての大学・短大1195校を対象に初の調査を開始。その結果、04~06年度にニセ学位を重要な判断要素として採用または昇進させたケースが、国立の大分大と私大3校で見つかった。大分大は工学部の准教授の採用を取り消した。

また、大学案内などの教員紹介欄にニセ学位を表示していたケースも、熊本大など国立大10校、公立大4校、私立大28校、私立短大4校の計46校(計48人分)あった。文科省は「非公表の前提で調べた」として、大学名や、学長や教授などの職名を公表していないが、大分、熊本両大は自主的に公表した。

教員らが「本物」と信じているケースもあり、「偽物」と承知したうえで記入した者は特定できないとしている。

ニセ学位に詳しい静岡県立大の小島茂教授(国際社会論)の話 
文科省が調査したこと自体が、大学に緊張感を持たせたので貴重な第一歩だ。しかし、関係者の間ではニセ学位で採用された教員は数十人はいるとされており、今回の判明分は氷山の一角。文科省は今後、米韓のように大学や教員の名前を公表し、社会的制裁を加えることを検討すべきだ。(2007年12月28日 朝日新聞)


今回の調査では、「認定リストに掲載のない機関が供与した呼称」を有していることが、採用・昇進にあたって、重要な判断要素となった事例は、国立大学1校、私立大学3校の計4校(4名)という結果でした。このうち、国立大学の1校については、昨年10月に事態が発覚し、報道でも大きく取り上げられました。

大分大 准教授との契約解消 非公認大学から「修士号」


大分大学は18日、工学部福祉環境工学科に所属する50代の外国人男性准教授が、採用条件の修士号を取得していなかったとして、雇用契約を取り消すと発表した。准教授は米国の公的認定機関が正規の大学と認めていない教育機関から「修士号」を得ていた。

同大は、懲戒処分にしない理由について「学歴詐称の積極的な意図が認められない」と説明。本人も「正規の学位ではないという認識はなかった」と話しているという。准教授は2000年に米国の教育機関から修士号を取得したとされるが、在籍はわずか3カ月。

05年の採用時に選考委員を務めた江崎忠男工学部長は、資格審査の調査を怠ったことを認めた上で「当時は非公認大学があるという認識はなく、チェックできなかった」と釈明した。

准教授は問題が学内で発覚した後の今月16日、退職願を提出した。西日本新聞の取材に対し、准教授は「何も分からない」と話した。

文部科学省は非公認大学の学位をめぐる問題が表面化したため、今年7月、実態調査を指示。同大は米国領事館などを通じて公的認定機関によるリストなどを調べたところ、准教授に学位を授与した機関は非公認だったことが判明した。

同省高等教育企画課は「採用時に見逃したとすれば(確認作業の)慎重さを欠いていた」と話している。(2007年10月19日 西日本新聞)


我が国でもここ数年問題視されてきたいわゆる「にせ学位」問題ですが、国立大学の教員採用時の重要な判断材料として使われたということで事が深刻化し報道も大きく取り上げることになったようです。

調べてみるとこの問題、実は政府レベルではその対応策について随分前から検討されていたようです。文部科学省のホームページによれば、平成15年11月に「国際的な大学の質保証に関する調査研究協力者会議(第3回)」という会合が持たれ、議題の一つに「ディプロマ(ディグリー)・ミル」が取り上げられています。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/024/siryou/04010803/006.htm
具体的な論点は次のとおりです。
  • ディプロマ・ミル等問題をどのような観点から対処する必要があるか。
  • ディプロマ・ミル等問題に対し、どのような対処が必要か。
  • 高等教育の品質維持及び消費者保護の観点から、具体的にどのような情報項目の整備が必要か。

さらに、今年2月には、国会(衆議院予算委員会第四分科会)においても議論され、民主党からの質問に当時の伊吹文部科学大臣や担当局長が答弁しています。

こういった状況を背景として、文部科学省も重い腰を上げざるを得なくなり、昨年7月の調査の実施に乗り出したのでしょうが、上記国立大学の「にせ学位」保有の事実は、この文部科学省から指示された調査の過程で大学自身が確認したもののようですし、調査の結果、多くの大学がこの問題に関与していた事実が国民の前に明らかになったことは、「高等教育の質の保証」という大きな使命を担う大学にかなりの緊張感を与えたという意味ではある程度の効果があったのではないかと思います。

しかしながら、大なり小なりこの問題に関与した大学、あるいは「氷山の一角」という報道の言葉を信じるならば、全ての高等教育機関は、今回の文部科学省による調査結果の公表をもってこの問題を忘れ去るのではなく、この問題が与える社会的影響、つまり、にせ学位を有している無資格者を大学の教育者として採用し、多くの学生に教育を行う行為が、いかに我が国の高等教育に対する著しい信頼低下をもたらすことになるのかについて真摯に考えてみる必要があるのではないかと思います。

そして、仮に過ちを犯していることが事実となった場合には、責任の所在を社会が納得のいく形で明らかにし関係者の厳正な処分を行うとともに、深い反省に基づいた具体的かつ実効性のある再発防止策を社会に対し明確に説明すべきだと思います。特に、国民の税金によって生かされている国立大学は当然の責務だと認識すべきではないでしょうか。

