2008年10月11日土曜日

国立大学法人の平成19年度評価結果(2)

前回に引き続き、国立大学法人評価委員会が行った平成19年度の国立大学法人の業績評価の結果です。今日は、国立大学法人全体の評価結果(抜粋)をご紹介します。

国立大学法人の平成19年度に係る業務の実績に関する評価結果の概要

1 全体の状況

平成19年度は中期目標期間の4年目に当たり、それぞれの法人において、学長のリーダーシップの下、各法人の基本的な理念や置かれた環境に応じて、工夫・改善を図りつつ、中期目標の達成に向けて意欲的に運営を進めている。一方、管理運営コストの削減は重要な課題であり、今後は、各法人の規模・特性に則して管理運営体制・組織の在り方を検証し、必要に応じてそのスリム化を検討していくことが期待される。

また、平成18年度の評価結果において課題として指摘した事項については基本的には改善が図られており、各法人において、評価結果を活用した改善システムが有効に機能しつつある。一方、一部の法人では、これまでに評価結果において課題とされた事項に対して、十分な対応がなされていない事例も見られ、これらの法人においては、評価結果を法人運営の改善に反映するための真摯な取組が求められる。

(1)業務運営・財務内容等の状況

「業務運営の改善・効率化」「財務内容の改善」「自己点検・評価及び情報提供」「その他業務運営に関する重要事項(施設設備の整備・活用、安全管理等)」の4項目について、中期目標・中期計画の達成に向けた業務の進捗状況等について評価を行った。

■業務運営の改善・効率化

基本的には順調な進捗状況にあり、一部の法人において進捗状況に遅れが見られるものの、教職員の評価結果を給与等処遇に反映させるなど、特筆すべき進捗状況にある法人も見られた。

■財務内容の改善

平成16~18年度に引き続き、多くの法人でその特色を活かしつつ、外部資金の獲得や経費節減に様々な工夫や努力を行った結果、具体的な成果が得られており、一部の法人において進捗状況に遅れが見られるものの、基本的には順調に進捗している。

■自己点検・評価及び情報提供、その他業務運営(施設設備の整備・活用、安全管理等)

引き続き、基本的には順調に進捗しており、外部評価の実施や施設設備の有効活用等に積極的に取り組んでいる。
一方で、経営協議会の運営、学生収容定員の充足、研究費の不正使用防止等の重要な課題への対応について、取組が不十分な法人も見られ、今後、早急な対応が求められる。
なお、平成17、18年度ともに、中期計画に対応する年度計画の数が著しく少ない法人が見られたが、平成19年度においても、このような状況の法人(兵庫教育大学)が見られた。各法人が中期計画を着実に実施していくためにも、引き続き中期計画に対応した適切な年度計画を設定していくことが求められる。

(2)教育研究等の質の向上の状況

平成16~18年度に引き続き、多くの法人において、法人化による環境の変化を積極的に活かし、指導方法の改善・充実、教育活動の個性化・特色化、学生支援体制の整備等の教育改革、競争的環境の醸成と資源の戦略的配分、女性研究者や若手研究者の育成、法人の特色に応じた研究活動の活性化や産業界や地域社会等への貢献に積極的に取り組んでいる。

(3)附属病院

教育研究診療の質向上、病院運営の効率化、地域連携や社会貢献の強化等に積極的に取り組み、特に社会的・地域的なニーズや喫緊の政策課題等に対し、地方公共団体や地域の医療機関と連携し、迅速かつ適切な対応を図っている。
また、医師不足問題や近年の診療報酬のマイナス改定により病院経営が極めて厳しい状況の中、7対1看護師配置基準の取得や医療従事者の確保に努め、経営改善を進めたことにより、全体として、国立大学附属病院としてのパフォーマンスが向上していることは評価できる。今後、個々の附属病院が置かれている状況や条件等を踏まえ、目標設定を明確にしつつ、附属病院の使命である教育研究活動の充実と診療活動とのバランスある更なる発展を期待する。

2 項目別評価の概況(業務運営・財務内容等)

