2008年2月28日木曜日

大学に対する社会の信頼

近時、「公的機関」である大学の根幹を揺るがしかねない様々な不祥事が多発しています。
社会の信頼を失いつつある大学に対する警鐘とも受取れる文章が、2月27日、文部科学省のホームページにアップされました。
その真意は定かではありませんが、大学はこの警鐘を真摯に受け止め、緊張感を持った経営改革に取り組んでいかなければならないと思います。

近年の審査を振り返って (大学設置・学校法人審議会学校法人分科会長コメント)


私立大学審議会を前身とする本分科会は、法令の定めにより私立大学関係者を中心に構成され、経営面を中心に設置審査に当たっている。

言い換えれば、本分科会は、私立大学関係者の「自主性」「自律性」に厚い信頼を置く私立大学制度の一部を成すものであり、申請者の「自律性」を期待し、「自主性」を尊重することを審査の基本方針としている。

一方、我が国の私立大学は、過去十数年の間、著しい環境の変化に晒されてきた。
18歳人口が4割減少し、地方を中心に定員割れに苦しむ大学も少なくない。
バブル経済の崩壊は、出口(就職)を意識した教育内容の不断の見直しを不可避とした。
さらに、大学設置基準の大綱化以降の規制緩和の流れは、私立大学の多様化に大きく道を開いた。

かかる環境変化に直面し、各大学が、経営の安定性に意を払いつつ、建学の精神の下、様々な工夫を凝らし改革を進めていることは、高く評価したい。

しかし、他方で、私立大学制度の前提である「自主性」「自律性」を損ないかねない事態が審査の過程等で明らかになりつつあることを指摘しなければならない。

第一に、継続的な運営のための「安定性」の問題である。

私立大学は、在学生のみならず、卒業生に対しても母校として存続、発展する責務がある。
「安定性」は学校経営の最も基本的な命題であり、学校法人制度もそうした前提で設計されている。
にもかかわらず、近年、新設早々に学生確保に苦しむ経営見通しの甘い大学の例や、校舎の全部借用の結果、借料が経営を大きく圧迫する株式会社立大学の例が多く見られるようになった。

第二に、社会からの「信頼性」の問題である。

教育基本法で規定される通り、学校とは「公の性質」を有するものであり、その設置者たる学校法人には高い「公共性」が求められる。
しかし、昨今、認可申請書の不実記載や重大な記載漏れなどの不正申請、理事長によるセク・ハラ事件、さらに文部科学大臣勧告を受けた株式会社立大学の例など、一部とはいえ私立大学に対する社会の信頼を失いかねない事案が続いており、極めて遺憾である。
社会からの信頼性の前提である情報公開も遅れている。

第三に、私立大学の「自主性」「自律性」そのものの問題である。

規制緩和の進展は、申請者側に、より高い「自主性」「自律性」が求められるものであるが、現実には、設置認可に際し、準備不足からか多数の留意事項が付されたり、「数値基準さえクリアすれば」といった低い意識の申請者が増加するなど、規制緩和の弊害が目立ち始めている。
学校法人のガバナンス機能を高めるための平成16年の私立学校法改正の趣旨についても、改めて徹底する必要がある。

以上、いずれも最終的には設置者たる学校法人の自己責任に帰すべき問題とは言え、事態の広がりによっては、学校経営に民間参入を認めた唯一の制度として確立してきた『学校法人制度』の根幹を揺るがしかねない。

この事態の克服のため、何よりも、我が国の私立大学制度に関する各設置者の強い自覚、自省を切に求めたい。
また、各種大学関係団体にも、会員大学に対する適切な対応を期待したい。

本学校法人分科会は、私立大学の水準の向上、健全な発展に責任を負う機関として、事態の推移を見極めつつ、審査基準、審査方針の見直しと厳正な審査に一層努めてまいりたい。

平成20年2月27日
大学設置・学校法人審議会
学校法人分科会長 黒田 壽二

2008年2月27日水曜日

生涯学習の振興

「生涯学習」という言葉が世の中で定着して久しいわけですが、このたび中央教育審議会から「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について-知の循環型社会の構築を目指して-」(2008年2月19日)と題する答申が出されました。

答申の主旨については、次のように記載されています。


■はじめに(抜粋)

平成17年6月、第3期中央教育審議会は、文部科学大臣から「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について」の諮問を受けた。
諮問では、当面、特に審議すべき事項として、
1) 国民一人一人の学習活動を促進するための方策について と、
2) 地域住民等の力を結集した地域づくり、家庭や地域社会における子どもの育ちの環境の改善のための方策について
の2つの事項を中心に、制度の在り方を含め、具体的に検討を行うよう求められた。

今回の答申は、審議で示された数多くの意見を基に、現在の我が国の状況について整理し、その上で、目指すべき施策の方向性や施策を推進する際に必要な視点等を明確にし、国民の学習活動の促進や地域社会の教育力向上等のための生涯学習の振興方策について提言をまとめたものである。
本答申を受けて、生涯学習の振興を図る行政(以下、「生涯学習振興行政」という。)・社会教育行政がさらなる発展を遂げ、「生涯学習の理念」の実現に向けた取組が一層推進されるよう期待している。


答申の中で言及された高等教育関係の記述は以下のとおりです。 

■履修証明制度等の活用 (P22)

平成19年に改正された学校教育法により、大学等が社会人等を対象とした課程(教育プログラム)を修了した者に対して証明書を交付することができる履修証明制度が導入されており、その活用を図ることが重要である。

■大学等の高等教育機関と地域の連携 (P27)

各大学や高等専門学校、専修学校が地域における社会貢献としてそれぞれの特色を活かして行う公開講座等の地域振興に貢献する取組を促すことも、地域社会の教育力向上を図る上で効果的である。

その際、各大学等の教育研究の連携を図り、地域において活躍する人材の育成等、大学等の地域貢献機能の強化・拡大等を国又は地方公共団体が支援することも重要となってくる。

行政が積極的に関わって、大学等と社会教育施設、関係団体等のネットワーク化を推進することも大切である。

また、その際には、大学・地域社会・産業界等の連携を図り、その教育研究の成果等を地域に還元することを目的とする大学コンソーシアムの活用等も考えられる。


《参考》

2008年2月25日月曜日

図書系職員のあり方

大学がその機能を高めていくためには、大学に勤める様々な職種の人々が、それぞれの役割や使命を十分に果たすこと、そして、全体としての最適化が図られることが最も望ましいと思われます。

しかしながら、専門的な事務系の職種については、構成員に占める割合が小さいため、ともすると周囲の理解や、あり方についての検討の熟度が十分ではないような気がします。

前回、大学図書館の現状と課題について考えてみましたが、今回は、大学図書館で働く人材のあるべき姿について考えてみたいと思います。

前東京大学理事の上杉道世氏が、文部科学教育通信という雑誌(No.190/2008.2.25)に寄稿された「図書系職員のあり方の改善について」(全文)をご紹介します。あくまでも東京大学の改革例ではありますが、基本的な考え方としては参考になるものだと思います。

図書系職員をめぐる諸問題


図書系職員は、他の業務分野の職員に比べると、専門家集団の形成や全学的組織化などさまざまな面ですでに一定の専門職の体系が確立されていると言える。

それだけにより具体的な課題が見えてきており、他の専門職種を考える際の参考になる。

また、特定の部門だけ改善を図ろうとしても限界があり、全学の全職種総体での改善が同時に必要であるという状況も見えてくる。

図書系の職員について、どのような課題が言われているであろうか。

古い大学の中の一段と古い建物が図書館であり、古い書物に囲まれて古い机と椅子が並び、書物の貸し出しや整理をしている職員がいる、というイメージは過去のものになりつつある。

今ももちろん書物としての資料も重要ではあるが、電子的なデータやジャーナルの比重が飛躍的に高まっており、サービスもオンラインでの資料提供や情報提供の比重が高まり、図書系というよりも学術情報系という呼称の方がふさわしい状況になってきている。

したがって、その専門性についても多岐にわたっており、図書系の中でもどのような分野のどのような専門性を持った職員を育てていくかということをきめ細かく考慮していかなくてはならない。

同時に、相当規模の職員集団を管理し組織運営をしていくためのマネジメント能力のある職員の養成もしていかなくてはならない。

図書系職員の中には、情報能力や語学能力の高い職員も多く、図書館での仕事のみならず、情報系や国際系の業務でその力を発揮してもらう可能性もある。

また、一大学内での経験だけではなく、他大学他機関での経験も能力向上に有益であり、力量のある人ほど積極的に交流経験を持たせるべきである。

能力の高い職員が多いにもかかわらず、上位の等級のポストは限られており、欲求不満がしばしば聞かれる。

これを打開するには、部長課長という職位を上がっていくというルートのほかに、専門性を評価されることにより高い処遇に到達する仕組みが必要である。

同時に、図書系の業務が確かに教育研究を支える重要な仕事として機能しているという業務全体への学内の評価が高まることが必要である。

部局長の意見を聞くと、図書系への不満がしばしば聞かれる。

部局の図書室がまるで独立組織のようで、部局の意見をあまり反映してくれない。

部局の専門分野の資料に精通して欲しいが、そういう専門性のある人になかなか来てもらえない。

部局全体が忙しくしている時期に図書の人は協力せず、関係ないという態度である。

人事についていろいろ要望しても、図書系人事の都合を優先されてしまう、などである。

もちろんこれらは一部の現象であり、小規模の部局などで、教員と図書系職員と他の大学職員が良い雰囲気で協力してよい事業を進めている例もある。

しかし課題は解決しなければならない。

このため、東京大学では、「図書職員のキャリアパス計画」を策定し、今後の改善の大きな指針としている、以下同計画について紹介したい。

なお、同計画では、「学術情報系(図書系)」という用語を使っているが、ここでは略して「図書系」と表記する。


図書職員のキャリアパス計画

専門職としての基本的知識・能力と評価視点

図書系専門職としての基本は、利用者へのサービスに関する知識・能力であり、改善提言能力、実行力を伴うものである。以下の13項目に整理される。
  1. 資料の選定に関する知識・能力
  2. 資料の購入に関する知識・能力
  3. 資料の分類に関する知識・能力
  4. 資料の目録に関する知識・能力
  5. レファレンスに関する知識・能力
  6. 情報検索技術に関する知識・能力
  7. 学術情報システムの設計に関する知識・能力
  8. 情報リテラシー教育に関する知識・能力
  9. 資料保存のための知識q能力
  10. 国際的情報交流のための語学力
  11. 書誌学全般の知識
  12. 資料に関する著作権法の知識
  13. 1~12までを包括した図書館経営能力
これらの知識能力は習得段階に応じてそれぞれ3段階のグレードに区分される。

職種と業務分野

専門職系職員の職種を整理する。

専門職系としては、資料受入系、資料整理系、利用者サービス系、学術情報システム系が挙げられる。

これらと並んで総合系(マネジメント系)がある。

業務の対象となる分野の区分からも整理できる。

業務分野としては、人文系(人文系部局図書室など)、社会系(社会系部局図書室など)、理工系(理工系部局図書室など)、生命系(生命系部局図書室など)、総合系(総合図書館など)に区分できる。

