2008年10月30日木曜日

アドミニストレーターの創造(5)

中京大学の刀根實氏が書かれた「大学組織と大学行政管理職員」のご紹介も今回が最終となりました。

これまで、アドミニストレーターの要件(備えるべき能力)として、

1 数字(財務関連諸表)が読める職員(Finance)
2 市場動向を理解して先手が打てる職員(Marketing)
3 ITを難なくこなせる職員(Digital Skill)
4 英語(外国語)が話せる職員(English)
5 人間の理解ができる職員(Communication)
6 国内外で交流ができる職員(Network) をご紹介してきました。

今回は、加えて、

7 専門知識なら教授には負けない職員(Professional)
8 危機管理ができる職員(Risk Management) です。


Skill 8 専門的知識

さらに、事務職員もその専門性を高める必要があるという点において、Professionalを挙げておきたい。事務職員にとっては、先の大学組織のところでも触れた専門性がますます重要になってくる。大学のみならず日本社会には、かつて三種の神器と呼ばれた雇用システムが今も根付いている。いわゆるジェネラリスト養成のため、組織内のいくつかの部署を経験する人事異動システムもそのひとつである。現在、我が国は社会全体がかつてのいいものは新しい世紀に残し、古くて使えないものは古い世紀に置いていこうとしている境目の時代に生きている。こうした中、日本式人事システムは新しい形になって、次世代に引き継がれなければならない。中途採用を利用してその専門性を競わせるといった従来にはないシステム作りを、中京大学でも早くから導入してきたと聞く。事実、中京大学では現行事務職員のうち、中途採用者の比率が約半数近くになっている。

また行政管理の出来る職員ならば、自らの専門性において、たとえ博士号を持っていなくても、教育職員と同等な議論が可能、あるいはそれ以上となることが理想であろう。その意味では、事務職員が夜間大学院や通信教育などを利用して、自己啓発を行っていけるよう組織的なバックアップ作りが不可欠である。学内に於いて、学生達に資格・免許を取得せよ、と叫ぶ前に自分達の自己研修をおろそかにしてはならない。また、米国大学にて留学生を扱うような国際関連部署では、博士号を持つアドミニストレーターが当たり前のように日常勤務していることも、日米間の格差を感じさせるひとつである。MBAなどを流行ではなく、自らのライフスタイルに照らし合わせた計画の一部として、さらには組織と個の関係を再認識した結果として、こうしたものが必要だと思うことが大切である。

Skill 9 危機管理能力

最後になったが、Risk Managementである。事務職員と危機管理といういささか聞き慣れない組み合わせに驚いてはいけない。民間企業では当然のこととして、組織のトップとナンバー2が出張に出かける際には必ず、意識的に飛行機の便を別々にすることは誰もが知っている。かつて、筆者が劇団四季に就職した1983年当時、全国公演で国内各地を移動する際に、主演女優とその代役となるべき俳優(アンダー・スタディと呼ばれる)とは、別の飛行機で次の公演地まで移動していたことを必ず思い出す。万が一の場合でも、公演に穴をあけてはならないという、常に顧客志向の結果である。しかし残念ながら、日本人の危機管理意識は世界レベルで見ても低いことはよく知られている。日本大学大学院の大泉教授はこれを民俗学的なアプローチでいくつかその背景を解説しているが、恐らく個人的にもこうした経験がなければあまり関心を示さなかった領域かもしれない。

ハーマンによれば危機とは、「意志決定集団の最優先目標を脅かし、意志決定が策定される前に対処時間を制限し、発生によって意志決定集団のメンバーを驚かすもの」と定義されている。また、危機管理を定義すれば、「いかなる危険にさらされても組織が生き残り、被害を極小化するために、危険を予測し、対応策をリスク・コントロール中心に計画し、組織し、指導し、調整し、統制するプロセス」ということになる。さらに付け加えればリスクは「コスト」であるとも言える。そのコストを先程の定義を用い、最小限に抑えるためのファクターが「スピード」なのである。大学という業種であろうとも、リスク・マネジメントは「生き残る」ためにも選択必要な分野なのである。

いくつかの先進大学に習って、そうでない大学は一刻も早くそれぞれに応じた危機管理マニュアルを検討し、作成し、実践すべき時に来ている。さらに、その分野での研究やノウハウを情報交換する場を頻繁に設定していく必要がある。我が国のいくつかの大学に於ける経営学部では、この危機管理を授業として採用している大学もあるが、まだ少数派であるのが実状である。

具体的に考えれば、毎年どこの大学でも多くの学生対象の、長期休暇を利用しての語学研修・異文化体験を実施している。多くの学生が海外に簡単に出歩く機会が増えれば増えるほど、危機管理は重要となってくるのである。具体的な事故が発生した場合の対策チームの策定から始まり、マスコミヘの記者会見や報道対策は言うまでもなく、最悪の場合の保険まで多くの大学で対策が整いつつある。しかしながら、それ以外の事例、例えば学内機密文書の漏洩、財政上の管理ミス、あるいは入試判定ミスなど大学経営を脅かす危機やリスクはいくつも存在するのである。

にも関わらず、国内の大学には危機管理センターも危機管理研究所も設置されているところはほとんどない。組織的に危機管理担当者、リスク・マネジャーを置いている大学も聞いたためしがない。如何なる場合にせよ、関係者に事故や事件が発生した場合には、大学は道義上の責任から逃れることは出来ない。こうしたことを想定し、多くの大学において最低でも年に一度程度の会合が組織的に開催されれば意識が変わってくることは間違いない。特に大学に於いては、海外との窓口となる国際交流関連部署では比較的、保険制度の導入などは進んではいるものの、大学全体としては非常にお粗末な状況であろう。本学では昨年、外国人留学生が夏期休暇中、放火により住居を突然喪失するという事件に遭遇した。日本中がお盆休み中であり、大学関係者は連絡が取りづらい状況であったにも関わらず、市内にある外国人留学生を支援するボランティア組織から、すぐさま大学宛に電話がかかり、警察署にも消防署にも連絡を行い、被害状況から現在の仮住まいまで教えて頂くという本当に頭の下がる思いをした。大学の危機管理マニュアルはこうした小さなことから、大事件・大事故までもカバーする大がかりで組織的なものでなくてはならない。


行政管理のDNAを次世代に

長い間、「大学はぬるま湯社会」といわれ続けてきた。事務職員になり行政管理を志向する者としては、まさに日々の実践でこれに反論していきたい。外部要因として強烈な競争意識(メガ・コンペティション)が津波のように押し寄せ、大転換を強いられる21世紀に生きる今、すべての事務職員はその一員として時代の大きなうねりに参加出来ることを心から感謝し日々の業務に励むと共に、新しいスキルを身につける努力を同時に実践しながら大学経営に新しいうねりを生み出していく必要がある。そうしたことが事務職員の行政管理という進化に繋がるのである。

道端に石が落ちていれば、自分でそれをどける地道な作業を忘れて、小手先のマニュアルで処理することは非常に危険なことである。こうしたことは、誰しもが理解している。がしかし、現実にそれを実践していくことが、いかに困難かも常に忘れてはならない。あとは、ひたすら先の9つのマトリックスにある使命を忘れず、8つの能力を向上させ続ける努力を怠らないことである。不断の努力が、次世代の遺伝子に引き継がれ、必ずや我が国の大学行政管理職員となって結実するはずである。

刀根實氏が書かれた「大学組織と大学行政管理職員」の全文については、以下のURLをご参照ください。
http://www.chukyo-u.ac.jp/kokusai/cuic/jp/greeting/organization.pdf

2008年10月29日水曜日

アドミニストレーターの創造(4)

中京大学の刀根實氏が書かれた「大学組織と大学行政管理職員」の中から、アドミニストレーターとして備えるべき能力を前回に続きご紹介します。

今回は、「Digital skill」、「English」、「Communication」、「Network」です。

Skill 4 デジタル・スキル

そこで、3つ目の能力として忘れてはならないのが、Digital Skillである。ワープロや表計算はもとより、ウエブサイトからの国内・外のあらゆる情報を、自らの大学経営にとって必要なものと、そうでないものとに識別する能力までも含めてのスキルである。ただ単にキーボードを打てるだけでは全く意味がない。膨大な情報量の中から迅速かつ正確に、明日への布石となる情報を手に入れておくことは、教育産業という戦場で戦う事務職員の第一歩である。米国の高等教育研究産業で働く人々によく知られている「The Chronicle of Higher Education」のホームページからは、小規模大学の学長職から、学部長や事務職員など、数百にも上るポストの募集が常時行われている。日産自動車やマツダ自動車の例を見るまでもなく、国内に良い人材を見つけることが出来ないなら、海外から優秀な能力を持った人材を捜し出す時代がすでに始まっている。

また、米国の進んだデジタル・テクノロジーはすでに大学にも導入されている。ボイスメールシステムがその一例である。このシステムは米国大学では学生教育サービスの一環として、頻繁に利用されている。ボイスメールシステムとは、教員研究室あるいは各学部センター事務室に設置してある電話機に、ホストコンピュータを利用しての留守番電話機能サービスのことである。これは、早急に連絡が必要な場合にメッセージを残すことにより早い段階で相手に伝えることが出来るため、非常に有効な手段として全教職員・学生に利用されている。また、学生からの問い合わせにも適宜柔軟に対応可能となり、学生サービス向上の一端を担っている。我が国でもコンピュータセンターなどに設置してあるサーバーを拠点とし、この種のサービスを展開することにより教職員相互、または学生間とにおいて無駄のない伝達があらゆる場面で対応可能になると思われる。国を挙げてのIT革命は、大学を始めとする高等教育研究機関から真っ先に始めなくてはならないところではあるが、やはり企業を中心とした実社会が進んでいるのが現実である。

Skill 5 手段としての英語

先程からホームページなど、コンピュータを用いたテクノロジーの先進事例を挙げているが、それを理解する際に欠かせないのが語学、特にEnglishである。21世紀も米国が世界のフロントランナーとして先頭集団を引っ張っていくことは、今のところ誰しも認めるであろう。その米国がIT産業と組んで走るのであれば、英語はもはや世界の共通語となってしまう。理解出来ない、話せないといったレベルではビジネスは成立しなくなるのだ。もちろん、米国以外にも中国・インドといった国々も忘れてはならない。がしかし、我が国でも小学校からの英語教育導入が実施されようとしている今、事務職員が改めて英語を学ぶ意義は極めて大きい。先日も日本経済新聞に、ある不動産関連企業の社長が、英語を自らの会社の共通語であると掲げ、自らTOEIC(ビジネス英語能力を判断するための語学認定試験)を受験したところ、満点980点のところ950点という高得点だったという記事が掲載されていた。この社長は学生時代を含め、留学経験も海外赴任経験もないと書かれていた。全社員に英語の重要性を認識してほしかった、そのために一心不乱に勉強に取り組んだ、とも加えられていた。新世紀へのアドミニズムを実践していくためには、まだまだ実社会から学ぶべきことは多い。そのための海外研修・人事制度など整備されている大学はまだまだ少ないように思えるのは筆者だけだろうか?

Skill 6 コミュニケーション

パソコン、英語とくれば次は、Communicationを挙げなくてはならない。ハイテク機器を操作出来ても、米国人と対等に英語が話せても、最終的には日本人としての心(マインド)が無くては、理解しあえない。我が国でもコミュニケーションを学部・学科として設置する大学が増えてはきたが、さらに専門的な一分野として認識すると共に、ビジネス・スキルとしてのコミュニケーションを教育業界も導入し、実践に移す時代が到来している。先に述べたボイスメールシステムひとつにしても、導入するだけで「言った」「言わない」などの誤解を著しく軽減させ、コミュニケーションを数段向上させてくれる。ペンシルバニア大学ウォートン校ビジネススクールの調査では、日本人・アメリカ人・ヨーロッパ人のうち日本人が最も海外勤務に適し、アメリカ人が最も適さないとの回答が出ている。日本人の適応能力は実はよく知られたところである。

アジアカップで日本人チームを優勝へ導いたフランス人指導者フィリップ・トルシエ監督は次のように語っている。「日本人は自己表現が足りない。私は選手の自己表現の幅を広げようと努力してきた。でも日本人のそういうメンタリティーが武器にもなりうるのかもしれない。」監督がどう仕向けても選手は内に秘めたものを表現しない。個を殺して集団の中に埋もれる。監督の言葉に疑問を投げかけることが無い。良く言えば和を重んじる。監督はそれが理解出来ずにいた。サッカーという競技では表現力の欠如がマイナスに働く。監督はレバノン入りしてからも、その点を指摘していた。「フリータイムを与えても、選手は同じ服を着て、一緒にバスに乗ってレストランに出かけ、同じメニューを注文する。フリータイムだというのに日本人は組織を重んじる」。だが、そういう精神性を備えていたからこそ、日本チームはトルシエのサッカーを急スピードで吸収出来たとも言えよう。ボールも使わずラインの上げ下げを繰り返させるなど、トルシエの最初の練習は特に初期の頃、極めて単調だったと聞く。欧州なら、嫌気がさしてエキセントリックな監督と対立する選手が出ていただろう。感情を外に出して叫ぶことなどしなくても、気持ちを高め、しかも和を形成し集団の中で力を発揮する選手たちの強さを感じ取ったと言う。こうしたコミュニケーションの事例を、監督を大学管理者、選手を学生に置き換えて見れば新しい視点での教育システムが見つかるかもしれない。

Skill 7 ネットワーク

そしてそのコミュニケーションを培うためにも、次の能力としてNetworkが必要である。まずは大学行政管理学会活動を通じての人脈作りである。日本中の大学で勤務する事務職員が、こうして一堂に会いする貴重な場が提供されるのである。我が国の異なる種類の経済団体も統合する時代に、ある特定の枠だけに留まっているべきではない。大きな枠組みの中での人と人との交流が模索される時代である。また、この交流は国内のみに留まらず海外での人脈も重要な役割を果たすこととなろう。特に米国など海外の大学事情を知っておくことは、我が国の大学で勤務する者にとっては決してマイナスとはならないはずである。また先述のテクノロジーを駆使してのネットワーク作りも忘れてはならない。パソコンを利用するだけで瞬時にして国内はもとより、世界中のメンバーとの意見交換や最新情報が入手出来る時代である。機械が苦手というだけで、単に勤務年数が長く事務職員としての能力を向上させていない場合には、もはやそのスタッフは経営的に見れば単なるコストにしか上層部には写らないということを理解しておく必要がある。

またさらなる具体例として、我が国の国際交流関連部署で勤務する人々の研究組織体としてJAFSA(国際教育交流協議会)のメーリングリストによる、デジタル・ネットワークが活発な活動を行っていることも挙げておきたい。瞬時に自らの質問に対する回答がかえってくる現実を見れば、上司の役割とは何かを真剣に考えてしまいかねない。それ程すぐれたシステムであるが、これがすべてボランティアにより、構築・運営されていることは、文字通り驚愕に値する。

2008年10月28日火曜日

アドミニストレーターの創造(3)

中京大学の刀根實氏が書かれた「大学組織と大学行政管理職員」をご紹介する第3回目の今回は、「選ぶ側から選ばれる側への転換、すなわち、大学内の主導権が、教授団から学生に移行するという社会背景の中で、大学は過去の成功体験やぬるま湯体質から決別することが必須である」こと、そして、「行政管理のできる資質と能力を持つ『アドミニストレーター』を育成できるか否かが大学の勝敗を分かつ」こと、さらには「どういった能力を持つアドミニストレータを創造すべきなのか」についてのご指摘です。

1 大学行政管理職員創造のための新モデル

選ぶ側から選ばれる側への転換=哀願者からお客様への転換。我が国における大学の主導権は、教授団や理事会から市場支配力(marketpower)を持った消費者としての学生に移行する。新たなる世紀を迎えようとしている今、アカデミズムから学生消費者主義への移行、そしてそこで働く事務職員によるアドミニズムの創造へと進化しなくてはならない時代となった。

古くから大学は「象牙の塔」として、あたかも聖域のように扱われてきた。教授会という強大な力のもと、実社会と乖離した組織として存続してきたと言ってもよい。一橋大学の竹内教授は「世界レベルの競争力を構築するには、産業全体のダイナミズムが必要である。」と説き、その第一歩は「個々の組織が過去の成功体験やぬるま湯体質ときっぱり決別し、自立すること。」と結んでいる。我が国の高等教育業界に於いても、トップ・マネジメントからのドラスティックな意識改革、そしてそのメイン・ストリームを管理職からすべての組織構成員にまで徹底させることが急務となっているのである。先の竹内教授が「全権型プロデューサー」と呼ぶ新たなるジャンルの事務職員の創造。つまり、大学に於いて行政管理の出来る資質と能力を持つ、マーケティングなどを理解した「アドミニストレーター」を育成出来る大学こそが、21世紀の勝ち組大学となるだろう。ここでは、こうした能力を備えた事務職員の創造を目指した動きをアドミニズムと位置付け、先に触れた具体的な九つのフィールドについて論じてみることとする。

2 アドミニ・マンダラ・モデルが包括する9つのマトリックス

Skill 1 核としての使命

まず、その中心には大学という組織体がゴーイング・コンサーンとして存続するためのMlssion=使命が核として必要である。ドラッカーの言うように学校(非営利組織)は人間を変革する機関であり、「かつて非営利組織ではビジネスは悪い言葉であった」、を払拭する必要があるからである。そのためにはそこで勤務する教育職員も事務職員も、自らを率先して変えていく姿勢を持ち続けなくてはならない。学生からの授業評価アンケートで、毎年同じ講義を一方的に行うだけという評価がこれまで許されてきたのは我が国だけのことではないだろうか。ほとんどの米国大学では、多数の授業科目が開講され、多数の教員がひとつの科目を担当するため、1クラス当たりの履修者が細分化され履修者制限がなされている。よって、学生数が3万人以上在学するような大規模大学においても、1クラス当たりの履修者は20人から30人、多くても50人くらいに収まる。しかし、日本では全学生数に比べ教員持ちコマ数及び教室数が不足しているため、履修者数が何百人にも上る講義科目がどうしても増えてしまう。1クラス当たりの履修者が多い授業形態においては、グループ学習やディスカッション形式での講義が困難になるため、学生の発言機会も必然的に減り、教員からの一方行的な講義にならざるを得ないのである。

また我が国においては、米国大学と比較にならないほど休講が多い。校務などの理由があるにしても、真面目に授業料を納め、授業を受けるべく大学へ足を運んでいる学生からは、不満も多く聞かれる。さらに、講義開始時間になっても教員が教室に現れないケースも日常茶飯事のように成り下がってしまった。因みに米国大学ではこの様な場合、10分(大学によって異なるが)経過した時点でその講義は自然休講となる。ただし、これが発生することは滅多にないことは言うまでもない。今だかつて我が国の大学広告で「本学では、(原則的に)一切休講はありません」を宣伝文句にする大学は出てきていない。大学は教育を施すサービス機関という本来の使命に立ち返れば、あるいは非営利組織は何故存在するのかという根元的な問いをしてみれば、それに対する回答は誰しも思いつくものである。行政管理の第一歩はここから始めなくてはならない。

いつの時代でも、失敗の教訓から学ぶべきことは多い。「大英帝国は教育の失敗で没落した」という内容の論文をまとめたロンドン大学教育研究所のリチャード・オルドリッジ教授もそのひとりかもしれない。「18世紀半ばまでの第一次産業革命で英国は世界の工場になったが、そこから本格的な大量生産時代になる第二次革命期までの教育に失敗した」と分析する教授からは、「使命に帰れ」という言葉が聞こえてくるような気がする。

ではその使命を取り囲む8つの能力・資質には何が必要だろうか?

Skill 2 経営センスとしてのファイナンス

まずは、Financeを挙げる必要がある。数字を読みとる能力は経営感覚と似たセンスだとよく言われる。しかし、教務関係の部署で勤務しようと、管財で施設管理をしょうとも、現代では数字を処理する能力は不可欠である。具体的に言えば、自校の簡単な財務関連諸表はもとより、少なくとも過去数年間にわたる近隣大学への志願者数及び近隣大学の構成スタッフ・データ、バランスシートなどを理解しておくことは最低条件である。さらにコーポレート・ガバナンスが叫ばれる昨今、数字の面でのアカウンタビリティ(説明責任能力)も大学行政管理を司る事務職員には不可欠となろう。各大学の収支報告方式も、毎年の財務状況を紙で報告するだけでなく、企業の期末毎の業績発表のように、記者会見方式に切り替えてみてはどうだろうか。経営者へのチェック機能も一段と活発に機能するものと予想される。その能力を持たない管理職は陶太されて一石二鳥かもしれない。また、かつて筆者のように民間企業を経験したことのある方なら、大学組織そのもののコスト感覚の無さに誰しも驚いたことであろう。行政管理という大きな風呂敷を広げる以上、そのすみずみに着いているゴミを見つけ、自ら取り除く努力を忘れてはならない。新世紀の大学職員には、研ぎ澄まされた数字に対する、その奥に隠されたものまで読みとることが出来る能力までも要求されているのである。この点からも、大学組織のところで述べた大学組織の持つ専門性は、教育職員だけのものではなく、事務職員にも該当することが分かる。もちろん、「分かる」だけでは進化は永遠に訪れない。

Skill 3 マーケティング

次にMarketingを挙げておきたい。マーケティングの定義については、専門書によりいくつかの相違があるが、やはりここでもドラッカーの言う「マーケティングの目的は、販売(セリング)そのものを不必要とすること」を用いるべきである。何故ならば、多くの大学(組織)においてこのことが未だ達成出来ていないからである。このドラッカー的逆説表現に象徴されるように、マーケティングは組織の存続に不可欠な活動である。では特に大学という非営利組織におけるマーケティング、それはいかなるものだろうか?

