2008年12月28日日曜日

危機を乗り越える

世界を吹き荒れる厳しい不況の嵐が、様々な人の生き方を変えようとしています。
派遣、非正規雇用者が次々と職を失い、路頭に迷い、極寒の路上生活を余儀なくされています。
とてもつらいことですが、是非とも目標をひたむきに追い求め、強く生きて危機を乗り越えていただきたいと心から願うばかりです。


日系3世の君へ(2008年12月27日 朝日新聞夕刊:論説委員室から)

お元気ですか、智恵美さん。

日系ブラジル人3世の君とは、3月に静岡市で開かれたシンポジウムでお会いしましたね。柳瀬フラヴィア智恵美というのが本名でした。

9歳の時に来日した君は、苦学しながら3年前、国際基督教大学に合格しました。「将来は、外国人差別のない社会を作りたい」。壇上からそう訴える君に満場の拍手が送られたのを覚えています。
あれから9カ月、不況の嵐が日系ブラジル人社会にも吹き荒れています。

静岡県で派遣労働者として働くご両親について聞くと、電話口の君は「いつ両親が解雇されるか、心配でたまりません」とつらそうでした。

日本にいる日経ブラジル人30万人の子弟のうち、大学進学を果たした若者はわずかです。多くの後輩が君の後に続いてほしいのに、不況の嵐が子どもたちの生活をめちゃめちゃにしています。

親が仕事を失って授業料が払えず、ブラジル人学校を中退する子どもが増えています。もともと日本語の壁がある上に学校に通えなくなっては、荒れる子どもが増えても不思議ではありません。

いてもたってもいられないのでしょう、君は年末、失業した日系ブラジル人のために浜松市のボランティア団体で働くとのことでした。

暗い年の瀬です。でも君は「危機は乗り越えていかねば」と言います。そのたくましさが新年に幸運を招き寄せることを切に祈っています。


関連記事

ブラジル人学校、消えゆく生徒 失業の親、学費払えず(2008年12月28日 朝日新聞)

日本の学校になじめずブラジル人学校に通う子どもたちが、その居場所も次々に奪われている。製造業の現場を支えてきた日系ブラジル人労働者たちが「派遣切り」などで職を失い、授業料を払えなくなっているからだ。冬休みが終わって新学期を迎える時、友だちはどれだけ減っているのだろうか。
《続き》http://www.asahi.com/national/update/1228/OSK200812270075.html


失職の日系ブラジル人、片道切符の帰国 中部空港(2008年12月28日 朝日新聞)

サヨナラにっぽん――。日本経済の象徴の自動車産業までが悲鳴を上げる世界同時不況。その地盤である東海地方の空の窓口、中部空港は寂しい年の瀬を迎えた。職を失った日系ブラジル人は片道切符で母国へ戻り、タイ国際航空は、ファーストクラスを導入後わずか1カ月で打ち切る。
《続き》http://www.asahi.com/special/08016/TKY200812280207.html


定住外国人:雇用や教育など総合支援…政府、2月に緊急策(2008年12月28日 毎日新聞)

政府は日系ブラジル人など定住外国人の雇用や子供の教育、地域社会との共生を包括的に進める「総合支援プラン」(仮称)を作成する方針を固めた。自動車産業などの派遣・請負労働者の削減が定住外国人の生活を直撃しており、省庁横断の取り組みが必要と判断した。状況が急速に悪化しているため、来年2月に緊急支援策を決定。6月に中間報告をまとめ、経済財政運営の指針である「骨太の方針09」に盛り込む。
《続き》http://mainichi.jp/select/today/news/20081228k0000m010100000c.html

2008年12月27日土曜日

国立大学の平成21年度予算予定額

国立大学は今日から年末年始の休暇に入りました。と、のんきなことを言っている世情ではないわけですが・・・。

さて、平成21年度の政府予算案も確定し、国立大学の予算の内容も大枠見えてきています。
国立大学の運営費交付金(税金を原資として各大学に配分されるお金)については、効率化ルールを徹底し、各年度の予算額を名目値で対前年度比1%減(年率)とする「骨太方針2006」の決定に基づき、全体として対前年度▲118億円減の11,695億円が確保されました。また、12月22日には平成21年度の国立大学の入学定員(予定)が発表されましたが、今年度は医学部の大幅な入学定員増(361人)が大きな特徴になっています。

詳細について、独立行政法人国立大学財務・経営センターが配信するメルマガ(平成20年12月26日号)の中から関係記事を抜粋してご紹介します。

1 平成21年度国立大学法人予算内示の概要

平成21年度の国立大学法人(大学共同利用機関法人を含む90法人)の予算案の概要は以下のとおりです。

< 国立大学法人運営費交付金 >

国立大学法人等における教育研究活動を継続的・安定的に支えるとともに、社会のニーズに対応した様々な取組を支援するために必要な基盤的経費

平成21年度予定額 11,695億円 〔対前年度▲118億円減〕(平成20年度予算額11,813億円)
【増▲減要因】閣議決定(骨太方針2006)による▲1%

< 国立大学法人等の事業費 >

平成21年度予定額 21,757億円(受託事業収入等2,652億円を除く)
(内訳)運営費交付金 11,695億円、自己収入 10,062億円

< 教育研究組織の整備 >

(1)新規分野・先端的分野に必要な人材養成のための大学院の整備
(2)社会的要請の強い人材養成のための学部等の整備・医学部定員増 ほか
(3)これまでの入学実績に応じた大学院博士課程入学定員の減
(4)高度専門職業人養成のための専門職大学院の整備
(5)その他の組織整備

< 特別教育研究経費 > (980億円)

新たな教育研究ニーズに対応し、各国立大学等の個性や特色に応じた意欲的な取組を支援

(詳細)

平成21年度国立大学法人予算案概要(大学共同利用機関法人を含む90法人)
http://cz.biglobe.ne.jp/cl/W0399/1/2201000109/1456868

平成21年度国立大学法人予定額の構成(大学共同利用機関法人を含む90法人)
http://cz.biglobe.ne.jp/cl/W0399/2/2201000109/1456868

平成21年度国立大学法人予定額の概要(大学共同利用機関法人を含む90法人)
http://cz.biglobe.ne.jp/cl/W0399/3/2201000109/1456868

平成21年度 教育研究の組織整備の概要
http://cz.biglobe.ne.jp/cl/W0399/4/2201000109/1456868

〔文部科学省のホームページ〕

平成21年度文部科学省予算主要事項(概要版)P19に関連事項が記載されています。
http://cz.biglobe.ne.jp/cl/W0399/5/2201000109/1456868

2 平成21年度国立大学の入学定員について(予定)(文部科学省情報)

平成20年12月22日に、平成21年度の国立大学の入学定員(予定)についてプレス発表されました。

< 大 学 >

全体で316人の増員(入学定員96,272人)
・医学部の入学定員増 361人(医学部を設置するすべての国立大学42大学)

< 大学院 >

博士課程で73人の減員(平成19年度以来3年連続の減員)(入学定員14,116人)
大学院全体では、295人の増員(入学定員57,456人)

1)修士課程 303人の増員(入学定員39,986人)
2)専門職学位課程 65人の増員(入学定員 3,354人)
3)博士課程 73人の減員(入学定員14,116人)

平成21年度国立大学の入学定員について(予定)
http://cz.biglobe.ne.jp/cl/W0399/6/2201000109/1456868

平成21年度国立大学入学定員増減予定表(増減のある大学)
http://cz.biglobe.ne.jp/cl/W0399/7/2201000109/1456868

2008年12月25日木曜日

認知症との闘い

天声人語(2008年12月25日 朝日新聞)(抜粋)

「刑事コロンボ」で知られる米国の俳優、ピーター・フォークさん(81)が認知症を患っていると報じられた。家族を見分けられない状態と聞き、片手を上げて辞去するコート姿が浮かんだ。

日本でも元女優、南田洋子さん(75)の闘病がテレビで紹介され、大きな反響を呼んだ。夫の長門裕之さん(74)による懸命の介護とともに、老境を控えた身にはひとごとではない。著名人の余生に起きた異変に、長寿時代の定めを思う。

老人医療の専門家、フレディ松川さん(62)の近著『フレディの遺言』(朝日新聞出版)を読んだ。前半の「遺言」は、自分が認知症になった時を思い、家族やヘルパーへのお願いをあれこれ連ねたもの。後半は医師として、介護や予防の勘所を説く。

〈私の目をしっかりと見て、優しい声で話しかけてくれたら、きっとあなたが大好きになります〉〈私の心が寂しいとき、私が若いころに大好きだった曲を聞かせてください〉。

温かな挿絵を交えた短文は切なく、哀(かな)しい。だがこれらは、記憶がこぼれ始めてからでは伝えられない。約2千人を看取(みと)った経験が紡ぎ出した、声なき伝言といえる。

理解しがたい言動を目の当たりにした時、叱(しか)れば患者はおびえ、症状が高じかねない。逆に優しく接すれば、軽度に保つこともできるという。


世の中には経験したことのある人でなければわからないことがたくさんありますが、「認知症」という病気の大変さは、患者自身やその介護をする家族など当事者でなければなかなか理解できないものです。

私事で恐縮ですが、私の実母も2年ほど前から、財布や通帳などの紛失など度重なるもの忘れに始まる認知症の症状が見られるようになり、最近では、つい先ほど話したことも覚えていない情けない状態にまで悪化しています。

加えて、本人の性格もあるのかもしれませんが、人に対する猜疑心が強くなり、同居している父や近親者とのトラブルも絶えません。また、人の言うことを素直に聞く耳を持たなくなり、病院に行くことも拒み続けており、仕事や家族の都合で遠く別居している私としては、そばについて介護することもままならず、この先病状の悪化にどう対応したらいいのか解決の糸口さえ見つけることができていません。

世の中にはこういった不治の病である認知症に苦しんでいる方がたくさんいらっしゃいますし、今後、高齢者の激増に伴い、人間が人間であるが故に起こるこの不幸な病と闘わなければならない方々も悲しいかな増えていくことでしょう。

医療、福祉、介護といった人間が幸せに生きていくうえで不可欠な社会保障を根本から真剣に考え直さなければならない限界点にきています。そのためには、総国民が「認知症」との闘いを「自分のこととして受け止める」ことがまずは必要なのではないでしょうか。