役 職

個人の資格として付与される処遇上の区分と職制上(ライン)の区分を明確に分け、専門職としての処遇上の区分は、図書系専門員-専門職員-職員となる(呼称は要検討)。

業務遂行上のラインとしては、グループ長-チームリーダー-チームメンバーとなる(呼称は要検討)。

これらのラインに処遇上のどの職員を配置するかは必要とする業務の状況により柔軟に判断する。

ステップアップの仕組み

全学の図書系の業務を、職種と業務対象分野の組み合わせで整理し、そこへ専門職としての知識能力を当てはめていく。

これにより全学の図書系の業務の専門性の体系の全体像が見えてくる。

同時のその全体像は処遇の体系と重なっている。

図書系の全職員が専門性の評価を通してそのどこかに位置づけられる。

そして、人事異動と研修により、グレードをアップしていく道筋が見えてくる。

専門性の評価の方法については、今後さらに詰めていかなくてはならないが、職員の活動状況を記録した調書や他のスタッフからのヒアリングなどで把握していくことになる。

図書系の本部的機能を担うラインと、全職種の人事を総合判断する人事系のラインとが協力して行うことになる。

人事異動も、全学の専門性の体系の中で、各職員の経験年数、年齢、本人の希望、能力・適性等を総合判断して、図書系のラインと人事系のラインが協力して行う。

その際、専門性の初期段階ではなるべく幅広い経験を与え、専門性が高度化するにつれ特化していく方向となる。

研修もステップアップに直結するようにレベルと内容を配列して実施する。

これらの改善は、図書系職員のみで実施しようとしても困難が多いだろう。

大学職員全体の改善の動きの中でこそ実現していくと私は考える。

2008年2月24日日曜日

大学図書館のいま・これから

「図書館のない大学なんて大学とは言えない」というほど、大学には必ず図書館が設置されています。
あまりにも当たり前のことではありますが、大学図書館の位置づけや存在価値についてご存知の方は意外と少ないようです。(恥ずかしながら実は私自身そのうちの一人です。)

大学図書館の設置根拠は、「大学設置基準」*1に示されています。


大学設置基準(抜粋)

(校舎等施設)

第36条

大学は、その組織及び規模に応じ、少なくとも次に掲げる施設を備えた校舎を有するものとする。ただし、特別の事情があるときは、この限りでない。
  1. 学長室、会議室、事務室
  2. 研究室、教室(講義室、演習室、実験・実習室等とする。)
  3. 図書館、医務室、学生自習室、学生控室
  4. ・・・
(図書等の資料及び図書館)

第38条

大学は、学部の種類、規模等に応じ、図書、学術雑誌、視聴覚資料その他の教育研究上必要な資料を、図書館を中心に系統的に備えるものとする。
2 図書館は、前項の資料の収集、整理及び提供を行うほか、情報の処理及び提供のシステムを整備して学術情報の提供に努めるとともに、前項の資料の提供に関し、他の大学の図書館等との協力に努めるものとする。
3 図書館には、その機能を十分に発揮させるために必要な専門的職員その他の専任の職員を置くものとする。
4 図書館には、大学の教育研究を促進できるような適当な規模の閲覧室、レフアレンス・ルーム、整理室、書庫等を備えるものとする。
5 前項の閲覧室には、学生の学習及び教員の教育研究のために十分な数の座席を備えるものとする。


ちなみに、大学図書館の実態はどうなっているのでしょうか。
東京工業大学附属図書館が国内の大学図書館関係のWWWサーバのURL(登録数:666)を収集・掲載しています。
http://www.libra.titech.ac.jp/libraries_Japan.html


その大学図書館で、最近ユニークな取り組みが行われています。


筑波大 図書館離れ防止にスターバックス誘致 (2008年2月4日付毎日新聞)


筑波大(つくば市天王台1)付属図書館に3月下旬、米国のコーヒーチェーン大手「スターバックス」が出店する。大学が学生の図書館離れを防ぐために誘致した。

店ができるのは、最も大きい中央図書館ののエントランスホール。約30席で、BGMの音量を小さくして読書の邪魔にならないよう配慮する。店で買ったコーヒーを持って図書館に入ることはできない。

付属図書館は5館合わせて蔵書が242万点あるが、利用者数はここ数年横ばいで、活字離れに伴う減少を懸念している。植松貞夫付属図書館長は「コーヒーを飲むついでに利用する学生が増え、長時間利用者がリフレッシュできる場所を提供できる」と話す。

心理学類1年の女子学生(19)は「勉強をしていると小腹がすくのでありがたい」と歓迎するが、教育学類1年の男子学生(19)は「学生はコーヒーをしょっちゅう飲めるほど金がない」と冷ややかだ。

土日や長期休暇中は学生の姿が減るが、スターバックスは「大学から外部の喫茶店までは距離がある。コーヒーと本は親和性が高く、新しい出店モデルとして期待できる」と話している。


大学図書館の蔵書、学生が選ぶ 西日本の大学に広がる (2008年2月9日付朝日新聞)


大学図書館が購入する本の一部を学生たちに書店で選んでもらう「ブックハンティング」が、西日本の大学を中心に広がっている。

ベストセラー小説や旅行ガイド、実用書など、これまでの大学図書館にはあまりなかった本が次々と蔵書に加えられている。

インターネットで簡単に資料を調べられるようになるなか、図書館離れを食い止めるとともに、大学の魅力づくりに役立てたいというねらいもあるようだ。

高松市内の大型書店で1月上旬、高松大と系列の高松短期大の学生7人が「ブックハンティング」に参加した。

短大秘書科2年の藤原詩織さん(19)が選んだのは「『もうひとりの自分』とうまく付き合う方法」。「就職活動中なので、将来を不安に思うことも多い。背中を押してくれる本に目がいきます」

学生たちは手にした携帯端末で気に入った本のカバーに表示されているバーコードを読み取っていく。「予算」は1人あたり3万円で、漫画やグラビア写真集など「大学図書館にそぐわない」もの以外は自由。

選んだ本のデータは書店のコンピュータに転送され、チェック後に一括して発注される仕組みだ。

高松大は年間3千冊の購入図書の大半を教員や図書館の司書が選んでいた。

年間貸出冊数はここ数年、約1万冊で頭打ち。学生の「もっと読みたい本を入れてほしい」という声を反映しようと、図書館関係者が集う研究会で知ったブックハンティングを導入した。

1月のブックハンティングでは約150冊を購入。数学や経済などの専門書のほか、映画化された「クローズド・ノート」(雫井脩介)、テレビドラマ原作の「鹿男あをによし」(万城目学)などのベストセラー小説がずらり。旅行ガイド「地球の歩き方」なども並ぶ。

高杉和代・図書課長は「柔軟な本選びができた。これを機に利用者が増えてくれれば」と期待する。

国公立大学にも昨年からブックハンティングが広まっている。

大阪大付属図書館が昨年12月に実施した「学生選書ツアー」では、米国の作家ジョン・アービングの「また会う日まで」など約400冊を蔵書に加えた。

阪大図書館の学生利用者数は02年度に88万5849人だったのが06年度は77万1103人で、年々減少している。

04年の国立大学法人化を機に大学間で特色の競い合いも盛んなだけに、担当者は「学生のニーズもつかめる。サービスを拡大することで独自性を発揮していきたい」と意気込む。

ほかにも岡山大、佐賀大、愛媛大などが07年に相次いで始めている。

筑波大大学院図書館情報メディア研究科の永田治樹教授(図書館情報学)は「日本の大学図書館は欧米と違って授業との結びつきが薄く、学生が足を運ぶ回数が少ない。

ブックハンティングは、学生の図書館利用の足がかりとして意義がある。学生のニーズを反映させながら、教育に必要な図書を充実させていけるかが課題だ」と話す。


このほか、国立大学図書館では、これまでも、時代の変化に対応した取り組みが行われてきているようです。(以下少し古いデータですが。)


国立大学図書館における特色ある取組について (平成16年4月27日、文部科学省研究振興局情報課) 


○地域貢献の一層の促進に向けて -地域に根ざした取組-
  • 公共図書館等の特色ある郷土資料等を電子化支援。県内図書館等からの情報発信を支援(茨城大学)

  • 公共図書館等とのコンソーシアム(共同連合体)を形成、館種をこえた貸出・返却が最寄りの図書館から可能(和歌山大学)

  • 大学図書館内に子ども図書室を設け、地域の子ども達に開放(山梨大学)
○安全で安心できる社会の実現に向けて -現代社会の課題へ対応した取組-
  • 「東南海・南海地震シンポジウム」を開催。地震、防災関連資料を展示(三重大学)

  • 阪神・淡路大震災に関する資料を収集し、データベース化(神戸大学)
○資料の電子化とその活用に向けて -付加価値のある情報発信の取組-
  • 郷土資料を電子化し、情報発信。生涯学習・学校教育でも活用を期待(愛媛大学)

  • 幕末・明治期の日本古写真をデータベース化し、情報発信。最先端の画像処理技術により、10倍に拡大しても鮮明に(長崎大学)
○教育研究環境の国際化に向けて -蔵書目録の多言語対応-
  • オリジナルスクリプト(原綴り)による多言語対応。アジア・アフリカ諸言語史資料の拠点を形成(東京外国語大学)
○図書館利用環境の改善に向けて -先進的な施設・設備を導入-
  • 大学図書館に多機能文化空間を創出。カフェ、リフレッシュルームを設置(横浜国立大学)

  • 民間企業と共同でICタグを使った図書館管理システムを開発。ITを活用し図書館業務を合理化(九州大学)

  • 自動(無人)入退館管理システム等により無人開館。36の国立大学(37.1パーセント)で図書館・室の24時間開館を実施

それぞれの取り組みの詳細について、興味のある方はこちらをご覧ください。
http://211.120.54.153/b_menu/houdou/16/04/04042602/003.htm


では、大学図書館は今後、どのような方向に向かって進むべきなのでしょうか。
文部科学省の審議会は、次のような報告を出しています。


学術情報基盤の今後の在り方について(報告) (平成18年3月23日、文部科学省科学技術・学術審議会学術分科会研究環境基盤部会学術情報基盤作業部会)



学術情報基盤としての大学図書館等の今後の整備の在り方について(概要)

■基本的考え方

1)学術情報基盤は国全体の学術研究の基盤であり、総合的・戦略的整備が必要
2)基盤整備は、単純に競争原理にゆだねるのではなく、一定の政策的配慮が必要
3)大学の壁を越えた、さらには大学と他機関相互が連携するシステムの構築が必要
4)全国共同利用施設の整備・運営に当たっては、国の施策として推進する体制構築が必要

■大学図書館の現状

1)大学図書館の基本的な役割
  • 高等教育と学術研究活動を支える重要な学術情報基盤であり、大学にとって必要不可欠な機能を持つ中核施設

  • 電子情報と紙媒体を有機的に結びつけた、新たな意味での「ハイブリッド・ライブラリー」の実現が求められている
2)電子化の急速な進展
  • 電子ジャーナルの普及、所蔵資料のデジタル化等、学術情報流通における電子化が急速に進展
3)増大する大学図書館の負担
  • 人件費等経費の節減が進む一方、業務の多様化及び高度化に伴う実質的な業務の増大