我が国では、コトラー教授の定義が最も頻繁に引用されている。それによれば非営利組織におけるマーケティングとは、「組織目的を達成するために、標的とする市場との間で自発的な価値の交換を行うべく設計されたプログラム、とりわけ入念に定式化されたプログラムの分析、計画、実行および管理のことである。」となっている。各大学とも中長期の戦略を立案する際に必ず目標設定が行われる、そしてそれに向かって日々の業務が遂行される。簡単に言えば、こうしたことがマーケティングだと思えば良い。しかしながら、それだけでは不十分である。21世紀のマーケターである事務職員には、今我が国の国策となっているIT革命との連動が不可欠なのである。1980年代の大学経営者にインターネットのウエブサイトで、学生募集活動を行うことなど想像も出来なかったであろう。いかに多くの学生を獲得・育成するか、つまり如何に自らの大学のコア・コンビタンスを顧客にアピール出来るか、日本中の大学が懸命になっている。すでに数年前から、米国を中心としたいくつかの大学ではマーケティングを理解し、その手法を取り入れ、このテクノロジーを実践している大学組織が存在している。その際、改革の大きな柱となるのはりエンジニアリングであり、この手法で「情報技術の創造的使用」という考え方を取り入れたのが、米国のマサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology、通称:MIT)である。詳細に語るスペースはないが、MITではすでに数年前から顧客としての学生と、インタラクティブかつリアルタイムに意見を交換し、そのニーズを大学経営に採用しようとしていることが、同大学のホームページから簡単に読みとれるのである。

2008年10月26日日曜日

沖縄 2008 ・ 屋我地島-病者たちの遠い記憶

今夏の沖縄家族旅行の思い出日記も今回が最終回となりました。

屋我地島は、沖縄本島北部(沖縄県名護市、中心部から約10km)に位置し、羽地(はねじ)内海に浮かぶ島です。
沖縄本島とは屋我地大橋で結ばれており、さらに古宇利大橋で今帰仁村に属する古宇利島と結ばれています。

沖縄八景・嵐山展望台



羽地(はねじ)内海は、屋我地島と奥武島に囲まれた内海で、沖縄の瀬戸内海とも言われています。沖縄海岸国定公園などの指定を受ける景勝地で、嵐山展望台から一望することができます。展望台の周辺にはパイナップル畑が広がり、1階の売店ではパイナップルの試食ができます。


国立療養所沖縄愛楽園

屋我地島に「愛楽園」という名の国立療養所があります。お恥ずかしい話ですが、島に足を踏み入れてはじめて所在とともに、ハンセン病を巡る悲しい歴史と多くの人々の苦しみ、惨劇を知りました。とてもショックでした。


愛楽園について書かれた記事「一坪反戦通信 第135号 2002年4月28日発行 【連載】やんばる便り24を見つけました。 

愛楽園には、これまで何度か足を運んだことがある。園内にある「祈りの家教会」(日本聖公会沖縄教区)執事の松岡和夫さん(石垣市出身)に園内を案内していただきながら、12歳で発病した松岡さん自身の体験も含め、園内外での差別や抑圧の実態、戦争中の苛酷な壕掘りや空襲・食料不足による被害などのお話を聞いた。

愛楽園のある屋我地(やがじ)島は、今でこそ橋で沖縄本島とつながっているが、1953年に屋我地大橋ができるまでは、渡し船でしか行けない孤島だった(橋は7年後=60年のチリ地震津波で流失、63年再建されたが、老朽化が進んだため、93年、現在の橋に架け替えられた)。無知や偏見から遺伝病、天刑病、悪質な伝染病などと忌み嫌われたハンセン病を患った人びとは、文字通り「島流し」され、隔離されたのである。

1938年に設立された愛楽園は、沖縄戦時には軍事施設と誤認され、米軍の集中砲火を浴びた。隣の運天(うんてん)港に日本海軍の基地があったため、その兵舎と間違われたのだ。しかし、園の建物のあらかたを焼失した一方、爆弾による死者をほとんど出していないのは、当時の園長・早田皓氏が園内の丘に掘らせた掩蓋(えんがい)付きの横穴防空壕(早田壕と呼ばれている)のおかげだという。戦時下の強制収容者も含め千人近くになっていた愛楽園の患者たちが、防空壕掘りに駆り出され、病気のため手の不自由な患者は、鍬やスコップを縄で縛り付けて掘ったと聞いて絶句した。

大昔、この辺りは海底だったのだろうか、丘の断面には貝殻がびっしりと埋まっているのが見える。そこを掘る手作業は傷だらけになるのを避けられなかった。らい菌は末梢神経を侵し、感覚を奪うため、傷ついても痛みを感じず、そのために傷口から破傷風にかかり、命を落とす人が相次いだ。また、栄養失調や衛生状態の悪化により、アメーバ赤痢やマラリヤなどが蔓延し、爆撃からは守られたものの、沖縄戦時の死者は、300人以上にのぼっている。

松岡さんに付いて入所者の居住区を抜け、海岸に出ると、白砂の小さな入り江が開けた。エメラルドグリーンの海を越えて、古宇利(こうり)島がすぐ近くに見える。戦後、入所者の中には、この海で漁をして生計を立てる男たちも少なくなかったという。

さくさくと砂を踏んで、入り江の突端の小さな岬にある洞窟につれていってもらった。自らも病者であり、現在の愛楽園の基礎を築いた青木恵哉(けいさい)牧師が戦後、祈りと瞑想と執筆のために使っていた場所だという。狭くて天井も低く、知らなければただの岩穴だ。このすぐ隣の浜に1935年末、青木牧師や沖縄のハンセン病患者たちは屋我地島への初上陸を遂げ、療養所建設の道を歩み始めた。近くには、生活に必要な井戸を掘ったところ、上質の真水が出たという場所もあり、「ここが愛楽園発祥の地ですよ」と松岡さんが教えてくださった。ここには納骨堂も建てられており、家族や一門の墓に入れてもらえない人びとの遺骨が安置されている。いつか聞いた「ハンセン病者は(回復しても)死後まで差別される」という言葉を思い出した。

白砂の浜を緑濃いアダンの群落が彩る美しい海岸風景を楽しんでいた私を、松岡さんの言葉が不意討ちした。「このアダンの根元には、生きることのできなかった、たくさんの子どもたちが埋まっているのです」。低くつぶやかれたその言葉は、光あふれるまぶしい浜を暗転させ、凍りつかせた。

感染力が弱く、治る病気であるにもかかわらず、不治の病、遺伝病と言われ、「らい予防法」「優生保護法」を盾に、男性は断種をしなければ結婚を許されず、妊娠した女性は強制的に堕胎させられ、こっそり産んでも、出産と同時に子どもは殺されてしまう……。それが公然かつ平然と行なわれていたという事実に、私は打ちのめされた。トゲトゲの葉を持つアダンの生命力が、急に息苦しく感じられた。

松岡さん自身、園内で妻の春子さんと簡素な結婚式を行なった二日後、断種手術を受けさせられている。その手術台の上で、松岡さんは次のような歌を詠んだ。

愛ゆえに 妻への愛ゆえにと思ほえど
涙あふれぬ 断種の手術に


松岡さんが「患者への人権侵害の最たる悪法」だと言う「らい予防法」、全国の患者が廃止を訴え続けてきたこの悪法は、96年3月の国会で約90年ぶりに廃止された。また、冒頭で触れたように、患者が原告となり、政府の誤ったハンセン病政策の責任を訴えた裁判も患者側が勝訴した。だが、それによってハンセン病の問題が終わったわけでは、もちろんない。一人ひとりの失われた過去を取り戻すことはできないという意味でも、また、私たちの内に巣くう差別や偏見がなくなったわけではないという意味でも。

自らが犯してきた罪を直視することなく、補償金によってこの問題に幕を引きたがっているのは、政府だけではない。私たち一人ひとりが自らの内なる差別と偏見を抉(えぐ)り出し、克服していく努力がなければ、また同じ過ちを繰り返すことになるだろう。とりわけ、ハンセン病療養所設立をめぐって、青木牧師をはじめとする患者たちを、激しく攻撃し迫害した歴史を持つ名護の市民として、知らなかった、では済まされないという思いが、私をこの調査に向かわせた。

今回は、調査後、同じく調査員で高校教師の大西照雄さんに誘われ、数人で彼に案内してもらったジャルマ島のことを報告して終えたい。大西さんは、平和ガイドなどで愛楽園との付き合いが長く、生徒たちにハンセン病を通した「学び合い」を行なっている熱血教師である。

ジャルマ島は、屋我地島と本島にはさまれた羽地(はねじ)内海の中ほどに浮かぶ小さな無人島だ。1927(昭和2)年、救らいのために沖縄に派遣された青木牧師が、31(昭和6)年、沖縄県が屋我地島に向かい合う本島側の嵐山に建設しようとした療養所に対する地域住民の激しい反対運動、35(昭和10)年に、幾人かの患者とともに住んでいた屋部(やぶ)の家が焼き討ちに遭うなどの迫害を受け、住む場所を求めて渡った「のがれの島」と呼ばれている。

濃淡の配色を見せる穏やかな海に、大小の島影がうっとりするような景観を見せる羽地内海が、こんな苛酷な歴史を秘めていようとは、教えられなければ想像もつかないだろう。私たちは、内海に面した屋我地ビーチから手漕ぎのボートを借りて、ジャルマ島へ向かった。

面積990平方メートルの小島に上陸した私たちを迎えてくれたのは、地面の上に虚ろな目を見開いた、たくさんの髑髏(どくろ、しゃれこうべ)だった。昔からの風葬の場所だと聞いていたので驚きはなく、風雨に磨かれて金属的な艶(つや)さえ感じさせる「彼ら」に敬意と、かすかな親しみさえ覚えた。どの時代を生きた、どんな人だったのだろう……。

島の洞窟を住処に、青木牧師ら24~25人が6カ月間、ここで暮らしたという。これらの髑髏や人骨とともに生きていたわけだ。洞窟の周りは鬱蒼と樹木に包まれ、イモや野菜を植えられるほどの小さな広場がある。患者たちが掘ったという井戸もあり、きれいな石積みが残っていたが、大西さんの話では、塩水しか出ず、隣の村から夜に水を運ぶ毎日だったらしい。

愛楽園自治会の『命ひたすら―療養50年史―』(89年11月発行)には次のように書かれている。「ジャルマ島に来てからは、病友たちは浮浪することをやめ、神に祈り神を讃美し、魚を獲って最低の物質的生活をした。国立長島愛生園・宮川量分館長夫人千代子が、ある時ジャルマ島を訪ねて慰問したが、物質的には極めて貧しいものの、信仰の深さは素晴らしいものがある、と感激して帰ったとのことである。」

迫害に次ぐ迫害の中で、患者たちがわずかに心を休めることができたのが、このジャルマ島での生活だったことを知るとき、私は、私たちがつくってきたこの社会の罪深さを改めて思わずにはいられないのである。


国立療養所沖縄愛楽園
http://churaho.com/%E5%9B%BD%E7%AB%8B%E7%99%82%E9%A4%8A%E6%89%80%E3%80%80%E6%B2%96%E7%B8%84%E6%84%9B%E6%A5%BD%E5%9C%92


青木恵哉(けいさい)師「のがれの島」の碑



魚ならば海にもぐりても生きん
鳥ならば空に舞い上がりてものがれん
五尺の体 住む所なしと
青木師外十五名がのがれのがれて
露命をつないだ無人島ジャルマ!
しかし水のない島は人間の永住に適しなかった。
屋我地大堂原は水豊か神の選び賜うた地上の天国であった。
碑に向かって左方海上五百Mジャルマ島
1976年6月25日 建之

この碑が立つ辺りから西方五百mくらいの海上に見えるのが、「のがれの島」ジャルマ島である。

屋部・安和の集落で、ハンセン病者である、というだけの理由で人々に忌避され、住んでいた小屋を焼かれ行くあてのなかった青木恵哉氏一行が、昭和10(1935)年6月27日、難を逃れて身を寄せた所がこの島である。島全体で300坪位、100坪ほどの平地があるだけで、あとは岩だらけの島である。

島に住んでから半年近く経った昭和10(1935)年12月27日夕闇迫る中を、最後の目的地屋我地大堂原をめざして、島を後にしたのだった。昭和37年(1962)年12月沖縄県らい予防協会理事長・上原信雄氏は、青木恵哉・徳田祐弼両氏と計って、島の頂上に「のがれの島」の標柱を建てた。

国定公園の一角、屋我地大橋のたもとに立つ碑を前にするとき、人々は、美しい自然の静けさの中で、青木恵哉氏をリーダーとするハンセン病者の一群が、互いにいたわり、助け合いながら、尊い命をひたすら生きていった命の響きを、歴史の音として聞くことができるに違いない。(名護市ホームページ「名護市の文化財と史跡」から)


沖縄戦とその後27年もつづいた米軍支配。そして日本「復帰」後、再び始まった国家による隔離政策・・・。

そうした中で、どれだけの人がどのように生き、どのように死んでいったのか、それすら定かではない。2001年5月の国と原告との和解で<らい>に対する社会の理解は深まったといわれるが、高齢化した彼らを受け入れてくれるところはもはやないだろう。

島を離れる日、愛楽園の敷地とひとつにつながった北の浜に足を運んだ。アダンの茂みを抜けると幾人かの年老いた男や女たちが目にとまった。元患者たちだった。沖合いには目もくらむような蒼い海が拡がっている。その海を、帰る家も故郷も失った人々が、ただじっと見つめつづけていた。(森口 豁著「だれも沖縄を知らない」から)


2008年10月25日土曜日

アドミニストレーターの創造(2)

刀根實氏が書かれた「大学組織と大学行政管理職員」のご紹介を続けます。

大学組織と構成員の関係

1 大学組織と構成員の位置関係

大学全体の組織と、その中の一部としての事務組織を考えた場合、先に述べたように、手段としての経営管理を支える教育研究機関と、経営管理機関とにまたがって事務組織が横断的に位置している。ここでは、大学における経営管理の手段としての事務組織の関係について考えてみる。

経営管理の目的は、組織体として大学の存続・成長を基本目的とし、その基本目的の実現のために、大学が現在の経営環境の中で保有している人材、組織、資金、施設・設備、システムなど経営の諸要素を組み合わせ、財政との調和によって教育活動、研究活動、社会活動として展開することである。その目的を遂行するために大学組織を構成しているメンバーが役員(理事)、教育職員、事務職員である。これら構成員の概要を要約すると次のようになる。

最初に理事などの役員であるが、我が国の大部分の私立大学の場合、自校の教育職員・事務職員・卒業生から輩出しているケースがほとんどである。このことは、専門管理職としての役員を大学組織内に配置していないことを意味し、アメリカの大学における理事会メンバーの約40%が企業関係者であることと比較すると、経営管理の専門性に対する意識の相違が明確に見えてくる。そのためアメリカの大学理事会では、大学の管理構造を企業の権威形態と類似しているものと考え、トップダウンの経営を支持する傾向があるのに対し、日本の大学は日本的経営を持ち込んだまま、ボトムアップの経営を第一義としている。さらにつけ加えるならば、大学の理事会メンバーは日米を問わず、一般的に言って教授団や事務職員が考えているよりもずっと保守的であることも付記しておかねばならない。

第二に教育職員である。当然のことながら教授会のメンバーとして、大学の教育活動と研究活動という根幹の計画を策定するという重要な役割を担っている。一部教育職員によっては、図書館長や大学付置の研究所長や各センター長として責任ある役職を任命され、大学組織から意思決定を委ねられている場合もある。それぞれの立場に応じた計画の策定と、それに伴う責任を委譲されているケースである。しかし、こうした場合はごく少数で、大部分の教育職員が意思決定に具体的に拘束されているのは、学生に対する教育についてだけである。澤田進中央大学学長室長(当時)が指摘したように、教育職員にとって大学に対するロイヤリティーよりも自らの専門分野での学会で、いかに認められるかが最大の関心事となる場合が多いのも、やむを得ないのである。

そして最後に事務職員である。大学の目的である教育研究機関と経営管理機関を支援する機能として、事務組織が存在することは前述の通りである。特に環境適応の面から考えた場合、組織の中で大学が抱える問題を、長期的かつ断続的に認識し、課題として取り組み、実行に移していけるのは事務職員しかいない。大学経営の管理運営がマネジメントという表現方法になったことを考えても、これからの事務職員は、大学での行政管理を念頭にいれた意識改革を続けていかなければならない。すでにいくつかの大学では、事務職員が大学の役員になり、大学全体の意思決定に関わってきている。こうしたことからも、個々の事務職員に対する能力開発が重視され、かつ個々の大学戦略と連動した形でのキャリア・デベロップメントが、今後ますます導入されていくことは間違いない。そのため、組織内・外での自己啓発と、組織内での昇進や異動と直結した人事システムの構築がますます必要となってくる。

大学事務組織の構成については、各大学の歴史や規模により各専門部門が設けられている場合と、そうでない場合がある。通常、学生に関する学籍異動、単位認定、就職活動支援などを主に取り扱う学生サービスのための事務部門と、財務、施設、人事など学生サービスに直接関係のない純粋に大学経営のマネジメントを取り扱う管理部門によって構成されている。何れの場合も、事務を取り扱う内部組織の責任者として事務局長、あるいはその補佐役が置かれ、各部門の責任者が部下と協働して業務が遂行されていく。行政管理に携わる大学職員を創造するためには、先の両部門においても、リーダーシップが発揮出来る人材が必要とされていくだろう。

2 組織形態と意志決定

大学の事務組織として特徴的なことは、事務職員側が単独で意思決定を行い、計画策定や実行に関わるのではなく、委員会制度を設けている点にある。教授会の専管事項である単位認定などについて、委員会が設けられ教員団から選出されたメンバーの協議により、意思決定がなされるのは不思議ではない。これらに加えて、経営管理、つまりマネジメントの部分、例えば財務、人事、施設といったものまで、ほとんどの大学が教員団から成る委員会組織を設置している。これは今まで述べた大学の二元的構造に由来するわけだが、こうした委員会組織と現実の事務作業を遂行していく事務職員側との調和が、大学組織において不可欠となる。その意味でも大学行政管理職員には、そのパートナーである教育職員と同等な議論を戦わせるだけの能力(後程、述べる)が必須条件となってくる。

こうした組織的な事務職員の存在意義から見ても、大学行政管理学会の設立趣旨にも謳われている大学という場において行政管理の出来る職員=アドミニストレーターの創造は、もはや避けることの出来ない課題である。大学でのアカデミズム(academism)と同様に、早急にアドミニズム(adminlsm)を創造すべきであると考える。ここで言うアドミニズムとは事務職員による、大学経営というビジネス・マネジメントの大きな「うねり」と捉えて頂きたい。そのうねりを創造し、継続させていくことこそ、事務職員が行政管理を行うということにほかならない。

先述の目的を達成するためには、事務職員による数々のスキル・アップが必要であり、そのためのマトリックスを開発し、「アドミニ」マンダラ・モデル(Admini-Mondala-Model)」と名付けることとした。これは、その核となる中央部に高等教育研究機関としての使命(ミッション)を配置し、それを取り囲むように8個の資質・能力(Finance・Network・English・Marketing・Communication・Risk Management・Professional・Digital Skill)を配置したものである。重要なことは、これらそれぞれが独立しているのではなく、相互作用している点にある。次の章ではこれからの大学行政管理職員に必要な資質について述べてみたい。

2008年10月24日金曜日

アドミニストレーターの創造(1)

近時、高等教育を取り巻く状況が未曽有の変貌を遂げる中、危機的状況に立たされている大学は、学生の多様化や学問の変化等に迅速かつ適切に対応していくための生き残り戦略を立案し、効率的・効果的に実現していかなければなりません。

そのためには、常に自大学の比較優位性を追及し、国内外の大学間競争に打ち勝つ力を備えなければならず、経営トップの理事長や学長のみならず、大学を構成する全ての教職員が一丸となって様々な改革に果敢に取り組んでいく必要があります。

とりわけ、大学職員の職務能力の開発は、今後の大学の経営力の盛衰を占う極めて重要な要件になりつつあることは疑う余地のないところです。

今回から、大学経営人材、あるいは大学行政管理職員と称される「アドミニストレーターの創造」に向け、大学職員はどのような能力を備えるべきなのかなどについて、中京大学の刀根實(Makoto TONE)氏が書かれた「大学組織と大学行政管理職員」(University Organization and Administrators)という論考(抜粋)を数回に分けてご紹介したいと思います。