2008年12月24日水曜日

「明日はわが身」を考えない愚かな公務員

前回の日記でもご紹介しましたが、社会の皆様を対象とした「2008年の出来事」に関するアンケート調査では、残念ながらネガティブな内容のものが上位を占めました。特に最近では、アメリカ発金融危機に端を発する世界同時不況を背景とした厳しい雇用情勢が社会的問題となっており、我が国においても深刻さを増しています。

仕事はもちろん生活の基盤となる住居までも失い路頭に迷う方々が激増しています。これからどうやって生きていけばいいのか、奈落の底に追い落とされた多くの方々を一日も早く救い出し、来る新年に希望の光を見出すことのできる政策が求められます。

深刻な雇用崩壊を記した記事があります。


自動車産業、契約切りの嵐 「頭が真っ白」「住む場所は…」(2008年12月15日 産経新聞)(抜粋)

「業績が急激に悪化している。申し訳ないが12月26日で辞めてもらうことになった」
「いすゞ自動車」栃木工場(栃木県大平町)の期間従業員、吉田喜代治さん(48)=仮名=が“契約切り”を宣告されたのは先月17日のこと。仕事中に突然、休憩室に呼び出された。製造工程責任者と労務課長から、A4判の解雇予告通知書を手渡された。9月末に、来年4月7日までの半年契約が結ばれていたはずだった。
この日だけで6人が契約打ち切りを通告された。その光景を見ていた吉田さんの同僚、星野貞雄さん(60)は「部屋から出てくる仲間は目が血走り、顔色がなかった。声をかけられなかった」と話す。
いすゞが打ち出した人員削減は、栃木、藤沢(神奈川県)工場の期間従業員や派遣社員の計1400人。
トヨタ3000人▽日産1500人▽マツダ1400人▽三菱1100人▽富士重工業800人…。ほかの自動車メーカーでも削減が行われる。1年前まで、戦後最長を記録した日本の景気拡大を牽引(けんいん)してきた自動車産業を襲った雇用崩壊。その勢いは、まるで今年の流行語になった「ゲリラ豪雨」のようだ。
「信じられない。頭の中が真っ白になった」と吉田さん。次に浮かんだのが「住む場所はどうなるのか」。会社側は「12月26日から1週間は住んでも構わない」と言ってきた。「1週間後ってことは1月3日。そんな時に開いている不動産屋なんてあるのか…」。その後、3月末まで6畳一室の寮を利用できることにはなったが、雇用への不安を抱えたまま年末年始を迎えることに変わりはない。
来年は、製造業を中心に派遣社員の多くが契約期限切れとなり、一斉に解雇される「2009年問題」が懸念されてきた。
派遣社員、期間従業員などの非正規雇用に関しては、労働者派遣法や有期雇用法で、最長の契約期間が最長3年と定められている。会社はその後、契約を打ち切るか、正社員登用など別の雇用契約への切り替えを行う。吉田さんらの工場でもそれまでの好況を背景に、会社は期間従業員を、積極的に正社員として登用する制度を4月に導入。65人が正社員として採用されたという実績もあった。
しかし、100年に1度ともいわれる景気悪化。2009年を迎える前に、各メーカーは「派遣切り」へと一斉にかじを切った。「いずれは正社員に…」。吉田さんの夢も、もろくも崩れた。
全文→http://sankei.jp.msn.com/life/trend/081215/trd0812152059007-n1.htm


【追加掲載】

天声人語(2008年12月27日 朝日新聞)

故人を含め、指してみたい相手は誰ですか。この質問に、羽生善治さん、森内俊之さんらプロ棋士の多くが同じ名を挙げている。昭和の鬼才と呼ばれた元名人の升田幸三さんだ。家出して頂点を極め、人情味と毒舌、斬新な手で皆を魅了した。
91年に没した升田さんが、勝負と懐具合の関係を語っている。「米びつ開けてみて米がいっぱいではいかん。しかしながらカラでも困る。マスを底のほうへ突っ込んでしゃくったら、ジャリッと音がしたという状態がいい」。
お金が余っていても、すっからかんでも、確かに渾身(こんしん)の力は出にくい。勝負師でもない身なら、少しばかり集中を欠いたとて「満腹」でいたい人が多かろう。逆に、米びつの底が見えたうえ、雇い止めにおびえる立場はどうか。仕事が手につくはずもない。
北風が吹いたきのう、新たに寒い数字が出た。12月だけで3万4千人の非正規社員が失職だという。寮を追われ、初の野宿を強いられる人もいる。防寒の工夫、段ボールや廃棄弁当の入手法、炊き出しの場所など、屋根なく一夜をしのぐすべを知らない、弱者中の弱者だろう。
この年末年始は、週末の巡り合わせで休みが長い。きょうから9日間、駆け込むべき窓口の多くは閉まり、日雇いの仕事も減る。路上ならずとも試練の時だ。
生活困窮者を支援する「反貧困ネットワーク」の湯浅誠さんは話す。「この期間をどう生き延びてもらうか。なにしろ、行政で頼れるものは救急車ぐらいしかないですから」。あまたの命と尊厳が、王手をかけられて年をまたぐ。


現役労働者だけでなく、新卒者のいわゆる「内定取り消し」も深刻な問題です。

文科省、就職問題で緊急会合へ 相次ぐ内定取り消し受け(2008年12月16日 共同通信)

新卒者の就職内定取り消しが相次いでいることを受け、塩谷立文部科学相は16日の閣議後会見で、大学や短大、高等専門学校の関係団体などで構成する就職問題懇談会を19日に緊急開催し、学生へのきめ細かな就職支援を要請する考えを示した。
企業には内定を取り消さないよう求めるとともに、各大学などに対し、年末年始も対応窓口を開いて、学生と連絡が取れるような態勢を整えることや、学校が持つ求人情報をより丁寧に学生に提供することなどを話し合う。
年明けには、専修学校や高校の関係団体も同様の会合を開く予定。
塩谷文科相は15日、日本経団連など経済関係の4団体に、内定取り消しの防止などを要請する文書を送っている。


極めて憂慮すべき事態が社会の中に猛スピードで蔓延している中、とても残念な記事を目にすることになりました。

公務員が景気の動向に左右されない安定した職であるとはいえ、あまりにも世情に疎く緊張感のない役所体質が国立大学や独立行政法人の中に存在していることに強い無念と憤りを感じざるを得ませんでした。


暇な正職員に憤り(2008年12月18日 朝日新聞)

勤務先の国立大学法人で冬の賞与が支給されました。契約職員の私には無縁ですが、仕事には誇りとやりがいを感じており、大きな不満はありません。でも正規職員には、就業中に漫画を読んだり、パソコンゲームをしたりする人がいることに我慢ができません。上司に訴えても、「暇なんだね」の一言で、何も変わりませんでした。働きたくても職場を失ってしまう人の姿が報道されるたび、やりきれなくなります。(契約職員 40代女性)


会計検査院:独法8法人が「昼食手当」13億円 03年から、指摘受け廃止へ(2008年12月18日 毎日新聞)

会計検査院は17日、国民生活センターなど8つの独立行政法人が「食事手当」「食事補助」などの名称で職員に昼食代などを毎月支給、独法化された03年10月から今年9月で計12億9754万円に上ったと発表した。支給の理由は「職員の福利厚生のため」など。他の93独立行政法人では同様の手当がないか廃止され、国の官庁も支給していないという。検査院の指摘を受け、8法人は手当を廃止する。
8法人はほかに、科学技術振興機構、農畜産業振興機構、新エネルギー・産業技術総合開発機構、日本貿易振興機構、石油天然ガス・金属鉱物資源機構、中小企業基盤整備機構、都市再生機構。検査院が指摘した期間内の支給額は、最多が日本貿易振興機構の3億2507万円、最少が科学技術振興機構の1121万円だった。
検査院によると、8法人は毎月、1人当たり2000~9150円を支給。8法人とも独法化前から支給していた。職員の給与水準は国家公務員より2~3割高いという。日本貿易振興機構は「社会情勢にかんがみて廃止した」と説明している。
全文→http://mainichi.jp/select/wadai/news/20081218ddm012040020000c.html

本当になさけない話です・・・。

2008年12月23日火曜日

2008年の様相

今年も残りわずかになりました。毎年のことながら我が家では、暮れの週末は年賀状作りと家の大掃除で大騒ぎです。何事もぎりぎりにならないと動き出さない悪弊はなかなか直りそうにありません・・・。

年賀状を書きながら、自分や家族の今年一年を振り返りつつ、社会で起こった出来事を思い浮かべてみました。今年もいろんなことがありましたね。社会の皆様の印象に残ったニュースも様々だったのではないでしょうか。ちなみに、「ヤフーバリューインサイト」という会社が調査した結果を見てみましょう。

「あなたの2008年」と題するこの調査によると、印象に残った2008年のニュースは、「ガソリン価格上昇」が85%で1位。以下、「食品偽装事件(事故米など)」(71%)、「食品への有害物質混入事件(メラミンなど)」(64%)など、ネガティブなニュースが上位を占めています。1位の「ガソリン価格上昇」は、いずれの年代でも高く、性別・年代に関わらずインパクトを与えたようです。また、「食品偽装事件(事故米など)」では、年代が高いほどスコアが高くなる傾向が見られ、特に女性の40代以上で関心が高かったようです。

また、学校法人産業能率大学が、企業経営者を対象に「2008年に最も優れていた社長は誰だと思うか」「社長が選ぶ今年のビジネスキーワード」に関するアンケート調査を行っています。結果を見てみると、「サブプライム」(1位=圧勝)、「原油価格高騰・下落」(2位)、「世界同時不況」(4位)など、当然のことながら経営に直結する問題が上位を占めているようです。

ビジネスキーワード

1位 サブプライム
2位 原油価格高騰/下落
3位 リーマンショック
4位 世界同時不況
5位 食品偽装
6位 金融危機
7位 景気後退
8位 メタボ
9位 ワーキングプア
10位 燃油サーチャージ


さて。皆さんの2008年はいかがでしたか?