  • 外国の出版社等が発行する学術論文誌の価格上昇が図書館資料費を圧迫
■大学図書館を取り巻く課題

1)大学図書館の財政基盤が不安定
  • 電子ジャーナルへの対応とあわせて、安定的な学術情報収集への財政投資は喫緊の課題
2)電子化への対応の遅れ
  • 電子図書館化を進めた大学図書館も、電子情報の長所を活かしきれていない
3)体系的な資料の収集・保存が困難
  • 基盤的経費の減少、収蔵スペースの狭隘化、資料保存のための環境が未整備のため、体系的な資料の収集や保存等が困難に
4)目録所在情報サービスの問題点
  • 品質を共同維持するという意識の薄れ、担当者の削減とスキルの低下、重複書誌レコードの頻発等図書目録データの品質低下、雑誌所蔵データ未更新による雑誌目録データの品質低下等の問題が顕在化
5)図書館サービスの問題点
  • 主題知識、専門知識、国際感覚を持った専任の図書館職員が不十分

  • 情報リテラシー教育の位置付けが不明確で、利用者ニーズの把握が不十分

■今後の対応策

  • 学術情報基盤の中での役割を再認識し、各大学の教育研究の特徴にあわせたそれぞれのハイブリッド・ライブラリー像について検討し、戦略的な中・長期運営計画を立案・実行することが必要
1)大学図書館の戦略的な位置付け
  • 大学の教育研究活動を支える重要な学術情報基盤であることを明確に位置付け、大学として情報戦略を持つことが必要。

  • 共通経費化の推進等による安定的な財政基盤の確立等のため、図書館活動に対する全学的な理解を得ることが重要

  • 図書館長の役割は重要であり、それを支える専門性を有する事務組織も重要
2)電子化への積極的な対応
  • 電子化は大学の特色に応じて推進することが適当で、文部科学省は重要なものについて支援

  • 海外の情報検索サービスとの連携は、動向にあわせた適切な対応をとることが必要

  • 電子情報の脆弱性や不安定性等が指摘されており、関連する研究・技術開発の動向の把握が必要

  • 各大学の教育研究の活性化や我が国の学術情報の流通促進等のため、各大学は機関リポジトリに積極的に取り組む必要があり、文部科学省はその取組みを支援。大学図書館が機関リポジトリの構築・運用に中心的な役割を果たすことを期待
3)今後の電子化を踏まえた大学図書館の強化すべき機能
  • 紙媒体資料をはじめ、さまざまな学術資料の収集・保存・提供について、各大学の教育研究の特徴にあわせ、その充実に努めることが必要

  • 紙媒体資料と電子媒体資料を有機的に組み合わせることや自動書庫及び集密書架などの整備等による狭隘化対策及び多様な利用者ニーズに応えるため自動入退館システムや自動返却装置等の設備の整備も必要
4)全国の大学図書館に対する基盤としての目録所在情報サービスの枠組みの強化
  • 大学図書館等が主体となり、国立情報学研究所と協議しつつ、新たなビジョン・理念を打ち出すことが必要
5)大学図書館のサービス機能の強化
  • 高度の専門性・国際性を持った人材の確保・育成のため、在職しながらの大学院等での勉学や研修会への参加の奨励、専門性を持った職員のキャリアパスの創出等について検討することが必要

  • 大学図書館の教育支援サービス機能を強化するには、多様化する利用者ニーズに円滑・迅速に対応するとの観点が重要。情報リテラシー教育の推進に当たっては、教員との連携の上に立った取り組みが必要
6)大学図書館と社会・地域との一層の連携の推進
  • 地域社会や産業界との連携・交流の強化や館種、国境を越えて協力することが重要

報告書の詳細は、こちらをご覧ください。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/toushin/06041015/011.htm


以上が、大学図書館を所管するお役所の考え方でしたが、実際に大学図書館で業務を行っている方などはどのように考えているのでしょうか。

国立情報学研究所のホームページに「平成19年度大学図書館職員短期研修」のテキストが掲載されてあります。(http://www.nii.ac.jp/hrd/ja/librarian/h19/index.html
講師の立場によって視点が異なりますが、大いに参考になるのではないかと思います。


*1:国立大学の場合、法人化以前は、「国立学校設置法第6条」において「国立大学に、附属図書館を置く。」と定められていましたが、法人化に伴い廃止されました。また、「私立学校法」にも図書館に関する規程はありません。したがって、大学図書館の設置根拠は「大学設置基準」のみということになります。

2008年2月18日月曜日

教育振興基本計画

中教審分科会が他部会に「檄文」「大学予算も考慮を」 (2008年2月9日付朝日新聞)

教育基本法の改正を受けて教育振興基本計画作りを進める中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)の特別部会に対し、同審議会の大学分科会が8日、「檄(げき)文」を送った。

中教審内の会議が、別の会議の審議に強い調子で異議を申し立てるのは異例。
小中高校の予算が増えるのに対し大学関係の予算が減らされていることもあり、分科会の議論では毎回、「特別部会の議論は小中高校の教育に偏っている」という意見が出ており、こうした不満が爆発した形だ。

檄文は、大学分科会長の安西祐一郎・慶応義塾長ら特別部会委員も兼ねる4人の連名で出された。
「先進諸国が大学への投資を競い合うように伸ばしている現実を無視するのは、鎖国的発想と言わざるを得ない」などと、強い調子で特別部会の議論を批判。
檄文とともに、25年までに現在の大学への公的支出2.6兆円の倍増が必要などとする提言も送った。

特別部会は、こうした委員間の意見調整や、5年後の教育の姿を示す数値目標をめぐる文科省内の調整が難航。
基本計画の閣議決定は、同省が目標とする07年度内からずれこむ見通しとなった。
特別部会長の三村明夫・新日鉄社長が「年度内は無理」と述べた。


上記報道の詳細については、まだ、文部科学省から議事録や会議資料が公表されていませんのでよくわかりませんが、このたび、文部科学省高等教育局から配信された高等教育政策に関する情報メルマガ(2008年2月15日号)により次のような概要を把握することができます。

教育振興基本計画特別部会(第12回)-答申に向けて重点事項を審議、大学関係4委員が意見書を提出-

去る2月8日に中央教育審議会教育振興基本計画特別部会(部会長:三村明夫・新日鐵代表取締役社長)が開催されました。

特別部会では、
1)答申の構成案(素案)
2)今後10年間を通じて目指すべき教育の姿(素案)(第2章に相当)
3)今後5年間に特に重点的に取り組むべき事項(素案)(第3章(2)に相当)
等について事務局から紹介の上、議論が行われました。

1)では、
  • 第1章 我が国教育の現状と課題-「教育立国」の実現に向けて-
  • 第2章 今後10年間を通じて目指すべき教育の姿
  • 第3章 今後5年間に総合的かつ計画的に取り組むべき施策
  • 第4章 施策の総合的かつ計画的な推進のために必要な事項
といった大枠が示されました。

高等教育に関しては、2)今後10年間を通じて目指すべき教育の姿として、
「社会を支え、発展させるとともに、国際社会をリードする人材を育てる」(1)高等教育や大学等における教育の質を保証する、(2)世界最高水準の教育研究拠点を重点的に形成するという目標を掲げています。

また、3)今後5年間に特に重点的に取り組むべき事項として、
主に「大学等の教育力の抜本的強化と質保証」、「大学の国際競争力の飛躍的向上」を示しています。

意見交換に先立ち、当部会と大学分科会を兼務する安西祐一郎慶應義塾長、郷道子お茶の水女子大学長、金子元久東京大学大学院教育学研究科長、木村孟独立行政法人大学評価・学位授与機構長の連名による「教育振興基本計画の在り方について-『大学教育の転換と革新』を可能とするために-」と題する意見書が紹介されました。

会議では、郷委員から4委員を代表して以下のとおり意見書に関する説明がありました。

大学分科会では、教育振興基本計画特別部会の対応につき、安西分科会長へ一任する手続きをとっており、当該意見書は、これを受けてまとめられたものです。
  • 意見書は、(1)意見提出の趣意書、(2)「大学教育の転換と革新(2025年に向けた展望)」と題する提言、(3)バックデータや概念図の3つの内容から構成

  • (1)では高等教育の将来に対する危機感、大学関係者自身の粘り強い努力とともにそれを支える財政措置が不可欠であるとの認識を表明

  • (2)では、厳しい財政事情や大学の実情を踏まえ、約20年後の2025年を展望し、「大学像と学生」、「大学システム」、「アクセスと進路選択」、「教育条件」、「質保証の体制」に関する5つの項目にわたって提言。教育振興基本計画の第1期(2008~2012年度)を「転換の始動」、第2期(2013~2017年度)を「転換の加速」、第3期及び第4期(2018年度~)を「転換の完成、革新の実現とその持続」と位置づけ、現在2.6兆円程度の公財政支出を5兆円以上に拡大していくことにより5つの提言を実現していくことを提唱

  • 2025年の姿として、多くの社会人や留学生を含む約380万人の学生に対し、総額11兆円の投資がなされ、うち半分の5.5兆円の公的支出が行われるという構造を提示(これによって、日本の学生一人あたりの教育費は、現在のアメリカ並みに到達)

  • 5.5兆円の財政支援のイメージについては、(3)の中で「基礎的支援」、「選択的支援」、「重点的支援」、「学生への経済的支援」の4つに類型化し、国公私立を問わず効果的な配分がなされるような姿を提示。これに伴い、適格認定の厳格化の必要性を指摘

この説明を受け、金子委員他若干の委員から高等教育の振興の重要性に関するご発言がありました。

今後、教育振興基本計画特別部会では、年度内の答申を目指して引き続き審議を進めて行く予定です。高等教育への投資の在り方も重要な論点の一つです。

今回の教育振興基本計画特別部会の配付資料については、後日、文部科学省のホームページに掲載される予定ですので、詳しくはそちらをご覧下さい。

編集後記


最近の流行語に「KY」(空気が読めない)というものがあります。

裏を返せば、この言葉は、「日本の社会が、いかに空気に支配されやすい存在であるのか」を示しています。

それは今に始まったものでなく、例えば、旧・日本軍の致命的欠陥の一つには、戦略策定における「空気の支配」が挙げられています(『失敗の本質』中公文庫)。

大学改革をめぐっては、「学生も大学も多すぎる。これからは少子化が進むから投資を減らせるはず。」、「日本の大学は全くの非効率。国際競争力を強めなければ駄目だ。」といった議論が、それぞれ支配力を持った「空気」を形成しているようです。