なお、この論考は、刀根氏が、2000年度の「大学行政管理学会研究集会」において発表された内容を基に加筆修正されたものです。

はじめに

21世紀を目前にして、教育のあり方が根元的に問われている。日本経済が情報化やグローバル化で変貌し、教育産業においてもマーケットである学生をどう鍛えるかが、それぞれの組織や国家そのものの未来を決定づける時代が到来した。そして大学を含めた我が国の教育産業は、大きな転換期を迎えることになる。ようやく我が国でも大学に、アメリカがかつて経験した学生消費者主義の時代が到来することになる。

これら我が国の大学を教育職員と共に支える事務職員も、新たな進化を余儀なくされている。新しい世紀に対応可能な、日本式大学行政管理職員を作り上げるためには何が必要で、何をしなければならないのか?これまでもいくつかの方法論が本学会を始め、いくつかのフィールドで語られてきたが、さらに具体的且つシンプルなモデルを創造し、次世代への架け橋とすることが本論の目的である。

まずは、個としての事務職員が所属する大学の組織について概括することから始めたい。言うまでもなく、我が国の大学は「教育と研究」という大学の目的に支えられ、その教授陣は象牙の塔に君臨してきた。本来、組織的には教育職員と事務職員は比喩的に車の両輪に例えられる。しかしながら現在でも、教員が主で、職員は従という意識をほとんどの事務職員が持っているのではなかろうか。筆者が勤務する中京大学の経営トップである梅村清弘学校法人梅村学園総長・理事長は、機会あるごとに我々事務職員に対し、この両者は同等の立場であることを主張しておられる。これは、21世紀の今でもまだまだ教育職員が、事務職員よりも上という意識が根強く残っていることの裏返しであり、残念ながら事務職員が行政管理を行えるだけ進化出来ていない表れと言えよう。その理由はどこから来るのか?その理由を探るべく、最初に大学組織を概観する。

大学の組織

1 大学組織の二重性

大学を組織として捉えた場合、鳥越皓之関西学院大学副学長(当時)が指摘したように我が国の大学は、企業のようなピラミッド型の組織になっていない。つまり大学という高等教育研究機関は、教育研究に関する管理組織と、経営に関する管理組織との二元構造から成り立っている。そしてこの二つの組織が、調和と不一致による対立を交互に繰り返しながら、大学そのものの共通目的である教育と研究を達成すべく組織維持活動を行っている。バーンバウムによればこの「大学組織の独自の二重構造」の研究は1960年のコーソンによるものが最初であり、先にあげた二つのシステムはどちらも、一定の構造形態あるいは委譲の形態を持っていないがために、この二重システムはより複雑となるとしている。

かつてドラッカーは、情報爆発からくるコミュニケーション・ギャップの最たる例として、「経営者と労働者、企業と政府、教授会と学生、その二つと大学行政管理職員達」(大学行政管理職員達の原文はadministrators)という表現を行い、大学組織を痛烈に批判した。大学組織における学生の取り扱いについては、大学という組織の経営管理に参加していない点に着目し、集団メンバーではあるが、組織メンバーではないものとして取り扱うとするのが、マネジメントを遂行する大学行政管理職員の支持する立場であると考える。また、ドラッカーが指摘した大学組織におけるこうした問題点は、組織構造とコミュニケーションの重要性がどれだけ認識されているかによるが、現実問題としてほとんどの大学は、まだ混沌状態にあると言わざるを得ないのが現状である。先のバーンバウムもこの原因を「支配の二重性」と呼び、大学が専門組織であることからくる特殊性ゆえに、大学組織の理解を難しくしている点を強調している。

次に、こうした二元的組織構造はどのような意味を持ち、またどのように機能しているのかを考えてみると、学校を設置している法人と大学のそれぞれが組織の目的達成のために機能を分担しており、事務組織は双方に対し調整、ある部分は統合という関係になっていることが分かる。言い換えれば、大学と法人、そして事務組織(=事務職員)が機能区分に重点が置かれ、不即不離の関係であり、学生(=顧客)を中心に三位一体の管理機能分担を行っているとも言える。また同時に、この組織からは、教育職員、事務職員といった職務機能に関係なくすべての組織構成メンバーが、本来的に経営管理に参加すべき性格のものであることも意味している点に注目しておく必要がある。

2 経営管理からマネジメントへ

大学全体をひとつの組織体として認識し、そこにマネジメントという概念を導入したのは最近のことである。以前は、大学の教育研究機能を重視するあまり、学校関連の法令にも「管理」という表現が用いられ、その後「運営」が加わり「管理運営」と変化してきた。この流れを受けたにしても、事務職員に「行政管理」という概念が持ち込まれたのは極めて自然であったと言えよう。ドラッカーによれば「(かつては)マネジメントは非営利機関では悪い言葉であり、それは非営利機関にとってマネジメントはビジネスを意味し、ビジネスは非営利機関がそれではないという認識であった。今日でもマネジメントは企業でそれを意味するものと信じているアメリカ人は多い。」ということになる。これは単に管理がマネジメントという用語に転換されただけでなく、現代という時代そのものが、大学のような非営利組織に対してもマネジメントの必要性を認識し始めたことへの裏付けでもある。さらに言えばそれが、大学という非営利組織に対しても、行政管理=アドミニストレーションという概念を導入すべきであると叫んでいるとも言えよう。

先程、大学組織の概要を見てみたが、改めて組織の概念について考えてみる。どのような計画を立ててみたところで、実際に実行するための手段がなければ意味がない。組織は、それを実行するための手段として存在する。言い換えれば、目的達成のための社会的な道具であると言える。さらに組織は、個人や組織構成単位が、組織の活動を実行するためのグループを、どのように分類するかについて定義する。必然的に組織内に目的に応じた階層が発生し、いくつかの機能分離を行うこととなる。800年という歴史を持つ高等教育研究機関の目的を考えると、我が国とそうでないとに関わらず、普遍的で共通の性格を合わせ持つことが推測出来る。例えば、学問の国際性という問題を考えてみても、突き詰めると大学は人類の英知の宝庫となり、大学の組織目的の持つ高い公共性も理解することが出来る。また、我が国では大学の目的は教育と研究のみとされ、特にアメリカと異なりサービスや社会貢献という概念がほとんど前面に押し出されない。このことは、日米大学組織の使命観に対する認識の相違によるところが大きいと考えられる。

大学における経営管理は、大学の目的である教育と研究を達成するための手段であると述べた。言い方を換えれば、経営管理は大学目的を達成するためにのみ存在が許されるものであると言える。そして経営管理を実践するには、大学を取り巻く環境変化要因との関係を理解し、経営管理者自身に皆の視線が集まっていることを認識するところがら始める必要がある。大学の本質と理念である根源知と真理の探求、そして大学の機能と役割である3つの要素、1)知識の獲得(研究)、2)知識の伝達(教育)、3)知識の応用(社会貢献)、そして最後に大学の自治および自律と自立によって大学の目的である教育と研究が、経営管理という手段によって展開される。これらを展開する組織の構造特性として、二系統の管理機構が存在するのである。

2008年10月23日木曜日

大学職員論の変遷-2

前回からの続きです。

事務職員の果たす機能の拡大と養成

大学が「国家ノ須要二応ジル学問技芸ヲ教授シ其ノ蘊奥ヲ攻究スル」(帝国大学令1986年)ところから「学術の中心」として「広く知識を授け」「深く専門の学芸を教授研究する」場として、「知的、道徳的、及び応用的応力」を伸ばす場となり(学校教育法1947年)、今日の知識基盤社会においては、大学は「教育機能を充実し、先見性・創造性・独創性に富み卓越した指導的人材を、幅広い教養を様々な分野で養成・確保する機能を果たす役割をもち」、また、「活力ある社会が持続的に発展していくためには、専攻分野についての専門性を有するだけでなく、幅広い教養を身に付け、高い公共性・倫理性を保持しつつ、時代の変化に合わせて積極的に社会を支え、あるいは社会を改善していく資質を有する人材、即ち「21世紀型市民」を多数育成する役割をもつことになる」(我が国高等教育の将来像中間報告2004)。

大学は教育と研究を本来的な使命とするが、現在においては第三の使命として、社会貢献(地域社会、経済社会、国際社会)を大学の使命として捉える時代となっている。具体的に言えば、入学者の確保、就職支援活動いわゆる入口・出口の業務の多様化、留学生の福利厚生、奨学金業務、学生の心理・精神面のケア、生涯学習や産官学連携など幅広く業務展開を必要とされている。さらには社会・経済情勢の変化に伴い大学の経営環境は厳しさを増しつつある中で、みずから経営努力を行うことが不可欠となり、企画立案や渉外広報といった将来計画や戦略に関わる機能も要求されている。

この新しい機能と事務職員の役割についてはすでに多くの論考が発表されているが、初期の包括的なハンドブックとして、日本私立大学連盟・広報委員会編『私立大学職員入門』(1985)、日本私立大学連盟編『私立大学のマネジメント-〔職員必携〕-』(1994)の2冊を挙げる。前者は恐らく日本における最初の大学職員に対する業務ハンドブックであり、後者はその後の環境変化を踏まえ、新たな役割・機能の部分を加えた、新訂版である。後者で孫福は私立大学のマネジメントの問題点として「大学運営がまだ専門職業として成熟段階に達していない」ことをあげている。1994年段階での状況認識がわかる。前者において七澤が教学と運営、言い換えれば教員と職員は「車の完全な両輪である」と言い切っている認識からの変化が読み取れる。

機能分化は専門性の議論に広がる。1990年代前半ぐらいまでの課題が事務職員の存在根拠を問題にするものであったのに対し、1990年代後半からは、大学行政の担い手としての事務職員には専門性が必要で、どのように養成するかに重点が置かれている。たとえば、土橋(1999)は、大学行政は専門職であると言い切り「大学の機能が変われば行政・事務職の役割も変わる」、山本(2001、2002)も独立法人化を前にして国公私立大学中堅職員へのアンケート結果の分析から、能力向上を図る分野として経営戦略、長期計画などの企画能力や、知的財産権、情報ネットワークなど新たな分野の専門的知識修得に関心があること、大学院が開設されたり、大学研究センターの公開講座に人が集まることから、資質向上意欲と危機意識の高まりの中で、養成の必要性とその困難さを述べている。

現職の学長が事務職員について述べたものは少ない。ここでは2004年4月からの独立法人化を前にした学長(総長)の記事を紹介しておこう。佐々木(2004)「(法人化によって研究と教育に従事する教官団に変化はないとした上で、むしろ大きな影響を受ける、その帰趨を決める事務官集団について)事務官集団を中央官僚制の末端として位置づけるのでなく、研究教育のサポーティング・スタッフとして位置づけることになり、事務官はどの領域で研究教育活動をサポートする役目を果たすかについて明確な目標と意識改革が求められることになる」(2004年1月10日 日経新聞朝刊)

プロフェッショナル養成については、小方(2001)がある。専門職養成の大学院(学部)における知と現場の知の関係について考察した論文であるが、いまだ学問として確立されていない、しかし職業(現場)サイドからのアプローチがある場合、即ち大学職員養成プログラムにおける現場の知の導入について一つの示唆を与えている。国外については特に述べてこなかったが、人材育成について米国の紹介記事を一つだけ取り上げておく。本間(2003)、グローバリゼーションの波は日本の大学システムを世界標準にすることを迫っている。世界標準とはとりもなおさず米国をモデルにし、学長のリーダシップのもと運営を行う形であるが、人材は不足している。この紹介記事は、変化する職員の役割と人材育成の特集の一つである。

人材育成であり人材養成である目的は、能力開発である。先に教員の能力開発がいわれ、FD(Faculty Development) が広まり、すぐに呼応してSD(Staff Development)いわゆる事務・技術職員開発が言われはじめた。孫福(2003)はSDの概念、枠組さらには展開について手短にまとめてある。もう1点は、山本(2004)筑波大学大学研究センターの「大学経営人材育成に関する短期集中公開研究会」の記録である。報告者の報告もさる事ながら、参加者との質疑応答が面白い。それぞれが抱える問題を素直に出し議論する、真摯な熱意が感じられる。現場の経験を知に変換し、共有するところから能力の開発につながる。啓発されるところ大である。大学の役割が変化するにつれて職員の能力開発が求められる。

最近の職員論の流れ

ところで2004年から2005年にかけて刊行された論考を見てみると新たな考えを読み取ることができる。西田(2005)の報告があるシンポジウム「教学支援と大学改革-FD、SDからPD(Professiononal Development)へ」の記録を見るともはや教員とか職員とかの役割区分では対応できない大学の構造変化があり、質的向上をはからなければならない状況にあると。また、江口(2005)で私立大学のみならず独立行政法人化された国立大学においても同様な問題意識がある。いくつかの伊原(2005)のポジショニング論は先見の明があったといえる。これらからいえることは、大学経営を担う人材は、素人が事務処理として行ってできるものではなくなり、経験的にも裏付けされ、理論化された知識を身につけたプロフェショナルによって運営される必要性が指摘されている大江(2005)。

なお、その名も「大学職員論」とタイトルされた本が刊行された篠田(2004)、大学行政管理学会大学人事研究グループ(2004)。ここに来て1994年に孫福が問題とした専門教育が成熟段階に達したとは言えないまでも、専門家教育へ着実に歩みを進めているといえるだろう。

あえて付け加えておくとすれば、座談会形式による議論はあるものの、体系化されたかたちでのまとまった職員養成を論じたものは少ない。それは経験的に必要とされるなかで養成が行われてきたからであり、ここに来て個々の大学において制度化され始めた動きが見られる。伊藤(2005)。私立大学連盟の座談会「職員業務の新たな展開」(2005)、「大学経営を担える人材養成」(2005)がある。

おわりに(若干の注記をかねて)

大学職員についてその起源をたずね、政策的な観点からの位置づけを見て、制度的な面も一瞥した。大学の新たな役割が求められる現在、大学職員自らが事務職員の存在・必要性を問い直し、危機とも言える状況にあって新たな位置づけを模索する地平にいたった。自ら存在を主張し、能力開発に意欲を燃やす時にいたったと認識できた。その意味で井原氏の言は正しい。いわく職員の役割論に終焉を。夫婦論、両輪論、黒子論の終焉である。

職員論を整理していくなかで、できるだけ拾ってみると事例研究・発表が多いことに気付いた。また大学の在り方論は大状況としてあり、今後の大学の方向性を問うものが多々あった。一方ミクロ的な考察は少なかった。そして職員を直接対象としたものはなお少なかった。座談会での意見や事例研究を通じて暗黙知が形式知となるのはいつなのか。<暗黙知と形式知の相互作用については野中(1990)を参照>。私自身の問題意識からは、大学職員論をたどっていく中で、内面における職員とは何かという問いにとらわれることはなくなった。

最後に今後の試論展開の視座について述べておきたい。
今後ますます大学職員に要求される能力は多様化するであろう。大学が高度な研究や多様な教育プログラムを提供し続けなければならないからである。プロフェッショナル集団を作り出すために個々の大学で組織つくりが行われる。一例として、立命館大学の大学行政研究・研修センター(2005)がある。
このセンターは21世紀の大学職員像を求めて、実践的に人材育成をおこなうものである。今後は大学職員論のその後の展開については引き続き視野に入れるとともに、職員が働く場である組織構造に視点を移してみたいと考えている。

2008年10月22日水曜日

大学職員論の変遷-1

近年、高等教育や大学を取り巻く状況の変化とともに、大学職員の位置づけ、役割も大きく変化していることは周知の事実です。

「教員と事務職員は車の両輪」、「事務職員は教育研究等の大学の活動を陰ながら支える黒子」といった「事務職員のあるべき姿、存在意義」に関わる考え方が、もはや古びつつあります。

現下の厳しい状況の中で生き延びていくための戦略的な大学経営等を展開していくため、事務職員に求められる役割や能力が益々多様化し、かつ高度化していくことを私達関係者は改めて認識し行動していかなければなりません。

さて今日は、こういった状況の中で、いわゆる「大学職員論」というものが、どのような構造変化を遂げてきたのか、私達はこの変化にどのように対応していかなければならないのかについて、学校法人ノートルダム女学院後藤 勝氏が書かれた「大学職員論の系譜(準備ノート)」の抜粋をご紹介したいと思います。


全文をご覧になりたい方はこちらをどうぞ →
学校法人ノートルダム女学院機関誌「教育のプリズム-ノートルダム教育-【第6号】」http://hojin.notredame.ac.jp/kikanshi/prism/06/index.html

事務職員の制度的な位置づけ

日本の高等教育は、昌平校の流れをくむ東京開成学校や医学校を合併して1877年に「東京大学」が創立されたことを嚆矢とする。東京大学は1886年帝国大学令により「帝国大学」となった。それまで専門学校として位置づけられていた私立大学も1918年の大学令により制度上「大学」となった。
2004年4月からの国立大学の独立行政法人化以前においては、国、地方自治体の設置する国公立大学と、学校法人の設置する私立大学があり、設置主体としては法人によるものと規定されていた。1949年の私立学校法の施行により、学校法人を制度化し、学校法人のみが私立学校の設置者となる制度が確立された。

1947年には教育基本法が公布施行され、教育関係の法律主義の原則が確立した。この学校教育法の第1条に「大学」が規定されている。大学はいわゆる1条校である。学校教育法第58条第3項に、学長は、「校務を掌り、所属職員を統督する」存在であり、同法第58第2項「大学には、前項のほか、副学長、講師、技術職員その他必要な職員を置くことができる」とその他の(事務)職員について定められている。大学の設置についてはそのレベル維持のため、大学設置基準がある。大学設置基準第41条に、「大学は、その事務を処理するため、専任の職員を置く適当な事務組織を設けるものとする」とある。国立大学については、2003年度までの国立学校設置法施行規則において、「国立大学及び国立短期大学の職員の種類は、次のとおりとする、学長、教授、助教授、講師、助手、事務職員、技術職員、教務職員」(第1章第1節第1項)とあり、また「事務職員は、庶務、会計及び施設等に関する事務を処理させるための事務局を、及び学生の厚生補導に関する事務を処理させるため厚生補導に関する部を置く」と規定がある。独立法人化後の国立大学についてみてみると、国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議報告(2002)に、「事務組織が、法令に基づく行政事務処理や教員の教育研究活動の支援業務を中心とする機能にとどまらず、また、日常の大学運営事務に加えて、教員と連携協力しつつ大学運営の立案等に積極的に参画し、学長以下の役員等を支えるなど、大学運営の専門職能集団としての機能を発揮することが可能となるよう、組織編成、職員採用、養成方法等を大幅に見直す」役割が記載されてある。

また、大学設置・学校法人審議会学校法人分科会のもとに設置された、学校法人制度改善検討小委員会の「学校法人制度の改善方策について」(2003)においても、事務機能の改善強化について「事務機能の強化や効率化を図る観点から、事務機構の再編(必要な部門への重点化等)やアウトソーシングの活用を勧めることが考えられる」とある。この改善方策は、大学のガバナンス機能の改革を主眼としたものであり、理事機能、監事機能、評議員会の強化と財務情報の公開について義務づけるものである。学校法人は公共性の高い法人として社会に対する説明責任を果たし、学校法人の公益性を一層高め、自主的・自律的に管理運営する機能の充実を図る必要性が述べられている。経営管理でなく、管理運営という表現はいささか古い感じがしないわけでもないが、学校法人の運営状況について情報を提供し、財務書類の公開が義務づけられた。こうした機能を果たすためには、事務機構の整備とそこに働く事務職員の存在無くしてはできないだろう。大学経営の担い手としての職員が求められている。

日本最初の大学である「東京大学」の歴史の中で成立した、慣行や制度の起源を読みやすく綴った寺崎昌男(1992)の<学部>の項に、学部長の権限として、東京大学職制(1881年)に「総理ノ命ヲ受ケ一学部ノ事務ヲ幹理ス」とある。当時の学部が分科大学を起源に持つことを考えれば、学部長とは現在では学長に比される存在である。加藤(1979)も制度的に学長は管理職であり教授でないと言う。<ここで言う管理とは事務と同義であると筆者は理解している>。寺崎により帝国大学内の職員構成を見てみよう。帝国大学令下の職員構成は、総長・評議官・書記官・書記という帝国大学職員と、長、教頭、教授、助教授、舎監、書記という分科大学職員の二系列から成り立っていた。前者は行政の系列であり、後者は教育・研究の系列である。すでにその発足から二重構造があったというべきか。<学部とは何か、長とは何か、いずれもそれだけで詳細な説明ができる事項であるがここでは省略する。詳しくは寺崎を参照>

経済発展と大学の改革における事務職員

国の発展に教育の果たす役割が大きいことは言を待たないが、とりわけ日本の高度成長に人材提供を担った大学の役割は大きい。大学進学率は、1966年16%であったが、1976年には38%となり、1997年には50%に達した。大学がエリート養成からマス、ユニバーサル期時代になったといわれる所以である。規模の拡大については、大学設置計画分科会(1984)による「昭和61年度以降の高等教育の計画的整備について」答申、いわゆる臨時定員増である。この臨時定員増は1999年で解消することになっていたが、その後大学審議会「平成12年度以降の高等教育の将来計画構想について」答申(1997)で臨時定員の50%の恒常化が認められた。この答申では18歳人口の減少に伴い入学者が漸減し、平成21(2009)年度には全志願者に対する入学者の割合である収容力は100%になると試算されていた。しかし、志願者の伸び悩みで2年早く平成19(2007)年には100%に達すると予測されるにいたった。(中央教育審議会「我が国の高等教育の将来像中間報告」(2004))いわゆる大学全入時代の到来である。