2008年12月22日月曜日

ゆず湯

我が家では、週末は子どもたちと父親である私が一緒にお風呂に入ることになっています。普段は仕事でなかなかコミュニケーションの時間がとれないためです。と言っても、とても狭いお風呂なのでみんなで一緒に湯船にゆっくり浸かって会話するといったことは不可能なのですが・・・。昨日、いつものようにお風呂に入ろうとしたところ、柑橘系のいい香りが。なんと湯船には「ゆず」が浮かんでいました。そういえば「冬至」。季節を感じながらいつもよりゆったりと温まることができました。

ところで、皆さん、冬至にゆず湯に入る理由をご存知でしょうか。お恥ずかしながら、私は古くからの慣習という程度しか知りませんでした。子どもから質問され即答することがかなわず彼らの軽蔑の眼差しに親の面子を潰されそうになったので早速調べてみました。ご存知でなかった方は一緒に勉強しましょう。「湯の国WEB」というサイトからの引用です。

「1年中でもっとも昼が短く、夜がいちばん長くなる冬至(とうじ)。冬至にゆず湯の風呂に入ると、『1年中風邪をひかない』という言い伝えがあります。なぜ冬至にゆず湯なのかというと、「冬至」に「湯治(とうじ)」が、かけられており、また、「柚子(ゆず)」だけに「融通(ゆうずう)が利く(きく)ように」という願いがこめられていると言われています。もちろん、柚子(ゆず)がこの時期に旬を迎えることにもよります。

柚子の精油成分には、蜜柑の皮と同じく血行を促進させる働きがあり、風呂に入れると身体を芯から温めます。新陳代謝も活発になるので、疲れや痛みもとれ、冷え性にも効果があります。ゆず湯は、日ごとに厳しくなっていく寒さに備えるための冬の風呂です。」

ゆず湯の作り方・効能については、以下をご参照ください。
http://www.yunokuni.com/bath12/0412.html

季節を感じる機会の少なくなった気ぜわしい現代の生活だからこそ、こういった先人が培ってきた古来の慣習を大事にして、少しでもゆとりのある生活が送れるよう心がけたいものです。そのことが子どもたちへの真の教育にも繋がっていくのではないでしょうか。

2008年12月21日日曜日

高等教育政策の動向

去る12月18日、麻生内閣発足後初めての教育再生懇談会が開催されました。報道によれば、麻生総理は、教育を国家戦略の中心に据える考えを示し、「公教育の充実」に向け、早急に具体策をまとめるように要請したようです。また、教育再生懇談会は、総理に教科書の充実など教育の「質の向上」に向けた具体策を提言した第2次報告を提出したようです。

首相「教育を国家戦略の中心に」 再生懇メンバーも拡充へ(2008年12月19日 産経新聞)
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/081219/plc0812190046000-n1.htm


教育再生懇談会では、これまで初等中等教育を中心に議論が行われてきましたが、今後高等教育に関する議論が進行していくものと思われます。

今回の会議で示された資料「大学全入時代の教育の在り方について(論点メモ)」のうち、前回の日記でご紹介した高等教育予算との関連が深い部分を抜粋しておきたいと思います。


高等教育に対する公的支援の在り方

優れた教育研究を進めるための、大学への公的支援の在り方とは何か。大学への支援が納税者の支持を得られ、かつ、大学教育の質の向上に資するようにするには、どのように支援方法を変革することが必要か。

1 質の担保を前提とした高等教育に対する公的支援について

質の担保をなおざりにし、量的拡大に応じて公的支援を増額することは納税者の賛同を得られないのではないか。質を担保した大学については、学力不問入試などによる学生の確保に囚われることなく、安定的な経営ができるよう、公的支援を増やすべきではないか。反対に、質の担保が得られない大学を公的支援の枠から外すことで、選択と集中を図るべきではないか。

2 高等教育に対する公的支援の拡充について

(1)運営面への支援

国立大学運営費交付金、私学助成、各種GPなどの公費についても、「質が担保された大学」のみを対象とすることについてどう考えるか。

(例)質が担保された大学への公的支援の重点化に際しては、私費負担軽減の観点から、授業料の上昇を抑制する。

(2)家計負担への支援

家計負担の大きな日本の高等教育の実態を踏まえ、優秀で意欲のある学生に教育機会を与えるために、どのような方策を講じるべきか。

【高等教育に係る学生1人当たりの私費負担割合】※「OECDインディケータ」(2008年版)
日本:66.3%、米国:65.3%、英国:33.1%、フランス:16.4%、ドイツ:14.7%(OECD平均:26.9%)

(2-1)大学院生、特に博士課程学生への給付制の支援方策(RA等)の拡大

経済的支援を受ける博士課程在籍者のうち、月額5万円未満の受給対象者は過半数に達しており、なおアルバイトや家庭からの給付に頼らざるを得ない状況にある。研究に専念し得る環境づくりのための、博士課程学生への支援をどのように考えるか。

【経済的支援を受ける博士課程在籍者の支給月額】
5万円未満:52.8%、5万円以上10万円未満:20.7%、10万円以上15万円未満:5.8%、15万円以上20万円未満:10.7%、20万円以上:9.6%、不明:0.3%
※文部科学省「大学・公的研究機関等におけるポストドクター等の雇用状況調査」(平成18年度実績)

(2-2)現在の奨学金制度(日本学生支援機構奨学金:貸与制)の問題点を踏まえた給付制の導入可能性など

現在の奨学金制度(貸与制)の問題点
(例)返還総額が過大になったり、親の経済的格差の世代間移転に繋がるのではないか。

【貸与型奨学金の受給者割合】※日本学生支援機構(平成19年度)
大学院:41%、大学(学部)及び短大:30%

【貸与月額と返還の例】※日本学生支援機構(平成20年度)
私立大学学部生(自宅外通学、貸与期間48ヶ月)の例
第一種奨学金(無利息):月額6.4万円の場合 → 返還総額307万円(18年返還)
第二種奨学金(利息付):月額12万円の場合 → 返還総額775万円(20年返還)

給付制奨学金制度の導入可能性
(例)現在の貸与制奨学金の制度を維持しつつも、特に優秀かつ経済的に厳しい家庭の学生については、給付制奨学金を給付する仕組みを導入してはどうか。その際、大学院・学部の途中段階における評価(*CAAP等)を反映させる仕組みとすることはどうか。

*CAAP(Collegiate Assessment of Academic Proficiency)
米国における高等教育の評価手法の1つ。大学毎に教育プログラムの向上等に活用するため、読解力・文章表現技能・数学的能力・科学的能力・批判的思考・小論文の各分野から選択して試験を実施し、学生の一般教育における到達度を測定する。

【大学生のアルバイト従事状況】※日本学生支援機構「学生生活調査」(平成18年度)
博士課程:77.6%(*65.4%)、修士課程:78.9%(*47.2%)、大学学部:76.4%(*35.4%)
※「*」は全体のうち、「当該アルバイトに従事しない場合に就学不自由・困難」と回答した者


また、教育再生懇談会は、大学ごとの評価結果を、国からの資源配分に反映させることも提言しており、公教育の在り方とあいまって議論を呼びそうです。個人的には当然のことと受け止めますが、費用対効果のみを追求した経済原理に偏った議論に終始せず、大学の存在意義に立ち返った深みのある議論と提言を望みたいと思います。


大学改革、第三者評価で公費配分=教育再生懇 (2008年12月18日 時事通信)

政府の教育再生懇談会は18日、大学教育改革に関する議論のたたき台をまとめた。各大学が受けている第三者評価の結果を、国からの助成金の配分額に反映すべきだと提案。評価が極端に低ければ公費の投入対象から外すこともあり得るとした。大学の質を担保するのが目的だが、実現すれば大学の淘汰(とうた)にもつながりそうで、議論を呼びそうだ。

詳細を詰め、携帯電話の弊害から子供を守る対策や教育委員会改革の提言と併せて、来年1月にまとめる3次報告に盛り込む。

すべての国公私立大は7年に1度、大学評価・学位授与機構などの第三者機関から、経営状態や教育内容に関する評価を受けるよう義務付けられている。

しかし懇談会は、「各大学が設定した努力目標に達しているかといった基準で評価されており、大学間の比較ができない」と効果を疑問視。評価方法を見直した上で、結果を国立大の運営費交付金や私大の私学助成金の配分額に反映させるよう提言。評価が一定レベルに達しなければ、私学助成金などの投入対象から外すことも考えられるとした。

2008年12月19日金曜日

平成21年度予算が見え始めた

今年もあとわずか。中央のお役所では、明日からいよいよ予算編成の大詰めを迎えます。とはいっても、最近は昔と違って短期間で終わらせるため、かなり形式化しているようですが。文部科学省は、18日、平成21年度予算編成に係る財務大臣及び総務大臣との事前折衝を行い、以下のような合意を得たことを公表しています。

大臣折衝日時:平成20年12月18日(木)14:40~14:55
大臣折衝実施場所:財務大臣室
対応者:塩谷文部科学大臣、中川財務大臣、鳩山総務大臣

義務教育費国庫負担金等について 【文部科学、財務、総務大臣】

  • 教職員定数については、教員が子どもに向き合う環境をつくるため、行政改革推進法の範囲内で、定数増800人を含む1,000人の定数措置。

  • 退職教員等外部人材活用事業については、新学習指導要領の先行実施における理数教科の授業時数の増に対応するため、非常勤講師の配置を倍増の14,000人に拡充する予算措置。

  • 定数増については、地方の現場を混乱させないよう、教育部門の人員配置の効率化に努力するとともに、地方行革に一層の指導力を発揮すること。
私立学校助成費等について 【文部科学、財務大臣】

1 私学助成
  1. 平成21年度私学助成予算については、「基本方針2006」に基づき、△1%の4,456億円とする。

  2. そのうち、私立大学等経常費補助については、対前年度31億円減の3,218億円、私立高校等経常費助成費等補助については、前年度同額の1,039億円とする。ただし、この私立大学等への補助の減額に関連し、私立大学における教育研究活動の充実に資するための経費を別途措置。
2 国際化拠点整備事業(グローバル30)
  • 我が国の高等教育の国際競争力の強化、留学生等に魅力的な水準の教育等を提供するとともに、留学生と切磋琢磨する環境の中で国際的に活躍できる高度な人材の養成を行うための環境整備を目的とする「国際化拠点整備事業」を新たに措置。
3 大学教育充実のための戦略的大学連携支援プログラム(地域コンソーシアム)
  • 複数大学の連携・共同による、地域と一体となった人材養成や教育の質保証等を支援し、大学の特色化や機能別分化等を図る「大学教育充実のための戦略的大学連携支援プログラム」を拡充。
4 大学教育・学生支援推進事業
  • 各大学における就職活動支援等の総合的な学生支援や、教育の質保証、教育力向上のための優れた取組を支援する「大学教育・学生支援推進事業」を新たに措置。
国立大学法人運営費交付金等について 【文部科学、財務大臣】

