2008年9月24日水曜日

新総理と国立大学法人との関係

本日、麻生総理大臣が誕生し、新たな内閣が発足しました。
閉塞感漂う国政、国策、外交の打開にあらゆる努力を傾注していただき、私達国民はもとより、世界の日本として、将来に夢を持てる国づくりを目指していただきたいと思います。

さて、麻生新総理大臣は、昭和63年12月に文部政務次官(~平成元年6月)、平成2年3月に自由民主党文教部会長(~平成2年12月)をされておられますが、こてこての文教族ではなさそうですし、大学や教育行政とはおおよそ無関係だろうと思っておりましたが、なんと、「国立大学の法人化」に関わっておられたことを知りました。

まずは、国立大学が法人化されるに至った主な経緯をおさらいします。


平成11年4月

閣議決定「国立大学の独立行政法人化については、大学の自主性を尊重しつつ大学改革の一環として検討し、平成15年までに結論を得る。」

平成12年5月

自民党・政務調査会が「これからの国立大学の在り方について」を提言

平成12年7月

文部科学省の調査検討会議が検討を開始

平成13年6月

遠山文部科学大臣が「大学の構造改革の方針」を発表
  • 国立大学の再編・統合を推進
  • 国立大学を国立大学法人に移行
  • 大学に競争原理を導入し重点育成 

平成14年3月

文部科学省の調査検討会議が「新しい「国立大学法人像」について」(最終報告)を取りまとめ

平成14年6月

閣議決定「国立大学の法人化と教員・事務職員等の非公務員化を平成16年度を目処に開始する」

平成14年11月

閣議決定「競争的環境の中で世界最高水準の大学を育成するため、「国立大学法人」化などの施策を通して大学の構造改革を進める。」

平成15年2月

国立大学法人法案等関係6法案を国会に提出

平成15年7月

国立大学法人法案等関係6法が成立(10月施行)

平成16年4月

国立大学法人に移行


以上のような経緯を経て国立大学は法人化されることになります。

このうち、いわゆる「遠山プラン」として知られる「大学構造改革の方針」、引いては、文部科学省調査検討会議の最終報告である「新しい「国立大学法人像」について」の基となったものが、平成12年5月に自由民主党政務調査会が提言した「これからの国立大学の在り方について」であったと言われています。

実はこの提言を策定した「自由民主党政務調査会文教部会・文教制度調査会教育改革実施本部高等教育研究グループ」の主査が、このたび総理大臣になられた麻生太郎衆院議員だったのです。

今日は、国立大学の法人化に当たっての重要な考え方となった提言「これからの国立大学の在り方について」(長くなりますが全文)を、麻生総理大臣誕生の記念にご紹介したいと思います。

数年経過して読み返してみると、国立大学の在り方、将来像を改めて認識することができると同時に、提言内容と現状との乖離が、国立大学はこれまで数年間何をやってきたのだろう、いかにつまらないことに時間、労力、お金を消費してきたかについて思い知らされたのでした。


はじめに

国立大学の在り方が問われている。きっかけは独立行政法人化の問題である。政府は、平成15年までに、国立大学の独立行政法人化の問題を検討し、結論を出すとしている。しかし、この問題が「大学改革」ではなく「行政改革」の議論の中から提起されたことに、関係者は強い警戒感と不信感を隠さない。大学に「独立行政法人」という名称を冠することへの違和感を指摘する声も少なくない。

高等教育、学術研究は、一国の国力の源泉である。国立大学の在り方は、わが国の高等教育、学術研究の将来像、ひいては、わが国の未来を左右しかねない重大な問題である。だからこそ、われわれは、国の行政機関としての国立大学の在り方、すなわち「高等教育行政」について論ずる前に、まず、国としての「高等教育政策」の在り方について論ずるべきである。

こうした認識に立ち、政務調査会文教部会・文教制度調査会では、行政改革推進本部からの示唆を踏まえ、高等教育研究グループ(麻生太郎主査)を中心に、大学関係者や学識経験者から計5回にわたってヒアリングを実施し、幅広い観点から精力的に研究を進めてきたが、その成果として、今後の高等教育政策の在り方とともに、焦点である国立大学の在り方について、運営、組織編成、独立行政法人化を中心に、具体的な提言がとりまとめられ、本日、政調審議会において了承した。