21世紀になり高等教育を含めた教育は、個人の人格形成の上でも、社会・経済・文化の発展・振興や国際競争力の確保等国家戦略の上でも重要となり、物質的経済的側面と精神的文化的側面の調和のとれた社会を実現し、他者の文化を理解・尊重して他者とのコミュニケーションをとることのできる力を持った個人を創造することが、今後の教育には強く求められている(同中間報告)。大学の役割が変化するに連れて、大学の質の向上を図る必要性が求められてきた。

端的に質の向上は研究・教育についてであった。勢い教員の質の向上であり、制度改革であった。たとえば、1987年大学審議会が設置され、教育研究の高度化、高等教育の個性化、組織運営の活性化について審議され、推進施策となった。改革に果たす事務職員の重要性については、大学審議会「大学運営の円滑化について」(1995)がある。「事務組織は、大学改革の推進等について学長、学部長等を補佐し、改革の方向に沿った教育研究活動の支援を積極的に行っていくことが重要である」と述べられている。また、1998年の大学審議会「21世紀の大学像と今後の改革方針について-競争的環境の中で個性化が輝く大学-」答申(1998)にも「(事務組織が)教学組織との機能分担の明確化と連携協力の関係の確立が求められる。このため、学長、学部長等の行う大学運営業務についての事務組織による支援体制を整備すること、国際交流や大学入試等の専門業務については一定の専門化された機能を事務組織にゆだねることが適当である」とある。

大学の量的・質的拡大深化が意識される以前の大学機能の基本は教育・研究であり、それを直接担う教員については記述があるものの、間接的に役割を担う事務職員については、ほとんど考察されることがなかった。しかし、大学の活動が広がり、機能拡大が行われるに連れて、組織運営から経営管理の必要性が高まるにつれて経営機能を担う事務職員について指摘されるようになった。

「大学職員論」について考察が高まるのは、大学行政管理学会の設立(1997年)や日本高等教育学会の設立(1998年)のある1990年代後半であるが、それ以前にもなかったわけではない。たとえば、民主教育協会(IDE)の特集「大学の管理と事務」(1979)、「大学の運営と事務」(1990)に論考がある。これについては、福留(2004)に詳しい。私立大学の立場からのものとしては、私立大学連盟企画の(座談会)「新しい職員像を求めて-大学の質的充実と職員のあり方-」(1988)、(座談会)「新しい大学像の中での職員のあり方」(1993)がある。前者にはアンケートに答える形で職員像が語られている特集がある。その一つ武田(1988)を例にとると、「職員に対する批判、能力向上の方策、研修の役割、教員との関わりについて大学事務職員としての覚悟で答えている」。

このころから単発の考察が発表されている。それらは、時代の変化に対する意識改革の必要性を説くものや、企業サイドの経営手法の適用を検討するものであった。福田(1995)が新しい時代への意思表明をおこない、冨子(1990)は私立大学経営の観点から見た事務機構と職員について意識改革を説く、「私大の事務職員はすべからく意識革命して教育職と並列対等の協同作活動によって、私大は存在理由を明確にし、私大の発展に力をいたすべき時である。そのためには事務機構の改革(組織システム)とその運営の改革(行為法)を手がけなければならない」と。対等な存在である点から、両輪論といえよう。

2008年10月21日火曜日

記者からみた大学広報 (4)

このシリーズも今回で最終回になりました。今回は、富所 浩介氏(読売新聞大阪本社記者)の講演概要をご紹介します。

講演の中で富所氏は、「大学の広報は内側に向いているタコツボ型で、外部に向けて組織を開き、地域社会や学生に対してアピールする力に欠けている」、「マスコミは、その情報に社会性、公共性はあるか、情報が一般の人達に有益であるかを重視している」、「マスコミは、現代社会を描く、もしくは切り取る一つの素材として大学を採りあげる」と指摘しています。

私は92年に読売新聞社に入社して以来、主に教育や司法などの分野を中心に活動をしてきました。その経験から、大学における広報のあり方について考えてみますと、言葉は悪いですが“タコツボ型と言いますか、内側に向いている傾向があるようです。つまり、外部に向けて組織を開き、地域社会や学生に対して「私たちはこういう大学です。こんな魅力があるので、ぜひ来てください」とアピールするカに欠けているように思うのです。

これからは「大学全入時代」を迎え、大学も生き残りをかけて自分たちをいかにPRしていくかが死活問題となるでしょう。国立大学は法人化という劇的な変化があり、広報にカを入れている様子が目に見えて感じられるようになりました。近年では、老舗と言われる企業がちょっとした不祥事をきっかけに世間の信頼を失って、あっという間に地に落ちていく姿がたくさん見受けられます。ブランドカがあると見られている大学も決して安泰ではありません。有名大学といえども、いっそういう局面を迎えるかは分からない時代ですので、ブランドカをさらに高めていくための不断の努力が必要なのです。

「社会性・公共性」の有無がマスコミ訴求への大きなカギ

それでは、マスコミはいったい大学のどのようなニュースを採り上げているのでしょうか。端的に言いますと、「その情報に社会性、公共性はあるか」が重視されていることが分かると思います。

文部科学省の記者クラブなどでは、実に数多くの大学からプレスリリースをいただきます。しかし、単に創立何周年でイベントを行いますとか、このような講演を開きます、といった情報だけでは訴求力が弱い。絶対に掲載されないとは言えませんが、マスコミは基本的に特定の大学の宣伝になることは避け、その情報が一般の人たちに有益であるかどうかを第一に考えます。つまり、記者の考え方としては、「現代社会を描く、もしくは切り取る一つの素材」として大学を採り上げるのです。

具体例を挙げますと、私は2003年に、跡見学園女子大学(埼玉県)を採り上げて、一本の記事を書きました。ちょうどその当時は「大学発ベンチャー」という言葉が世の中に流れ出した頃で、大学の先生たちが特許を取ったり、研究室で新しい商品を開発したりしてお金が稼げるということで、注目を集めていたのです。半面、大学での取り組みの多くは概して難しく、一般の読者にとって、そのまま記事にしても分かりづらいのではないかという懸念がありました。

こうした中、跡見学園女子大学が取り組んでいたのは、「自分たちでひとまず会社をつくって、実際に商売をやってみよう。そこから実体験として、会社経営というものを学んでいけば面白いんじゃないか」というプロジェクトだったのです。そういうリリースを大学から頂き、「これなら今の大学ベンチャーの動きを分かりやすく伝えられるのではないか」と思い、跡見学園の取り組みを紹介するとともに、合わせ技で「大学発ベンチャーとは何か」を読者に理解してもらえるような記事にまとめたのです。

ですから、「本学はこういう事をやります」という目に見える動きだけではなく、「学生たちの今の気質はこうなっていますよ」とか「ライフスタイルはこうですよ」というようなことを合わせてメディアに発信していただければ、それはそれでニュースになるのですね。

そのためには、学生を対象としたアンケート調査でもいいですし、学生はいまアルバイト活動をどれくらいやっているのだろうかですとか、サークル活動はどのくらい熱心なのだろうか、というような動きを紹介することが、「社会を切り取る」「現代社会を描く」ことに繋がっていくのだと思います。

もう一つは2005年、夕刊一面に載せた「大学発ブランド商品」という記事。これは大学全入時代を控え、少子化の時代に合ったブランド品を自分たちで作って販売し、大学を認知してもらおう、またうまくいけば利益を上げようという一石二鳥の取り組みを紹介したものです。

先ほどの「公共性」という括りで言えば、「全入時代」という大きなキーワードが背景にありますので、こうした取り組みをまとめて紹介することで、やはり大学を取り巻く環境は厳しいんだなということが分かってもらえる。そういう狙いがこの記事にはあるわけです。

一方で、こうした内容の記事を1校だけで紹介すると、その大学の宣伝のようになってしまう懸念があります。この記事では、見出しに東大と神戸大学が出ていますが、本文では近畿大学も紹介するなど、複数の大学を採り上げています。このように、いくつかの大学をピックアップして「共通・類似した取り組み」「同じテーマで括れる取り組み」をまとめることで、普段一面にはなかなか掲載されないような記事が大きく採り上げられることもあるわけです。

大学名が活字として出るだけで、その大学のブランドイメージはずいぶん違います。大学間で連携して一緒に記者発表するというのは難しいかもしれませんが、メディアの側からすれば、こうした情報が一つに集まると非常に採り上げやすいところがあります。

リリース文は表現に工夫を 教員のマスコミ露出も重要

もう一点、文部科学省の記者クラブでは、さまざまな大学からリリース文を送っていただきますが、発表の方法にもうひと工夫があればと思います。

私たち記者は、読者に内容を正確に伝えるために、「難しいことを分かりやすく表現する」ということを非常に大切に考えています。そして、分かりやすいことを面白く伝える。興味を持ってもらえなければ意味がないので、そういうような噛み砕き方を心がけています。

けれども、大学のリリース文を読むと、難しいものをより難しく書いてしまっているケースがしばしば見受けられます。特に長文のものは非常に分かりにくくなっている。A4の紙1枚に言いたいことを的確に盛り込んで、コンパクトに伝える。これがやはり重要だと思います。奇をてらう必要はありませんが、パッと趣旨が分かって、大学ではこういうことをやっているんだなということを相手に分からせることが非常に重要だと思います。

この点に関しては、文部科学省でも広報力強化に向けたプロジェクトを立ち上げ、どうずれば社会に分かりやすく伝えられるかというような検討会も行っています。一方通行にならずに、相手がどう受け止めるかを常に考えて発表することが大事でしょう。もちろん私たち記者も、いただいた発表文だけを読んで記事にするということは基本的にありえません。「これは良いじゃないか」と思えば、取材をきちんとさせていただくことが大原則になっています。

大学の生き残り戦略において、広報は非常に重要です。大学の紹介が新聞に一回掲載されるだけで、広告費に換算すると数千万円レベルの価値があると思います。記事であれば、それは無料なわけですね。経済効率的にもメリットが非常に大きいと思いますので、もっとメディアを積極的に活用すべきだろうと思います。特に、新聞の地方版などにある、イベントや催し物を紹介するコーナーにもアプローチするという戦術を取ることで、掲載される可能性がより高くなると思います。できれば一人ぐらい、困ったときに相談できる記者を広報の担当者の方で持っておくと強みになる。それは私たち記者も同じで、文部科学省を担当していた頃は、例えば「こういう大学でこういう話が出ていますが、どういう価値があるんでしょうか」「こんな動きをどう評価しますか」と、いろんな分野で質問ができる先生を何人か持っていました。そういう人脈も大事だと思います。

それから、大学の教授で、よく新聞やテレビなどにコメンテーターとか、識者という肩書きで登場する方がいます。こういう先生たちの存在は、大学のブランドカを高めるのに非常に有益だと思います。実際、例えば少年犯罪が起きた場合に、犯罪心理学の先生に話を聞きましょう、といった場合に登場する先生は意外に限られているんですね。その一方で、あまり露出はされていないけれども、非常に優秀で、メッセージを分かりやすく伝える力のある先生はいらっしゃると思います。もちろんメディアに出ることが大学教授の仕事であるとは思いませんが、そういう先生を輩出することも、広報では大きな効果があると思います。受験生もあの先生の授業を受けたいということでその大学に入ってくるケースが少なからずあると思いますし、やはり知名度のある先生の活用方法も考えていただきたいと思います。

2008年10月20日月曜日

戦略経営の確立に向けて

昨今、大学経営戦略の構築に関する論考の多さとともに、各執筆者の視点の広さ、知見の深さに驚き、ひたすら敬服するばかりですが、今回は、この日記でもおなじみになってきました 日本福祉大学常任理事の篠田道夫氏が書かれた「戦略経営を構築するための基本手法」をご紹介します。

今回の論考では、簡単に申し上げれば、戦略的な大学経営を行うために求められる「手法」として、1)他大学が真似できない教学上、経営上の特色やスキルといった「中核能力」(コアコンピタンス)を育て強める施策、2)他大学等のベストプラクティスや一流の成果の成功要因や手法を学び、活用することを通して、自大学の改革、改善を図る取り組みであるベンチマーク手法、3)大学のミッションとそれを実現する政策全体、計画の全容を一覧化(可視化)した成果体系図(戦略マップ)の作成、4)顧客のニーズをつかみ、顧客の満足度を得る、あるいは高めるための手法であるマーケティング・マインドの活用が重視されています。

選択と集中、コアコンビタンス

戦略の策定と遂行の中で重視すべきなのがコアコンピタンス経営の考え方である。分析作業は、勢い短所や問題点、課題を明らかにすることが重視されがちだが、戦略として大学のこれからの発展の基軸は何かを考えるとき、長所、強み、それも中心となる強みは何かを鮮明にすることが特に重要だ。大学が社会的に存立している以上、他にない強みは当然持っている。この他大学が真似できない、あるいは真似しようとしても難しい内部に蓄積された固有の教学上、経営上あるいは社会連携事業の特色やスキル、この中核能力=コアコンピタンスに着目し、これを育て強める施策が求められる。これこそが差別化戦略の根幹であり、問題点を克服、改善する施策以上に、大学の将来を切り拓く原動力になる。

投資できる資源には限りがある。大学の中核事業の発展を考えると、コアコンピタンスの形成と強化に連動する事業を選定し、そこに特化することが必要となる。これが経営に「選択と集中」が求められるゆえんだ。選択と集中とは、事業全体を見直し、目的に対し、必要・不必要を明確にしていく手法で、重点事業への資源の集中の一方で、不要不急の業務の縮小や廃止は不可避である。生き残りのためには、他大学の優位に立つための教学・経営資源は何か、逆に不必要なものは何かを明確に判断し、リストラクチュアリングを遂行することが強く求められる。大学独自の個性を強める資源投入を強化するためにも、選択と集中の考え方は重要な経営原理のひとつである。

先進改革に学ぶベンチマーク

戦略の形成過程に、斬新な手法を導入し、劇的な改善を実現する手法として注目されるのがベンチマーキングである。同業や他業種のベストプラクティス、一流の成果を上げている所を探し、その成功要因や手法を学び、活用することを通して、自大学の改革、改善を図る取り組みである。どんな問題でも即座に解決策を考え出し、改革ができる人材はそう多くいるものではない。知恵を絞っても解決策が見つからない場合、他人の知恵や経験に学ぶベンチマーク手法は有効だ。しかも、現行のやり方とは全く異なる新しいやり方や視点を学び、取り入れることもできる。しかもベンチマークには失敗というリスクが少ない。なぜなら最初からベストの良いところを取り入れる取り組みであり、しかも、すでに実践で検証済みの方法だからである。

ただし、結果だけを真似る単なる「物まね」では良い成果は得られない。自大学の現状とベストの間には当然ギャップがある。このギャップの原因分析、なぜ差が出ているのか、その実践方法や組織体制の違いなどPDCAのすべての過程にわたって分析し、トータルに改革しなければ、結果だけの模倣では根本的な改革にはなりえない。ベンチマークの対象は大学運営や教学内容から、研究事業や社会連携活動の取り組み、経営、財務運営、事務システムなど多様であり、それによって選定すべき対象も異なる。

当然、同系先進大学がまず対象となるが、異なる系統の大学、違う業種や団体、企業も含め広くその分野におけるベストを対象とする。見落としがちなのは自大学の中でのベンチマークである。努力した優れた実践例は、よく見れば小さなものでも身近に必ずあるもので、この教訓の全学的普及、共有も重要だ。

政策全体を俯瞰する戦略マップ

池田輝政氏(名城大学)などが名古屋大学の中期目標・中期計画を策定する際、実践的にも使われた戦略プランニング手法も有効な方法だ。戦略策定会議を立ち上げ、建学の精神や組織の規範、ミッションや教育・研究の方向性をまず明らかにする。内部環境、外部環境を分析し、戦略ドメイン(ミッションを実現するための研究・教育・管理など主要領域の確定)と中期的遂行課題を設定、その実現のためのアクションプランを具体化し、その下に、3~5年後の具体的成果目標、成果指標を記載するというもので、基本の流れはMOSTの戦略立案に共通のものだ。優れているのは、これらを長文の文章で表現するのではなく、成果体系図(戦略マップ)として、一枚のマップで示し、可視化させている点にある。成果体系図の実際は、名古屋大学の中期計画*1などでご覧頂きたいが、まず、一番上にミッション・ビジョンを簡潔に箇条書きし、その下にその目標を実現するための柱となる主要領域を戦略ドメインとして、例えば研究、教育、国際化、社会貢献、管理運営・組織、学術情報、環境基盤、経営資源・・・など10項目前後に分け、横並びに記載し、その下にドメインごとの基本目標を簡潔に明記する。そして、さらにこの基本目標を実現するための行動目標を記載し、その下にそれを実現するための計画を箇条書きで書いていく。行動目標が二つ、三つになる場合は番号をふって記載し、下にいくほど実践的な内容となる構造となっている。この成果体系図(戦略マップ)は、ミッションとそれを実現する政策全体、計画の全容を一覧でき、構造的に把握できる点でたいへん優れている目標の実現に向かって全体が一貫した施策になっているか、その具体的施策のレベルが妥当なものかの検証にとっても意義がある目標から実行にいたる流れ全体を俯瞰でき、系統的に理解できる仕組みだ。政策そのものの全教職員の理解と行動の一致を作り出す上で効果的な手法だと思われる。

マーケティング・マインドを生かす

こうした戦略の具体化のための調査や、実際の成果を上げるための手法にマーケティングがある。マーケティングとは、どのような価値を市場に提供すればニーズを満たせるかをリサーチし、ニーズにあった製品を企画・開発する。そして適正な価格を設定して市場に告知し、顧客に提供して満足度を得る(利益を上げる)ことだと定義される。マーケティングは4Pの頭文字で表されるが、大学に即して考えれば、製品(Product)は教育内容やキャリア形成・就職支援、充実した学生生活の提供、価格(Price)は、学費や諸経費、奨学金など生活支援体制、立地(Place)は、キャンパス、施設設備、学習環境や交通の便なども含まれ、宣伝・広告(Promotion)は、広報、学生募集、さちには大学の対外活動や社会連携も含まれると思われる。顧客のニーズをつかみ、顧客の満足度を得るために、この4Pを総合的に捉えることによる一連の改善プロセスといえる。

従ってニーズをつかむためのマーケットリサーチが重要視される。常に市場の需要を調査・分析、それに基づいて教育や環境を改善し、適正な価格を設定してその中身を積極的に広報し、最終的に学生募集に結実させる。この一連の流れは別の言い方をすればCS経営(Customer Satisfaction)、顧客満足を第一とする経営の実現とも言える。提供する製品・サービスが顧客の目的に合致しなければ、顧客の満足を得ることはできない。今焦点の顧客である学生を獲得するための募集活動・大学広報は当然のことであるが、就職先の開拓と学生進路支援においても、また学生の満足度を高めるための教育改善の取り組みや学生生活充実のための企画などにとっても重要な手法として生かされるべきものである。マーケティング・マインドを大学のすべての分野での事業企画や実践に活用することが求められる。(文部科学教育通信No205 2008.10.13)

*1:国立大学法人名古屋大学中期目標・中期計画:http://www.nagoya-u.ac.jp/out/pdf/midterm_20080404.pdf

2008年10月18日土曜日

記者からみた大学広報 (3)

シリーズ第3回目となる今回は、天野 幸弘氏(朝日新聞大阪本社生活文化部記者)の講演概要をご紹介します。

天野氏は、主に「マスコミに記事を紹介する気にさせる方法」「どうすれば大学の情報が効果的に流通するようになるか」等について話されています。

私たちマスコミの仕事は、世の中に起きているニュース性のある素材を様々な角度から紹介することが基本です。大学情報もジャーナリズムの1部門であり、皆さんは盛んにパソコンで送られたり、ファックスで送られたり、郵便物で送られたりしていますけれども、すでにお気づきになっている通り、そのデータの大半はほとんど在庫のまま、世間には流通していないのではないでしょうか。大学関連では、関西には京都大学と大阪大学、科学技術センターの3か所に記者クラブがありますが、そこに情報提供されても、放置されたままになっている可能性がある。この状態をどうずればいいのか。今日は、皆さん方が、マスコミに記事を紹介する気にさせる方法を、いくつか申し上げたいと思います。

例えば、私ども朝目新聞大阪本社の生活文化部には大学担当者が置かれていて、先日も大学からの郵便物が20通ほど来ていました。しかし、その中で担当者の宛名が記されていたのはたった2通に過ぎません。そうしますと、私たちも宛名の書かれてあるものから順番に開封して読みますよね。