1 国立大学法人運営費交付金
  • 財務大臣より、平成21年度国立大学法人運営費交付金予算総額については、1%減とする線で考えるが、中身は今後検討する旨の発言があった。
2 周産期医療環境整備事業
  • 周産期医療体制が大きな社会問題となっていることから、大学病院における周産期医療体制の充実を図ることを目的とする「周産期医療環境整備事業」を新たに措置するが、予算額については今後検討。
革新的技術推進費等について 【文部科学、財務大臣】

1 革新的技術推進費
  • 我が国の革新的技術を加速し、産業の国際競争力を強化するため、革新的技術推進費を創設。事業創設初年度の諸手続等を踏まえ、年度途中からの事業実施経費として60億円を要求したところ、予算額については今後検討。
2 科学研究費補助金
  • 今般、4人のノーベル賞受賞者を輩出したが、我が国の基礎科学力のさらなる強化のため、対前年度38億円増の1,970億円とする。

2008年12月18日木曜日

人をほめる

私たちが日々生きていく中で、簡単そうでなかなかできないのが「人をほめる」ことです。愚直に、ひたむきに生きてこそ、心から人に感謝の念をいだくことができる、素直にそれを言葉にすることができる、今の自分はそのような自分だろうか、多忙な生活のほんのひと時、自分を見つめ直す機会を持ちたいものです。

ハーバード大学教授を務めた、19世紀の著名な心理学者ウイリアム・ジェームズは「人間の本性の最も根源的な特徴は、自分を評価してほしいという欲求である」と言っている。

あなた自身のことを考えてみよう。自分の努力を認めてほしいと思っているはずだ。だから「よくできたね」とか「あなたのおかげで助かったよ」と言われると幸せな気分になる。それは他の人たちも同じだ。自分がほめられることばかり求めるのをやめて、まず人をほめることを始めてみよう。

では、相手の努力を認めて評価するときに考慮すべきことは何か。

  1. 感謝の言葉を述べる習慣をつける。誰かが仕事を手伝ってくれたら、メールか手書きのハガキを送ろう。電話でもいい。レストランでいいサービスをしてもらったら、ウエイターやウエイトレスにお礼を言おう。相手はあなたの言葉に感謝するし、あなたも気分がよくなる。

  2. 誠意をこめて相手をほめる。しらじらしいお世辞を言うと、相手はあなたに下心があることを見抜く。ほめ言葉は相手を利用するために使ってはいけない。相手をほめるときは、真心をこめてほめるのだ。

人をほめる習慣をつけて、確実にそれを実践すれば、あなたはその他大勢から抜け出し、さらに成功をおさめることができる。自分ひとりの力だけでは決して成功できない。成功するには、他の人たちの協力が不可欠だ。あなたが周囲の人たちの努力を認め、高く評価するなら、その人たちはあなたに一層協力してくれるようになるだろう。(ジェフ・ケラー「成長の法則」より)



ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日:2006-06-15

2008年12月17日水曜日

秋田大学の取り組み

秋田大 総額1000万円の緊急学生支援策(2008年12月16日 毎日新聞)

秋田大学は15日、景気悪化などの影響で学費や生活費の支払いに困窮している学生に対し、総額1000万円程度の奨学金や生活支援金を貸与する独自の緊急支援策を発表した。

同大によると、授業料を払えないといった相談が数件ある。景気悪化に加え、株価の急落で円高・ウォン安が進む韓国からの留学生も含まれるという。

そうした学生を支援するため、10万円を上限とする生活支援金を無利子貸与。また学部生、留学生や大学院進学予定の学生で、家計の急変で学費納入が困難になった人は入学金や授業料相当額を無利子貸与する。同大が教職員や企業からの寄付金で積み立ててきた教育研究支援基金約1500万円のうち1000万円程度を拠出するという。

いずれも卒業、修了後3年以内に返済することと返済計画書の提出が条件で、原則として日本学生支援機構の奨学金や銀行ローンなどを利用できない学生が対象。年内にも申し込みを受け付ける予定という。


(参考)緊急支援(秋田大学奨学資金)の申込みについて(秋田大学ホームページ)


(関連記事)

2008年12月14日日曜日

命をつなぐ -がんばれ!宮原敬助くん-

映画・テレビでも有名になりました「チーム・バチスタの栄光」で取り上げられている難病が「拡張型心筋症」。心臓の筋肉が拡張し薄くなりやがては死に至る特定疾患指定の難病です。

現在、熊本赤十字病院に入院し闘病中の宮原敬助君(1991年生)のドイツ・バードューンハウゼン心臓病センターでの心臓移植を実現しようとする支援活動が進められています。

今回は、その支援活動に取り組んでおられる大分在住の男性(40代)のブログを通じ、命の尊さ、命をつなぐために勇気ある行動を懸命に続けておられる方々の姿をお伝えしたいと思います。


「勇気をありがとう。。。季節を旅して」 (勝手ながら抜粋させていただきます)

2008年12月3日 「たった一つの命」 

熊本県の高校生が今、心臓の筋肉が薄くなり、死に至る難病と闘っています。9月重症心不全となり、余命数カ月と宣告され、心臓移植でしか生きる残る道がなくて、ドイツに行き、早急に手術を受ける為には、保険が効かないので8600万円が必要となっています。私はこの新聞記事を読んで、自分に問いかけ、行動してみました。

2008年12月4日 「人間の助け愛」 

私は、そのクラブさんの事務所の壁に飾られていた『額縁』に目が止まりました。そこには、いくつかの会社の教訓が書かれていましたが、『一人でも改革は始まる』と書かれてて、私はその教訓を見た時に、本当にいい勇気をもらえたって感じでした。
以前、鹿島アントラーズのサポーターの方で、ご家族の方が難病にかかり、多額のお金が必要となった時に、全国のサッカーの試合会場で、募金活動が次々に展開され短時間で目標の金額が集まったそうです。スポーツに限らず、どんな分野においても、皆が力を合わせれば、『命』を必ず救う事が出来ると思います。人間の助け愛!!

2008年12月6日 「募金活動記」  

私は今まで生きてきた人生の中で、今日ほど『人の温かさ』を感じた日はありませんでした。たくさんの方に募金して頂き、また募金活動に至るまで、たくさんの方々に私は助けられました。大変、お世話になり、本当にありがとうございました。感謝!!

2008年12月8日 「様々な人間愛」  

たくさんの『優しさ』ありがとうございました。募金活動当日、私が会場で感動したシーンが数々ありました。いろんな方々の『人間の愛』を見させて頂きました。
  • 一人でおじいちゃんが、強い風の吹く中を、車椅子に乗って会場にこられてて、ビラを口にくわえて、必死に車椅子をこいできて、『頑張れや!』と言って募金を。
  • 会社の夜勤の仕事が終わってから会場にきてくれたり、以前、一緒に仕事をしてた方や、家族で一緒にと、サッカーは見ないけれど、募金だけしにきてくれたり。
  • お父さん・お母さんが、自分の子供にお金を渡し、困った人がいたらね、少しでも募金してあげよな~早くこのお金を入れてあげなさい!って言って募金を。
  • 募金をしてくれた後に、私のお店にも、ビラを置いて、皆に知ってもらいたいから。そして募金に協力したいからビラを持って帰っていいかなぁ~と優しいご夫婦。
  • ブログを見て、職場で募金集めて持ってきましたと~言って封筒にお金を入れ持ってきてくれたり~でっかいガラス瓶に今年貯めてた小銭です。どうぞこのまま受け取って下さい~と差し出してくれて、わざわざ会場に訪ねてきてくれたり~
2008年12月11日 「敬助君へ」

敬助君へ

1日でも1日でも早く『スタートライン』に立てる日がくる事を願っています。1度も会った事もないけれど、『命』を助け合うのに大分県とか熊本県とか全く関係のない事です。私も今回の募金活動でたくさん勉強して、たくさんの方々の優しい気持ちやご尽力に助けられましたし、たくさん教えられた事がありました。

敬助君が、好きな物を自由に食べられ、好きな場所にも行けて、学校にも行けて、ごく普通の高校生の暮らしができて、敬助君の『人の役立つ仕事がしたい』と願う様に、いつの日か必ず、現実にしてほしいと思います~一人でも改革は始まる~

私からの手紙

今、国の政策に少子化対策と掲げられているけれど、今の生きている子供達を救う事も考えてほしいものです。未成年の移植手術等は、日本ではまだまだ厳しい状況。何か問題が起きた時にいろいろ対策や活動をするのではなくて、一刻も争う事態に備えて、救済基金や団体があってほしいと思います。そう考えるのは間違いなのか。
敬助君を救う会ホームページ

【敬助君からのメッセージ】

僕は、12歳の時に拡張型心筋症になりました。それまで、自分が病気だと考えたこともありませんでした。「なぜ、自分だけが」と思うと自暴自棄になりました。拡張型心筋症は、まだ原因不明の難病です。「将来的には心臓移植しか助からない」と告知された時頭が真っ白になりました。

2ヵ月前に重症心不全を起こし、このまま自分の命は尽きるのかと弱気になったりしました。この残された時間のなかで、一番確実な生きる道は海外での移植しかないそうです。海外での移植は莫大な費用がかかります。そんな大変ななかで皆様が協力してくださると聞き大変感謝しています。いつしか僕も、もう一度元気になり皆様への恩返しが出来たらいいなと考えています。

移植が必要な病気になる可能性は誰にでもあります。もう一度元気になり移植医療の素晴らしさをたくさんの方に知ってもらえる存在になれたらいいなと思います。

飲水制限を気にせず、水を飲んだり、かわいい姪を抱き上げたり、家族や仲間とこれからも一緒にいたい。僕の今の希望です。

どうかよろしくお願い致します。

  【両親からの挨拶】

まず、敬助を救う会を立ち上げて頂きました事、心より感謝申し上げます。敬助は平成3年3月6日我が家の待望の男の子として誕生しました。敬い助ける心を持つ人にと「敬助」と名付けました。

平成15年「拡張型心筋症」という原因不明の難病と診断された時は信じられない気持と同時にきっと治療法はあるはずだと思っていました。現実を受け入れることが出来ないまま投薬が始まりました。しかし年々弱っていく息子を見て、この病気は死に向って確実に進行していくのだと思い知らされました。