(1)業務運営の改善・効率化

1)運営体制の改善、2)教育研究組織の見直し、3)人事の適正化、4)事務等の効率化・合理化等、業務運営の改善・効率化に関する各法人の中期目標・中期計画の達成に向けた業務の進捗状況について、総合的に評価を実施した。
  • 学長のリーダーシップを発揮するための体制整備については、各法人において、学長のリーダーシップによる意思決定や企画立案・業務執行を遂行する仕組みを作り、機動的、戦略的な法人運営を目指した運営体制の確立に努めてきている。一方、様々な管理運営組織の設置により、意思決定や業務執行のプロセスが複雑化してきている傾向もあり、今後は、管理運営コストの削減のため、法人の規模・特性に則して管理運営組織の在り方を検証し、必要に応じてそのスリム化を検討していくことが期待される。

  • 学長等の裁量による経費・人員等の配分については、各法人において、その充実を図りつつ、法人の特性を踏まえた戦略的・重点的な配分が行われており、その成果の検証を行いより効率的な再配分を行う例も見られた。

  • 経営協議会については、ほとんどの法人において適切な審議が行われ、学外委員の意見を法人運営の改善に反映しているが、6法人(電気通信大学、宮城教育大学、筑波技術大学、宇都宮大学、和歌山大学及び福岡教育大学)において、審議すべき事項が報告事項として扱われており適切な審議が行われていない。特に、電気通信大学においては、平成18年度の評価結果の通知以降は適切な審議を行っているが、それ以前においては、平成18年度、平成19年度の2か年にわたり、審議すべき事項が報告事項として扱われていることから、適切な審議を行うことが強く求められる。

  • また、経営協議会の運営の工夫改善や学外委員による懇談会の活用等を通じて、学外者の意見がより法人運営の改善に活用されることが期待される。

  • 学生収容定員の充足については、大学院博士課程若しくは専門職学位課程の充足率が90%を満たしていない法人がなお9法人(政策研究大学院大学、弘前大学、信州大学、秋田大学、旭川医科大学、和歌山大学、山梨大学、九州工業大学及び三重大学)ある。特に、政策研究大学院大学、弘前大学、信州大学及び和歌山大学においては連続して充足率を満たさず、入学定員の削減を行っていないことから、今後、速やかに、定員の充足に向けた取組、特に入学定員の適正化に努めることが求められる。

  • 監事監査・内部監査については、各法人において監査対象からの独立性の担保等、監査体制の整備が図られてきており、監査を通じて指摘された運営面での課題に対してはほとんどの法人において迅速な対応がなされている。一方、一部の法人において、監査で指摘された課題に対する取組が十分に行われておらず、監査結果を運営の改善に反映するサイクルの構築が求められる。

  • 教職員の個人評価については、多くの法人が制度の検討を進め、試行を行いつつ取組を進めており、これまでの17法人に加えて、新たに15法人(北海道大学、東京学芸大学、福井大学、山梨大学、信州大学、豊橋技術科学大学、島根大学、岡山大学、徳島大学、鳴門教育大学、香川大学、愛媛大学、九州工業大学、長崎大学及び熊本大学)において、教職員のそれぞれの職務を踏まえた個人評価の本格実施とその結果の給与等処遇への反映を実施している。
(2)財務内容の改善

1)外部資金の導入その他自己収入の増加、2)経費の抑制、3)資産の運用管理の改善等、財務内容の改善に関する各法人の中期目標・中期計画の達成に向けた業務の進捗状況について、総合的に評価を実施した。
  • 財務内容の改善・充実については、多くの法人において科学研究費補助金の採択、共同研究や受託研究の実施等による外部資金の獲得に向け、法人内で教員のインセンティブを高める方策や外部資金の申請を支援する諸施策を講じるなど積極的な取組を進め、継続的に成果を上げている。また、余裕金の運用に積極的に取り組み、成果を上げている法人も多く見られた。