次に、「大学の情報」とはいったい何かということです。私は、一番大事なのはやはり先生方の研究成果と教育活動だと思っています。しかし、実際のプレスリリースでは大学の対外活動が主となっています。例えばこんな施設を作っただとか、イベント的なものが中心になっているんですね。

ここで具体例を挙げると、関西大学は「高松塚古墳の復元模型を作る」という内容のリリースをされました。その中で特徴的だったのが、記者会見に理事長、学長が揃って出席するということで、マスコミの側もこれは何か重大なニュースがあるんじゃないかと、各社カメラマンを連れて出かけていった。非常にうまいPRの仕方だと思います。

一方で、大学は巨費を投じて、海外での調査活動や共同研究者を集めた学会などを開いていますが、あまりニュースになりにくいですね。これはマスメディアの宿命かもしれませんが、「はじめて」「最大」「最後」といった非常に分かりやすいキーワードで切り取られたものが中心となりがちです。

だいたい、大学改革などの試みは非常にニュース性の高いテーマとして、社会面などに採り上げられ、新しい研究成果を打ち出した人たちの紹介や、大学の活動などは教育特集のページに収められるという傾向があります。ただ、大学特集のページも、通読しますと比較的特定の大学、特定の先生に偏りつつありますね。先程も指摘しましたが、PR上手な先生だとか広報に長けた大学に引きずられてしまう。もちろんわれわれマスコミの側も、このあたりは課題になっているわけですけれども。

大学情報はメディアにどう流れているのか

大学情報としては、公開講座のような社会的な行事や催し、一般の方も参加できる学会、シンポジウムなどの案内が量としては多いわけですが、これを数多くやられているところが、結局は大学特集ページの中でも大きなウエートを占めているようです。すなわち、常々告知の記事などを書いていますと、これは何だろうかと関心を持つのですね。そこで、実際に取材をしてみる。私の経験では、3分の2くらいは後々役に立つかなというネタ収集ですけれども、3分の1は実際に担当者から話を聞いて、具体的な記事を書く。そういうプロセスを通じて、大学の動向に関心を持つ。それが1つのきっかけになっているということを、ぜひ認識して頂きたいと思います。

そのほかには、大学経営に関する情報ですとか、外部からこういう人を招聘したというようなニュース。これは社会面で採り上げられるような内容ですけれども、そこそこの話題であれば、だいたいもれなく掲載されます。

こうしたニュースのリリースはすべて、皆さん方が担っておられるわけですけれども、やはりその内容、情報の流れ方をもう一度検討し、どうずれば効果的に流通されるようになるかということを考えることが重要だと思います。

我々メディア側、特に新聞・雑誌などの活字媒体は、メディアの数がどんどん増え、トータルとしては伸びていますが、個別の費用は衰退の一途です。これはやむをえないことで、系列のテレビ局を持ち、IT関係の分野も持ち、というように既成のものは分散化されていくのであって、トータルとして伸びていけば良いというぐらいの考え方に切り替えていきます。いわば総合戦略ですね。

そこで、このメディアの激変をいかに上手く乗り切っていくかということがあるわけですが、そうした中でも、大学情報がメディアにどう流れているかということに、今後の大学情報の発信の仕方での活路があると思います。大きく分けて、1)理事長、学長をはじめ、教授などの個人がメディアの担当者に直接アプローチしているケースと、2)大学の広報担当部門の方々がメディア関連部門にアプローチするケース、3)メディアの担当者個人にアプローチするケース、4)記者クラブにプレスリリースを提供するケース、5)ホームページで紹介するという、5種類ぐらいに分かれると思います。

やはり、メディアの基本は「個人から個人」への流れです。先程の郵便物の件でも、同じ日に来た郵便物をパラパラと見て、個人名が書かれているのを優先して開けるというのは、人情として当たり前の事ですよね。私個人の経験でも、先生方あるいは広報の担当の方々から直接電話がかかってきたり、メールが入ってくると気になります。コミュニケーションの基本は個人ですから、やはり皆さん方にそこを認識していただき、どのようにシステム化していくかを考えていただきたい。

一番問題なのは、記者クラブにデータを投げ込んだままというやり方だと思います。京都大学の記者クラブのように、記者が毎目詰めているようなところはまだ効果的ですが、そうでないところは、ほとんどマスコミに通っていないと考えてください。やはりそれぞれ独自の努力が必要だと思います。

教員を含めた学内ネットワークを構築し戦略的広報の実現を目指す

個人名が書いてあるかどうかということに関連しますが、朝目新聞の場合、東京本社は文化部、生活部に分かれていますが、大阪本社は生活文化部になります。しかし、実際に送られてくるリリースも、学芸部と古い名称で送られてくるのはいい方で、場合によっては文化担当部門としか書いていないものもあります。また、宛先がまったくなく、朝日新聞記者としか書かれていないものになりますと、とにかく受付の庶務のところでとりあえず開封しなければならず、そのデータがどこに流れていくかは保証の限りでありません。従って、個人名で出すことが一番強いと思います。

また、どうしても重要な広報の場合は、届いたことを見計らって電話をかけるなど、ひと手間をかける努力をするということは広報の基本だと思います。

例えば、広報担当者が大学関係の新聞記事をすべて切り抜いていて、「こういうことが知りたい」と取材した場合に、過去の資料からきちんと答えてくれる大学もあります。取材の際の質問でも、内容によっては広報の方で調べてみるということは、ぜひやっていただきたい。もちろん研究や学会活動などを実際に行っているのは大学の先生方でしょうが、その先生の内線番号を教えていただいても、授業や定期考査などでつながらず、それで終わりということがあります。それで、その情報が終わってしまったら、在庫になってしまったということが多くなります。

また、研究者のデータベースの構築に関連しますが、広報の側でいま自分の大学で何をやっているか、どの先生がどんな研究をされているかといった、大学内部の情報網の構築が大事だと思います。ここがきちんとできている大学の場合、取材をして、30分後また連絡してくれといった場合、必ずそれくらいの段階で、ここまで分かりましたという話が出てくる。非常にうまく把握されている。それにお答えいただいた以上、マスコミの側でも応えようという部分はあると思います。

問題は、プレスリリースの原稿の書き方で、膨大な量のプレスリリースなどはなかなか読まれない。やはり本当に簡潔に、それでいて「えっ」と思わせるような仕掛けがあって、A4の1枚で収めてしまう方がいいと思います。

これはやはり、先生方があまり努力をされていない。ですから、大学広報の皆さんが、大学のPRのためにいろんなデータを仕入れて、先生方を教育してほしいのです。そこで、できればその各学部、各部門、研究所、セクションごとで良いですけれども、情報教育を行っていただいて、ネットワークを作っていくのが先決だと思います。我々マスメディアも同じですが、大学というのが社会的な存在である以上、やはり社会に応えていく責務があるということを先生方にも理解していただき、これからの新しい時代を構築していってください。

2008年10月16日木曜日

国立大学法人の改革推進状況

去る10月9日、文部科学省に設置された国立大学法人評価委員会が、国立大学法人の平成19年度業務実績に対する評価結果を決定し各法人に通知したことは既にこの日記でもご紹介したとおりです。

国立大学法人の平成19年度評価結果(1) 
http://daisala.blogspot.jp/2008/10/blog-post_7311.html

国立大学法人の平成19年度評価結果(2)
http://daisala.blogspot.jp/2008/10/blog-post_6659.html

各国立大学法人に通知された内容には、各法人自身の評価結果のほかに、1)評価委員会委員長の見解、2)国立大学法人全体の評価結果の概要、3)国立大学法人の改革推進状況があります。

今日は、このうち、私達大学職員が最も参考になると思われる「国立大学法人の改革推進状況」という資料の中から主に経営に関わる部分についてご紹介したいと思います。

ご覧いただくとわかるように、この資料には、評価委員会が行う評価の観点、つまりは、評価委員会が推進すべきと考えている項目ごとに、各国立大学の取り組みのうち、推奨ないしは評価の高い事例が紹介されており、各国立大学は、この 他大学の先進事例を参考にしながら、大学の個性や特色に合った改革に取り組んでいます。


国立大学法人の改革推進状況

※ここにあげる取組については、国立大学法人評価委員会が把握した各国立大学法人の特色ある例をまとめたものであり、全法人が一律に行わなければならないと考えているものではない。


1 管理運営組織の改革と柔軟な資源配分の実施

(1)管理運営組織の改革

中期目標期間の4年目となる平成19年度においては、これまでの管理運営組織の在り方を検証し、管理運営組織の改革が進められてきており、管理運営コストの削減に向けて、管理運営組織のスリム化・効率化を積極的に進めている法人も見受けられる。

(具体的取組例)
  • 大学の経営戦略機能の強化を図るため、財政企画室、人事企画室、大学運営会議及び将来構想会議を統合して、新たに経営戦略会議を設置している。【東京外国語大学】
  • 文系6部局の事務部を統合するとともに、これまで複数部局に分散していた環境学研究科、情報科学研究科の事務処理体制をそれぞれ統合し、管理運営組織のスリム化・効率化に取り組んでいる。【名古屋大学】
  • 全学的な委員会は、入学試験委員会や全学教務委員会等必要最小限とし、基本的に理事の下に設置した各種業務遂行のためのタスクチームによる効果的・機動的な運営を図るとともに、会議開催回数の縮減等による簡素化を図っている。【富山大学】
  • 事務改革の更なる推進を図るため、事務連絡会議、事務改善委員会、事務情報化推進室を廃止し、「事務改革会議」に一元化している。【大分大学】

(2)大学全体としての戦略に基づく法人内資源配分の実現

各法人においては、学長のリーダーシップに基づき、それぞれの法人の持つ特色に応じた資源配分が行われているとともに、その資源配分が適切かつ効果的に行われたかどうかを検証し、その結果を踏まえて見直しを行う仕組みの整備が進められている。

(具体的取組例)
  • 既存の機動的、短期的な総長裁量人員の配分に加え、教員の一定数を、比較的長期を見据えた新規及び継続的(既存)教育研究事業に、役員会のイニシアティブの下、学術諮問委員会の評価を経て配分する「教員採用可能数学内再配分システム」を新たに導入し、平成19年度分11名、平成20年度分19名の再配分を決定している。【東京大学】

  • 科学研究費補助金における間接経費の配分方法の見直しを行い、全額を学長が管理し、学内共同利用施設等の整備、維持及び運営経費、並びに施設整備マスタープランに基づく施設設備等の全学的な研究開発環境の改善経費とすることを審議・決定している。【東京海洋大学】

  • 各部局が自助努力で計画的に先行投資することへの支援や、部局の不測事態に対応するため、「学内資金貸付制度」を設け、歯学部附属病院の本館改修に伴う特殊要因により生じた支出超過を補填するための支援を行っている。【大阪大学】

  • 政策経費について、戦略性の高い事項に限定した整理を行い、全学的な取組を推進するための「重点施策推進経費」と教育研究基盤としての施設・設備を中長期的計画に基づき整備するための「教育研究基盤環境整備費」に区分し、その配分は学内ヒアリングによりこれまでの事業の中間評価や申請事業の内容を精査して決定している。【岐阜大学】

2 法人としての経営の活性化

(1)業務運営の効率化及び合理化

各法人においては、業務の積極的な見直しを図り、計画的な業務量の削減、業務コストの分析、業務のアウトソーシング等を通じて、業務運営の改善への取り組みを進め、業務運営コストの削減に努めている。

(具体的取組例)
  • 業務改善を継続的に推進する「業務改善等推進室」を設置し、47の改善事項を策定し、改善に取り組んでいる。【山形大学】

  • コンサルティング会社による分析手法を基に独自に事務局各課及び各学部事務の所掌業務内容等を選定の上、コスト分析が行われている。【宮崎大学】

  • 日給月給制の週40時間勤務職員を退職金・賞与相当額を加味した年俸制へ移行し、大幅な勤怠管理事務・給与事務の省力化・簡素化が実現されている。【九州工業大学】

(2)人事評価システムの構築

教職員の個人業績評価システムについては、多くの法人で導入に向けた検討、試行が本格化するとともに、教育・研究・社会貢献・管理運営等、大学の特色に基づいた評価システムを構築し、評価を本格実施し、処遇へ反映する法人も増えてきている。

(具体的取組例)
  • 教員の教育、研究、管理運営、社会貢献に関する実績を評価し、インセンティブ付与に結びつけるシステムについては、平成18年度に策定された「教員の業績評価システムについての基本方針」に従い、各部局等において具体的な基準及び評価項目等を策定し、平成19年12月期勤勉手当の成績優秀者の選考及び平成20年1月の昇給に係る勤務成績判定に反映させる取組が行われている。【北海道大学】

  • 平成19年度に教員の個人評価を本格実施するとともに、評価結果を昇給に反映している。また、評価結果を参考に、特に顕著な功績を挙げた教員を「教育特別貢献者」として表彰する取組を実施している。【豊橋技術科学大学】

  • 全職種(事務職員、教室系技術職員、教員、医療技術職員、看護職員)の人事評価を本格稼働し、勤勉手当及び昇給に反映している。【岡山大学】

(3)財務内容の改善・充実

財務諸表・財務指標の経年比較や同規模大学との比較等、財務分析結果を大学運営の改善に活用するとともに、各法人とも、その特色に則した様々な方法により、外部資金の獲得等による自己収入の増加や、経費の節減に努力しており、それぞれ一定の成果を上げてきている。

1)財務分析結果の活用

(具体的取組例)
  • 隔月ごとに役員会に平成18年度同月のデータを比較材料とした貸借対照表及び損益計算書、附属病院収入に係る各種データを提出し、必要に応じ担当部署による実態調査を行うとともに、これらの情報を中間決算書を分析するための指標とし、経営協議会及び役員会により予算執行状況の中間的な評価を行い、効果的な配分を行っている。【東京医科歯科大学】

  • 毎月、予算の執行状況及び収入実績を経営企画室会議に報告し、対前年同月の比較分析を行っているほか、財務指標の経年比較や他大学との比較検討を行った結果を踏まえ、教育・研究設備への投資等、次期事業年度の計画の作成・実施に役立てるなど、財務情報の分析結果を効果的に大学運営の改善に活用している。【浜松医科大学】

  • 財務部職員、教員で組織する「財務分析タスクフォース」において、財務分析を実施し、「財務報告書(ファイナンシャルレポート2007)」を利害関係者のわかりやすさに配慮して取りまとめ、また、財源・経費別執行状況を部局別及び年度別に比較するとともに、さらに四半期ごとに大学運営費、自己収入、病院収入、外部資金獲得状況等の各種財務状況について、財務管理の観点から検証している。【京都大学】

2)外部資金の獲得

(具体的取組例)
  • 共同利用スペースを設け、外部資金導入に積極的な教員4名に期限付きで貸与したほか、ポスドク等による研究支援体制を充実した結果、外部資金全体では、平成16年度(約2億5,705万円)と比較し平成19年度(約4億2,860万円)は67%増となっている。【北見工業大学】

  • 個人研究費の配分にあたり、外部資金獲得のインセンティブがさらに働くよう、教授、准教授、助教の個人研究費については、必要と考えられる額を保証しつつさらに減額を行い、留保分を科学研究費補助金に採択された教員のみならず申請を行った教員に追加配分している。【政策研究大学院大学】

  • 職員宿舎の効率的運用の観点から貸与基準を緩和し、常勤職員以外の再雇用職員等入居対象範囲を見直すなど、学内資源・設備の開放による自己収入の増加方策に当たっての取組が図られている。【小樽商科大学】

3)コスト削減

(具体的取組例)
  • 目標チャレンジ活動による経費節減に積極的に取り組み、電気料で473万円(対前年度比7.2%減)、定期刊行物購入費で253万円(対前年度比23.5%減)、清掃費で369万円(対前年度比9.9%減)等、一般管理費全体で9,437万円(対前年度比7.1%減)の経費削減に努めている。【三重大学】

  • コスト削減に関してインセンティブを付与する仕組を稼働させ、環境意識の向上とともにコスト意識を醸成・向上させるため、光熱水料の部局別比較をウェブサイト上で公表するなどの取組により、一般管理費比率は4.3%(対前年度比0.3%減)となっている。【和歌山大学】

  • 教職員が出張する際にウェブサイト上で航空券の発券手続き等ができる旅費システム(Q-HAT)を本格的に実施し、回数券等の利用による経費削減額が約1,100万円となっている。【九州大学】

(4)健全な財務運営のための定員・人件費管理の推進

各法人が中期計画において総人件費改革を踏まえた人件費削減目標を定めており、この達成に向け、着実に人件費削減が行われている。

(具体的取組例)
  • 総人件費改革に対応するため、各学部における現有定数相当のポイントを一定の計算方式で算定した上で、4年間の人件費削減を見込んだ各年度の目標ポイントを設定し、柔軟な人事計画を作成する人件費のポイント制の運用を開始している。【信州大学】

  • 人件費を適切に管理し、効果的な投資を行うため、月ごとの人事計画に基づく人件費シミュレーションを四半期ごとに実施し、第2四半期末時点で決算額に近い年間総人件費見込額を把握している。【京都工芸繊維大学】

  • 各学部における教員の定年者の7割を大学管理人員として事務局が管理し、学長の裁量により弾力的かつ機動性を持たせた人員配置を可能とする取組が行われている。【高知大学】

(5)危機管理への対応

全法人において、危機管理マニュアルの策定等、全学的・全機構的な危機管理体制が整備されている。

(具体的取組例)
  • 外国人留学生・研究者の比率が高いことを考慮し、災害・事件・事故等に対応するための「危機管理マニュアル」の英語版を作成し、学内ウェブサイトで全学に周知している。【北陸先端科学技術大学院大学】

  • 静岡県立大学、富士常葉大学、東海大学と「しずおか防災コンソーシアム」を結成し、静岡県防災局等の行政と連携しながら、防災マイスターの養成、防災現場での体験授業、防災知識のアーカイブ化等、防災教育・事業を展開することとしている。【静岡大学】

  • 「渇水対策マニュアル」を作成し、香川用水の取水制限の状況と高松市渇水対策本部等と連携を取りながら、学内の節水対策を行っている。【香川大学】

(6)自己点検・評価及び第三者評価

自己点検・評価、認証評価、国立大学法人評価(年度評価)及びその他の外部評価等の結果を活用し、教育研究等の充実を図っている。また、ウェブサイトの活用や大学独自のデーターベースの構築等を通じて、評価作業の効率化に向けた取組も進められている。

(具体的取組例)
  • 充実した情報基盤の上に、教育研究、管理運営に必要な様々なデータベースシステムを整備しており、それらを活用して中期計画、年度計画の進捗状況管理、実績報告書作成作業等の効率化が図られており、その結果、関係教職員の実務負担が軽減されている。【東京工業大学】

  • 中期計画・年度計画の進捗状況管理システムを活用し、学内の諸活動の進捗状況を役員、関係教職員が常時把握できるようになっており、実績報告書の作成等の評価作業の効率化・負担軽減が図られている。【一橋大学】

  • 年度計画の毎月の進捗状況をウェブサイト上で教職員全員が共有し、年度計画の推進を図るとともに、評価意識の向上を促すことを目的に独自で構築している「年度計画進行管理システム」に加えて、新たに「中期目標・中期計画進行状況管理システム」を構築しており、さらなる評価作業の効率化を図っている。【福井大学】

  • 自己点検・評価制度における評価結果等を活用し、教育部門、研究部門それぞれに「ベストティーチャー賞」(賞状及び副賞(教育研究費20万円))を授与する「優秀教員表彰制度」を設けている。【鳴門教育大学】

3 社会に開かれた客観的な法人運営

(1)外部有識者の積極的活用

経営協議会の学外委員をはじめとする外部有識者の積極的活用により、法人運営の一層の活性化を図る取組が進展している。

(具体的取組例)
  • 大学の取組に対して、学外有識者の視点からの助言を得るため、経営協議会の学外委員を話題提供者とする「全学対話集会」を全教職員及び学生を対象として開催し、大学の今後の在り方について意見交換を行っている。【お茶の水女子大学】

  • 知的財産本部会議、発明審査委員会に新潟TLOや特許事務所から発明コーディネーター等の学外専門家の出席を求めて、審議を行っているほか、各部局においても、人文社会・教育科学系談話会や歯学部諮問会議等、学外有識者の意見を反映させる体制を整備し、部局運営の改善に活用している。【新潟大学】

  • 経営協議会の意見を法人運営に積極的に活用するとともに、アドバイザー会議を開催し、大学の国際戦略、技術者教育の今後と大学の役割等について助言・提言を得るなど、学外有識者の提言等を取り入れる工夫を行っている。【豊橋技術科学大学】

  • 経営協議会委員等を講師に大学運営全般に関わる基本的知識の取得とマネジメント能力の向上を図ることを目的とした「三重大学マネジメントセミナー」を開催し、トップマネジメントによる速やかな意思決定と戦略的運営の向上に努めている。【三重大学】

(2)監査機能の充実

監事や会計監査人による監査結果を適切に法人運営に反映させる動きが進展している。また、内部監査については、全ての法人において、事務局から独立した内部監査組織の設置など、監査対象組織からの独立性が確保された内部監査の実施体制が整備されている。