1 今後の高等教育政策の在り方

現在、われわれは、21世紀を輝ける時代とするため、「教育立国」と「科学技術創造立国」の2つの目標を掲げている。教育も科学技術も、国家発展の基盤であり、原動力である。豊かな教養、優れた創造力、高い倫理観、自立した精神、健全な社会性など、「人づくり」のテーマは尽きない。わが国の科学技術の遅れに対する危機感、焦燥感も、各界から指摘されつつある。

そうした中、高等教育と学術研究の双方を担う大学の役割と責任は、極めて重大である。わが国や世界の未来を担う多様な人材の育成、社会を動かす新しい知の創造、貴重な文化の継承など、大学への期待は、ますます高まっている。大学が、本来、自律的な存在である以上、まず、大学人一人一人に強い自覚を求めたい。その上で、21世紀のわが国の大学が目指すべき「3つの方向」と、それを実現するための高等教育政策の「3つの方針」を提言する。

まず、大学が目指すべき方向の第1は、「国際的な競争力を高め、世界最高水準の教育研究を実現する」ことである。わが国の大学の国際的な評価については様々な見方があるが、教育、研究とも必ずしも十分に満足できる状況とは言いがたい。あらゆる分野のグローバル化が進む中で、大学が、わが国の発展を支え、教育研究の分野を通じて世界に貢献していくためには、まず、国際的な競争を明確に意識し、世界最高水準の教育研究を目指すべきである。

方向の第2は、「大学の個性化・多様化を進める」ことである。国公私立合わせて600を超す大学が、画一的な大学である必要はない。それぞれの特色を生かし、研究重点大学、教育重点大学、教養型大学、実践的な職業人の養成大学など多様なタイプの大学があってよい。個性化、多様化は、序列意識の解消にもつながる。これからの時代は、大学の個性こそ高く評価されるべきである。

方向の第3は、「教育機能を強化する」ことである。わが国の大学教員の関心は、ともすれば研究に偏り、教育面がおろそかになる面があったことは否定できない。近年、カリキュラム改革や教授方法の改善の取り組みが見られる点は評価できるが、大学教育のユニバーサル化が進み、学力低下の問題も指摘される中で、社会性や倫理観、道徳観の涵養にも留意しつつ、大学の有する教育機能を、学生の立場に立ってさらに重視し、その強化を図るべきである。
とりわけ、戦後、画一化され、また、量的にも著しく拡大した大学の在り方を見直し、各大学ごとに担うべき役割を明確に意識していく中で、自ら未来を切り開く先駆的な精神と、社会や国家への貢献、さらに世界への貢献という高い使命感を持った真のリーダーを、今後、いかにして育成するか、という視点が重要である。

大学が目指すべき「3つの方向」を実現するために、今後とるべき高等教育政策の方針の第1は、「競争的な環境を整備する」ことである。教育、研究、大学運営をめぐる競争的環境の中でこそ、大学の個性は磨かれ、国際的水準の大学も育まれる。大学に市場原理をそのまま適用することには慎重であるべきだが、適切な評価に基づく健全な競争は、大学の発展にとって不可欠な要素である。もちろん、評価が研究に偏ることなく、教育に対しても適切に行われるよう十分留意しなければならない。

方針の第2は、「諸規制の緩和を推進する」ことである。大学の個性化を進め、柔軟かつ弾力的な教育研究の展開を図るためには、諸規制の緩和が必要である。とりわけ、私立大学については、建学の精神を踏まえ、より自由な教育研究活動を促すためにも、例えば、学科の新設、改廃は、基本的に大学の主体的な判断に委ねることなど、諸規制の緩和方策について具体的に検討すべきである。

方針の第3は、「国公私立大学を通じて高等教育、学術研究に対する公的投資を拡充する」ことである。わが国の高等教育に対する公的投資が、欧米諸国に比べて極めて低い水準にとどまっていることは、周知の事実である。例えば、対国内総生産(GDP)比では、アメリカ1.1%%、イギリス0.7%、フランス0.9%、ドイツ0.9%であるのに対し、日本は0.5%である。わが国が、欧米諸国へのキャッチアップを目標とした時代から世界のフロントランナーとなる時代を迎えるためには、高等教育、学術研究に対して国が果たすべき役割にも、時代にふさわしい姿が求められる。今後、競争的環境の中で、わが国の大学の国際的な競争力を高め、世界最高水準の教育研究の実現を目指す以上、公的投資も、欧米諸国並みの水準に拡充すべきである。次期科学技術基本計画においても適切な対応を求めたい。