今年平成20年の10月に重度の心不全を起こし、余命数か月の宣告をされました。一命はとりとめたものの主治医の先生から「心臓はぎりぎりで頑張っているがいつ止まってもおかしくない状態です。心臓移植しか救う方法はありません。」と言われました。日本での心臓移植は年間数例しかなく息子が国内で受けられる可能性は殆どありません。幸いに現在入院中の「熊本赤十字病院」と日本大学医学部心臓外科教授の南先生を通じてドイツの受け入れ病院を確保して頂きました。しかし海外での移植には保険が利かない為莫大な費用がかかり私たちにはとても用意出来る金額ではなく、皆様の善意にすがるしか方法がありません。

生きたいと強く思って頑張っている息子です。お腹いっぱいご飯を食べたり、いろんな所へ行ったりしてみたい。そんな夢を持っているようです。

何卒よろしくお願い申し上げます。 宮原広一 宮原和子

2008年12月13日土曜日

国立大学法人評価もいよいよ大詰め

法人化により新たに導入された国立大学法人の中期目標期間における業務実績評価も、各大学からの実績報告書の提出(本年6月末)、各大学への訪問調査(この秋)を経て、いよいよ評価結果のとりまとめが大詰めを迎えています。

このたび、国立大学法人評価委員会からの要請を受け、各大学の教育研究評価を行うことになっている、独立行政法人大学評価・学位授与機構から、各大学に対し今後のスケジュール等について以下のような通知(12月9日付)がありましたのでご紹介します。

国立大学法人の教育研究評価について

1 基本方針
  1. 教育研究の質の向上と個性の伸長に向けた、各法人の主体的な取組を支援・促進する評価
  2. 評価の透明性・公正性を確保し、説明責任を果たす評価
  3. 各法人の自己評価に基づく評価
2 内容

教育研究評価では、以下に掲げる2つの評価を行う。なお、今回行う評価は、上記基本方針「個性の伸長に向けた、各法人の主体的な取組を支援・促進する」という観点から、定量的・外形的な面からだけで評価するものではありません。

(1)中期目標の達成状況

法人全体を対象とし、教育研究に係る目標について、関連する中期計画の実施状況を分析することにより、中期目標の達成状況を把握。その際、現況分析の結果を参照。したがって、各法人における目標・計画に即して評価を行うものであり、各法人を相対的に評価するものではありません。

【判断の視点】

取組の実施の可否だけではなく、その取組が有効に機能しているか、教育・研究の質が向上しているか、或いは高い質が維持されているか、という視点で判断。

【評価結果】

中期目標の達成状況を「非常に優れている」「良好である」「おおむね良好である」「不十分である」「重大な改善事項がある」の5段階で判定。このうち「おおむね良好である」が標準的な評価。

(2)学部・研究科等の現況分析

学部・研究科等を対象とし、各組織の目的に照らして、教育研究の水準と質の向上度を分析することにより把握。したがって、各学部・研究科等の目的に照らして評価を行うものであり,、各学部・研究科等を相対的に評価するものではありません。

【判断の視点】
  • 水準の判断は、各学部・研究科等の目的に照らして、それぞれの組織において想定する関係者の期待にどの程度応えているか、という視点で判断。
  • 質の向上度の判断は、各学部・研究科等から示された改善・向上の事例を基に、法人化時点からどの程度水準が向上しているかという視点で判断。
【評価結果】
  • 水準の判定は、「期待される水準を大きく上回る」「期待される水準を上回る」「期待される水準にある」「期待される水準を下回る」の4段階で判定。このうち「期待される水準にある」が標準的な評価。
  • 質の向上度の判定は、「大きく改善、向上している(又は高い水準を維持している)」「相応に改善、向上している」「改善、向上しているとは言えない」の3段階で判定。
今後のスケジュール(予定)

平成20年12月~:評価報告書(案)のとりまとめ作業
平成21年1月8日:評価報告書(案)の決定
平成21年1月中旬:各法人へ評価報告書(案)の送付、各法人からの意見申立て受付(1月末まで)
平成21年2月~:意見申立てへの対応
平成21年2月19日:評価報告書の決定
平成21年2月末:文部科学省の国立大学法人評価委員会へ提出

2008年12月12日金曜日

高等教育政策の動向

独立行政法人国立大学財務・経営センターが発行するメールマガジン(12月12日付、第31号)の中から主な記事をご紹介します。

【特別寄稿】 「経営改善係数撤廃への長い道のり」 (三重大学長 豊田長康氏)

今(H20年12月)、文科省では次期中期目標期間(以下次期中期と略)の制度設計について、運営費交付金の算定ルールの具体的な数字も検討されつつあり、大詰めの段階と思います。私はH16年の法人化以来、国大協の「大学経営委員会」(現経営支援委員会)に設けられた「大学附属病院の経営問題WG」(現病院経営小委員会)の座長(現小委員長)として国立大学病院の経営問題に係わってきたので、ここに至るまでのWG(小委員会)の活動を振り返ってみたいと思います。
http://cz.biglobe.ne.jp/cl/W0399/1/2201000109/1433760

米国州高等教育管理者協会(SHEEO)における経営支援の取組について

平成20年10月、当センターへ来日された米国州高等教育管理者協会(State Higher Education Executive Officers:SHEEO)理事長のポール・リンゲンフェルター氏及びSHEEO-NCES連携担当・情報管理担当ディレクターのハンス・ロランジュ氏に協会で行っているスタッフ・ディベロップメントや経営支援事業について、インタビューを行い、そのインタビューをもとに経営支援の取り組みをまとめました。
http://cz.biglobe.ne.jp/cl/W0399/17/2201000109/1433760

国際シンポジウム・研究会のご案内(申込受付中)

テーマ:「高等教育システムの改革とその結果」
内容:http://cz.biglobe.ne.jp/cl/W0399/18/2201000109/1433760
日時:平成21年1月26日(月)10:00~17:30
会場:学術総合センター一橋記念講堂
備考:同時通訳あり(日英)、参加費無料
申込期限:平成21年1月13日(火)

第45回高等教育財政・財務研究会(平成20年12月20日開催)

テーマ:「マスコミから見た国立大学」
講師:三上直行氏(東洋経済新報社第1編集局「週刊東洋経済」副編集長)
コメント:米澤彰純氏(東北大学高等教育開発推進センター准教授)
日時:平成20年12月20日(土)12:30~15:00
会場:学術総合センター特別会議室101~103

第44回高等教育財政・財務研究会(平成20年11月29日開催)

高等教育研究者や大学関係者など多数ご出席をいただき、私立大学および国立大学の経験を通じた寄附募集戦略を聴く貴重な機会となりました。

テーマ:「私立大学の寄附募集戦略を考える」
講師:金山仁志郎氏(青山学院財務顧問)、目黒純一氏(熊本学園大学常務理事)
コメント:山本雅淑氏(日本私立学校振興・共済事業団財務部次長・企画室次長)、高井陸雄氏(東京海洋大学長)

目黒理事の講演資料は、こちら
http://cz.biglobe.ne.jp/cl/W0399/19/2201000109/1433760

高井学長の講演資料は、こちら
http://cz.biglobe.ne.jp/cl/W0399/20/2201000109/1433760

2008年12月11日木曜日

日本の良さ伝え育てる

赤子を背負い、ぼろぼろの服を着て勉強する安徽省の村の子供が次々とスライドに映し出される。「他人の痛みを感じられるか。それがマナーの基本です」

上海外語大の講堂で、万里紅さん(42)が就職活動を控える大学生向けに開いた講座。意外な演出に学生たちは引き込まれた。

万さんは上海の高校を卒業し国有企業に勤めていた87年、12歳年上のスウェーデン華僑と結婚。だがあこがれた海外生活は、つらい日々だった。料理店を経営する夫は自由な外出を許さず、国際電話もかけさせない。夫は賭け事にふけり、2年後に離婚。息子を取り戻そうとしたが、かなわなかった。

疲れ切った万さんはアジアを放浪、96年に日本を訪れる。箱根の旅館でおかみがひざまずいてお辞儀する姿に驚いた。閉店時間を過ぎても笑顔で見守る百貨店員に感心した。日本語学校を経て東京経済大へ。ゼミの教授は家族のように接してくれた。

卒業した02年、中国進出を目指す企業を支援する会社を友人と設立すると、顧客から耳にしたのは「中国人はマナーが悪い」。そこで、マナー講座を上海で始めた。

礼儀作法や服装の工夫、化粧法も教える。日本人の礼儀正しさや気配りをほめる。

「反日感情があるから控えたほうがいい」と言われても意に介さない。「私の青春を取り戻してくれた国、日本の良さを多くの人に伝えたい」

78年からの改革開放とともに日本への国費留学が始まり、その後、私費留学が急増。とくに上海出身者が多かった。彼ら「留日組」が今、活躍している。 (2008年12月10日 朝日新聞夕刊)

2008年12月10日水曜日

無駄な会議を無くしませんか

大学における会議の「無駄」については、以前にもこの日記で取り上げました。

大学には、びっくりするほどたくさんの会議があります。また、「こんな会議、時間の無駄なのでは?」と感じる会議も山ほどあります。でもなぜか会議はなくなりません。なぜなのでしょうか。答えは簡単です。「会議でみんなで物事を決めることや、会議に出席することに意義がある」と考えている役員や教職員がいるからです。

大学に置かれた多くの会議のメンバーは役員と教員で占められています。最近は事務職員の経営参画の重要性が少しずつ認識されはじめてきましたが、大半の会議では、事務職員には発言権がなく、「陪席」「列席」といった形で会議に臨んでいます。したがって、会議の構成員ではない事務職員が「無駄な会議はやめませんか」と提案したところで実現するはずがありません。逆に、会議賛成派の教員達から「仕事に対するやる気がない」と睨まれるだけです。

しかし、無駄な会議は大学の経営効率化を阻害する大きな原因となっていることは誰の目から見ても明らかです。国からの税金投入が年々削減されていく中で、もはや大学には、非生産的な会議を放置する余裕はありません。即刻、不要な会議を廃止し、必要最小限の会議について有効活用に向けた取り組みを進めるべきなのです。