それらは、一定の事実を含んでいるが故に、俗耳に入りやすい主張です。
しかし、こうした二つの議論は、果たしてどこまで正しく、また両立し得るものでしょうか。

2月8日に示された大学分科会関係4委員の提言は、様々な示唆を含んでいます。

もつれる議論を解きほぐすためには、長期の学生数の規模や構成のイメージを描く必要があるのではないか。

1月の総理施政方針演説で打ち出された「留学生30万人計画」のように、部分的な目標だけで、全体の投資プランを立てられるのか。

「国際競争力強化」を標榜するなら、国情は違えど、ベンチマークとなる相手国を想定した資源投入の議論が必要なのではないか、等々。

有識者の提言を拝し、「空気の支配」を免れない自らの限界(提言中の表現を借りれば「鎖国的発想」)を痛感します。

むろん、行政は、現実の制約条件を踏まえねばなりませんが、それは未来永劫、不変のものではない筈。

先人は、指導者の要件の一つに、「どんな事態に直面しても「それにもかかわらず(デンノッホ)!」と言い切る自信のある人間」(マックス・ヴェーバー)を挙げています。

大学界で指導的立場にいらっしゃる4委員の先生方が一石を投じられた意味を、中教審の場だけでなく、社会全体で考えていただければと願います。

2008年2月17日日曜日

高等教育政策の動向

文部科学省高等教育局から配信されている高等教育政策に関する情報メルマガ(2008年2月8日号)のうち主なものをご紹介します。

■政策動向

平成20年度予算案について(高等教育関係)

質の高い大学教育推進プログラム(予定額86億円)について

本プログラムは、特色GPと現代GPを発展的に統合し、大学、短大、高専の教育の質向上に向けた様々な取組を積極的に支援しようとするものです。

募集は、大学等がそれぞれの人材養成目的に沿った確実な計画のもとに大学等の教育の質向上を図ろうとする取組を対象としており、例えば、従来現代GPに申請できたような個別の政策課題に対応した取組についても、申請を受け付けられるようにしたいと考えております。

また、本プログラムを通じて、各大学等の人材養成目的の明確化やFDの実施義務化といった大学設置基準等の制度改正(平成20年4月施行)への積極的な対応とともに、アドミッション、カリキュラム、ディプロマの3つのポリシーの明確化など教育の質向上への取組強化を促進したいと考えています。

そのため、各大学等の制度改正等への対応について申請書に記載していただく方向で検討を進めています。各大学等におかれては、申請される教育プロジェクトの検討とともに、これらの制度改正への積極的な対応を進めていただくことが期待されます。

申請や審査に係る事項、スケジュール等については、今後、有識者・専門家等で構成される実施委員会を組織し検討を進めたいと考えております。
内容について固まり次第お知らせしていく予定ですので、各大学等におかれては、意欲的な取組への御検討をお願いしたいと思います。


戦略的大学連携支援事業(予定額30億円)について

本事業では、国公私立の複数の大学、短期大学、高等専門学校による「戦略的な連携」を積極的に進めることにより、
  1. 教養教育や専門教育の共同実施、教育力向上に向けた取組の強化

  2. 教育研究環境の充実のための教育・研究設備の共同利用化

  3. 教育研究資源の結集による産学連携活動や生涯学習機能の強化

  4. 事務局機能の共有化・効率化

  5. 先進的な教育プログラムの開発による教育研究の高度化などをはじめとする、組織的連携によるメリットを最大限に活かした様々な取組
を支援することを目的としています。

これまでの国公私立を通じた各支援プログラムとは異なり、連携する大学等間の将来目標や連携効果等を盛り込んだ「大学間連携戦略」を策定し、申請書と併せて提出していただきます。

事業期間は最長3年間としていますが、「大学間連携戦略」については、その事業目的を明確にするため、事業期間内にとどまらない、概ね10年程度を見通した将来目標や大学等の目指すべき方向性等について具体的に記載していただく予定としています。

申請件数や事業規模など、申請に当たっての必要条件については鋭意検討しているところですが、まずは連携を予定される大学等間で「大学間連携戦略」についてご検討いただくとともに、これまでの連携実績との違い、つまり新規性や発展性についても併せて整理・検討いただくことが必要であると考えています。


教育再生会議について(最終報告)

教育再生会議は1月31日に、首相官邸で最後の総会を開き、教育再生に向けた最終報告を福田首相に提出しました。

最終報告では、新たな提言は追加せず、第1次~第3次報告で盛り込まれた提言を総括したものとなっています。また、これらの提言について、文部科学省など関係省庁や地方自治体、教育委員会に対し、実施計画を作って着実に実行するよう求めています。さらに、これらの実施状況を評価、実効性を担保するための新たな会議を内閣に設けることを政府に求めています。

平成18年10月に安倍首相の肝いりで発足した同会議は、これで役割を終え解散しますが、提言を受けて政府は、フォローアップのための新たな会議を内閣に設置する予定です。

【教育再生会議ホームページ】
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouiku/houkoku/honbun0131.pdf


中央教育審議会大学分科会(第66回)について

去る1月30日に中央教育審議会大学分科会(分科会長:安西祐一郎・慶應義塾大学塾長)が開催され、1)平成20年度予算案及びOECD非公式教育大臣会合、2)グローバル化プラン(仮称)、3)今後の大学分科会の審議について議論が行われました。
  1. 平成20年度予算案及びOECD非公式教育大臣会合については、事務局から説明があった後、意見交換が行われました。分科会長から、OECDにおいて今後国際的なフィージビリティスタディが始まるが、大学分科会の意見を参考にしつつ日本政府として適切に関与していくことを望む旨ご発言がありました。委員からは、予算について、欧米並の公財政支出を目指してほしいと発言がありました。また、教育振興基本計画について、初等中等教育偏向でなく高等教育に重点をあてるべきということや、公財政支出を含めて計画を立てるべきという意見が出されました。

  2. グローバル化プラン(仮称)について事務局から説明があった後、意見交換が行われました。委員からは、専門学校に在籍する留学生にも注目してほしいこと、日本の質の高い教育や研究を海外に輸出すべきこと、グローバル化についてもっと内容を熟慮すべきという意見が出されました。
今後の大学分科会の審議について意見交換が行われ、概ね以下の趣旨が了承されました。
  1. 現在審議中の諸課題に関しては適当な時期(学士課程教育の在り方については本年3月を目途に制度・教育部会で審議まとめを行い、夏前を目途に答申、高等専門学校の在り方については、夏前を目途に答申等)に成案をまとめることが重要。

  2. 大学教育の質保証に関しては、今後、認可・基準、評価などを一体的に議論していくことが重要。

  3. 日本学術会議との連携については、各分野で具体的に教育の質保証の在り方を考えていく上で、重要な取組であり、準備を進めることが適当。

  4. 大学分科会の審議体制の見直しや教育振興基本計画への具体的な対応については、分科会長へ一任。
なお、上記「3」と関連して、去る1月30日の東京新聞(1面)及び2月6日の産経新聞(24面)で「大学教育内容に指針 学術会議に審議59年ぶり依頼へ」との報道がされましたが、現時点では、日本学術会議との連携の枠組みについて検討中の段階です。文部科学省としては、今後、大学分科会の意見を踏まえ、日本学術会議との協議を行い、必要な連携を図っていきたいと考えています。


大学等における履修証明制度の施行について

これまでも随時情報提供をしてまいりましたが、昨年の学校教育法の改正により、大学、大学院、短期大学、高等専門学校、専門学校(以下「大学等」という。)における「履修証明制度」が創設され、12月26日より施行されました。1月23日付けで各大学等に対し施行通知を発出したところですが、制度の内容について改めてお知らせします。

大学等においては、これまでも科目等履修生制度や公開講座等を活用して、その教育研究成果を社会へ提供する取組が行われてきたところですが、より積極的な社会貢献を促進するため、学生を対象とする学位プログラムの他に、社会人等の学生以外の者を対象とした一定のまとまりのある学習プログラム(履修証明プログラム)を開設し、その修了者に対して法に基づく履修証明書を交付できることとしました(法第105条等)。

制度の詳細は学校教育法施行規則(第164条等)や施行通知をご覧頂きたいと存じますが、主な内容としては、
  • 履修証明プログラムは、社会人向けに開設する講習等を組み合わせることにより、体系的に編成すること

  • 履修証明プログラムの総時間数は、120時間以上とすること

  • 履修証明プログラムの名称、目的、内容、履修資格、修了要件などをあらかじめ公表すること

  • 履修証明制度を実施するために必要な体制を整備すること
などが挙げられます。

文部科学省としては、各大学等においてこの制度を活用した取組が積極的に展開されることを期待しており、今年度から実施している「社会人の学び直しニーズ対応教育推進プログラム」の拡充(平成20年度予定額20億円)を図ること等により、様々な分野の学習機会が積極的に提供されるよう予算面でも支援していきます。http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/shakaijin.htm

また、履修証明プログラムを各種資格の取得と結び付けるなど、目的・内容に応じて職能団体や地方公共団体、企業等と連携した取組も期待しており、この制度に基づく履修証明書を、教育機関等における学習成果を職業キャリア形成に活かす観点から政府全体で検討・推進している「ジョブ・カード制度」においても、「職業能力証明書(ジョブ・カード・コア)」として位置付けています。http://www.kantei.go.jp/jp/singi/seichou2/job/saisyu/siryou.html

関係資料を来週中に文部科学省のホームページに掲載する予定ですので、制度の内容をご理解頂き、積極的な活用をお願いします。
http://www.mext.go.jp/a_menu/01_d.htm


■国会の動き

留学生政策に関する国会審議について

去る平成20年1月28日 (月)の衆議院予算委員会において、遠藤利明議員から留学生政策に関する質問があり、福田内閣総理大臣が答弁しておりますので、その質疑の概要をご紹介します。

【問】遠藤利明氏(自由民主党)

アジア外交と教育に関し、総理は施政方針演説の中で「留学生30万人計画」を提唱された。ご父君の赳夫元総理も留学生の増加には積極的に取り組んでおられたと聞いているが、留学生の増加に向けた総理の見解如何。

【答弁】福田内閣総理大臣

我が国は、大きな方針として、「開かれた国」を掲げています。現在、経済の面においても、海外に対する依存、海外との経済的な交流が年々増えています。特にアジアとは増えています。それは何故か、アジアの経済が順調に伸びているからです。そして日本は、非常に大きなスピードで伸びている国と交流を深めあって経済を活性化するためにも、人的な交流も深めていく必要があると思います。

もちろんアジアのみならず、世界を相手にすべきです。そういう観点からすると、我が国の留学生数は、他の国より少ないと思います。現在、我が国にいる留学生は12万人で、この数は、以前に比べるとかなり増えたと言われていますが、欧米と比べると遙かに少ない割合です。そういう意味でも、我が国は果たして開かれているのか、と批判を受けかねません。将来をにらんだ上で、このような面での国際化を進めていく必要があります。

我が国は、学生数が今後減少することから、日本の大学には、学生を受け入れるキャパシティがあるでしょう。しかし受け入れるために、我々はそれなりの覚悟が必要です。そして海外から訪日した人は暖かく迎えるべきですし、日本語が不自由で困るということでは望ましくありません。語学の面でも格段の改善をしていく必要があります。

(参考)
第169回国会 福田内閣総理大臣施政方針演説 抜粋(平成20年1月18日)
『新たに日本への「留学生30万人計画」を策定し、実施に移すとともに、産学官連携による海外の優秀な人材の大学院・企業への受入れの拡大を進めます。』