(具体的取組例)
  • 内部監査として、全部局を対象に科学研究費補助金を主とした補助金等の会計監査を実施したほか、随意契約すべてを対象とした監査を実施している。【一橋大学】

  • コンプライアンス委員会を設置し、外部の有識者をアドバイザーとして参加させ、監査報告及び監査計画等について意見交換を行っている。【浜松医科大学】

(3)情報公開の促進

社会に対する説明責任の観点から、各法人とも、教育研究等の状況について引き続き積極的な情報提供に努めている。

(具体的取組例)
  • 大学教員が講師となって全国の高等学校を訪問し地球環境問題に関する講義を行う「北海道大学プロフェッサー・ビジット2007」を実施し、全国28校を訪問し7,540名が講義に参加し、北海道大学の地球環境問題に対する取組を全国の高校生に向けて発信している。【北海道大学】

  • 創立130周年を迎え、11月の記念式典をはじめとして、シンポジウム、海外大学とのスポーツ・学生交流、展示会・展覧会等の多様な記念事業を実施した。また、「知のプロムナード」構想として、各地区キャンパスに、研究成果等のモニュメントやベンチを設置するなど学生、教職員等の知的交流を深める場を美化・整備している。【東京大学】

  • 日本工業規格(JIS規格)の高齢者・障害者等配慮設計指針等を踏まえ、大学ウェブサイトの充実につとめた結果、「全国大学サイト・ユーザビリティ調査2007/2008」において全国国公私立大学200校中1位となっている。【徳島大学】


このように、国立大学は、平成16年4月の法人化以降、自律的・自主的な改革に邁進してきました。

各国立大学の取組実績については、国立大学法人評価委員会による評価以外にも、例えば、国立大学財務・経営センターが行う経営支援活動の一環として広く紹介されています。

■国立大学法人財務・経営に関する取組事例について

(1)平成18事業年度(財務経営支援研究会抽出事例)
http://cz.biglobe.ne.jp/cl/F02201000109/399/7/1342078

(2)平成17事業年度(財務経営支援研究会抽出事例)
http://cz.biglobe.ne.jp/cl/F02201000109/399/8/1342078

■大学訪問調査による「取組事例」について

(1)国立大学法人取組事例Vol.1(訪問調査概要)
http://cz.biglobe.ne.jp/cl/F02201000109/399/9/1342078

(2)国立大学法人取組事例Vol.2(訪問調査概要)
http://cz.biglobe.ne.jp/cl/F02201000109/399/10/1342078

(3)国立大学附属病院取組事例Vol.1(訪問調査概要)
http://cz.biglobe.ne.jp/cl/F02201000109/399/11/1342078

2008年10月15日水曜日

高等教育政策の動向

国立大学関係を中心に、既にご存知の方も多いのではないかと思いますが、(独)国立大学財務・経営センターでは、センターが主催・共催するセミナー・研修会、財務・財政研究会など各種事業イベントの案内、研究コラム、文部科学省からの情報、各大学における経営実情レポート、経営相談Q&A、財産管理・施設整備に関する情報などを、主に国立大学関係者にタイムリーに提供することを目的として、メールマガジン「国立大 F&Mマガジン(F=Finance、M=Management)」を発行しています。

平成18年6月の創刊以降、現在では、2,375名の方々に配信されており、財務・経営に関する有用な情報が提供されています。

バックナンバーをご覧になりたい方は以下のURLを開いてみてください。
http://www.zam.go.jp/q00/q0000001.htm


今日は、昨日配信された第29号の記事の中から、個人的な趣味に基づいた主な情報をご紹介します。

■特別寄稿「見ればただなんの苦もなき水鳥の-学長を退任して-」(前茨城大学長 菊池龍三郎 氏)

8月末で茨城大学長を退任された菊池龍三郎氏の学長体験談
http://cz.biglobe.ne.jp/cl/F02201000109/399/1/1342078


■特別寄稿「大学経営のプロへの途」(英国ノッティンガム大学ビジネス・スクール事務部長 ポーリーン・オサリバン 氏)

大学教員の経験を大学行政に活かして活躍されているオサリバン氏のエッセイ
http://cz.biglobe.ne.jp/cl/F02201000109/399/2/1342078


■「平成20年度国立大学法人等の財産管理に関する研究協議会(第2回)」資料

9月29日(月曜日)に開催された研究協議会の資料
http://cz.biglobe.ne.jp/cl/F02201000109/399/4/1342078


■「第43回高等教育財政・財務研究会」資料

センター研究部が10月4日(土曜日)に開催した研究会の資料
  1. テーマ 国立大学の教育研究に対する企業からの期待
  2. 講 師 吉武博通 氏(筑波大学理事)
  3. 講演資料 http://cz.biglobe.ne.jp/cl/F02201000109/399/15/1342078

■「高等教育財政に関する特別講演会」資料

米国高等教育管理者協会(SHEED)から講師を招へいして10月6日(月曜日)に開催した講演会の資料
  1. テーマ 米国州政府の高等教育予算に関する最近の動向など
  2. 講 師 米国州高等教育管理者協会理事長 ポール・リンゲンフェルター氏、SHEEO-NCES連携担当・情報管理担当ディレクター ハンス・ロランジュ氏
  3. 講演資料
(英文)http://cz.biglobe.ne.jp/cl/F02201000109/399/17/1342078
(和訳)http://cz.biglobe.ne.jp/cl/F02201000109/399/18/1342078
(参考資料)http://cz.biglobe.ne.jp/cl/F02201000109/399/19/1342078

2008年10月14日火曜日

記者からみた大学広報 (2)

今日は、「マスコミの第一線記者から見た「大学広報」の現在」シリーズの第2回目として、中村正史氏(朝目新聞東京本社出版本部ムック編集部編集長)の講演内容をご紹介します。

中村氏は、長年大学を取材してきた経験から、「大学が変わる時は広報が変わっている」「広報の人と話をすれば大学の校風がわかる」と言明された上で、広報を、宣伝、PRである「攻めの広報」と、危機管理である「守りの広報」に区分し、主に朝日新聞の「大学ランキング」の創刊以降15年間の大学評価の変遷、マスコミへの対応の最高の例と最悪の例、記者との付き合い方、そして危機事象発生時の対応の仕方等について示唆に富む指摘をされています。

『大学ランキング』が見た大学評価の15年

『大学ランキング』が創刊したのは1994年です。来年の春で15周年になります。創刊の趣旨は、偏差値に代わる多様な観点から大学を評価することですので、まずはデータを集めることから始めなければなりませんでした。

創刊号はすごく売れました。完売しました。ところが文科省や大学の反応は冷ややかで、アンケートに答えてくれなかったり、データを提供してくれなかったりといった対応もありました。

それが変わり始めたのは、90年代の後半です。各大学が自己評価報告書を作るようになり、それに『大学ランキング』のデータが使われました。大きく変わってきたのは2000年前後です。大学の競争原理が定着してきた中で国立大学からのアプローチが増え、どうしたら上位にランクされるのかを問い合わせてきたりしました。創刊10年でやっとそこまでになったわけです。

それでは、15年の中で各大学の評価がどう変わったのか、いくつかの指標で見ていきたいと思います。

教育面、研究面で優れた大学という指標を見てみます。これは大学の学長のアンケートに基づくものです。教育面で1994年当時の第1位は慶應義塾大学、第2位が立命館大学、第3位は慶應義塾大学のSFCが入っています。その後SFCは単独での評価が下がり、2000年以降はランク外になりました。逆に上がってきたのが金沢工業大学です。2000年に初めてベスト10に顔を出し、2007年には第1位になっています。研究面では、上位に変化はありませんが、早稲田大学が少しずつ上がってきています。

次に高校からの評価です。これは、全国の進学校300校程度の進路指導の先生にアンケートをとったものです。「生徒に勧めたい大学」の項目では、15年で大きな変化はありませんが、あえて言うと東京工業大学がベスト10から姿を消したことが注目点でしょう。また金沢工大が2004年にベスト10入りし、2007年のランクも上がっています。学長も高校の先生もすべての大学を知っているわけではないので、印象評価的な面は否めませんが、ランクの推移から大学評価の変化がよくわかります。

次に「学生満足度」の項目です。これはベネッセの調査によるものです。この項目でも1994年当時、慶應義塾大学のSFCの評価が非常に高かったと言えます。SFCの開設が1990年、その教育理念や教育内容が衝撃的で大学教育全体に与えた影響は大きかったと思います。ただその後、SFCの特徴であった語学教育やコンピュータ教育をどの大学でもやるようになって、特徴が薄れてしまいました。

次に教員の「純血率」を見てみます。これは自大学出身の教員の割合を指す造語です。この率が余りに低いと研究者の養成ができていない、あまりに高いと閉鎖的と言うことができます。この数値は法学部系統で見ていますが、1995年当時、早稲田大学法学部の純血率は93%です。これが今年は53%と半分近くに減っています。全体を見ても、純血率は下がる傾向にあります。

次に科学研究費補助金ランキングです。特徴的なのが東大のランクがどんどん上がっていることです。90年代から比べると教員一人当たりの金額も2倍以上に増えています。

指標によって変化の大小がありますが、この15年間の変化は決して小さくはなかったと言えます。

次のデータは、朝日新聞主催の「大学トップマネジメントフォーラム」の資料として、朝日新聞の読者1万5千人にインターネットで「大学を評価するポイントを5つ選んでください」と質問しました。その結果ですが、私は意外な感じがしました。ブランドイメージや偏差値といった項目が多いのではと思っていましたが、第1位は「教育面での面倒見の良さ」。第2位は「卒業後の進路」、第3位が「教育理念」でした。教育理念を選んだ年代は、高年齢層が多かったようです。

社会的な評価の基準は、どういった教育を行っているのかにあるようです。これもここ10数年間の大きな変化です。教育面でいかにカを入れていくかで自大学の評価が変わる環境にあると言えます。

マスコミヘの対応からわかる情報もある

今まで多くの大学の取材をしてきましたが、ここで、最高の例と最悪の例を紹介します。

まず最良の例です。90年代の半ば頃、『週刊朝目』で当時気鋭の文化人類学者が大学力を測るという連載をしており、ある記事で立命館大学を取り上げました。立命館は色んな改革をしている時で、それに伴い年々志願者が増加し、マスコミの注目を集めていました。その時に彼は「立命館は志願者は増加しているが、大学としての実力が伴っていない」ということを書きました。すると発売当目に広報課長から電話がかかってきて「うちの専務理事(川本氏)が話をしたいと申しておりますので、明目時間をください」と言われました。翌日編集長とお会いしたのですが、いきなり京都の銘菓を出し「京都で一番おいしいお菓子です」と言われ、なんとなく和やかな雰囲気になりました。一時間程度のやりとりの中で、最も強調されたのが、「一度是非立命館に来て、現状を見てほしい」ということでした。

後目編集長と二人で行って話しを聞きました。今考えると立命館は自信があったのだと思います。先生方4、5人と意見交換をして、その時の対応は見事なものでした。つまり立命館の本気度が伝わってくるんですね。我々記者も人間ですから、相手が本気で向かってくるのであればこちらも本気でしっかり受け止めようとします。

逆に最悪な対応を話します。数年前、ある定員割れ大学の取材をしょうとしたときの話です。その大学は補助金が打ち切られる基準である充足率50%未満というレベルの大学でした。広報部門の担当者に「経営の問題なので理事長に取材をさせてほしい」と依頼しました。その担当者は「わかりました」ということでしたが、その後全然返事がなく、「どうなっているんですか」と尋ねても、そのうちその人がつかまらなくなってしまったのです。こちらはとにかく理事長に取材をしたいとお願いをしているのに、理事長はその目から海外に旅行に行ったと言われ、しょうがないのでほかの方に取材をし、原稿を作りつつありました。ところが、原稿の締切目の夜になって、当初取材のお願いをしていた広報の担当者から電話があり「とにかく記事を止めてほしい」と言われました。私は「こちらとしては再三取材のお願いをしたのに、ある意味逃げておきながら、今になって記事を止めてほしいと言われても無理です」と申し上げましたところ、「記事のページ分の広告を出します」と言ってきました。これはマスコミの業界そのものを全く理解していない、全く逆効果の対応です。

先ほど『大学ランキング』のアンケートの対応の話をしました。大学によっては志願者や教員数や学生数など基本的なデータを開示しないところもあります。「非公表」というのは逆の意味での情報となります。つまり、そのような大学の姿勢を公表しているものだ、と我々は受け止めます。

メディアの個性を研究し効果的なニュースリリースを

プレスリリースが今日の大きなテーマですから、記者とどう付き合うかというお話しをしてみます。

まず大事なのは記者の習性を知ることです。記者は基本的に情報に飢えていますから、情報提供は大歓迎です。朝日新聞ではこの春から教育のページが増えました。教育記事の充実を図っているのは朝日だけではありません。郵送物も含めて情報提供は積極的にされるといいです。

ただ、記者というのは単なる宣伝記事を書くのはいやがります。ほしいのは「意義付け」です。ある大学が新学部を作る、またある大学も新学部を作る、という情報があった時に、その情報を一本の線でつなげてそこに記事としての価値を見出そうとする、そうすると新聞記事になります。単独のニュースだけでは記事にしょうとはしませんね。

それから新聞記者は「特ダネ」が好きです。一方で「特オチ」するのを非常に嫌います。新聞記事に大きく書いてもらいたければ、特定の1社に情報を流すことが有効です。経済記事ではよくあることです。これをやれと言っているわけではなくて、記者にはそういう習性があります。

逆に「発表モノ」はあまり大きく取り上げません。記者会見は大事ですけれど、そこで発表したものは翌目の記事で3段以上になるかと言うとなかなか難しいかもしれません。
また記者も人間ですから、広報の方との信頼関係やその方の熱意に動かされる部分はかなりあります。
長く大学取材をしている記者とのつながりを大事にするのがいいのではないかと思います。

次に、具体的にプレスリリースや広報の仕方についてアドバイスしてみたいと思います。

情報提供を積極的にするのは当然です。プレスリリースやパンフレット類を担当記者に送ったり、記者を訪ねて最近の学内の情報やこれからの取り組みを紹介するのは大事だと思います。熱心なのは関西の大学ですね。上京すると必ず訪ねてきますし、パンフレット類を大量に送ってきます。送ったからといって必ず記事になるものではありませんが、ダメもとで送ってみるくらいがいいでしょう。

プレスリリースは日々たくさん届きます。ですから表現の方法や見出しに工夫をしたらいいと思います。何のリリースなのかをはっきりさせ、しかも「意義付け」があれば飛びついてくるかもしれません。そのニュースを書こうとしている記者に何かヒントになるような材料があるといいですね。「うちの大学ではこういうことをやりますが、ちなみに別の大学でもこんなことをやっています」といった情報も参考になります。

それから媒体の特性をよく研究した方がいいと思います。新聞で言えば、全国版の朝毎読の教育面がそれぞれどういう記事を載せているのかとかですね。こういうネタだったら食いついてくるんじゃないかとか、教育報道だとこの新聞が熱心だとか、だからこの新聞社に投げかけてみようという判断ができるようになると思います。雑誌も同じです。テレビはまた違った媒体ですね。テレビはあまりストレートに教育の問題はやりませんから、まずは活字メディアを考えるのがいいでしょう。

プレスリリースは、「◎◎編集部御中」とか「教育担当者様」でもいいのですが、担当記者の名前がわかっていれば名前入りで送った方がベターです。そうすればその記者は必ずそのリリースを見ます。

万一の不祥事をどう乗り切るか 広報部門の対応がカギに

次に危機管理についてお話しします。今日の朝刊にいい材料がありました。「K学院大学のラグビー部が大麻吸引」というニュースです。私が気になるのは、この事件が起きたときに大学がどう動いたか、誰がマスコミの前に出てきて話したのかということです。最初に発覚したのが11月8目です。9目の朝刊で各紙が一斉に報道しました。9目の午前10時からK学院大学は会見をしています。このときに出てきたのが理事長とH監督です。大学側は「不快な思いを与えたことをお詫びします。20歳を超えた社会人でありその責任は取ってもらう。他のラグビー部員は関係ない」と言いました。H監督は「他の部員に責任はありません」と語っています。その上で対外試合は辞退しないと発表しました。ところがラグビー協会から社会常識とかけ離れていると言われ、夜の8時から2回目の会見を行いました。そこでは対外試合を辞退するという発表をしています。その結果新聞各紙にどう書かれたかというと「ドタバタ対応」です。これが第一報段階での対応です。

この時の問題は、「他の部員には関係ない」と言ったことです。「関係ない」というのは一つの見方であって、世間がどう見るかという視点が欠けていたのではないでしょうか。結局昨目になって警察の調べてさらに12人の関与が明らかになったわけです。対応した,のは広報室長です。これは逆なんですよ。関与していたのが12人になったというのはラグビー部としては壊滅的なことです。ここで初めて大学のトップが出てくるべきだったのではないかと思います。

過去の例を調べてみました。

早稲田大学は2003年に「スーフリ事件」がありました。この時は副総長が出てきて謝罪しました。2006年に理工学部の女性教授による研究費不正流用事件がありましたが、この時は総長が出てきて謝罪しています。これでいいのかどうかは別ですが事実として申し上げます。

同志社大学は2005年に学習塾で学生が教え子を殺すという事件があり、この時は大きな事件ですから当然学長が出てきて謝罪しています。一方今年の5月にラグビー部員3人が深夜に女子大生をわいせつ目的で車に連れ込んだという事件がありました。この時は副学長が出てきて謝罪しています。

関西学院大学の学生が2003年に広島の原爆記念公園の折り鶴に放火するという事件がありました。この時は学長が翌日に広島を訪ねて謝罪しています。この対応はすごく立派だと思いますが、ここまでする必要があるのかどうかは難しいところです。

大事なのは、最初の対応です。誰を出して謝罪するのか。それからその後の展開をある程度読まなければいけません。K学院大学のケースで言うと、関与したのは本当に2人だけなのか、今後増える可能性はないのか、そうした場合、会見でトップを出していいのかとか、その辺は広報の責任者が大学の幹部と話をすべきでした。こういう時に意見ができるのは広報部門ですから、広報担当者は親しい記者を作っておいて相談するといいですね。世論の反応やマスコミの反応をうかがうにはいいと思います。

大学の広報はブランディングとして宣伝PRの部分が日常的には一番大きいわけですが、何か起きたときには広報部門が積極的に関わることになります。ここでヘタをするとブランドイメージが大きく傷つきますから危機意識を高く持たれた方がいいと思います。

2008年10月12日日曜日

沖縄 2008 ・ 古宇利島と古宇利大橋

古宇利島

古宇利(こうり)島は半径約1Km、周囲が約8kmあり、漁業と農業が盛んな島です。古宇利大橋を渡り始めるときれいな海が広がり思わず声が出てしまうほどきれいです。
島内はのどかでサトウキビ畑が広がり、昔ながらの沖縄の家が建ち並んでいます。映画やCMのロケ地としても有名です。
古宇利大橋が開通して島外の人もアクセスしやすくなり、週末にもなると島内はにぎやかになります。また、食堂もありますので食事をすることもできます。
橋の近くにきれいなビーチがあり、パラソルなどのレンタルも行っていますので海水浴を楽しむこともできます。また、シュノーケルツアーなども体験できるショップもあります。(沖縄観光チャンネルから)

古宇利島・古宇利大橋・屋我地島周辺マップ
http://www.ritou.com/ritou/kouriyagaji.shtml


古宇利大橋(古宇利島から屋我地島を望む)

平成17年2月8日に古宇利大橋が開通しました。この橋は、今帰仁村の古宇利島と名護市の屋我地(やがじ)島を結ぶ長さが1960m。無料で通行できる橋の中で長さ日本一の橋です。橋が結ばれるまで島の人は船で行き来していました。橋はほぼ直線で、橋の入り口から見る古宇利大橋はエメラルドグリーンの海の真ん中に堂々としています。橋の上からの風景もとてもきれいです。きれいな海を見たいときは、風のない晴れた日が良いです。。(沖縄観光チャンネルから)



古宇利ビーチ

古宇利島の入口にあるビーチです。レンタルショップやシャワーやトイレ、お店などもあって充実しています。
基本的に遠浅の海なので、シュノーケリングは期待できませんが、ビーチでまったりしたり、海でプカプカ浮かんだりするにはいい感じの海かもしれません。まさに「のんびり」するためのビーチって感じがします。
海水浴にオススメのビーチですね。(沖縄離島ドットコム(古宇利ビーチの情報)から)



沖縄の人達は、これまで常に、「沖縄の自然環境保護と島民の安全や利便性の追求」という相反する課題を突きつけられてきました。古宇利大橋の建設もその一つではないかと思います。