今後、「3つの方向と3つの方針」の下に、わが国の高等教育政策を展開する必要があるが、わが国の大学制度は、歴史的な経緯の下に、国立、公立、私立の3つの形態が併存し、それぞれの性格に応じて、得意な領域を伸ばしつつ、また、時には競い合いながら発展してきた点に大きな特徴がある。欧米諸国の大学制度は、国立大学や州立大学が圧倒的に大きな割合を占めているが、わが国の大学制度の多様で柔軟な構造自体は、今後とも基本的に維持されるべきである。

また、関連して、主として国費で運営される国立大学については、国が、その運営や組織編成の在り方に対して、相当の関わりを持つことは当然であり、とりわけ大学の存廃など中長期的な在り方に関しては、国がより大きな責任を負うべきである。

2 国立大学の運営の見直し

以上のような高等教育政策を前提に、国立大学の運営の在り方については、以下の方向での見直しを提言する。

第1は、「護送船団方式からの脱却」である。全ての国立大学が、国の手厚い保護の下、いわば護送船団方式で運営される時代は、もはや終わりを告げるべきである。これからは、国立大学といえども、より大きな自由とより重い運営責任の下、教育研究の業績に対する評価を基礎に、より競争的な環境の中で運営されるべきであり、その結果によっては、選別と淘汰も避けられない。

第2は、「責任ある運営体制の確立」である。競争的な環境の中で、各国立大学の運営責任は、より重いものとなる。このため、意思決定機関を確立し、評議会の意向を踏まえつつも、執行の最終責任者たる学長が、様々な場面でリーダーシップを発揮しうる権限と体制を確立すべきである。

第3は、「学長選考の見直し」である。より大きなリーダーシップが期待される学長に、真に大学運営に見識を有する適任者が選ばれるよう、選任の在り方を見直す必要がある。学長選考は、制度上評議会が行うこととされているが、実際には慣行的に全学選挙によって選考が行われる結果、必ずしも適任者が学長に選ばれないような状況は、速やかに改善されるべきである。具体的には、国立大学の社会的責任を明確にし、社会との連携の下に適任者を選ぶとの考え方に立って、学長選考のための学外の関係者及び学内の代表者(評議員)からなる推薦委員会を設けた上で、これに「タックス・ペイヤー」たる者を参加させるなど、選考方法の適正化を図るべきである。

第4は、「教授会の運営の見直し」である。学部の教授会が、「自治」という名の殻にこもって既得権の擁護に汲々とし、本来の権限を越えて全学的な課題にまで硬直的な対応に終始していることが、大学改革の前進に大きな障害となっている。昨年、学校教育法等を改正して、学長、評議会、教授会などの役割分担を明確にした趣旨を踏まえ、現状の教授会中心の運営の在り方を抜本的に改めるべきである。

第5は、「社会に開かれた運営の実現」である。より自由な運営を可能とする以上、国立大学の国民や社会に対する説明責任は一層重いものとなる。第三者評価機関による評価は当然のこと、さらに活動実態を積極的に公表し、また、社会の意見を恒常的に運営に採り入れる取り組みが必要である。

第6は、「任期制の積極的な導入」である。競争的環境の整備の一環として、教員に対する任期制の積極的な導入が必要である。平成9年に制度が整備されたにもかかわらず、多くの国立大学で導入が遅れている状況は極めて遺憾である。世界的水準の教育研究の展開を目指すような大学が率先して、任期制を大幅に導入することで、若い教員にも多くのチャンスを与えるとともに、厳しい選抜を経て、真に優秀と認められる教員にテニュア(任期の付かない在職権)を付与するような開かれた教員人事の在り方を検討すべきである。また、講座制の弊害を打破し、若手教員がより自由に独創的研究を行いうる環境を整えることも必要である。

第7は、「大学の運営に配慮した規制の緩和」である。通常の行政事務とは異なる大学の教育研究の実態に配慮して、予算執行、給与決定、組織編成などの国の諸規制をできるだけ緩和し、運営の自由度を高め、学長の権限を拡大すべきである。