「無駄な会議」というキーワードでネット検索してみると、実に多くの記事にヒットします。民間、公的機関を問わず、いかに無駄な会議が多いか、解決方策をさがし求め悩んでおられる方がいかに多いかがよくわかります。では、「無駄な会議」とはいったいどのような会議なのでしょうか。日本ファシリテーション協会が発表している「ファシリテーション白書2008年度」の中に、会議ファシリテーションに関するデータが掲載されてあります。この中に、「会議がうまくいかなかった要因」という項目があります。面白いので回答のあった全ての要因を転記します。

  • いつも発言する人が決まっており、発言しない人もいる
  • 会議中はホンネが出ず、終わってから意見が出てくる
  • 何のための話し合いなのか、目的や内容がよくわからない
  • 資料を読めばすむようなことを、話し合いの場でやっている
  • 意見がまとまらず、時間をかける割には何も決まらない
  • あいまいな結論や次回への持ち越しが多い
  • 進行が行き当たりばったりで、成果の出るのか不安だ
  • しらけムードがただよっており、意見があっても出そうとしない
  • 論点が明確ではなく、議論がぐるぐるまわる
  • 思いつきや脱線ばかりで、話があちこちに飛んでしまう
  • 議論がかみあっていないことが多い
  • 目上の人が長々と演説するのを、ひたすら拝聴させられる
  • 議長判断で、そもそも人の意見を聞く気(ムード)もない
  • 同じ主張を繰り返すだけで、水掛け論になっている
  • 終了時に決定事項やアクションプランを確認していない
  • 「声の大きい者勝ち」や「言った者負け」がまかり通る
  • いつも同じレイアウトで、座る席も決まっている
  • 他人の意見を批判したり攻撃ばかりしている人がいる
  • 議事録が記録されず、全員がバラバラにメモをとっている
  • 筋の通らない意見や意味不明の意見が平気でまかり通る
  • 意見の食い違いが個人攻撃にすりかわってしまう
  • 参加者同士が妨害や、足のひっぱり合いをしている
  • 相手を説得したり、言い訳したりする場になっている
  • いつも時間通りに始まって、時間通りに終わっている
  • 根回ししているので形式的な会議になっている


いかがでしょうか。ズバズバと当たっていますね。以下の記事も結構納得させられる内容です。(消去される恐れがあるので全文転記します。)


「無意味だ」と言いながら、どうして会議の改善をしないのか (ITmediaエグゼクティブ)

無駄な会議の責任分散効果

なかなか進まない会議が現代の企業においてもいかに多いか、そしてそれに対して現代の企業人たちはいかにうんざりしているか、にもかかわらず彼らはそこからの脱出を本音の部分でほぼ諦めてはいないか、を考えた。

「また会議だ。仕事にならないよ」「無意味な会議なのに、時間の浪費だ」「何とかならないのかな、ったく」・・・。現代の企業人たちはそうこぼしながらも、従順に会議室へ向かう。確かに無駄な会議によって浪費される時間や経費は、バカにならない。

一方彼らは、「会議は居心地が悪くない」と潜在的に思っているふしがある。実は会議に出ている限り、彼らはいかにも仕事をしている錯覚にとらわれ、そして現状のわずらわしい仕事から解放される口実を得られる。おまけに、会議はともすれば「責任」を分散してくれる。彼らは、無意識のうちに会議を歓迎してはいまいか。

それにしても彼らは従順すぎないか。安易に逃避していないか。時間や経費が浪費されているのなら、「何とかならないか」ではなく、「何とかしよう」として行動を起こさなければならない。そんな会議に頼る間違った経営から脱出する方法を探ろう。

アンケートに見る無駄会議の実態

無駄な会議が多いと一般的に言われているが、それを裏付けるデータがある。

若手エンジニアに対するアンケート調査によると(Tech総研04年実施)、「会議は、ほぼ50%以上は無駄と感じる」と答えた人は過半数(56%)、「30%くらいが無駄」を含めると84%が会議を無駄と感じている。

さらに別の調査で、普段の会議を「不必要な会議」(「の方が多い」も含めて)と感じる人が約36%、出席する会議で「論点がずれて判らなくなる」(「場合もある」も含めて)が50%、「何が決まったか判らないまま会議が終わる」(「ことが多い」も含めて)が約47%にもなる(プレジデント社調査、「プレジデント」05年11月)。

そんな無駄な会議は、即刻止めるべきだ。これが最初に打つべき手である。筆者は無駄な会議を止めたら、会議数が30%減った経験を持つ。次に、残った70%の会議について、会議時間を1時間に短縮する。世にはびこる「会議」本が役立つのは、それ以降である。

会議の目的は、情報伝達・意思決定・意見調整・及びその併用と大別され、さらに細分化すると、(1)情報収集、(2)伝達、(3)交流、(4)参加者の教育・スキル向上、そして(5)問題解決、(6)意思統一・一体感・帰属意識の醸成、がある。

(1)、(2)、(3)の会議は、即刻止めるべきである。全体部課長会議や安全衛生会議などの定例会議がこれに当る。書類配布やファクス、メールで充分である。そんな手段では徹底を欠く、顔を合わせる必要があるなどというのが、会議廃止に反対する主な理由である。それは、事務局が仕事を失いたくない言いわけにしか過ぎない。惰性で会議形式がとられている集まりは、思い切って止めなければならない。根強い抵抗を思うと、トップダウンで行くべきだ。

セレモニー会議の不毛と主旨明確化の必要性

(4)も曲者である。この目的を達するには確かに会議形式がよいが、主旨が曖昧で不徹底なら無意味な会議になる。例えば筆者の経験で、過去の重大事故の反省をする品質会議が(4)に相当した。しかし本来の会議の主旨である自部門の事故を徹底的に反省することや、他部門の事故を他山の石とすることが忘れられ、社内では「あの会議はセレモニーだ」などと言われた。加えて、「この会議に出席する者は、カラーシャツはまかりならぬ。白ワイシャツを着用のこと」というお達しが出るに至っては笑止千万、会議をますますセレモニー化した。そんな会議は止めるべきだ。この種の会議を開くなら、出席者に主旨を充分徹底し(「教育のため」、「啓蒙のため」などと単にお題目を唱えても駄目だ。主旨を判り易く噛み砕いて、何度も何度もくどいくらい周知徹底しなければならない。

幹部は社員が主旨を知っていると思い込んでいるが、彼らは全く理解していない。かなりレベルの高い企業でも、経験上そう言える)、形式を排除して、実のある会議運営をしなければならない。

割り切る会議と不可欠な会議の区別

(5)、(6)は、会議として欠くことができないだろう。しかし、無駄な会議もある。例えば「開発会議」と称して新製品の開発計画を議論する極めて重要な会議を、「あれはトップと幹部の勉強会だ」などと噂されている例がある。事実幹部の「ご指摘」は、いつもあまり役に立たない。むしろ開発をディスターブされることが多い。それならば、それはそれで「勉強会」、あるいは「開発費をもらうための説明会」と割り切ればよい。

ただ、通常会議を開催するとき習慣で2時間を設定するが、1時間で充分である。筆者は、ある時から自分の主催する会議をすべて1時間に設定した。すると長引いても1.5時間で終わり、やがて1時間で終わるようになった。もちろんそのための準備と議長のテキパキとした采配が必須だ。時間内に終わらないときは、後日再開催するにしてもとにかく一旦終了するのがよい。

以上をまとめると、有無を言わさず会議数を30%減らす。そして残りの会議時間を半減する勇断を下す。その実行には、トップや当事者が深刻な問題意識と覚悟を持ち、強力なリーダーシップを発揮することが必須である。トップダウンが期待できないなら、せめて自分の影響が及ぶグループ、あるいは自分が主催する会議から始めよう。


ほかにもこんな記事もあります。

無駄な会議の中でもさらに“無駄”なものとは? (ITmedia Biz.ID)

さて、国立大学には前回の日記でご紹介したように、教育研究面の重要事項は、学部長など学内組織の代表者で構成される「教育研究評議会」で審議・決定することになっています。ただし、複雑かつ重要な案件を1回限りの教育研究評議会で審議・決定することは現実的ではないことから、実際には、学長、副学長、部局長等で構成される会議をあらかじめ開き、部局長から意見を聴取し、各部局(教授会)で議論した結果を教育研究評議会に持ち寄るといった方法が多くの大学で採られています。また、教育研究評議会に諮られる重要事項の多くは、細分化された学内の委員会でまず原案が検討されます。委員会は各部局から選出された委員で構成され、各部局の利害調整の場になっています。そのため、原案作成段階から迷走を続ける案件も少なくなく、各部局の合意を取り付けるまでに数ヶ月かかる場合もあります。こうした屋上屋を重ねる煩瑣な手続き、つまりは会議のための会議を何回も繰り返してようやく1つのことが決まっていくしくみになっているのです。

学長が大学経営の先頭に立ってリーダーシップを発揮することが期待されていても、こういった「部局自治」の縛りがかかった中では手も足も出ませんし、学内コンセンサスを得るためだけのリーダーシップで終わってしまうのです。

最後に会議コストについて触れます。無駄な会議を無くしていくために、会議を運営するために必要なコストを視覚化することは不可欠です。ある中規模大学(4学部程度)の試算によれば、会議には、委員(高給教員)の人件費、列席者(幹部事務職員)の人件費、資料等作成者(担当事務職員)の人件費とともに、照明・冷暖房費、資料印刷費、録音テープなどの消耗品費等が消費され、役員会、経営協議会、教育研究評議会の法定3会議だけで年間約2千万円也、その他の全学委員会や学部での会議を含めると、大学全体で年間約6億円もの費用がかかっているそうです。

無駄な会議を繰り返している間に、無駄なお金(税金)がダラダラと垂れ流されているのです。

2008年12月9日火曜日

入試ミスをなくすために

本格的な入試シーズンが到来し、受験生・保護者の皆さん、大学の入試担当者の皆さんなど関係者の方々は、これから益々大変なご苦労をされることになります。

この季節になると決まって入試問題作成ミスや合格発表ミスに関する記事が目につき始めます。緊張感や危機感の欠如をはじめ、様々な理由や原因があるのだろうと思いますが、いずれにしても入試は、受験生(場合によっては保護者)のその後の人生を大きく左右する大変重要なものですので、大学は細心の注意を払い万全の体制の下で実施しなければならないことは言うまでもありません。

入試問題作成ミスの原因の一つとして、作成後のチエック(体制)の不備がよく指摘されます。入試問題という特殊な情報を厳格に管理しなければならないため、少数の限られた教員間でのチエックにならざるを得ない事情はあるにせよ、学部を超えたチエックなどいろんな工夫の仕方があるのではないかと思います。

