2008年1月10日木曜日

山形大学の取り組み(1)

地方に位置するハンデにも負けないでがんばっている国立大学のひとつだと個人的には評価している山形大学。
このブログでも特色ある取組みについて何度か取り上げました。最近の状況をご紹介したいと思います。

山形大が「結城プラン」発表 課題と目標、初の年間計画


山形大は8日、2008年の取り組むべき課題と目標をまとめた行動計画「結城プラン」を発表した。

山形市の小白川キャンパスにある3学部が連携する大学院創設への検討や、海外サテライトの設置などを盛り込んでいる。同大が年間計画を策定するのは、初めての試み。

同プランは、結城章夫学長が就任時に大学運営方針として掲げた▽学生が主役となる大学創(づく)り▽教養教育の充実-の2点を基本方針にした。
その上で重点事項として、教育や学生支援、研究、キャンパス環境、社会連携など10項目を挙げ、それぞれ具体的な施策を打ち出している。

このうち、教育では、教養教育を学士課程教育の核に据え、高年次教養教育の展開などを含むカリキュラムの再構築を進めるため、学長をトップにした検討組織を設置する方針を表明。

また、組織運営・人事面では、既に設置が既定路線となっている教職大学院とは別に、人文、地域教育文化、理の3学部の連携による大学院新設の検討をスタートする。検討組織を設け、今年9月に第1次の結論を出す方針だ。

学生支援では学生のコミュニケーション能力の育成に向け、09年度までに4つのキャンパスにサークル棟を新設。学長裁量経費を用いて、全体で100の部室を整備する。

研究分野は、科学研究費補助金の09年度申請件数を1000件以上(08年度約730件)にする目標を設定。

さらに、学生交流などの拠点として、海外サテライトの複数設置を盛り込んだ。アジアに1カ所、ヨーロッパに1カ所の設置を考えているという。

このプランは、08年末に達成状況を検証することにしている。
結城学長は記者会見で「1年間の行動計画だが、すべてが今年中にできるとは考えていない。7、8割の達成を目標にしていく」と語った。(2008年1月8日山形新聞)



この「結城プラン2008-学生が主役の大学創り-」は、山形大学のホームページにて公表されています。
http://www.yamagata-u.ac.jp/jpn/yu/modules/university1/index.php?id=77&yu_m=1_4

お読みいただくとおわかりになりますが、単なるアクションプランやPRペーパーではなく、ある種の「マニュフェスト」として受け止めることもできます。結城学長の年頭に当たっての熱い決意と改革意欲が伝わってくるようです。

また、最近では、上記プランでも触れられていましたが、大学教育の質の確保を図る上で極めて重要であり、昨年夏に公布され本年4月から施行される大学設置基準の改正において、努力義務から義務化された、いわゆるFD(ファカルティ・ディベロップメント)の専門家を養成するための全国初の専門職大学院の設置を決めた記事が報じられました。

「大学教師力」磨く大学院…山形大が設置方針


全入時代を迎えた大学の教師力向上に向けた取り組み(FD)*1が大学設置基準で今春義務化されるのを受け、山形大学(山形市)は、FDの専門家を養成する全国初の専門職大学院を設ける方針を決めた。

大学の教職員らを対象に、板書の仕方や学生とのコミュニケーションの取り方など、授業改善の手法を基本から教える。2010年春の設立を目指す。

同大では、7年前から取り組んできたFDの実績をもとに04年、山形県内の公立大や私立大、短大計6校で「FDネットワーク樹氷」を結成し、共同して国内外の先進大学の視察や研究会を重ねてきた。
昨年4月からは、授業の問題点を洗い出し、“処方せん”を出す「授業改善クリニック」を学内外向けに始め、全国的な関心を集めている。

取り組みを通して、FDを組織的に進めるには経済的、人的な手当てが不可欠で、時には大学の理念や経営方針の見直しも必要になるといった認識が大学の経営者に不足しており、具体的な授業改善法がわからない教員が多いこともわかってきた。FD専門の教員増を図ることも難しいため、授業改善のノウハウ共有を進める専門職大学院の設立構想を抱くようになった。

山形大でFDを担当する小田隆治学長特別補佐のほか、同大の高等教育研究企画センターの教員が中心となり、学外の専門家と連携し、カリキュラム開発や人材の養成に取り組む。

会話能力や板書、教材教具の開発、授業評価アンケートの作り方など授業技術を磨く一方、科目内容の整備やFD研修を徹底させるための経営術も学ぶ。このため対象を事務職員にも広げる。

同大の結城章夫学長は「国内の大学が競争ばかりしていては共倒れになる。大学は学生のためにあるという共通認識のもと、連携して教育力を向上させたい」と話している。 (2008年1月9日 読売新聞)


*1:FD(Faculty Development):多様な学生に対応するため、授業の内容や方法の改善を図る組織的な研修や研究を指す。文部科学省の2005年度調査では、全国713大学の8割が実施しているが、大半が講演会の開催程度。どうやって実効性を上げる内容にするかが課題になっている。