3 国立大学の組織編成の見直し

次に、国立大学の組織編成については、以下の方向での見直しを提言する。

第1は、「様々なタイプの国立大学の併存」である。戦後の国立大学は、画一的で、総じて個性や特色を失いつつある。世界的水準の研究の遂行を目指す大学、有為な人材の育成を重点とする大学など、様々なタイプの国立大学が併存するような姿に変えていくべきである。

第2は、「学部の規模の見直し」である。国立大学の学部の規模については、国公私立の大学の機能や役割を踏まえ、また、学問の進展や社会的需要、さらに各地域における国立大学の役割なども考慮しつつ、適切に見直しを進めるべきである。

第3は、「大学院の一層の重点化」である。主として国費で支えられる国立大学は、真に世界的水準の教育研究の遂行を目指す大学を中心に、大学院に重点を置く方向で、教育研究組織の編成を見直すべきである。その際、研究者養成のみならず、実践的な教育を重視した高度職業人養成の大学院の拡充も必要であり、大学院を中心に、各界における真のリ一ダーが育成されなければならない。

第4は、「国立大学間の再編統合の推進」である。大学の再編統合が、教育研究の高度化、学際領域への積極的な展開、教育研究資源の重点的投資、教育研究基盤の強化にも資する点を踏まえ、大学の自主性を尊重しつつも、最終的には、国の責任において、積極的に再編統合を推進すべきである。

4 国立大学の独立行政法人化

以上のような高等教育政策の在り方、・国立大学の見直しの方向を踏まえ、国立大学の独立行政法人化の問題は、次のように考える。

国立大学を、護送船団方式から脱却させ、より競争的な環境に置くためには、国立大学に国から独立した法人格を与えることの意義は大きい。欧米諸国の国立大学や州立大学も、政府から独立した公的な法人格を有しているのが、一般的である。法人化により、大学運営をめぐる目常的な国の諸規制が弱まる点も、教育研究の遂行上、メリットが大きい。

一方、国立大学を法人化した後も、国は、基礎研究の重視、大学院の重点化など、国策としての学術研究や高等教育の在り方を踏まえ、各大学の運営や組織編成に相当の関わりを持つ必要がある。この点、独立行政法人制度は、目標・計画の設定や定期的な業績評価といった仕組みを通じて国の意思を法人運営に反映させうる法人制度であり、国立大学の法人化に当たって、大学の特性に配慮しつつ、こうした独立行政法人制度の仕組みを活用することは、適切な方法であると考えられる。

この場合、独立行政法人通則法を100%そのまま国立大学に適用することは、大学の特性に照らし、不適切である。なぜなら、例えば、大臣が、大学に目標を直接指示したり、学長を直接任命し、解任するような制度は、諸外国にも例が無い。「独立行政法人」という名称も、教育研究を行う大学にふさわしくない。

したがって、国立大学を独立行政法人化する場合には、独立行政法人制度の下で、通則法の基本的な枠組みを踏まえつつ、少なくとも以下の点については、大学の特性を踏まえた措置を要する。
  • 評議会、教授会、運営諮問会議といった大学の管理運営の基本組織を、明確に位置付ける。 
  • 教育研究の目標や計画は、教育研究の特性を十分踏まえた内容とするとともに、各大学の主体性を十分尊重して定める。また、大臣が目標を指示したり、計画を認可する際には、専門の学識経験者の意見を聴くこととする。 
  • 教育研究の評価は、専門の第三者評価機関である大学評価・学位授与機構の評価を尊重する。なお、大学評価・学位授与機構には、大学関係者のみならず幅広い関係者が参画する必要がある。 
  • 学長人事は、大学の意向を適切に反映しうる手続きとする。その際、合わせて、「2 国立大学の運営の見直し」の中で指摘した「学長選考の見直し」の方途についても検討が必要である。 
  • 「国立大学法人」など大学にふさわしい適切な名称とする。 
  • 企業会計原則を適用する場合には、大学の特性を十分踏まえる。 
  • 特別会計の借入金の返済や長期的な施設整備を円滑に進める仕組みを設ける。 
  • 法人化が公的投資の削減に結びつくものではないことを踏まえ、運営費交付金を十分確保するとともに、産学連携などの自助努力を通じて中長期的に内部的な蓄積を進めることにより、多様な教育研究を保障する。 