また、入試問題の作成方法そのものにも改善のメスを入れる必要があると思います。どの学部にも共通する入試科目なのに、学部別、ひどい場合は学科別に問題を作成している場合が少なくありません。なぜ共通化できないのでしょうか、大学全体として統一した入試問題を作成することがなぜできないのでしょうか。

ここにも「部局自治」の問題が根深く存在します。「学部あって大学なし」の悪しき思想や慣習が、受験生はもとより、教職員の入試コストの低減・効率化を阻んでいます。統一が可能であるにもかかわらず、同じ入試科目の問題を多くの教員の人的コストをかけ作成し、チエックする、あるいは管理するといった状態をいつまでも放置しておくことは即刻改めなければなりません。

大学というところは、なかなか自浄作用が効率的・効果的に機能しません。入試に関する上記のような重要な課題は、本来であれば、関係委員会や最終的には教育研究評議会という国立大学法人法に規定された会議において、徹底的に議論し改善しなければならないものです*1。しかし、残念ながら、教育研究評議会の先生方は、大学の管理、運営、組織といったマネジメントに関する議論、しかもあらさがしの上に言葉尻を捉えた批判が大好き(おかげで無意味な時間が延々と続くのです。)で、彼らが本務とする教育、研究、そして学生支援といったことにはほとんど興味も示さず議題にも上りません。「受験生の動向調査・分析等の結果を踏まえ、今後我が大学は、入試の方法や内容をどのように改善し、どのような学生を確保していくのか・・・」といった議論は、何よりも増して緊要な課題のはずですが、寂しいかな皆無に近い状態です。

余計なことですが、教育研究評議会の先生方には、月1回の会議に出席するだけで(正確には、出欠の有無にかかわらず)、毎月10万円近くの手当が支給されています。法人化によって、教育研究評議会の位置付けや役割が大きく変化しているにもかかわらず、手当だけは国の時代を引き継いでいるのです。議論の内容の貧困さ、無責任体制との比較において、本当にこのような高額な税金を充てることがふさわしいのかどうか、今一度見直す必要があるのではないでしょうか。


【追加記載】

オックスフォード大学とケンブリッジ大学のユニークな入試問題が話題に(大学プロデューサーズ・ノート)


*1:国立大学法人法第21条(教育研究評議会の審議事項):1)中期目標についての意見に関する事項(経営協議会の審議事項を除く。)、2)中期計画及び年度計画に関する事項(経営協議会の審議事項を除く。)、3)学則(国立大学法人の経営に関する部分を除く。)その他の教育研究に係る重要な規則の制定又は改廃に関する事項、4)教員人事に関する事項、5)教育課程の編成に関する方針に係る事項、6)学生の円滑な修学等を支援するために必要な助言、指導その他の援助に関する事項、7)学生の入学、卒業又は課程の修了その他学生の在籍に関する方針及び学位の授与に関する方針に係る事項、8)教育及び研究の状況について自ら行う点検及び評価に関する事項、9)その他国立大学の教育研究に関する重要事項

2008年12月8日月曜日

「針」とは何のためにあるのか

今日、夕刊の中にとても不快な思いをする記事がありました。

針さん、ありがとう (2008年12月8日 朝日新聞)

福岡市中央区の●●ファッションデザイン専門学校で8日、1935年の創立から続けている恒例の針供養があり、学生ら220人が参加した。和服姿の学生たちは、祭壇の前に置かれた3丁の豆腐に、折れ曲がったりした針を1本ずつ丁寧に刺し、技術の向上を祈願した。

針供養と称し、「豆腐」という大切な食材に不用になった針の山を築くという行為、しかも専門学校という教育機関が200人を超える学生に行わせていることに強い疑問と憤りを感じました。

私の妻曰く、そんなに目くじらを立てることではないのでは・・・。しかし、世界にはその日の食べ物にも困っている人々が数え切れないほどいるというのに、いくら安価な「豆腐」とはいえ、本来私たちの口に入る食べものを「針の墓場」にしていいのだろうか、針を刺した学生達がまだ安眠をむさぼっている早朝から、汗水流して丹精こめて造った豆腐がこんな残酷な扱いを受けることを知った豆腐屋さんはどう感じるだろうか、学生達がいずれ親となり子どもを育てる時に、果たして正しい教育ができるだろうかetc、無性に腹が立ったのでした。

偶然にも、同じ夕刊に次のような記事が載っていました。こじつけかも知れませんが、専門学校での出来事は、このような事件につながらないとも限りません。


パンに縫い針混入、11個に計12本 (2008年12月8日 朝日新聞夕刊)

山口市中央4丁目のスーパー●●で4、5日に販売したパンに縫い針が混入しているのが相次いで見つかり、その数は菓子パンや食パン11個で計12本に上ったことがわかった。同店の被害届を受けて山口署は偽計業務妨害の疑いで捜査している。



【追加記載】

私の無知、認識不足により、やや言いすぎの日記を書いたようです。

昨日から今朝にかけて「針供養」に関するニュースがやたら多いので不思議に思い調べたところ、なんと12月8日は「針供養の日」とか。古くから、豆腐や蒟蒻といったやわらかいものに針を刺すことにより供養を行うしきたりのようです。それにしても食べものを・・・。


針供養(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%9D%E4%BE%9B%E9%A4%8A

針のおはなし-針供養の起源
http://www.bankoku-needle.co.jp/japanese/story/kuyou.html

2008年12月6日土曜日

国立大学におけるITの活用

業務の効率化を図るためのツールとして「IT」を活用することはもはや常識ですが、活用の意義を見誤るといいますか、活用の仕方についての十分な検証を怠ると費用対効果等の面で大学に大きな痛手を与えることになります。

今回は、全国の国立大学法人の監事さんから選ばれた方々で組織された「業務効率化タスクフォース」が、平成19年11月末に公表した報告書の中から、国立大学の「ITシステム活用に係る課題」を抜き出してみたいと思います。個人的にはご指摘は全て妥当と考えます。


課題1 統合化されていない組織

教員グループと事務系職員グループで、別の組織になっているところが多い。各事務組織で開発・運用するため、システム毎にそれぞれのベンダーに任せきりの状態になりやすく、結果として、大学全体のIT戦略作成、IT基盤設計、システム連携等の障害になっている。


課題2 要員育成

経費削減目的のための過度のアウトソーシング化、ベンダーへの設計・開発・保守の任せきりなどにより、学内に必要なスキルを持つ業務システム担当やIT担当の要員が育成できていない。その結果、パッケージソフトウェア採用時に技術的問題を考慮せずにカスタマイズ要求をしてコスト・パフォーマンスを悪化させること、当初から必要な機能を付けなかったために多額の機能追加費用を負担することなどが発生している。要員育成の必要性はかねてから認識されてはいる。ベンダーやNII(国立情報学研究所)等の外部研修には参加させている。しかしながら、IT専門職員の必要なスキル・キャリアパス・処遇等が明確ではなく、育成体制ができていない。また、業務システム担当職員のベンダー依存意識を改革する必要がある。


課題3 大学の姿勢

業務改革、組織改革、ITシステムを一体のものと考えていない。情報システム責任者が業務改革、組織改革のチームに入ることによりトータルで効率化を達成するという仕組みができていない。したがって、IT戦略を考慮していない業務改善に沿う形で情報システムが導入されるため、システム導入が根本的な業務効率化につながっていない。(「業務効率化できるシステムか、継続的な業務改善ができるか、システム・人間の業務全体が効果的に設計されているか、中長期的な視点で目標に向かって進んでいるか」)ITの高度活用によって大学の経営を変えていこうという発想がない。システム連携によってデータを入学・就職・人事組織・病院経営・広報など広範な施策に反映させていないし、その必要性についての議論も少ない。なお、一部の法人を除いて大半の法人では、CIO(Chief Information Officer 最高情報責任者)が任命されている。


課題4 予 算

情報システム導入後の機能改善の予算が付かないか、予算獲得が困難である。法人化以後、システム構築・運用の予算は、各大学の運営費交付金の中でやり繰りしなければならず、継続した予算の確保が問題である。


課題5 大学間の連携

大学の事務処理には共通点が多く、大学同士の共同開発・共同運用あるいはASP*1活用が効果的である可能性はある。しかしながら、汎用システムは今後終了する予定であり、新たな連携の形態を作る必要がある。


課題6 内部統制

最近の大学への不正アクセス・ウイルス侵入事件、個人情報漏洩事件を踏まえ、システム上の課題を大学経営上の重要課題として、大学における内部統制について「ITへの対応」を行うことが必要である。


上記のような課題を大学という組織全体で解決していくためには、学長や理事長といった経営トップの理解とリーダーシップが不可欠であると同時に、トップに代わってIT戦略を推進していく力量のある責任者である「CIO」を配置し、予算などの強固な権限を与えることが必要です。しかしながら実態は、CIOの意味すら理解できない構成員がほとんどで、大学をまとめ切ることの困難性が以下の報道にも表れています。


大学CIOフォーラム:なくせ「縦割り」の弊害 模索する国立大 (2008年6月12日付 毎日新聞)

11大学からCIOを務める副学長らが参加した 大学のIT戦略を統括するCIO(最高情報責任者)が意見交換する第5回「大学CIOフォーラム」が11日、東京都内で開かれた。

東大、京都大など全国11大学のCIOが実情を報告。「縦割り」の弊害をどのように改善するか模索する国立大の姿が浮き彫りになった。国立大が「障壁」として挙げたのは、各部局ごとに人事情報や管理システム、予算権が分散していること▽予算が年度別で長期的な計画が組めないことなど。大阪大の竹村治雄・サイバーメディアセンター長は「今はシステムごとに予算を要求する『自転車操業』状態。ばらばらに更新していると、全体の最適化はできないので、中期的な計画を立てているが、現場の教員との意思疎通が難しい」と話した。会場の大学関係者からも「ネックは予算権。獲得のポイントを教えてほしい」との声があがった。

それに対し、筑波大の腰塚武志副学長は「ようやく予算権をCIOに集約し、大学全体の機器利用を分析して、整備計画をまとめた。全体を見渡せたところで、2台あったスーパーコンピューターを減らすなど、誰でも納得するところから削減している」と説明。東北大も今年4月、学内のIT戦略を担当する情報シナジー機構を改編。各研究室ごとに負担金を算定し、学部から徴収する方法で予算を確保した。