私が心を打たれた本の一つに 森口 豁さんの「誰も沖縄を知らない」という本があります。古宇利大橋の建設と島民の気持ちについて触れています。

それでも人は架橋を願う
ふいぬ前ぬ くるす
渡ららん くるす
七ち橋かきてぃ
渡ち給り


=古宇利島の前に広がる海は、渡ることのできない深い海 どうか大きな橋を架けてわたしを渡してください。

その昔、古宇利島の先人は渡海の苦労とその思いをこのような琉歌に託した。島で生活することの不自由さと、対岸と橋で結ばれることへの期待のこもった歌である。

もし、あの島とのあいだに橋がかかるなら・・・。

その思いが現実のものとなったとき、古宇利島の老人たちが思い起こしたのは、自分たちのすぐ目の前の海で溺れ死んでいった幾人もの若者たちの痛ましい姿であった。

島が橋でつながることのメリットとデメリット・・・。

島に生きる人々は、<橋>によって「便利さ」や「快適な暮らし」を手に入れるが、失うものも決して少なくはない。

「橋ができると、カギをかけなければ暮らせなくなるさ。いやだね、そういう生活は・・・」

これは、“陸つづき“を前にした古宇利島の人々の共通認識でもある。現に、すでに橋のかかった島の人々の暮らしはそうなった。瀬底島で”スイカ泥棒“をはたらくのは島外の人だけではないというのである。

「犯人がだれだかわかっているけど口にしない。島の人同士だと言いにくいわけさ。いやなことだけどね。哀しい島になってしまったさ」

ある老人の話である。

<窓を開ければきれいな空気も入ってくるが、蚊やハエも入ってくる。しかしそれでも窓は開けなければならない>と語ったのは、中国の最高指導者・故勝g小平であった。改革開放の必要性を説いた言葉である。

今帰仁村では、橋の完成後古宇利小中学校を本島の学校に統合する計画だ。「経費の削減」と「教育効果の向上」のための統廃合だという。この事実は島が橋でつながることが決して「便利一辺倒」ではないことを示している。

古宇利大橋の総工費200億円を島の住民の頭数に換算すると、一人当たり5500万円に相当するが、これを高い買いものとみるか安い買いものとみるか。その答えを出すのは古宇利の人たちだ。


2008年10月11日土曜日

国立大学法人の平成19年度評価結果(2)

前回に引き続き、国立大学法人評価委員会が行った平成19年度の国立大学法人の業績評価の結果です。今日は、国立大学法人全体の評価結果(抜粋)をご紹介します。

国立大学法人の平成19年度に係る業務の実績に関する評価結果の概要

1 全体の状況

平成19年度は中期目標期間の4年目に当たり、それぞれの法人において、学長のリーダーシップの下、各法人の基本的な理念や置かれた環境に応じて、工夫・改善を図りつつ、中期目標の達成に向けて意欲的に運営を進めている。一方、管理運営コストの削減は重要な課題であり、今後は、各法人の規模・特性に則して管理運営体制・組織の在り方を検証し、必要に応じてそのスリム化を検討していくことが期待される。

また、平成18年度の評価結果において課題として指摘した事項については基本的には改善が図られており、各法人において、評価結果を活用した改善システムが有効に機能しつつある。一方、一部の法人では、これまでに評価結果において課題とされた事項に対して、十分な対応がなされていない事例も見られ、これらの法人においては、評価結果を法人運営の改善に反映するための真摯な取組が求められる。

(1)業務運営・財務内容等の状況

「業務運営の改善・効率化」「財務内容の改善」「自己点検・評価及び情報提供」「その他業務運営に関する重要事項(施設設備の整備・活用、安全管理等)」の4項目について、中期目標・中期計画の達成に向けた業務の進捗状況等について評価を行った。

■業務運営の改善・効率化

基本的には順調な進捗状況にあり、一部の法人において進捗状況に遅れが見られるものの、教職員の評価結果を給与等処遇に反映させるなど、特筆すべき進捗状況にある法人も見られた。

■財務内容の改善

平成16~18年度に引き続き、多くの法人でその特色を活かしつつ、外部資金の獲得や経費節減に様々な工夫や努力を行った結果、具体的な成果が得られており、一部の法人において進捗状況に遅れが見られるものの、基本的には順調に進捗している。

■自己点検・評価及び情報提供、その他業務運営(施設設備の整備・活用、安全管理等)

引き続き、基本的には順調に進捗しており、外部評価の実施や施設設備の有効活用等に積極的に取り組んでいる。
一方で、経営協議会の運営、学生収容定員の充足、研究費の不正使用防止等の重要な課題への対応について、取組が不十分な法人も見られ、今後、早急な対応が求められる。
なお、平成17、18年度ともに、中期計画に対応する年度計画の数が著しく少ない法人が見られたが、平成19年度においても、このような状況の法人(兵庫教育大学)が見られた。各法人が中期計画を着実に実施していくためにも、引き続き中期計画に対応した適切な年度計画を設定していくことが求められる。

(2)教育研究等の質の向上の状況

平成16~18年度に引き続き、多くの法人において、法人化による環境の変化を積極的に活かし、指導方法の改善・充実、教育活動の個性化・特色化、学生支援体制の整備等の教育改革、競争的環境の醸成と資源の戦略的配分、女性研究者や若手研究者の育成、法人の特色に応じた研究活動の活性化や産業界や地域社会等への貢献に積極的に取り組んでいる。

(3)附属病院

教育研究診療の質向上、病院運営の効率化、地域連携や社会貢献の強化等に積極的に取り組み、特に社会的・地域的なニーズや喫緊の政策課題等に対し、地方公共団体や地域の医療機関と連携し、迅速かつ適切な対応を図っている。
また、医師不足問題や近年の診療報酬のマイナス改定により病院経営が極めて厳しい状況の中、7対1看護師配置基準の取得や医療従事者の確保に努め、経営改善を進めたことにより、全体として、国立大学附属病院としてのパフォーマンスが向上していることは評価できる。今後、個々の附属病院が置かれている状況や条件等を踏まえ、目標設定を明確にしつつ、附属病院の使命である教育研究活動の充実と診療活動とのバランスある更なる発展を期待する。

2 項目別評価の概況(業務運営・財務内容等)

(1)業務運営の改善・効率化

1)運営体制の改善、2)教育研究組織の見直し、3)人事の適正化、4)事務等の効率化・合理化等、業務運営の改善・効率化に関する各法人の中期目標・中期計画の達成に向けた業務の進捗状況について、総合的に評価を実施した。
  • 学長のリーダーシップを発揮するための体制整備については、各法人において、学長のリーダーシップによる意思決定や企画立案・業務執行を遂行する仕組みを作り、機動的、戦略的な法人運営を目指した運営体制の確立に努めてきている。一方、様々な管理運営組織の設置により、意思決定や業務執行のプロセスが複雑化してきている傾向もあり、今後は、管理運営コストの削減のため、法人の規模・特性に則して管理運営組織の在り方を検証し、必要に応じてそのスリム化を検討していくことが期待される。

  • 学長等の裁量による経費・人員等の配分については、各法人において、その充実を図りつつ、法人の特性を踏まえた戦略的・重点的な配分が行われており、その成果の検証を行いより効率的な再配分を行う例も見られた。

  • 経営協議会については、ほとんどの法人において適切な審議が行われ、学外委員の意見を法人運営の改善に反映しているが、6法人(電気通信大学、宮城教育大学、筑波技術大学、宇都宮大学、和歌山大学及び福岡教育大学)において、審議すべき事項が報告事項として扱われており適切な審議が行われていない。特に、電気通信大学においては、平成18年度の評価結果の通知以降は適切な審議を行っているが、それ以前においては、平成18年度、平成19年度の2か年にわたり、審議すべき事項が報告事項として扱われていることから、適切な審議を行うことが強く求められる。

  • また、経営協議会の運営の工夫改善や学外委員による懇談会の活用等を通じて、学外者の意見がより法人運営の改善に活用されることが期待される。

  • 学生収容定員の充足については、大学院博士課程若しくは専門職学位課程の充足率が90%を満たしていない法人がなお9法人(政策研究大学院大学、弘前大学、信州大学、秋田大学、旭川医科大学、和歌山大学、山梨大学、九州工業大学及び三重大学)ある。特に、政策研究大学院大学、弘前大学、信州大学及び和歌山大学においては連続して充足率を満たさず、入学定員の削減を行っていないことから、今後、速やかに、定員の充足に向けた取組、特に入学定員の適正化に努めることが求められる。

  • 監事監査・内部監査については、各法人において監査対象からの独立性の担保等、監査体制の整備が図られてきており、監査を通じて指摘された運営面での課題に対してはほとんどの法人において迅速な対応がなされている。一方、一部の法人において、監査で指摘された課題に対する取組が十分に行われておらず、監査結果を運営の改善に反映するサイクルの構築が求められる。

  • 教職員の個人評価については、多くの法人が制度の検討を進め、試行を行いつつ取組を進めており、これまでの17法人に加えて、新たに15法人(北海道大学、東京学芸大学、福井大学、山梨大学、信州大学、豊橋技術科学大学、島根大学、岡山大学、徳島大学、鳴門教育大学、香川大学、愛媛大学、九州工業大学、長崎大学及び熊本大学)において、教職員のそれぞれの職務を踏まえた個人評価の本格実施とその結果の給与等処遇への反映を実施している。
(2)財務内容の改善

1)外部資金の導入その他自己収入の増加、2)経費の抑制、3)資産の運用管理の改善等、財務内容の改善に関する各法人の中期目標・中期計画の達成に向けた業務の進捗状況について、総合的に評価を実施した。
  • 財務内容の改善・充実については、多くの法人において科学研究費補助金の採択、共同研究や受託研究の実施等による外部資金の獲得に向け、法人内で教員のインセンティブを高める方策や外部資金の申請を支援する諸施策を講じるなど積極的な取組を進め、継続的に成果を上げている。また、余裕金の運用に積極的に取り組み、成果を上げている法人も多く見られた。

  • また、経費の節減についても、各法人とも引き続き各種の方策を講じ、光熱水料の削減や複数年契約による各種契約費の削減など管理的経費の抑制に積極的に取り組んでいる。なお、これらの取組の成果が、外部資金比率の向上や一般管理費比率の低下等の財務指標に現れている例も見られた。

  • 一方、年度計画に設定した管理的経費の削減を達成できなかった法人もあり、今後、工夫改善を図りながら、継続的な取組を通じて、財務内容の改善に係る計画を達成していくことが期待される。

  • この他、多くの法人において、法人化後4年間の財務諸表等について、財務指標の経年比較や他法人との比較等による財務分析を行い、法人運営の改善に活用しており、今後も、自らの財政状況を的確に把握し、財務分析を通じた戦略的な経営管理を行っていくことが期待される。

  • 人件費管理については、「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(平成18年6月2日法律第47号)を踏まえ、各法人の中期計画において人件費削減の目標値が設定されており、すべての法人がその達成に向けて、着実に人件費の削減を行っている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、適切に人件費削減の取組を行うことが求められる。
(3)自己点検・評価及び情報提供

1)評価の充実、2)情報公開の推進等に関する各法人の中期目標・中期計画の達成に向けた業務の進捗状況について、総合的に評価を実施した。
  • 自己点検・評価については、法人全体としての評価の実施に向けた体制の整備等がほぼすべての法人で行われており、各法人において「企画-実行-評価」の改革サイクルが確立しつつある。また、教育研究、管理運営に必要な様々なデータベースシステムを整備し、ITを活用して中期計画・年度計画の進捗状況を定期的に管理し、実績報告書の作成作業等の効率化と負担の軽減を図っている法人も見られた。今後は、より多くの法人において、ITを活用して、中期計画・年度計画の進行管理及び評価作業の効率化と負担の軽減に向けて工夫改善が行われることが期待される。

  • 広報については、学長がマスコミ、地域の企業等と定期的な懇談を行ったり、ウェブサイトの内容充実を図ったほか、テレビ・ラジオ番組の放送や新聞広告の掲載等、多様なメディアを活用し、法人の活動状況を広く社会に情報発信する取組が積極的に行われている。
(4)その他業務運営に関する重要事項

1)施設設備の整備・活用、2)安全管理等、その他業務運営に関する各法人の中期目標・中期計画の達成に向けた業務の進捗状況について、総合的に評価を実施した。
  • 研究費の不正使用防止のための取組については、多くの法人において、危機管理に相応しい仕組み、未然の防止策及び事案の把握方法に関し、ガイドラインや関係規程の制定等、体制、ルールの整備を行っている。一方で、一部の法人(北海道教育大学、小樽商科大学、お茶の水女子大学、総合研究大学院大学、北陸先端科学技術大学院大学、福井大学、静岡大学、大阪大学、鳴門教育大学、鹿屋体育大学及び高エネルギー加速器研究機構)において、研究費の不正使用防止に向けて一部の規程や体制の整備がなされていないため、早急な対応が求められる。

  • 施設設備に関しては、計画的な整備や維持管理等を実施するためのマネジメント体制がすべての法人で確立しており、キャンパスマスタープラン等長期的視点に立ったキャンパス整備計画の策定や、共同利用スペースの確保等を通じた既存施設設備の有効活用、寄附や地方公共団体等との連携による整備、民間借入による整備等、多様な整備手法による施設設備の充実等の取組が進展している。

  • 環境保全対策については、省エネルギー対策に関する取組について外部表彰を受ける法人があるなど、経費の節減に向けた取組とあいまって省エネルギー対策の積極的な推進に努めている。引き続き、環境に配慮した取組の進展が期待される。

  • 危機管理については、すべての法人において、災害、事件・事故等に対する危機管理マニュアルの制定、対応部署の設置、予防訓練の実施等、全学的・総合的な危機管理体制の整備を進めている。今後は、各法人が置かれた環境に応じて、想定される事象ごとに、地域との連携を図りながら、予防的措置にも力を注ぎつつ、危機管理体制をより強固に構築していくことが期待される。

2008年10月10日金曜日

国立大学法人の平成19年度評価結果(1)

昨日(10月9日)、文部科学省に設置された国立大学法人評価委員会は、平成19年度の各法人の業務実績に対する評価を決定し各法人に通知しました。

各法人ごとの評価結果は公表されておりませんが、今回の評価を総括する形で、「評価委員会委員長見解」「国立大学法人全体の評価結果の概要」「国立大学法人の改革推進状況」が公表されています。

今日はこのうち「評価委員会委員長の見解」をご紹介します。

まずは、昨日の公表を受け、これまでに報道されている記事を3つほど。

経営協議会審議、6校で不適切=国立大評価 (2008年10月9日 時事通信)

文部科学省の国立大学法人評価委員会は9日、国立大と大学共同利用機関の全91法人について、2007年度業務実績の評価結果を公表した。外部の意見を反映させるための経営協議会の審議が6大学で不適切だったなどとして、評価委は「一部で取り組みが不十分」と指摘した。

宮城教育大、福岡教育大など6校は、学外の委員が参加する経営協議会で審議すべき財務諸表、役員報酬規定などを、事後報告で済ませていた。

弘前大、信州大など9校では、博士課程、法科大学院で学生の定員充足率が基準の9割を切っていたことが判明。今後、運営費交付金の返還が求められる。

小樽商科大、静岡大など10校と高エネルギー加速器研究機構では、研究費の不正使用を防止するための規定・体制の整備が不十分だった。

一方、30校と2機関は、教職員の個人評価を給与などに反映させる仕組みを導入済み。評価委は「運営効率化は基本的には順調に進んでいる」とした。


大学研究費:不正流用防止のルール作り、11法人で不適切 (2008年10月9日 毎日新聞)

国の研究費の不正流用を防止するルール作りについて、91の国立大学法人と大学共同利用機関法人のうち11法人で適切に行われていないことが、国立大学法人評価委員会(野依良治委員長)の調査で分かった。同委員会は「早急な対応が求められる」としている。

不正流用防止のガイドライン制定、監査体制作り、研究者の勤務時間管理などが行われているかについて、07年度の実態を調べた。適切な対策が取られていなかったのは▽北海道教育大▽小樽商科大▽お茶の水女子大▽総合研究大学院大▽北陸先端科学技術大学院大▽福井大▽静岡大▽大阪大▽鳴門教育大▽鹿屋体育大▽高エネルギー加速器研究機構。

また「業務運営の改善・効率化」で7法人、「自己点検・評価及び情報提供」で6法人が「やや遅れている」と評価された。


国立大の業務、延べ18校「改善必要」 07年度、文科省評価 (2008年10月10日 日本経済新聞)

文部科学省の国立大学法人評価委員会(委員長=野依良治理化学研究所理事長)は9日、国立大学の2007年度の業務実績評価をまとめた。全体としておおむね良好と評価する一方、大学院の定員割れなどを理由に、延べ18校について「取り組みがやや遅れている」とした。

国立大の業務実績評価は、各大学が設定している中期計画(04-09年度)に対し、どれだけ計画通りに取り組んでいるかを毎年チェックする仕組み。国立大87校と、高エネルギー加速器研究機構など4つの大学共同利用機関法人が対象で(1)業務効率(2)財務内容(3)自己点検(4)その他-の4分野について、それぞれ5段階で評価が行われる。


次に、国立大学法人評価委員会委員長見解です。

国立大学法人・大学共同利用機関法人の平成19年度に係る業務の実績に関する評価について
平成20年10月9日
国立大学法人評価委員会
委員長  野依 良治

国立大学法人評価委員会は、この度、国立大学法人及び大学共同利用機関法人の平成19年度に係る業務の実績に関する評価を行いました。

評価に当たっては、各法人から提出された業務実績報告書を基に、平成19年度における各法人の中期計画の進捗状況について、法人側の自己評価や年度計画の設定の妥当性も含めて検証しました。その際、財務諸表等も活用するほか、法人として最小限取り組むべき事項を各法人共通の観点として取り上げています。

平成19年度の状況については、それぞれの法人において、学長・機構長のリーダーシップの下、各法人の基本的な理念や置かれた環境に応じて、工夫・改善を図りつつ、中期目標の達成に向けて意欲的に運営を進めていることを評価します。今後は、管理運営コストの削減に向けて、法人の規模・特性に則して管理運営組織の在り方を検証し、必要に応じてそのスリム化を検討していくことが期待されます。

また、多くの法人においては、昨年度の評価結果を積極的に業務の改善に役立てており、当委員会による評価を活用した改善システムが有効に機能していると認められますが、一方で、これまでに評価結果において課題とされた事項に対して、十分な対応がなされていない事例も見られ、これらの法人においては、評価結果に対する真摯な取組が求められます。

当委員会においては、今年度、引き続き、平成19年度までの4年間の業務実績に係る評価を行い、教育研究等の質の向上に係る大学評価・学位授与機構による評価の結果とあわせて、各法人の次期中期目標・中期計画の策定に資することとしています。このほか、具体的な組織の見直しなどについても検討に着手していくこととしています。

国の財政状況を受け、法人の運営財源である運営費交付金が削減され、各法人を取り巻く環境は厳しさを増しているところですが、引き続き、中期目標の達成に十分留意して、計画の進捗状況を正確に把握・分析し、運営の改善に確実に結び付けていくよう一層の取組を期待します。

2008年10月9日木曜日

大学職員サミット「やまぐちカレッジ2008」

これからの大学には、学長や経営トップを支えるプロとしての力量のある事務職員が不可欠であり、今後、OJTを通じた実践的SD、職能団体や大学等が行うSD活動、大学院での専門教育など、多様な機会を積極的に活用し、事務職員が主体的に企画能力、専門能力、課題発見・解決能力を高め、教員との適切な役割分担・対等関係に基づく協働を促進していかなければなりません。

また、その前提として、私達大学は、教職員の意識改革(又は意識のない者への動機付け)、事務組織の硬直性や非効率性の解消、OJTにおいて指導者となるべき幹部事務職員の能力開発、そして、大学の特殊性と言われる部局自治主導の運営方式からの早急な脱却に向けた組織的、責任のある行動に努めなければなりません。

教職員の職能開発については、先に中央教育審議会がとりまとめた「学士課程教育の構築に向けて(審議のまとめ)」の中でもその重要性が指摘されているところですが、最近では多くの大学でSD(スタッフ・ディベロップメント)の取り組みが積極的に進められています。

中でも、既にこの日記でもご紹介しましたが、昨年度、山形大学が本邦初の取組として実施した「大学職員サミットやまがたカレッジ2007」は、注目すべきものがあると思います。



大学職員の世界が閉ざされている限り、この国の高等教育に将来はないと言っても過言ではなく、そのために大学職員は、このようなSD活動に積極的に参画し、個別大学だけに通用する能力ではなく、普遍的な能力を身につけなければならないのではないでしょうか。

今日は、昨年度の山形大学に続き、来る11月8日(土曜日)~11月9日(日曜日)に山口大学で開催される「第2回大学職員サミットやまぐちカレッジ2008」の概要をご紹介します。

サミットの詳細は以下のURLをご参照ください。
http://ds22.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~www-yu/cgi-bin/topics_event/2008/event081006/


【関連ブログ】(10/16追加掲載しました)

「大学職員サミット やまぐちカレッジ2008」 開催(10月15日 大学プロデューサーズ・ノート)