2008年2月12日火曜日

産学連携

ここ数年、大学が力を入れていることの一つに「産学連携」があります。

大学が自らの財政基盤の強化を求め、民間企業が大学の知的資源の活用を求め、相互がWin-Winの関係で利益を享受することができるよい仕組みではないかと思います。

今日は、産学連携に関する最近の動きをいくつかまとめてご紹介します。


「政府」の動き

文科省、産学官連携戦略展開事業の公募要項を公表 (2008年2月8日付IP NEXTニュース)

文部科学省はこのほど、ポスト知財本部事業にあたる「産学官連携戦略展開事業(戦略展開プログラム)」の公募要項を公表した。

全国の国公私立大学、大学共同利用機関法人、国公私立高等専門学校を対象に公募する。

助成事業は以下の3種類。
  1. 「国際的な産学官連携活動の推進」。約15件を選び、単年度あたり5000万円から1億円程度を支援。事業期間は原則5年間 。

  2. 「特色ある優れた産学官連携活動の推進」。約15件を選び、単年度あたり3000万円から5000万円を支援。事業期間は原則5年間 。

  3. 「知的財産活動基盤の強化」。約10件を選び、単年度あたり1000万円から2000万円を支援。事業期間は2~3年間 。

(参考)「産学官連携戦略展開事業(戦略展開プログラム)」の公募について(文部科学省)



「大学」の動き

東大、国際・産学共同研究センターを来月末に廃止 (2008年2月6日付日刊工業新聞) 

東京大学は国立大学の地域共同研究センターの一つである「国際・産学共同研究センター(CCR)」を3月31日付で廃止する。

自治体から研修生を受け入れる産学連携人材育成と研究者データベース(DB)は、全学事業にあたるため産学連携本部へ移管し、個別の研究プロジェクトは小規模の新組織で引き継ぎ、それぞれ機能強化する。

学部・研究科・研究所・センターなどの部局は大学自治の象徴でもあり、廃止は異例。大学改革でネックとなる“学内組織の壁”を壊す取り組みともいえそうだ。

国立大学の旧来の産学連携は、工学部系の地域共同研究センターが手がけていた。東大のCCRは96年度に設立。

しかし04年度の国立大学法人化に合わせ、03年度に法人の発明・特許を管理する知的財産本部(東大の名称は産学連携本部)が発足。役割が重複し非効率になっていた。

そのためセンターの名称を残しつつ知財本部に統合する大学が増えているが、東大は機能強化に適した形を考えて廃止を選んだ。

国立大は法人化後、全学予算が運営費交付金の一括払いとなり、学内の予算・ポスト再配分の自由度が高まった。

しかし改革が不十分だとみる有識者が指摘するのが、研究科や研究所など各部局の自治だ。教員の採用を含む人事権など部局教授会の発言権が強い。

また、文部科学省は社会ニーズの変化に伴い、特定使命を持つ研究所などの見直しが必要と考えている。

今回は産学連携部局の整理だが、他部門でも柔軟な再編が必要になってきそうだ。

CCRの場合、学内研究者データベース(テーマ件数1754件)への問い合わせから共同研究に結び付くのが15%と高率なのが特徴。

自治体から研修生を受け入れる産学連携の人材育成(8年間で48人が受講)と合わせ、4月から産学連携本部に移管する。

一方、十数件の研究プロジェクトは現場直結のため、生産技術研究所と先端科学技術研究センターが設立する新組織で運営する。


産学連携に必要な専門能力を持つ「人材」に関する話題

「産学連携推進には大学に『専門職』の新設が急務」 (2008年2月7日nikkei BPnet)

「日本の大学が産学連携を推進していくためには、大学に従来からの『教員』、『事務職』に加えて『専門職』という新しい職制を設けることが急務」。

このような提言が、2008年1月28日~29日の2日間にわたって東京都港区で開催された国際特許流通セミナー2008(主催は独立行政法人工業所有権情報・研修館)のセッションA1「国際産学連携と知的財産マネージメント」で、聴講者である産学連携実務者の支持を集めた。

産学連携が国内ばかりではなく諸外国も対象にするようになると、英文などによる共同研究契約などの法務業務が増え、これを担当する専門職が不可欠になるからだ。

この提言は、同セッションのモデレータを務めた東北大学大学院工学研究科教授の原山優子氏が「産学連携の国際化を進めるには何が課題か」という問いに、パネリストの九州大学理事・副学長の小寺山 亘氏と奈良先端科学技術大学院大学教授の久保浩三氏がそろって答えたものである。

大学が企業との共同研究を実施したり、その研究成果を特許などの知的財産として維持・管理していくためには、
  1. 共同研究の相手企業との共同研究契約の締結
  2. 特許出願
  3. 特許などの知的財産の技術移転契約
などのサポート業務が必須となる。中でも、産学連携に伴う契約内容を相手企業と交渉する調整業務には高度な専門能力が必要になる。

今後諸外国の研究機関などと産学連携を推進するためには、各国の実情に通じ、これらのサポート業務を英語などの外国語によって実施できるといった一層高度な専門能力が求められる。

九州大学などの日本の有力な研究大学は、産学連携推進に必要な専門能力を持つ専門職人材を、企業などの知的財産部門の実務経験者や弁理士などを雇うことで、なんとか対応しているのが実情だ。

国立大学は「教員職」と「事務職」の2つの職制で構成されている。

産学連携を担当する専門職人材は、「事務職」か“テンポラリ職”などで雇用している。

この“テンポラリ職”とは、文部科学省や経済産業省などが提供する競争的研究資金などで数年間雇用する職制だ。再任もある。

産学連携業務を担当する専門職人材を教員職として雇用するには、教育・研究実績が必要となる。

企業の知的財産部門の実務担当者は必要条件を満たせないケースが多いため、教員職として雇用するにはハードルがある。

事務職を産学連携担当者に育成するケースもあるが、大学の事務職は公務員型の“ゼネラリスト”として2~3年でローテーションするため、専門実務を学んでも数年後に別部門に異動してしまうという問題がある。


産学連携の「おいしい」成果

大学グルメが大集合 16日から東京で、各大開発品の物産展 (2008年2月6日付北海道新聞)

大学や大学院の研究室が開発し、地元企業などと連携して商品化した「大学ブランド食品」を集めた初の物産展「大学は美味(おい)しい!!フェア」が16-20の5日間、東京の百貨店、新宿高島屋で開かれる。

道内の北大大学院水産科学研究院(函館)、藤女子大(札幌)、東京農大生物産業学部(網走)、北見工大を含む全国24大学が計約100品目を販売する。

大学ブランド食品は、国立大の独立法人化に伴う研究費減や、少子化時代の大学生き残り競争などを背景に近年急増。

また、食品偽装が相次ぐなか、大学の名を冠した商品は消費者の信頼感を高め、市場の注目も集めている。

物産展の仕掛け人は、釧路出身のフリーライター佐々木ゆりさん。

佐々木さんは2006年4月から今年1月まで小学館の雑誌「DIME」に、大学ブランド食品を紹介する「すべからく研究は製品たるべし!大学は美味しい!!」を連載した。

「消費者に実際に味わってほしい」という佐々木さんの発案で、各大学の研究者たちが実行委を組織し、準備を進めている。

北大大学院水産科学研究院は「がごめコンブ」入りカレーパンやラーメンなどの加工食品、藤女子大は発泡酒やハンバーガー、北見工大はハマナスのハーブティー、東農大生物産業学部は道産エミュー卵、小麦、牛乳で作ったどら焼きやクッキーなどを出品する。

このほか、北里大学獣医学部は八雲牧場(渡島管内八雲町)で育てた「北里八雲牛」の加工食品を、世界最高水準の水産養殖技術を誇る近畿大は「クエなべ」セット、新潟大は純米吟醸酒などを販売する。

佐々木さんは「消費者は各大学の研究成果を通じて食を考える機会に、大学にとっては研究のモチベーションを向上させる場になってほしい」と期待する。

(参考)

2008年2月11日月曜日

危機意識の不在

研究費不正、パワハラ、アカハラ、セクハラ、挙句の果てには、わいせつといった大学の不祥事に関するニュースが毎日のように飛び交う情けない時代になってしまいました。

最高学府でなぜこのようなことが頻繁に起こるのか。一言では言えない様々な要因が背景にはあるのでしょうが、これだけ事件や不祥事が頻発するということは尋常ではありませんし、「大学というところは、社会の常識やモラルと相当にかけ離れた閉ざされた世界なのですね」と揶揄されても仕方ありませんね。

最近の記事を例に少し考えて見ましょう。なお、ここでご紹介する事例は、特定の大学を批判するためのものではありません。多くの大学に通じる事例としてご紹介しようと思っていますので誤解のないようにお願いいたします。


パワハラで○○大教授戒告 休日出勤を強要 (2008年2月7日付産経新聞)

○○大(○○市)は7日、休暇中の教員に「業務命令だ」と言って強引に出勤させるなどのパワーハラスメントや学生に対するセクハラ(性的嫌がらせ)をしたとして、工学部の60代の男性教授を戒告処分にした。

同大によると、教授は同じ学科の教員らに対し自分の意に沿わないことがあると「業務命令だ」「辞めろ」などと言って無理な命令をするパワハラを繰り返した。教員を叱咤(しった)する際、頭をたたいたこともあった。

また講義中に性的発言をして学生に不快感を与えたり、侮辱的な言葉で学生をしかったりしていた。

昨年4月、教員らから苦情があり大学側が調査していた。

○○学長は「教授の行為は教育を行う立場にある者としてあるまじき行為で、品位を欠く。指導監督を強化するなど再発防止に取り組みたい」とのコメントを出した。


パワハラ:○○大が60代教授を戒告 教員、学生から苦情 (2008年2月8日付毎日新聞)

○○大は7日、工学部の60代の男性教授が部下の教員をたたき、学生を立たせて歌わせるなどのハラスメント(嫌がらせ)行為をしたとして、戒告処分にしたと発表した。

大学によると教授は昨年3月、男性教員の頭を平手でたたいたほか、複数の教職員に「辞めろ」などと口頭やメールで伝えるパワハラ行為を繰り返した。

また、06年7月10日には学生約60人がいる教室で答案返却時に学生に卑わいな言葉を言い、成績が悪かった学生は立たせ、歌を歌うことを強要。さらに、全員を立たせ「学生の本分は勉強です」と数分間にわたって大声で言わせるアカデミックハラスメント行為もした。

昨年4月に複数の教員、学生から大学側に苦情申し立てがあり、調査していた。同大は「これ以外にも(同様の行為は)長期間あったと類推される」としている。教授は事実関係を認め、たたいたことは謝罪したが「パワハラ、アカハラなどのつもりはない」などと話したという。

同時 に記者発表を行っているためか、記事のトーンは同様ですし比較的穏やかです。大学が示したリリースを基に淡々と客観的に事実関係を流しています。正直言って、事は重大であり、もう少し突っ込んだ批評を加えてもいいのではないかと思いました。


それでは、報道されたこの大学の今回の不祥事に対する対応を見てみましょう。この大学のホームページには次のようなコメントが掲載されてありました。


教員の懲戒処分について (2008年2月7日)(抜粋)

今回のことで、本学に対する社会的な信用を大きく失墜させたことは全く遺憾であり、今後は、二度とこのようなことが起こらないように、教員に対する指導監督を強化すると共に教員に対する一層の意識啓発等を行い、資質向上を図り、再発防止に全力で取組んでいきたいと思います。(人事課長)