2008年1月8日火曜日

国立大学の超過定員抑制策

昨年、暮れも押し迫った12月26日、文部科学省は、国立大学協会主催の国立大学長会議で、学部定員の超過を抑制する方策を正式に発表しました。
これは1年ほど前から検討されていたもので、報道は以下のように、概ね国立大学の財政問題として取り扱っているようですが、一方で「大学教育の質の保証」という教育課題を解決する一つの方策として位置づけられるものではないかと思います。


国立大の定員超過分、授業料没収 文科省、合格数抑制へ

文部科学省は、在学生が定員を大幅に上回った国立大について、学部ごとに基準を超えた分の学生の授業料を国が実質的に没収することを決めた。
08年度から段階的に実施する。私大では以前、大幅な定員超過が問題化して補助金をカットする仕組みができたが、国立大にも抑制策を導入する。
法人化以降、独自収入のアップを目指して合格者を増やしている国立大に警鐘を鳴らす対策だ。
多くの国立大が08年度以降、入学者数を抑えるとみられる。

文科省は26日午後、都内で開かれた国立大学協会(会長=小宮山宏東京大総長)の集会で「没収」の具体策を初めて説明した。07年度に定員の110%を超えて学生がいる学部は、約350のうち数十あるとみられる。

抑制策のポイントとなるのは、基準を超えて入学させた学生の人数だ。
国立大に渡した運営費交付金(人件費などに使われる補助金)のうち、その人数分の授業料と同額を使えないように凍結し、後に国庫に返還させる。実質的に、基準を超えた人数分の授業料を国が召し上げることになる。

基準は3年かけて段階的に厳しくしていく。
08年度は定員の130%を超えた1年生の分、09年度は1、2年生の合計で120%を超えた分、10年度以降は1~3年生の合計で110%を超えた分の授業料収入を召し上げる。1年生だけが基準を上回った場合も、超過分を納めさせる。
国費留学生や休学者などは学生数から除くほか、定員が100人以下の小規模学部は、実際の入学者数を読み誤りやすく基準超過が起きやすいとして例外規定を設ける。

全国立大の授業料は08年度入学生から53万5800円。
たとえば1~3年生の定員の合計が1000人の学部で、10年度に1~3年生の学生数が1200人いるとすれば、基準となる110%(1100人)を上回る100人分の授業料、計5358万円が取りあげられる。

大学は入学する学生を増やせばその分、入学金や授業料などの収入が増える。だが、定員を大幅に上回る学生を入学させれば、大勢が教室に詰め込まれて授業を受けるなどの不利益を被る恐れがある。

私大の抑制策は現在、医歯学部は定員の104%、理工系学部などは107%、それ以外の学部は109%を超えると、学生数などに従って国から支払われる「一般補助」がカットされる。

一方、国立大は04年の法人化で入学金や授業料が各校の収入になったため、収入増加を図って合格者を増やすケースが相次いでいる。
06年には国立大全体の入学定員の充足率は108%に達し、地方などで定員割れが相次ぎ107%だった私大を初めて逆転。このため私大側から、国立大にも定員超過を抑制する仕組みを求める声が上がっていた。(2007年12月27日 朝日新聞)


参考までに、文部科学省が全国の国立大学長に示した「国立大学の学部の定員超過を抑制する仕組み」と題する資料は次のような内容になっています。

1 実施時期と適用年度

平成20年度から実施する。
適用は、平成20年度入学者からとし、平成19年度以前の入学者は適用外とする。

2 適用の区分等

学部ごとに、入学定員(1年次)に対する入学者数及び収容定員(2年次以降)に対する在学者数の定員超過率を算定する。

3 抑制措置の方法

一定の定員超過率を超えた学生数分の授業料収入相当額(超過授業料収入相当額)の100%を、運営費交付金債務のまま翌事業年度に繰り越し、中期目標期間終了時に国庫納付させる。

         定員超過率
平成20年度 130%以上
平成21年度 120%以上
平成22年度 110%以上(小規模学部は120%以上)

※小規模学部:入学定員100人以下の学部
※2年次編入学者は平成21年度から、3年次編入学者は平成22年度から適用

4 定員超過率算定の留意点

(1)調査日

毎年度11月1日現在の定員超過率を算定する。

(2)算定時に留意する事項

○外国人留学生のうち、国費留学生、外国政府派遣留学生、大学間交流協定等に基づく私費外国人留学生及び留学生のための特別コースに在籍する私費外国人留学生については、入学者数及び在学者数から控除する。

○休学者については、在学者数から控除する。

○留年者については、修業年限を超える在籍期間が2年以内の者は控除する。ただし、当該学部のシラバス等に全ての講義等ごとに学習目標や授業方法及び授業計画、並びに成績評価基準が明示されていることを条件とする。

○その他
 ・入学者選抜において、類別など募集単位を大くくりしている(学部別に分類できない)大学については、募集単位ごとの募集人員に対する入学者数で算定する。
 ・3年次以降に所属する学部が決定する大学の、各学部ごとの2年次在学者数の算定については、2年次全体の在学者数を各学部の入学定員で按分する。
 ・長期履修学生数については、修業年限を当該学生が履修する年限で除して得た数を乗じて在学者数に算入する。


国立大学の法人化後の文部科学省の動きを見ていると、国立大学と私立大学のイコールフッティングの波が次第に強くなってきているような気がします。
いずれにしても、国立大学は、今後、しっかりとした学生の定員管理を行いつつ、責任ある教育、教育の質の確保を図っていかなければなりませんね。

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