「第2回大学職員サミットやまぐちカレッジ2008」  

-未完(蜜柑)の大器にメッセージ-

  • 「未完の大器」とは学生を指し、大学職員から彼らに向けてメッセージを発信します。

  • 「大学職員サミット」は、大学職員がプロデュースする参加型シンポジウムであり、大学職員がプロデュースする参加型「SD&FD」です。

1 背景

激動の時代、競争に勝ち、個性輝く大学を創るために、大学職員は何をしなければならないのでしょうか。
変化に対応する事務処理能力は細分化・先鋭化に向かうものと思われますが、大学を取り巻く環境は変化に加えて拡散し始めています。
事務処理能力が第一義的に求められてきた時代は終わり、新しい時代を担う大学職員は、大学の資産であり資源である教員及び学生と共創し、個性輝く元気な大学を創る役割を担わなければなりません。
そして教育・研究を支援し学生を支援することにあっては、教員とは異なる視座、大局的視野に立ってプロデュースする力量が求められることになります。

2 開催趣旨

「大学職員サミットやまぐちカレッジ2008-未完(蜜柑)の大器にメッセージ-」は、国公私立大学の枠を超えた、参加型のシンポジウムです。

個性輝く元気な大学を創るために、大学職員は何をしなければならないのでしょうか。
学生の学びを支えその力を引き出すために、大学職員はいかに使命感を持ち、各々が持つ力を存分に発揮してその役割を担っていけばよいのでしょうか。大学にとって職員の役割が重要とされる中、それを担う大学職員の可能性とはどのようなものだと思われますか。

これからの大学は、「学生・教員・職員の三者が一体となって、共に力を合わせ、共に育み合い、共に喜びを分かち合う」ことが重要であり、大学職員の可能性について語り合うとき、大学職員だけでなく、教員・学生と共に語り合うことがとても大切なことです。
国公私立大学の枠を超えて、それぞれの立場からそれぞれの視点で語り合い、大学職員の可能性を見いだすことで、大学職員はより輝き、教育・研究を支え、学生の元気を引き出す原動力になると思われます。

このサミットが、参加者にとって大きなネットワークの場となり、これからの個性ある大学創り、大学職員の可能性を探求する意識啓発の発露の場になればと思います。
そして、「大学職員サミット」終了時には、未完(蜜柑)の大器の学生に向けて、メッセージを発信できればと思っています。

3 開催日程 平成20年11月8日(土)~11月9日(日)

4 開催場所 山口大学経済学部第2大講義室、第1学生食堂「ボーノ」及び熊野荘

5 プログラム、申し込み方法など
http://ds22.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~www-yu/cgi-bin/topics_event/2008/event081006/

ポスター
http://ds22.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~www-yu/cgi-bin/topics_event/2008/event081006/img-X06140104.pdf
  • 主催:大学職員サミット実行委員会
  • 共催:社団法人国立大学協会中国・四国地区支部
  • 後援:読売新聞東京本社
  • 企画・協力:山口大学、大学コンソーシアムやまぐち、桜美林大学大学院大学アドミニストレーション研究科高橋真義ゼミ、高等教育問題研究会・FMICS、大学新聞社

2008年10月8日水曜日

記者からみた大学広報 (1)

大学を取り巻く現在の厳しい環境の中で、今後、教学を含めた大学経営の強化を図っていくためには、教育研究活動に関する情報の社会への積極的な提供や、危機事象発生時における社会への説明責任を適切に果たしていく「大学広報」の在り方が極めて重要な位置付けになるのではないかと思います。

そこで今回から4回シリーズとして、「マスコミの第一線記者から見た「大学広報」の現在」について、昨年末に「大学通信」という企業が大学の広報担当者を対象に開催した「大学広報支援セミナー」での4人の記者経験者の方々の講演概要をご紹介したいと思います。

このセミナーは、「Campus Navi Network」という情報提供サイトを運営する「大学通信」という企業が、創立40周年を記念し設置した「大学プレスセンター」*1の紹介を兼ねて東京と大阪の2会場で開催されたものです。

「大学プレスセンター」の詳細については、以下のURLをご参照ください。
http://www.u-presscenter.jp/modules/bulletin/index.php


今回は、澤 圭一郎氏(毎日新聞社編集局とうきよう支局長)の講演内容です。

私は毎日新聞社で今日まで18年間、記者として働き、その間には都庁や文部科学省など教育関係の仕事も担当してきました。その経験からお話しをしますと、まず大学広報の方々は、大学が世間からどのように見られているのかを考えてほしいですね。

例えば、大学に対して世間で一番関心が高いのは「入試」です。大学が入試改革をすれば、それだけでニュースになります。最近はずいぶんいろんなレパートリーを揃えた入試が増えてきましたが、私が担当していた頃、河合塾が大学の入試問題を代行して作るという話がありました。そうしますと、予備校に入試問題を作ってもらう大学っていったいどこだろうと、大きな関心を呼ぶわけです。

また、今日ではAO入試は当たり前ですが、かつて西武文理大学で「バーベキュー入試」といって、受験生にバーベキューを作らせて合否を判定するというユニークな入試が登場し、記事に採り上げた記憶があります。奇を衒った、という言葉が適当かどうかは分かりませんが、そのくらい世間の注目を引くようなものでないと、なかなかニュースにはならないということは言えるでしょう。

「初もの」を盛り込むなど工夫を凝らして注目度を上げる

そこで、いったい「何がニュースになるのか」という話になるわけですが、まずは社会的に見て今、何が流行し、話題になっているのかを押さえる。そして、自分の大学は今どんな立ち位置にいるのかを考えれば、自ずとヒントが出てくるのではないかと思います。

記者は「だれもが見たこともなく、聞いたこともない」ものに飛びつきます。全国初、という内容のネタのことを「初もの」と言いまずけれども、こうした要素があればニュースとしての価値は上がりますし、記事として取り上げられやすい。

大学入試は今後も変わっていく可能性があると思います。近年は、改定されたばかりの学習指導要領がさらに前倒しで見直されるなど、振り子のように落ち着かない状況ですね。「ゆとり教育」はマスコミが名づけたと言われていますが、その揺り戻しで、今度は生徒にみっちりと勉強させる流れが来ている。大学も当然それに合わせて入試を見直さなければならない。そこがまた一つ狙い目でしょう。

一方で、大学広報の方々は、高校の学習指導要領をあまり研究されていない。少なくとも私が大学を取材していた時はそうでした。入試問題は教授会で決められていると思いますが、それをいかにPRするのかは広報の皆さんの仕事だと思います。高校生がいま何を勉強し、何に関心を持っていて、高校の先生はそれをどう教えているのか、ということをまずはきちんと調べてみることが大事です。

もうひとつ、近年は新学部の設置や学部再編が続いていますが、これもやはりニュースになる。かつて京都精華大学がマンガ学部を開設したときに、一面で紹介した新聞社がありました。「マンガは大学で教えるものか」「マンガで大学の授業が成立するのか」ということが大きな話題となる。読者も「マンガ学部」というだけで興味を惹かれますよね。これがニュースなわけです。そういう、注目を集める素材が身近にないか見直すのがよいと思います。

このほか、私が記事として採り上げてきたものに、大学の社会貢献があります。ここで私が注目するのは、大学主導ではなく、学生による社会貢献活動です。例えば新潟で地震があった時に、サークルの仲間が自発的にまとまって現地に入り、炊き出しを手伝ったり、被災した人たちに声をかけたりする。現地でそういう学生さんたちを見ると、とても勇気づけられます。彼らは大学のため、などという意識はないと思いますが、それが結果的に大学の大きなPRにつながっています。

それから、大学自体の統廃合。これはもう言わずもがなです。共立薬科大学が慶應義塾大学と統合される、というような出来事は非常に大きなニュースとして、新聞の一面に載ります。

一方で、「公開講座をやります」といった告知も多いですが、それだけではニュースになりにくい。こうしたニュースをリリースする際には、記者の目に留まるような工夫をする。記者は「初もの」に弱いですから、「この先生がやっている研究は他にはありません」、あるいは「この公開講座で取り上げる内容は初めてです」といった内容を盛り込むだけで格段にフレームアップできます。

記者との普段のつき合いも大事 ソフトなリリース文で訴えかけよう

次にリリースの配信の仕方についてお話をしますと、これだけインターネットが普及した今日でも、ニュースの多くはファックスで送られてきます。東京支局では、ファックス用のロールがだいたい半日で1本なくなります。その半面、記事として取り上げられそうなものは、1日に3本あればいい方でしょう。そんな中で、「3、4日前に***のファックスを送ったんですが、読んで頂けましたか」といった確認の電話をもらうことがありますが、現実的にはお答えのしようがありません。

それでは、どうずれば記者にリリース文をピックアップしてもらえるのでしょうか。肝心なのは、概要を示した最初のページをどうまとめるかです。この部分を少し工夫するだけで、中身を読んでみようという気になる。ところが、「公開講座を来月行います」という見出しに、先生の名前と講座名が書いてあるだけでは、そのまま脇に流されてしまいます。

記者に受信の確認を取りたいのであれば、ファックスで送信した後、間髪を入れずに電話をかけた方がいい。それだけで、少なくともリリースをした事実は先方に伝わります。その際に、「いつもお世話になっております」で始まるような紋切り型ではなく、記者の気を惹くような文章で「初もの」のニュースが載っていれば、取材をしてみようという気にさせることができるわけです。これは一つのアプローチの仕方ですね。

大手の新聞社では、一般に社会部の記者が教育関係の記事も担当します。この社会部では、政治家相手にインタビューもするし、オリンピックの取材にも行く。地震や津波などの災害現場にも出かける。そこで、社会部記者が関心を持つような話題に特化すれば、採り上げられる可能性も高まるでしょう。

一方で、大学によっては広報担当の方がわざわざ追いかけてきて、記者に直接プレゼンをしてくださる人もいます。これは内容にもよりますが、記者にとっては大変うれしいことです。じかに話を聞ければ会話が生まれますし、そこでもう取材が始まるわけです。皆さんも、新聞記者と友だちになれとは言いませんが、直接話しをする機会はできるだけ多く持たれた方がいいと思います。

一方で、大学が不祥事を起こしたために、マスコミに取材されるということもあるでしょう。これは危機管理の話になりますが、その際に、速やかに会見を開ける仕組みを取っていれば、いたずらに危機を拡大させずに済みます。

半面、会見がなかなか開けないのは、情報が錯綜し、何が起きているのか正確につかめないからだと思われます。しかし、学内のコンセンサスがまとまるまでは会見しない、というのではなく、できるだけ速やかに会見を開く。その際に、憶測でものはいわない。謝るべきことは謝る。今後どうするのかを、分かっている範囲で説明する。この迅速な対応ができるか否かは、その後の記事の展開にも大きく影響しますし、最初の会見で失敗すると、それがずっと尾を引きます。これは危機管理の、広報担当の最大の命題だと思います。

話がそれましたが、大学の広報について、新聞記者がどういうことを知りたがっているか、何を記事にするかということを理解するために、できるだけ記者とお付き合いをしてほしい。昨年の冬、私は工学部の受験生が10年前に比べ半分ほどに激減したという記事を書きました。それは、ある大学の広報担当者との雑談がきっかけだったのです。「最近は理系に全然人気がない。見る影もなく受験者数が減っている」という話を聞き、これはこの大学だけの話ではないなと直感し、複数の大学に取材をして記事にまとめたわけですが、これも相手と面識があったからこそ、こういう雑談ができたわけです。大学にとっても、雑談ができる記者が一人でもいれば、危機管理の時などにもとても有用でしょう。

*1:2008年4月より開始された「教育情報に特化したオンライン型情報配信サービス」であり、社会に広く流通している教育情報を整理、再構築するとともに、各大学の様々なシーンで埋もれている貴重な情報を洗い直し、教育情報のダイナミックな再活性化を図ることで、大学各位と社会との真に有意な橋渡し役の一端を担うことを目指しているもの

2008年10月7日火曜日

教育再生懇談会レポート

これまでどちらかといえば、初等中等教育を中心に検討されてきた政府の教育再生懇談会が、いよいよ高等教育の議論を始めました。

今日は、9月22日(月曜日)に開催された教育再生懇談会の議事要旨の中から「大学全入時代の教育の在り方について」の議論の様子をご紹介します。

なお、関連する資料及び議事要旨全文は、教育再生懇談会のホームページをご覧ください。


大学全入時代の教育の在り方について


安西座長

私立大学の学生のレベル、学力が低いというのは由々しい問題である。大学側は経営の問題がかかっているという現実がある。
一方、日本は学費の私費負担が大きいという現実もある。家庭環境、所得格差が学歴格差を生むというデータも多々出ており、そういうことに対するバックアップが大事である。悪循環がありそこを断ち切る1つの方策としては奨学支援だと考えられる。また、GPAなど大学での学力の質の担保を大学に対して強く言う必要がある。

田村委員

重要な問題で、すぐ大学が多すぎるという議論につながるが、日本はOECD先進諸国と比較して、大学は多くはない、むしろ少な目である。
将来、知識基盤社会を作ろうとする場合には、社会的なインフラとして、大学はこれぐらいはなければ、先進国に伍していけない。
量ではなく、質の問題である。卒業段階の試験や入学のときの試験といったことのほか、入ってからも色々な仕組みが議論されており、丁寧に議論して実体化していくことでかなり改善されるのではないか。

若月委員

修了率が日本は91%だが、米国は56%となっているが、これはどう読めば良いのか。

安西座長

フランスやアメリカでは、社会、市民、国等が教育に投資をするのが大事だという認識がある。日本の場合は、教育投資は国がやるべきことであるということになっていて、狭間に私立大学が落ちている。国からの投資も必要だが、市民のバックアップが高等教育の充実には大事である。そういう中で私費負担が大きいので、所得の格差が学歴格差を生み、それが遺伝していく。その根をどこかで断ち切らなければいけない。
高等教育が改善されれば初等教育も改善されていく。私立大学をなんとかして欲しいという訳ではなく、国公私を通じて、大学、高等教育の在り方を実態を見て、原因を突き詰めてその原因を取り除く方策をとらなければいけない。

町村官房長官

進学率を比べたら、日本は高いのか。

安西座長

進学率はだいたい50%ぐらいで、それはOECD加盟諸国で、上から三分の二ぐらいで上の方ではない、真ん中より下ではないか。

田村委員

学生が日本の場合は特定年齢に偏っている。OECD諸国やアメリカに行くとキャンパスの中で若い人は少ない。成人が山のようにいる。長い時間をかけてしっかり勉強しようとしているということが社会全体の知的水準を支えている。

安西座長

大学進学というときには高校生が大学生になることだけを考えているが、アメリカ、イギリスあたりの大学生の20%は社会人であり、パートタイムの学生が多い。進学率を18歳の進学率と捉えるのと、社会人も含める捉え方とがあり、これからは後者で考えるべきで、大人でもまた大学で学べる生涯学習社会にしていかないと日本はもたないのではないかと思っている。

篠原委員

格差の問題というのは、例えば東京大学の学生の親の年収が日本の大学で一番高いということなのか、教育格差が格差の再生産につながっているということか。

安西座長

傾向としてはそうだと思う。教育費負担のことを言っているのは、家が貧しくても志のある人達を公に支援していかなくてはいけないからである。
多くの若い人達が大学レベルで学ぶことが、これからの日本にとってはとても大事だと思う。ただ大学にいれば良いということではなく、大学においてちゃんと学べるようなサービスを大学が提供しなくてはいけない。

町村官房長官

大学に行っても遊んでいるような子供達がぞろぞろいてもしょうがないのではないか。

安西座長

遊んでばかりいる学生であふれているキャンパスはいらない、それは淘汰されるべきである。しかし、ある一定の学力を持つ若い人達を日本が生み出していかなくてはいけないのは確かであり、それを誰がどうやって生み出していくかというふうに考えていただきたい。今の大学を現状のままで支援すれば良いと言っているのではない。これからの日本には、知識のレベルにおいて世界で対抗できる人達がもっと出てきてくれなければ困るのである。

小川委員

階層間の格差の話だが、地方の国立大学などは、かつては授業料が安かったので機会均等の保障に大きな役割を果たしてきたが、最近は国立大学の授業料も普通の私大並に上がってきているのでネックになっている。大きなテーマなので、いつかまた時間を取ってやっていただきたい。
高校から大学に進学する際に奨学金制度の存在が重要であるが、大学進学後の奨学金を高校段階で予約する制度が日本ではまだ十分拡充されていないので、運用のところで予約制の拡充について改善していただきたい。

塩谷官房副長官

高校教育の目標をしっかり考えなければいけない。18歳で高校を卒業した時どのような地点に到達していなければならないのかということを考えながら、全入時代の大学の在り方を考えるべきである。

池田委員

出発点は幼児教育であり、就学前教育が徹底されていれば、志、目的意識が養われて成長していくと思うので、高等教育にも良い影響を与えるのではないか。

安西座長

高校教育、義務教育、就学前教育、それぞれ全体がつながっているので、教育というのはどこかだけ断片的に取り上げてもなかなか解決はしにくい。高校教育は特に義務教育と高等教育の間に挟まってしまいなかなか議論として取り上げられない。
この問題については、今日いただいた御意見も踏まえ引き続き議論をつづけさせていただく。

町村官房長官

次の内閣でもこの懇談会で御検討いただいてきたテーマに熱心に取り組んでいただけると思っている。

鈴木文部科学大臣

奨学金の予約制については、それ以前に奨学金の延滞の問題があり、これを解決することが課題である。

福田内閣総理大臣

奨学金の延滞については、何らかの社会的ペナルティがあっても良いのではないか。

2008年10月5日日曜日

沖縄 2008 ・ ひめゆりの塔

沖縄を訪問する目的や意義は人によって異なりますが、我が家の場合には必ず「戦争」をテーマの一つにしています。今年は、南部戦跡のひとつである「ひめゆりの塔・ひめゆり平和祈念資料館」を訪問しました。

「ひめゆりの塔」には、戦時下、陸軍病院に看護要員として配属され尊い命を失った、沖縄県立第一高等女学院と沖縄師範学校女子部の学徒隊や職員が祭られています。また、ひめゆりの塔の後方には6つの展示室を設けた「ひめゆり平和祈念資料館」があり、生存者の証言などが展示されています。

これまで3度ほど訪問していますが、訪問する度に「戦争の悲惨さや平和のありがたさ」を学び、「平和を維持することが今生きている私達の責務」であることを思い起こさせてくれる場所です。特に子どもには必ず訪問させたい場所です。


ひめゆりの慰霊碑・ひめゆりの塔

ここには亡くなられた方の名前が刻んであります。碑の手前にある穴は、陸軍病院第三外科壕があった壕です。右の木の左側に小さく写っているのが「ひめゆりの塔」です。当時、壕(洞窟)の中には住民や軍人の遺骨に混じってひめゆりの少女たち数十体の白骨が重なり合っていたそうです。




入口にある石碑の裏には、沖縄県女子師範学校の校歌が刻まれていました。





ひめゆり平和祈念資料館

アジアへの侵略、日本政府が沖縄を「捨て石」にしたこと、戦争の悲惨さがリアルに表現されてあります。



米軍の沖縄上陸作戦が始まった1945(昭和20)年3月23日深夜、沖縄師範学校女子部・沖縄県立第一高等女子学校の生徒222人、教師18人は、那覇市の南東5キロにある南風原の沖縄陸軍病院に配属されました。

3月26日、米軍は慶良間列島に進攻、4月1日には沖縄本島中部西海岸に上陸。米軍の南下に従い日本軍の死傷者が激増し、学徒たちは後送されてくる負傷兵の看護や水汲み、飯上げ、死体埋葬に追われ、仮眠を取る間もなくなっていきます。

5月下旬米軍が迫る中、学徒たちは日本軍とともに陸軍病院を出て、本島南端部に向かいました。移動先の安静もつかの間、激しい砲爆撃の続く中で6月18日を迎えます。学徒たちは突然の「解散命令」に絶望し、米軍が包囲する戦場を逃げ惑い、ある者は砲撃で、ある者はガス弾で、そしてある者は自らの手榴弾で命を失いました。陸軍病院に動員された教師・学徒240人中136人、在地部隊その他で90人が亡くなりました。

米軍は沖縄戦を日本本土攻略の拠点を確保する最重要作戦と位置づけ、物量のある限りを使い、対する日本軍は米軍の日本本土上陸を一日でも遅らせるために壕に潜んでの防衛・持久作戦をとりました。沖縄を守備するため、軍は県民の根こそぎ動員を企てると同時に、学徒隊を編成して生徒たちの戦場動員を強行しました。持久作戦、根こそぎ動員は、12万人余にのぼる沖縄住民の犠牲を生みました。

あれから40年以上たちましたが、戦場の惨状は、私たちの脳裏を離れません。私たちに何の疑念も抱かせず、むしろ積極的に戦場に向かわせたあの時代の教育の恐ろしさを忘れていません。

戦争を知らない世代が人口の過半数を超え、未だ紛争の耐えない国内・国際情勢を思うにつけ、私たちは一人ひとりの体験した戦争の恐ろしさを語り継いでいく必要があると痛感せざるを得ません。

平和であることの大切さを訴え続けていくことこそ亡くなった学友・教師の鎮魂と神事、私たちはこの地にひめゆり平和祈念資料館を建設いたしました。 1989年6月23日 財団法人沖縄県女師・一高女ひめゆり同窓会(「ひめゆり平和祈念資料館ホームページ/http://www.himeyuri.or.jp/top.html」から引用)

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