不祥事発覚後の大学の対応を示す文章としては、一見理想型のように見えますが、少々疑問も残りました。

そもそもこの不祥事は1~2年も前から発生していたのですから、大学はその事実を知った時点で、類似の不祥事の防止に向けた何がしかの対策を講じてきているはずではないのか、行ってきているのであれば、なぜ謝罪会見で説明することができなかったのだろうかということです。

仮に、これまで説明できるほどのことをやってきていなかったとしても、「これからどのような再発防止に取り組んでいくのか」については、具体的に説明する義務があったのではないかと思います。

いずれにしても、今回大学から出されたコメントは、社会から見て形式的な報道対応にしか見えず、心ある責任の取り方とは言えないと思います。また、余計なことですが、大学としての謝罪文は、「人事課長」といった立場の方ではなく、大学の最高責任者である「学長」の名前により公表された方がよかったのではないでしょうか。


この大学のホームページを眺めていたら、今回以外にも幾度か謝罪していることがわかりました。そして、この大学の今後急ぎ対応すべき点も見えてきました。

まずは、ここ最近のホームページの記事を3つほどご紹介します。

職員の懲戒処分について (2007年10月19日)

無断で欠勤し講義を実施しなかった工学部教員に対し、懲戒処分(停職12月)を行ったという記事の一部分です。

当該教員の行為は、学生及び教職員をはじめ、本法人に多大な不利益を与えたばかりでなく、教育を行う立場にある教員としてあるまじきものであり、本学に対する社会的な信用を大きく失墜させたことは全く遺憾であります。今後は、二度とこのようなことが起こらないように、教員に対する指導監督を強化すると共に教員に対する一層の意識啓発を図り、再発防止に全力で取組んでいきたいと思います。(人事課長)(※後段は、今回のパワハラ等による教員の処分時の謝罪文と同文ですね。)


真正な学位と紛らわしい呼称等の取得者への対応について (2007年10月19日)

いわゆる「ディグリー・ミル」問題(にせ学位の保有)が工学部教員において発覚した際の対応として、本人との合意解約を行ったことを知らせる記事の一部分です。

真正な学位を授与する機関である大学としては、今回のような真正な学位を発行する正規の大学等として認められていない機関の学位については、これを学位として認めることはできません。しかしながら、選考の段階でこのことが判明しなかった点で、本学の教員採用時の調査不足は否めず、真摯に受け止める必要があり、大いに反省すべきことと思っています。今後は、二度とこのようなことが起こらないように、教員採用時の審査を一層厳格化していきたいと思います。(人事課長)


平成20年度入学者特別選抜試験(推薦入学)の医学部看護学科合格者発表の誤報について (2007年12月19日)

医学部看護学科の合格者について、誤った受験番号を掲示及び掲載したことに対するお詫びの一部分です。

今後、万全の対策を講じ、二度とこのようなことが起こらないよう、全力を尽くします。(学長)



不祥事の内容は全く別物ですが、謝罪文の末尾はいずれもほとんど同じ内容です。

二度とこのようなことが起こらないように、教員に対する指導監督を強化すると共に教員に対する一層の意識啓発を図り、再発防止に全力で取組んでいきたい。
二度とこのようなことが起こらないように、教員採用時の審査を一層厳格化していきたい。
万全の対策を講じ、二度とこのようなことが起こらないよう、全力を尽くします。

といった再発防止に向けた強い決意のほどが伺えます。


が・・・、ホームページを見る限りにおいては、上記のような度重なる不祥事に対する反省や再発防止に向けた決意しか掲載されておらず、肝心な「その後、再発防止のためにどのような対策を講じたのか」、「それによって何がどう変わるのか、変えようとしているのか」など具体的な改善策については、残念ながら見つけることはできませんでした。


このように、不祥事を起こした、あるいは発覚した直後は、報道や社会に対して一義的には前向きな姿勢を見せていても、その意気込みがいつのまにか風化してしまうことが、この大学に限らず多くの大学にあるような気がしてなりません。

国公私立を問わず、大学には多くの国費(税金)が投入されており、そういう意味では、公的機関であるはずです。しかしながら、納税者や社会に対する情報公開は未だに十分とは言えません。

このため、学生、保護者、社会の方々は、大学の中で何が起こっているのか知ることができません。

最高学府ではあるが、その閉鎖性故に、様々な不祥事を正面きって退治する体質が整っているとは言えない大学は、今こそ真剣に社会の常識との大きな乖離を無くす努力をすべきではないかと思うのです。

2008年2月7日木曜日

国民の資産は有効に活用されているか

大学、資産運用を積極化・日経調査 (2008年1月31日付日本経済新聞)

大学が資産運用に力を入れている。

日本経済新聞社が全国の大学を対象に実施した資産運用調査によると、回答した私立大学の30%がデリバティブ(金融派生商品)を用いた仕組み債の買い増しを検討。
国公立大学では地方債や政府保証債に資金を振り向ける動きが強まっている。
少子化で経営財源の確保が求められ、運用の重要性が高まっていることが背景にある。

回答した176校の私大のうち、現預金や国債以外の「リスク性資産」に投資している大学は65%にのぼった。外債投資が中心だが、株式運用の経験があるところも24%あった。


上記の記事は、狭義の資産、つまりは「資金」の運用に関するものですが、確かに私立大学はもとより、法人化された国立大学においても、最近は、余裕資金を短期の定期預金で細かくつないでみたり、国債を購入したりと、大きなリスクを抱え込むことを禁じた法人制度の枠組みの範囲内で、少しでも財政基盤の強化につなげようとする試みが積極的に行われているようです。

今日は、国立大学法人が保有している不動産などの資産の活用について考えてみたいと思います。

国立大学法人の資産とは


現在、政府は、国の資産圧縮を進めており、いわゆる「骨太方針2006」では、「約700兆円ある国の資産を2015年度までに約140兆円に圧縮する」方針を決めています。

その方針の下、昨年5月初旬に開催された経済財政諮問会議では、国の資産だけでは不十分ということなのか、民間議員から「国立大学法人が全国に保有している土地などの資産は有効活用されていない」との指摘がなされ、「国立大学法人が抱える資産についても売却や有効活用などを進めるべき」という提案が出されました。

現在、各国立大学法人が保有している土地、建物、工作物などの膨大な資産*1は、全て法人化の際、国から各国立大学に譲渡されたものです。しかも「タダ」で。あまり知られていないことですが、国民の貴重な資産である国有財産が、平成16年4月1日を機にいとも簡単に各国立大学法人に無償で引き渡されていたのです。

国から各大学への承継に当たっては、資産の適正な評価額を設定するために、不動産鑑定士や公認会計士といった専門家に資産評価をお願いし高額な手当てが支払われました。これにかかった費用は、全国で膨大な額となったわけですが、これ全て国民の税金なのです。

経営資源のほとんどを学生納付金や寄付金など自己収入に頼り、懸命な企業努力で大学経営や資産の確保・拡大を行ってきた私立大学から見れば、国立大学の法人移行時におけるこのような身内同士の馴れ合い的お手盛りの所業は、極めて公平性に欠けたものであり、許しがたいことだったのではないかと思います。

国立大学法人における資産の活用状況は


さて、このような経緯によって国立大学法人に承継された資産は、国民の皆様が充分に納得できるほど有効に活用されているのでしょうか。全国の国立大学法人の状況を確認したわけではありませんが、知り得る限りにおいては、答えは「No」と言わざるを得ません。

なぜならば、国立大学法人には、法人化以前から、会計検査院、財務省理財局、総務省などによる調査・検査において「有効活用が図られていない」と指摘を受けた数多くの「遊休地」や「遊休建物」がそっくりそのまま引き継がれているからです。

また、大学の教員の中には、普段自分達が使用している建物や研究室をまるで自分のもののように考えており、大学全体として有効活用を図り、少しでも国民の負託に応えようなどという意識は全くない人が多いからなのです。

事実、法人化後、資産の有効活用を経営改善の重点項目として取り組んだ大学でない限り、今でも使い道に困ったお荷物資産や教員の既得権で手をつけることのできない資産が数多く存在しています。

それでは、国民の皆様にとって良くない例をご紹介しましょう。

ある国立大学法人(こういう大学は少なくないと思われます)では、法人化以前に全く活用されていなかった資産を国から承継しています。使いもしないようなものをなぜもらったか、それは、法人化後大学の資産規模が減ってしまうことはみっともない、したがって国からもらえるものはできるだけもらっておこうという公務員意識(貧乏人根性)がそうさせたのです。

単なる見栄ですね。これらの資産のほとんどは、使い勝手の悪い土地や、老朽化が著しく耐震性にも問題があり、すぐにでも改修や建て替えを行わなければならない危険な建物です。

しかしながら、それを改善するためには膨大な資金を調達する必要があり、今の貧乏な国立大学法人ではとても対応することはできません。そのため、危険だとわかっていても手が出せず何年もの間放置せざるを得ない状況が続いています。特に、教育・研究に直接関係しない教職員・学生用の福利厚生施設、宿泊施設、研修施設、宿舎などは、多くの国立大学法人がその取り扱いに苦慮している課題です。

おそらく、民間企業であれば、即、不良資産としての処置を検討し実行するのでしょうが、残念ながら大学はそれができません。なぜならば、大学の教職員のほとんどは、これまで大学の経営なるものを真剣に考えたことがなく、こういった状況を自分自身のこととして全く認識していない、つまり、「国民から負託されている資産を国民のために有効に活用する義務が課せられているのだ」という自覚を持っている人は皆無に近いからなのです。

自分の会社の不良資産を気にしない社員、それを解決しないと自分の生活の糧にも跳ね返ってくるといった危機感や緊張感を持たない社員を多く抱える企業はきっとめずらしいだろうと思いますし、そういう企業は、おそらくは長続きしないはずですよね。

不良資産が国民の前にさらされることになった


平成18年4月から、国立大学法人には民間企業並みに「減損会計基準」なるものが適用されることになりました。

このことにより各国立大学法人は、保有する資産を使って行う業務の実績が低下した場合や、今後資産を使う予定がない場合などにおいては、資産を減損し(評価額を下げ)、その結果を毎年度の財務諸表において明確にしなければならなくなりました。つまり、有効に活用されていない資産について、国民や社会に対し公表するしくみが整備されたのです。

法人化までは、例え「遊休地」や「遊休建物」を放置していても、全く現実味のない(というより虚偽の)利用計画を作成することによって、文部科学省、財務省、会計検査院などの同じ公務員という仲間内からの追及から逃れることができていましたが、この減損会計の導入により、国から承継された国民の資産が有効に活用されていない実態が社会や国民の目にさらされることとなったのです。(国民の皆さん、各国立大学法人のホームページで公表されている「平成18年度の財務諸表」を一度ご覧になってはいかがでしょうか。その大学で有効に活用されていない資産がどういうものであるかバッチリ見ることができますよ。)

