2008年4月17日木曜日

評価と資源配分

国立大学法人は今年、第1期中期目標期間(平成16~21年度)の業績評価(暫定評価)を受けることになっています。

そして、この評価の結果は、各大学へ配分される次期中期目標期間の運営費交付金の算定に反映されることになっています。

この評価結果の資源配分への反映については、法人化当初から予告されてはいましたが、具体的な考え方や内容はこれまで全く明らかにされていませんでした。

しかしながら、今期の中期目標期間もあと2年足らずとなったこともあり、また、昨年の夏閣議決定された「経済財政改革の基本方針2007」(いわゆる骨太方針)*1を踏まえ、去る4月14日、文部科学省は、全国の国立大学長を召集し、「第2期中期目標期間における国立大学法人運営費交付金の配分に関する見直しの方向性」について説明を行いました。

配付された資料の内容は次のとおりです。


(方向性1)
第1期中期目標期間における各大学の努力と成果を評価し、資源配分に適切に反映させることを通じ、競争的環境を醸成し各大学の切磋琢磨を促す。



(方向性2)
第2期中期目標期間を通じ機動的に各大学の改革を支援し、教育研究水準の向上等に向けた各大学の継続的な努力や、大学の多様化、機能別分化を促す。



(方向性3)
各大学の特性・状況に配慮しつつ、大学経営の効率化を促す。


説明を直接聞いたわけではないので何とも言えませんが、資料を見る限りでは、事柄の重大さの割には、あまりにもあっさり、かつ抽象的な内容だったので拍子抜けしました。

おそらく、ルールの細かい制度設計は、現在、財務省との折衝を繰り返しながら進められているのでしょう。

国立大学自身はもとよりですが、文部科学省の担当者の皆様には、「国立大学の役割・使命・存在意義」を改めて問い直していただき、「経済格差が教育格差を産まない仕組み」と「努力する者が報われる合理的な制度」の構築に全力を傾注していただき、我が国の将来をかけ財務省との闘いに是非勝利していただきたいと切望いたします。

国立大学の予算に対する国民の興味関心は相変わらず希薄なようですが、報道は次のような記事を配信しています。

国立大の「努力」で交付金上下 外部の評価もとに (2008年4月14日 朝日新聞)

国立大の主な経費を支える運営費交付金について、文部科学省は個々の大学の「努力」を より反映するよう配分のルールを見直す方針を固めた。現在は、大部分が学生数などをもとに自動的に決まるが、10年度からは各大学の教育・研究や運営の改善ぶりについての外部評価の結果を反映させて配分額を決める。

文科省はこの方針を、14日午後に開かれた国立大の学長会議で説明した。

04年度に法人化された国立大は、学生が納める授業料や付属病院収入などの自己収入だけでは、必要経費の半分程度しかまかなえない。運営費交付金は、この収入不足を補うた めに国が出している補助金だ。主に教員の人件費や光熱費など大学の「基盤的経費」に使 われており、08年度予算では約1兆1800億円を計上している。

配分額の決定にあたっては、学生数などに連動して自動的に決まる割合が大きい。各大学の努力や成果が反映される「特別教育研究経費」は徐々に増えているが、それでも08年度で全体の6.7%の790億円に過ぎない。

新ルールで配分に反映させるのは、文科省の国立大学法人評価委員会による、学部ごとの 「教育や研究の水準」や大学全体の「業務運営の改善」についての評価結果。具体的な配 分方法が決まるのは09年度だが、大学の努力が現在より配分額の増減につながるようになる。

地方や文系単科という理由だけで不利になる配分にはしない見込みだ。

国立大は04年度から09年度までの6年間を第1期中期目標期間とし、中期計画に基づいて運営している。10年度に始まる第2期期間の交付金の配分額は、新ルールに基づき、07年度までの4年間の達成状況を判定した評価委の「暫定評価結果」をもとに決めるとしている。

運営費交付金の配分ルールについては、政府の経済財政諮問会議の民間議員が昨年2月、全面的な競争原理の導入を提案。だが、「地方や文系単科など半数の国立大が破綻(はた ん)する」などとして、与党や知事会などが反対。最終的に「骨太の方針07」では、「各大学の努力と成果を踏まえたものとなるよう、07年度内をめどに新たな配分のあり方への見直しの方向性を明らかにする」とトーンが弱まった。

国立大交付金に外部評価を反映 文科省 10年度から適用へ (2008年4月15日 西日本新聞)

文部科学省は14日、都内で開かれた国立大学長会議で、国立大の主要財源である「運営費交付金」の配分方法について、教育・研究水準の向上や経営効率化に向けた各大学の努力を外部機関と同省が評価、配分額に評価結果を反映させる方針を示した。来年夏までに評価と配分の詳細なルールを決め、2010年度交付分から適用を目指す。

教育・研究面の評価は独立行政法人大学評価・学位授与機構が、経営面の評価は同省の国立大学法人評価委員会がそれぞれ行う。各国立大は04年度の独立行政法人化以降、6年間の中期計画に基づいて運営しており、各計画期間ごとに評価結果を出し、次の6年間の配分額に反映させる。

同交付金は学生や教員の数を主な基準に算定され、08年度の総額は1兆1813億円。

05年度からは教員の資質向上などに取り組む大学を重点支援する特別枠も設けているが、割り当て額は全体の1割未満にとどまっている。

*1:国立大学法人運営費交付金の改革=文部科学省は、国立大学法人運営費交付金については、次期中期目標・計画(平成22年度~)に向け、各大学の努力と成果を踏まえたものとなるよう、新たな配分の在り方の具体的検討に早期に着手し、平成19年度内を目途に見直しの方向性を明らかにする。文部科学省は、運営費交付金の配分については、1)教育・研究面、2)大学改革等への取組の視点に基づく評価に基づき適切な配分を実現する。その際、国立大学法人評価の結果を活用する。