上記のうち、基本組織、目標・計画、評価、学長人事、名称の5点については、進みつつある国立大学改革をさらに定着、進展させるとともに、大学に対する国の関わりと大学の教育研究の特性との間の調整を図る観点から、各大学に共通に必要な措置であり、ルールの透明性を確保し、広く国民一般に明示するためにも、通則法との間で一定の調整を行う調整法(又は特例法)といった形で、法律上明確に規定すべきである。

なお、国立大学を独立行政法人化する以上、特に経営面での体制を強化する必要がある。経営担当の副学長を配置することは当然のこと、さらに経営面を担当する何らかの学長補佐機関を設けることも検討すべきである。

さらに、法人格の付与の在り方については、大学間の教職員の交流、大学ごとの資産の状況、大学ごとの経理の独立性・透明性の確保等の観点を十分考慮して、今後、引き続き検討する必要がある。

政府は、以上の諸点を踏まえ、国立大学を独立行政法人化するために、広く関係者や有識者の参画を得て、具体の制度や運用の在り方、移行の方法等の検討を進め、平成13年度中に具体的な法人像を整理し、できるだけ早期に「国立大学法人」に移行させるべきである。

なお、国立大学を「国立大学法人」に移行した後も、国土の均衡ある発展の観点から、地方の国立大学が地域の産業、文化の振興などに果たしてきた役割を十分評価し、その維持強化を図るべきである。また、国立大学が、基礎研究や、社会の需要は乏しいが重要な学問分野の継承、発展において果たしてきた機能についても、一層強化すべきである。

関連して、国立大学を「国立大学法人」に移行させる場合には、国立の大学共同利用機関も同様の方向で独立行政法人化すべきであり、名称も「国立大学法人」と同様に適切な名称を検討すべきである。さらに、公立大学についても独立した法人格を付与することについて検討を行う必要がある。

5 高等教育・学術研究への公的投資の拡充

今後、国公私立大学を通じて高等教育、学術研究に対する公的投資を、欧米諸国並みの水準に拡充する必要があるが、その際には、以下の点に留意が必要である。

第1に、「競争的経費の拡充と基盤的経費の確保」である。大学間のより競争的な環境を整備するため、科学研究費補助金などの競争的経費を、より公正・客観的な配分方法に留意しつつ拡充するとともに、教育研究の長期的な展望や基礎的な教育研究分野に配慮して、基盤的経費を十分に確保することが必要である。

第2に、「客観的な評価の結果に基づく資源配分の実施」である。特に、公的資金の占める割合の高い国立大学については、より競争的な環境の整備の観点からも、各大学の教育研究の実態に対して厳正かつ客観的な評価を行い、その評価結果に基づき、透明性の高い資源配分を行うための仕組みについて検討すべきである。

第3に、「私学助成の抜本的拡充と傾斜的な配分の推進」である。わが国における私立大学の重要性を踏まえ、私学助成を抜本的に拡充すべきである。とりわけ、教育研究に極めて高い成果を上げる私立大学に対しては、国としても、国公私立の枠組みにとらわれない積極的な支援を行うべきである。

第4に、「寄附金等の受け入れ促進のための税制の見直しや特許取得体制の整備」である。大学の教育研究に対する善意の寄附金等が、各界各層から円滑に寄せられるよう、所得控除や損金算入限度額の拡大など税制の見直しを積極的に進めるべきである。また、大学における特許取得のインセンチィヴを高めるともに、その実用化を促すための体制の一層の充実整備が必要である。

6 今後引き続き検討が必要な重要課題

上記の諸点のほか、以下の諸点については、今後の高等教育を考えていく上での重要な課題として、引き続き時間をかけて幅広い観点から検討をする必要がある。
  • 海外との研究者・留学生交流の拡充
  • 教養教育の充実強化
  • 生涯学習システムの拡充
  • 教員養成の在り方
  • 産学連携の推進
  • 試験科目の在り方など大学入試の在り方
  • 学部教育の年限の在り方
  • 大学の教育研究施設の老朽、狭隘への対応
  • 社会システムとしてのロースクールなど専門大学院制度の在り方
  • 開かれた教員の任用の在り方
  • 単位互換制度の積極的な活用など大学問連携の推進
  • 国公私立の枠組みを超えた大学問連携の在り方
  • 大学附属病院の経営の改善
  • 短期大学、高等専門学校の見直し
  • 専門学校の見直し
  • 育英奨学制度の在り方