国立大学法人に導入されることとなった減損会計基準は、政府による国の資産圧縮政策とは別の要請に基づき導入されたものですが、いずれにしても、国立大学法人の場合、国民から与えてもらった貴重な資産を有効に活用していないということは、大学の基本機能である教育・研究をはじめとする国立大学法人の使命・役割を適切に果たしていない、つまりは、「やるべきことをやっていない」という審判を国民から受けることになるものだと思います。

今後、仮に、政府の資産圧縮政策と減損会計が結びついた場合には、有効に活用されていない資産については、処分等を求められる可能性が十分あります。国立大学法人の経営トップや教職員はこのことを十分認識しなければなりませんし、緊張感のある資産管理に努め、「国民の資産」の使い方についての説明責任を果たしていかなければなりません。


*1:文部科学省の調べによれば、国立大学法人全体の平成17年度末の資産総額は、なんと約9兆2,741億円也

2008年2月5日火曜日

自分のこととして考える

今日は大変気持ちのいい日記が書けます。

最近、友人宅で、ある小学校の学校新聞を目にする機会がありました。その中には、小学1年生の書いた日記と、日記を読んだ先生の感想が書かれてありました。

私がいろいろと講釈を述べる前に、まずは読んでいただいた方がいいと思います。
原文(抜粋)のままご紹介します。皆さんはどうお感じになりますか。


先日、2人の子が同じ日に同じ内容の日記を書いていました。下校途中のバスでの出来事でした。

【Aさん】
きょう、バスの中でかなしいことがありました。
それは、小学校のおにいちゃんがバスの中で、ていきいれをなげあいっこしたり、ゆかにふざけてなのかわからないけど、ねっころがっていました。
わたしはとてもかなしいです。
だって、バスのうんてんしゅさんも、しんぱいになるから、わたしはやめてもらいたいです。
【Bさん】
今日は、かえりのバスできけんなことがありました。
それは小学校のおとこの子がバスの中で、ていきをつかってあそんでいました。
どんなあそびかというと、ていきいれをなげていたり、ふりまわしてあそんでいました。
でも、わたしがとめられなかったのもありました。
これからは、わるいことをしているおともだちがいたら、とめてあげたいです。

Aさんも、Bさんも同じバスに乗っていて、同じ出来事を見て感じたことを書いていたのです。

バスのの中でふざけることが悪いということは、誰もがわかっていることです。
しかし、その場の雰囲気に流されてしまい、周りの人のことが見えなくなってしまったのが、この日記に登場した「お兄ちゃん」でした。
人間は弱い存在ですから、楽な方や楽しい方に流されがちです。だからこそ、社会で守るべきルールやマナーを決めているのだと思います。

しかし、この日記を書いた2人は、バスの中でのルールやマナーだから守るのではなく、それらの意味をしっかり理解しています。そして「自らに引き寄せて考えている」のです。

その証拠にAさんは「わたしはとてもかなしいです。」と表現し、Bさんは、「わたしがとめられなかったのもありました。」と書いています。

「バスの中でふざけている人がいる。でも、私は静かに座っているからいい」と考えても何ら問題はないように思います。どちらかと言えばそう考える方が一般的でしょう。しかし、この2人は違いました。

この2人の日記を読んだとき、2人に落ち度はないのに、これほどまでに自分に問題を引き寄せて考えることができる、ということに驚かされました。そして、この姿をとても嬉しく思いました。

私達が大切にしていることは、「人間誰にでも間違いはある。だからこそ、気づいた人が教えてあげられればいい。それを相手にわかるように教えてあげられるのが友達だ」ということです。

大切なことは、その伝え方が相手の心に響くものであるかどうか、受入れられるものであるかどうかだと思います。そして注意された側は、その間違いに気づいた後に、どう行動するかということが重要になってくると思います。

つまり、目の前で起こった問題(それが自分にとって何の関係もないように思えることでも)をどれだけ自分に引き寄せて考えることができるかということなのです。それはとても難しいことですし、大人でもなかなかできることではありません。
しかし、問題を自分に引き寄せて考えることから、その問題の解決への糸口が見つかってくるのではないかと思うのです。

この2人の姿から、私達が求めている子どもの姿を垣間見ることができます。
「私は関係ない」ではなく、「自分に何ができるか」を考えることのできる子どもが育っていることを心から嬉しく思いました。


いかがでしょうか。私は読んでいて目頭が熱くなりました。最近のすさんだ世の中で、とても感動深い話ではないでしょうか。

私達大人の多くは、毎日ゆとりのない生活に追われていますが、この新聞に描かれた「小学生の純粋な心」は、人間として決して失ってはいけない大事なものを教えてくれたような気がします。

わずか6~7歳の子どもでも気づく当然のことを、私達大人はいつのまにか忘れてしまっているのではないでしょうか。無限の可能性を秘め、将来ある子ども達の手本となる生き方を私達大人はしているのでしょうか。

目の前にある問題の先送りや、問題を遠ざけることを優先して考え行動することをしてきた大人は少なくないと思います。
「『私は関係ない』ではなく、『自分に何ができるか』を考えることのできる人間」を私達はどれだけ実践してきたでしょうか。

この学校新聞は、自分自身を見つめ直す機会を与えてくれました。
これからは、この小学生の心に立ち返って、何事に対しても「自分のこととして考える」勇気を持って生きていきたいと正直に思ったのでした。

2008年2月4日月曜日

国立大学法人の評価

国立大学法人の業務実績の評価は、主務官庁である文部科学省に置かれた「国立大学法人評価委員会」による評価だけでは終わらないことをご存知でしょうか。

国立大学法人の評価については、教育・研究・診療という業務の特殊性に鑑み、一義的には「国立大学法人評価委員会」が評価を行うことになっているのですが、国立大学法人といえども、「独立行政法人通則法」を準用した法律(国立大学法人法)により設置されている独立行政法人には違いはありませんので、「国立大学法人評価委員会」が行った評価を、さらに「総務省に置かれた政策評価・独立行政法人評価委員会」が2次評価*1するしくみになっているのです。

いわゆる「お仲間達」が行った評価を第三者的に総務省が検証しようということなのかもしれませんが、各府省が所管する旧特殊法人である独立行政法人などは、この総務省の評価によって、毎年、組織の存続を含めた厳しい見直しを迫られているという実は恐るべき評価なのです。

このたび(1月31日)、この総務省による平成18年度の国立大学法人の業務実績に関する評価結果が公表されました。
この機会に、国立大学が法人化された平成16年度以降の評価結果も含めてご紹介します。


平成18年度

平成18年度における国立大学法人の業務の実績に関する国立大学法人評価委員会の評価の結果(以下「評価結果」という。)については、以下のとおり改善すべき点がみられた。
  • 各国立大学法人の中期目標の前文には、各国立大学の理念等である基本的な目標が記載されている。貴委員会は、各大学の基本的な目標の達成に向けた取組状況の評価に取り組んでいるが、その評価結果の説明には法人ごとに差異があり、大学の基本的な目標との関係においてどのような評価が行われたのか分かりにくいものもみられる。今後の評価に当たっては、各国立大学法人の基本的な目標の達成に向けた取組状況について、引き続き積極的に評価を行うとともに、評価の結果を分かりやすく説明するよう工夫すべきである。

  • 貴委員会は、本年度評価より、研究費の不正使用の防止のための体制・ルール等の整備状況についての評価を行っているが、その後も一部の国立大学法人において公的研究費の不正使用が発覚している例があることなどを踏まえ、公的研究費の不正使用の防止のための取組状況について、引き続き評価を行うべきである。

  • 随意契約の適正化の一層の推進について、政府全体で取り組んでいることにかんがみ、一般競争入札の範囲の拡大、契約の見直し、契約に係る情報公開等についての取組状況について、引き続き評価を行うべきである。

  • 国立大学法人会計基準の実務上のガイドラインに当たる「「国立大学法人会計基準」及び「国立大学法人会計基準注解」に関する実務指針」の改定により、財務諸表において開示すべき国立大学附属病院(以下「附属病院」という。)のセグメント情報については、平成18年度から物件費について診療経費と一定の教育研究経費とが区分され、更に19年度からは教員人件費についても各教員の勤務実態に応じて附属病院と医(歯)学部との切り分けが行われることを踏まえ、今後の評価に当たっては、従来にも増して、一般診療部門における経営の効率化の進展状況、経営努力が十分に行われているかといった点に着目した評価を行うべきである。

  • 各附属病院において、国立大学病院管理会計システム(HOMAS)又はこれに類する会計システム(以下「HOMAS等」という。)が導入されたことにより、従前に比べて附属病院の経営に係る分析手法及びHOMAS等により得られる各種統計データが整備されつつある。こうしたことを踏まえ、今後の評価に当たっては、附属病院を置く各国立大学法人が、例えば、HOMAS等により得られたデータを基に他の附属病院との比較検討による経営分析を行うなど、各種統計データ等を活用して附属病院経営の効率化に向けて取り組んでいるかといった点に着目した評価を行うべきである。

平成17年度

以下の点を踏まえつつ、国立大学法人評価委員会の評価結果が活用され、中期計画等に基づく業務の質の向上及び効率化が、引き続き効果的に推進されるよう図っていく必要がある。
  • 学長等による経営方針の明確化等の取組については、経営体制の効果的運用に関して注目される取組として評価した法人の取組も含め、各法人の実態や当該経営方針等の性格に留意しつつ、当該取組の進捗ちょく、機能発揮や見直しの状況等について継続的に評価を行うべきである。

  • 法人の実施している戦略的な資源配分の成果の事後チェック及び配分の見直しに関し、今後、法人の実施体制等の整備状況とその機能の発揮状況について継続的に把握し評価を行うべきである。

  • 経営協議会については、会議運営規則、議事要旨(議事録)及び法人運営に活用された指摘事項の具体例に関する資料を基に、必要に応じてヒアリングでの追加確認を行いつつ、その運営の合規性と活性化の状況、指摘事項の法人運営への活用について評価を行っている。法人運営における経営協議会の重要性を踏まえ、継続的にこのような評価を行うべきである。

  • 財務情報の活用については、各法人の財政規模、収支構造に着目して分類し、主要な財務指標について法人間比較と法人ごとの経年比較を行っている。また、法人ごとの経年比較結果については、財務内容の改善に関する取組等の評価の客観的裏付けとして活用しているところであり、今後、引き続きその充実を図るべきである。なお、昨年当委員会が指摘した各附属病院間における比較を可能とするための費用に関する情報の適切な把握については、会計基準等の改訂により対応がなされているが、今後、比較可能性をより高めるため、収益、資産等に関する情報についても適切に把握・分析した上で評価を行うべきである。

  • 法人運営に影響を及ぼすおそれのある各種事項に対する危機管理について、全学的・総合的な対応体制の整備状況について評価しているが、今後、引き続き予防的観点にも着目した危機管理についての評価を行うべきである。

  • 「行政改革の重要方針」(平成17 年12月24日閣議決定)の総人件費改革の実行計画を踏まえ、各法人は中期目標に人件費削減の取組を記載するとともに中期計画に削減目標を設定している。国立大学法人評価委員会は、平成17年度の評価結果において、各法人に対し、今後、中期目標・中期計画の達成に向け、着実に人件費削減の取組を行うよう促しており、平成18年度以降は、その取組の進捗ちょく状況について評価を行うべきである。