  • また、経費の節減についても、各法人とも引き続き各種の方策を講じ、光熱水料の削減や複数年契約による各種契約費の削減など管理的経費の抑制に積極的に取り組んでいる。なお、これらの取組の成果が、外部資金比率の向上や一般管理費比率の低下等の財務指標に現れている例も見られた。

  • 一方、年度計画に設定した管理的経費の削減を達成できなかった法人もあり、今後、工夫改善を図りながら、継続的な取組を通じて、財務内容の改善に係る計画を達成していくことが期待される。

  • この他、多くの法人において、法人化後4年間の財務諸表等について、財務指標の経年比較や他法人との比較等による財務分析を行い、法人運営の改善に活用しており、今後も、自らの財政状況を的確に把握し、財務分析を通じた戦略的な経営管理を行っていくことが期待される。

  • 人件費管理については、「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(平成18年6月2日法律第47号)を踏まえ、各法人の中期計画において人件費削減の目標値が設定されており、すべての法人がその達成に向けて、着実に人件費の削減を行っている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、適切に人件費削減の取組を行うことが求められる。
(3)自己点検・評価及び情報提供

1)評価の充実、2)情報公開の推進等に関する各法人の中期目標・中期計画の達成に向けた業務の進捗状況について、総合的に評価を実施した。
  • 自己点検・評価については、法人全体としての評価の実施に向けた体制の整備等がほぼすべての法人で行われており、各法人において「企画-実行-評価」の改革サイクルが確立しつつある。また、教育研究、管理運営に必要な様々なデータベースシステムを整備し、ITを活用して中期計画・年度計画の進捗状況を定期的に管理し、実績報告書の作成作業等の効率化と負担の軽減を図っている法人も見られた。今後は、より多くの法人において、ITを活用して、中期計画・年度計画の進行管理及び評価作業の効率化と負担の軽減に向けて工夫改善が行われることが期待される。

  • 広報については、学長がマスコミ、地域の企業等と定期的な懇談を行ったり、ウェブサイトの内容充実を図ったほか、テレビ・ラジオ番組の放送や新聞広告の掲載等、多様なメディアを活用し、法人の活動状況を広く社会に情報発信する取組が積極的に行われている。
(4)その他業務運営に関する重要事項

1)施設設備の整備・活用、2)安全管理等、その他業務運営に関する各法人の中期目標・中期計画の達成に向けた業務の進捗状況について、総合的に評価を実施した。
  • 研究費の不正使用防止のための取組については、多くの法人において、危機管理に相応しい仕組み、未然の防止策及び事案の把握方法に関し、ガイドラインや関係規程の制定等、体制、ルールの整備を行っている。一方で、一部の法人(北海道教育大学、小樽商科大学、お茶の水女子大学、総合研究大学院大学、北陸先端科学技術大学院大学、福井大学、静岡大学、大阪大学、鳴門教育大学、鹿屋体育大学及び高エネルギー加速器研究機構)において、研究費の不正使用防止に向けて一部の規程や体制の整備がなされていないため、早急な対応が求められる。

  • 施設設備に関しては、計画的な整備や維持管理等を実施するためのマネジメント体制がすべての法人で確立しており、キャンパスマスタープラン等長期的視点に立ったキャンパス整備計画の策定や、共同利用スペースの確保等を通じた既存施設設備の有効活用、寄附や地方公共団体等との連携による整備、民間借入による整備等、多様な整備手法による施設設備の充実等の取組が進展している。

  • 環境保全対策については、省エネルギー対策に関する取組について外部表彰を受ける法人があるなど、経費の節減に向けた取組とあいまって省エネルギー対策の積極的な推進に努めている。引き続き、環境に配慮した取組の進展が期待される。

  • 危機管理については、すべての法人において、災害、事件・事故等に対する危機管理マニュアルの制定、対応部署の設置、予防訓練の実施等、全学的・総合的な危機管理体制の整備を進めている。今後は、各法人が置かれた環境に応じて、想定される事象ごとに、地域との連携を図りながら、予防的措置にも力を注ぎつつ、危機管理体制をより強固に構築していくことが期待される。