  • 公的研究費の不正使用等の防止のため、総合科学技術会議が示した「公的研究費の不正使用等の防止に関する取組について(共通的な指針)」(平成18年8月31日)等に沿った、体制整備、ルールの整備・明確化等の取組状況についての評価を行うべきである。

  • 随意契約により実施している業務については、国における取組(「公共調達の適正化について」(平成18年8月25日付け財計第2017号。財務大臣から各省各庁の長あて。))等を踏まえ、各法人における一般競争入札の範囲の拡大、契約の見直し、契約に係る情報公開等についての取組状況等についての評価を行うべきである。

平成16年度

以下の点を踏まえつつ、国立大学法人評価委員会の評価結果が活用され、中期計画等に基づく業務の質の向上及び効率化が、引き続き効果的に推進されるよう図っていく必要がある。
  • 学長のリーダーシップを発揮させるための各法人における運営体制の整備や、学長裁量の経費・人員枠の確保等の状況について把握し評価しているところであるが、今後は、これらの体制や仕組みが法人運営においてどのように機能を発揮しているかという観点からも各法人の状況を把握し評価を行うべきである。

  • 業務運営や財務内容の改善について評価を行う際には、財務諸表等の分析結果を積極的に活用するとともに、経常損益・当期損益の主な内容・要因や経費節減に係る財務上の改善状況等について把握・分析した上で評価を行うべきである。また、今後は、これらを含めた重要な財務情報等についての経年比較を行った上で評価を行うべきである。

  • 国立大学法人の運営において財務上大きな比重を占める附属病院の財務状況については、病院における教育研究診療が一体的に行われている実態にも留意しつつ、業務費用の主要な内訳を把握することが求められること、また、現状では、費用計上の内容も法人間で異なっており、各附属病院間における比較が可能となるよう費用に関する情報を適切に把握することが求められることから、これらの情報を把握・分析した上で評価を行うべきである。

  • 「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」(平成17年6月21日閣議決定)において、公的部門全体の人件費を抑制することとし、こうした取組を通じ、法人に対する運営費交付金等を見直すこととされ、現在、各方面で議論が行われているが、今後の議論の動向も踏まえて、必要な評価を行うべきである。

この総務省が行う評価、実は残念ながら、国立大学法人評価委員会への対応で精一杯の大学現場の教職員の方々は、あまりご存じないようです。
今年は、平成19年度の年度評価とともに、第1期中期目標期間の評価も合わせて実施されます。
総務省の評価委員会が、国立大学法人評価委員会に指摘したことは、必ず次年度の評価に反映されます。
身内が行った評価結果ばかりを気にするのではなく、ある種の外部評価である「総務省の指摘」にも十分配慮した準備を行わなければなりませんね。


*1:総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会が、評価の厳格性や信頼性を確保するため、各府省の評価委員会が実施した評価(1次評価)の結果について、横断的に評価(2次評価)するもの:http://www.soumu.go.jp/hyouka/dokuritu_n/hyoukaiken.html

2008年2月3日日曜日

教育再生会議最終報告

政府の教育再生会議(野依良治座長)は1月31日、首相官邸で最後の総会を開き、最終報告を福田康夫首相に提出しました。

同会議は、これまで3次にわたる報告をまとめてきましたが、今回がその最終であり、文部科学省など関係省庁に対し「実施計画を作成し提言内容を着実に実行することが必要」と指摘し、「国、地方公共団体、学校等の実施状況を評価し、実効性を担保する新たな会議を内閣に設けることが極めて重要」と提案しました。 [右写真:首相官邸ホームページから引用]

報道では、主に初等中等教育関係の事項が取り上げられていましたので、ここでは、前回*1同様、高等教育関係の該当部分(抜粋・要約)をご紹介します。 

「社会総がかりで教育再生を」(最終報告)-教育再生の実効性の担保のために-

はじめに

教育再生会議は、我が国の教育の在り方を根本から見直す作業を進め、これまで第1次報告から第3次報告まで3つの提言をとりまとめてきた。

教育再生の原点は、保護者はもとより、国民、社会全体から信頼され、期待される教育の実現。教育再生会議の委員は、それぞれの立場から、現在の日本の教育をどのように再生させるべきか議論してきた。その議論の結晶が第1次から第3次までの報告。

国民の皆様も、国や地方の行政の方々も、校長・教員はじめ学校関係者も大学関係者、保護者や地域の方々も、これらの報告をしっかり受け止めて頂き、国民一人ひとりがあらゆる場を通じて、教育再生に参画することをお願いしたい。

これまで「臨時教育審議会」、「教育改革国民会議」を通じ、日本の教育制度の根幹に関る改革が提言されてきたが、残念ながら、それらの提言は十分教育現場に反映されているとは言い難い状況。

こうした状況を踏まえ、教育再生会議では、最終報告にあたり第1次報告から第3次報告までの提言の実効性の担保を重視。

「生活者重視」、すなわち教育の受益者である全ての子供や若者たち、保護者の立場に立った教育再生、自立して生きる力と、共に生きる心をもった人材を育成する教育再生が着実に推進されることを強く期待。

教育は国家百年の大計。知・徳・体のバランスのとれた教育環境が整備され、健やかな子供が育まれることは国民の願い。

特に、最近の社会状況に鑑み、学校教育における徳育の充実が不可欠。

さらに、「知」の大競争がグローバルに進む時代にあって、今、直ちに教育を抜本的に改革しなければ、日本はこの厳しい国際競争から取り残される恐れ。

効率化を徹底しながら、メリハリを付けて教育再生に真に必要な予算について財源を確保し、投資を行う必要。


提言の実現に向けて

第1次報告から第3次報告までの提言は、全て具体的に実行されてこそ初めて意味を持つ。

提言を実行するための具体的な動きが国、地方公共団体、学校、家庭、地域社会、企業等、社会全体で始まることが大切で、これらの取組をフォローアップしていくことが求められる。

その中で主な項目を挙げれば次の通り。

■大学・大学院改革(世界をリードする大学・大学院を目指す)
  1. 大学は「教育の質」を高め、成績評価の厳格化を図り、卒業生の質を保証する。
  2. 大学は教養教育を重視し、社会や産業界、地方公共団体との連携を深め、社会人としての基礎的能力と専門的能力を備えた卒業生を送り出す。
  3. 大学は学長のリーダーシップにより改革を推進するとともに、「学部の壁」を破り、新しい学問分野の開拓・創出や社会の発展に寄与するため、教育組織を再構築する。
  4. 大学院は国際公募による第一級の教員の採用と国内外からの優秀な学生の獲得に努力し、国際競争に勝ち抜ける世界トップレベルの教育研究水準を目指す。
  5. 国公私立大学の連携により、国公私を通じた大学院の共同設置や地域における学部教育の共同実施を推進する。
  6. 国立大学法人は教育水準の向上のため必要に応じ「定員縮減」や「再編統合」を推進する。
  7. 大学・大学院の国際競争力強化のため、改革の推進とともに、高等教育に対する投資を充実する。競争的資金の充実とともに現在の基盤的経費の取扱いはしかるべき時期に見直す。


これまでに実施された提言実現のための取組

これまで教育再生会議の行ってきた提言実行のため、法令等の制度改革、予算の確保など、国、都道府県、市町村、関係団体をはじめ、社会全体で具体的な取組が進んでいる。

ただ、これらの改革が、真に教育再生のための動きとなるためには、単に制度を改革する、予算を確保するというだけでなく、その制度や予算が教育再生の目的や趣旨に沿って、教育の現場で実施されることが重要。

次のようなこれまでの国レベルの主な取組を含め、施策の具体化とともに、施策が実際にどのように実施されているかをフォローアップしていくことが求められる。

■大学・大学院の改革

  1. 9月入学の促進のため、学校教育法施行規則の改正により、大学の4月入学原則を撤廃(平成19年12月)
  2. 大学と企業等が意見交換する「産学人材育成パートナーシップ」の創設(平成19年10月)(文部科学、経済産業省)
  3. 平成20年度予算案 ・グローバルCOEプログラムの拡充


提言の実効性の担保のために

教育再生会議の役割はこの最終報告で終了。

今後最も重要なことはこれまで報告書で提言した事項の制度化・仕組みづくりを進め、具体的な教育現場での改革に如何に結びつけるか、提言の実現とフォローアップ。

文部科学省をはじめ、関係府省においては、実施計画を作成し、提言の内容を着実に実行することが必要。

また、第1次から第3次報告が提言に終わることなく、教育再生が現実のものとなるよう、国、地方公共団体、学校等における実施状況を評価し、実効性を担保するため新たな会議を内閣に設けることが極めて重要。

60年ぶりに改正された教育基本法を踏まえ、教育三法の施行や教育振興基本計画の策定など、いよいよ教育再生の本格的な実施段階に入る。教育再生の鍵を握るのは、これからの実施段階。

一人ひとりかけがえのない存在である、全ての子供たち、若者たちの未来のために、そしてグローバル時代の我が国の健全な発展のために、具体的に教育再生が実現していくことを望んでやまない。


フォローアップのためのチェックリスト

第1次報告から第3次報告までの提言は、実行されてこそ初めて意味がある。

フォローアップに際してチェックすべき主な項目は次の通り。

■大学・大学院の改革

【直ちに実施に取りかかるべき事項】

  1. 大学教育の質の保証(卒業認定の厳格化)
  2. 国際化を通じた大学・大学院改革(9月入学の大幅促進、英語による授業の大幅増加(当面30%を目指す))
  3. 世界トップレベルの大学院教育(国内外に開かれた入学者選抜、コースワーク、大学院への早期入学、大学院生への経済的支援)
  4. 国立大学法人の更なる改革(国立大学・学部の再編統合、学長選考などマネジメント改革、学部の壁を越えた教育体制)
  5. 地方の大学教育の充実(国公私を通じたコンソーシアム、大学院研究科等の共同設置)
  6. 大学・大学院の適正な評価と高等教育への投資の充実(基盤的経費の確実な措置、競争的資金の拡充、評価に基づく重点的な配分、大学の自助努力を可能とするシステム)
【検討を開始すべき事項】
  • 大学全入時代の大学入試の在り方


(参考)

●第1次報告
「社会総がかりで教育再生を~公教育再生への第一歩~」(平成19年1月24日)

●第2次報告
「社会総がかりで教育再生を」-公教育再生に向けた更なる一歩と「教育新時代」のための基盤の再構築-(平成19年6月1日)

●第3次報告
「社会総がかりで教育再生を」-学校、家庭、地域、企業、団体、メディア、行政が一体となって、全ての子供のために公教育を再生する-(平成19年12月25日)

●最終報告
「社会総がかりで教育再生を」-教育再生の実効性の担保のために-(平成20年1月31日)



今日は節分、明日は立春です。旧暦では1年の始まりは立春からと考えられていたそうです。
我が国の教育も、教育再生会議の最終報告を機に新たなスタートを切らなければなりません。
最終報告で提案された一つ一つの事項が、その実行を阻む「鬼退治」をしながら、着実に進められていくことを心から願ってやみません。



*1:「教育再生会議第3次報告」:http://daisala.blogspot.jp/2007/12/blog-post_8423.html

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