東大の岡村定矩副学長は「ITサポートは教育、研究、事務という目的ごとに考えることを共通認識にした方がいい」と指摘。部局ごとに持っていた研究員などの人事データを、大学全体を網羅したものに切り替え、適正な人員配置を模索。部局ごとの『ローカルルール』を排除するのにも役立つという。

一方、私大の同志社大は学校の事務効率化よりも「学生へのサービス提供」をIT化の目的にする。真胴正宏・総合情報センター長は「学生を集めることが優先。優れた研究者がいても保護者は評価しない」と明言。同大では独自システムで、履修登録・取り消し、成績通知、授業アンケートなどを実施。中でも、成績評価に海外の大学で採用されているGPA(Grade Point Average)制度を導入。平均点が重視されることから、自宅から登録したものの受講してない教科の履修を取り消せば、平均点が下がらないため、利便性は高いとみている。



このように、大学では残念ながら「名ばかりCIO」が現実のようです。民間では、以下の記事のようにCIOに求められる役割は重要度を増すばかりのようで、意識の格差は次第に広がっていきます。


混沌とする時代に立ち向かえ:CIOに求められる役割とは (2008年12月1日 ITmedia)


■ビジネス戦略への造詣

CIOの役割の力点は次第にビジネス戦略へとシフトし、職責が向上しつつあることは事実です。さらにCIOへの期待は、企業や政府、自治体、NPO(非営利団体)など特定組織に固執せずに拡大しています。戦略性が重視される新潮流は、社会背景に呼応するための手段であり進化です。CIOは環境の変化に影響を受けやすいのではなく、変化に素早く対応し、順応できる-時代のニーズをうまくキャッチアップし、ITのみならず業務プロセスのグランドデザインが描ける人材が望ましいといえます。

ITの効果は、単なる効率性や生産性の向上、あるいは運用管理コストの削減のみならず、ITの戦略性を生かすビジネスによって成功をけん引するのです。そのためにはITの能力だけでも、経営の能力だけでも駄目で、この2つのスキルを両方兼ね備えることが重要です。

最近では、従来なら社長やトップが遂行すべき業務をCIOに任せる企業も増えてきました。ITは経営に貢献する、経営をけん引する存在であり、企業戦略とIT戦略の一体化こそ、CIOの課題といえるでしょう。またCIOは、複雑かつ膨大な情報の中から価値ある情報の取捨選択を行い、速やかに導入していくイノベーター(変革者)でなければなりません。必然的に起こり得る変化や突発的な事象に場当たり的に対応するのではなく、迅速かつ適切に行動をとることがCIOに求められるのです。

全文→http://mag.executive.itmedia.co.jp:80/executive/articles/0812/01/news003.html



*1:Application Service Provider:業務用のアプリケーションソフトウェアをインターネットを利用して顧客にレンタルする事業者あるいはサービス。ユーザのパソコンには個々のアプリケーションソフトウェアをインストールする必要がないので、法人の情報システム部門の大きな負担となっていたインストールや管理、アップグレードにかかる費用・手間を節減することができる。

2008年12月4日木曜日

求められる管理職像-2

国立大学の事務組織は、法人化前からそうでしたが、「事務局長-部長-課長-副課長(課長補佐)-係長-主任-係員」といった多層のヒエラルキーによって構成され、その弊害として、「タテ割り、硬直化した組織、年功序列、低給与水準」等が指摘されてきました。そこで法人化後多くの大学では、組織と人の力を最大限に発揮できる組織づくりに力を注いできました。特に、「組織のフラット化と柔軟化」は重要なテーマとされ、例えば、迅速な意思決定をより可能にするため、経営トップである学長と現場との距離をできるだけ近づける、具体的には、役員の下に担当事務組織を直接配置する方式に変更するなどの取り組みを行っています。その結果、文科省からの天下りと批判されている事務局長や、定年までの待機職である部長を廃止する大学も増えてきています。確かに、実質的には役員と現場を抱える課長とのラインが太く強固であれば仕事はうまく進むわけで、その間に屋上屋を重ねるような階層はもはや不要なのかもしれません。

大学改革を一層進めていくためには、このような官僚体制としての事務組織を再構築するとともに、業務の必要性など根本に立ち返った見直し、SDなど職務能力の開発(専門化)、努力した者が報われる厳格な職員評価・人事考課の確立といった多様な課題の解決に向け取り組んでいかなければなりません。そして、こういった諸改革の成否は、結局は「人」に依存します。改革成就のためには、多くの職員が一丸となって経営者の掲げるビジョンと戦略を共有し、各々がその役割・責任を全うすることが何より大事になってくるわけですが、その職員達を迷わすことなく引っ張っていける力量のある管理職の存在がカギになります。

特に、腰掛人事と揶揄される文科省の命令によって各地を2~3年ごとに転々とする課長以上と違い、副課長(課長補佐)さん方は、基本的には当該大学の生え抜きであり、深い愛校心と広い人間関係を持った人達です。中には、当然ながらいわゆる年功序列によってその地位を築いた方もいらっしゃいますが、最近では、大学におけるキャリアパス制度の充実などから、優秀な人材層が整いつつあります。また、法人化以前には不可能だった「プロパー職員の管理職(課長以上)への内部登用制度」も定着しつつあり、今後10~20年先が楽しみです。

前置きが長くなりました。今回は、今後の戦略的な大学経営を展開する上で重要な役割を担うことになるであろう課長、あるいは副課長(課長補佐)クラスの中堅管理職について触れた論考「戦略経営の確立に向けて-リーダーシップの確立」(日本福祉大学常任理事 篠田道夫さん)の一部をご紹介します。

他責の文化、評論家ミドル

企業でも仕事がうまく進まない時、無意識にこの壁に寄りかかり、言い訳にして動こうとしないケースもある。野田智義氏(非営利法人インスティテユート・オブ・ストラテジック・リーダーシップ代表理事)はこれを「他責の文化」と名づけ、現場と管理者の溝、上司の壁が改革を阻む風土にまでなる危険性を指摘するが、これは、例えば教授会の壁(?)に日々直面している大学職場でも考えるべき問題だ。

他人の非を責めていれば自分の責任は問われない。特に、現場とトップのつなぎ目にいる中堅管理者が、問題の原因を他人や環境のせいにし、先頭に立って行動しない風土は深刻な事態を招く。立派な意見は持っているが行動は起こさず、「うちはトップがだめだ」などと責任転嫁する。しかも本人は愚痴を言っている自覚はなく、会社の在り方を大所高所から議論していると思っている。これはミドルが評論家になっている状況だ。責任が問われず意見が言いやすい職場に、この「他責の文化」、評論家ミドルは広がりやすいというが、我々大学職場でも「教授会が決めてくれない」などと言って、できない言い訳にしていないだろうか。

論理的な意見や積極的な議論も、自らの実践や責任意識が伴わねば、改革の前進にとっては何の意味もない。野田氏は、求められているのは「上司(トップ)が悪い」ではなくそれを変えるために何をしたか、「こうあるべきだ」ではなく「私はこうしている」だという。
組織(大学)全体にとって長期的利益になる大義なら確信を持ち、場合によっては矢面に立つ覚悟もして行動することがトップを変え、大学・職場を動かしていく。複雑な組織運営の中で、改革には必ず何らかの抵抗を伴う大学で、真の改革を決定にまで持ち込むには、現場に立脚し、そこから練り上げた方針の実現に確信を持って取り組む管理者像が求められる。

課長補佐が会社を動かす

しかし、堀紘一氏(ドリームインキュベータ代表取締役)によると、日本の企業社会、特に活力のある企業は「ミドルアップ・ダウン」で成り立っており、「課長補佐社会」だという。そもそも日本企業の強さはアメリカのトップダウン型と比べればボトムアップ型で、大企業では何もできないという誤解もあるが、実はやり方によっては全く逆だという。

大企業では、課長補佐クラスが稟議書を書いており、それをほぼ最終決定権を持って決済しているのは部長クラスで、後はトップまで自動的に上がっていく。課長補佐クラスの提案をうまく根回しをかけていくことで、会社全体を動かすことは十分可能で、これが日本企業の醍醐味だというが、これは大学にも当てはまる。堀氏は、この現場の提案で会社を動かすには重要な点が二つあると指摘する。

第一は現場を熟知し、そこから提案するということ。それは顧客ニーズであり、現場実態であり、データ・統計資料であり、特に自分で集めた知識・情報である。変化する生の現場情報はミドルにしか集められず、トップの判断を変えうる強さを持っている。自分の意見を言わず事実をひたすら積み上げて、結果として意見を通していく手法に熟達すべきで、多くの顧客の実態、事実を熟知しているだけで勝てるというが、これは改革提案を実現していく上で大学職場でも大いに学ぶべき点だ。

もう一つ重要な点は、常に「上位概念」を想像し、部分最適でなく、全体最適になるような視野、戦略との整合性を持つという点である。上司と部下に緊張関係が存在するのはある意味当然で、立場によって「見える風景」は違う。現場からの改革提起=部分最適は、新たな局面、変動するニーズに対応する革新的内容を含むが、これを既存秩序(会社の論理)で骨抜きにすることなく、どう戦略遂行の中に取り込めるか、トップや管理者の現場への感度が重要で、この葛藤の中に組織の進化がある。

日本企業の組織文化の下では、業績や会社の革新はミドル(中堅管理者)のモラールの高さで決まるといわれる。大学職場での持続的な改革推進にとって、現場からの事実に立脚した提起が大学の方針となる「ミドルアップ・ダウン」システムが機能すること、これを担う中堅管理者の感度と力量の向上は極めて重要な課題となっている。(文部科学教育通信 No208 2008.11.24)

2008年12月3日水曜日

国立大学の予算の課題

平成21年度予算の編成等に関する建議」(財政制度等審議会)については既にこの日記でもご紹介いたしましたが、この建議に至る審議会での議論(というよりは財務省からの一方的な説明)の様子(=文部・科学関係議事録)が最近公表されました。建議の方が先に公表されてしまったため、今さら議事録を読んでも仕方ありませんでしたが、読んでみると財務省の説明者(主計官)の発言と建議に書かれた文章が面白いようにピタピタと一致するので、改めて財務省の思惑どおりの審議会運営、財政政策の誘導が行われているんだなあと認識させられた次第です。

議事録の中で文部・科学担当の主計官は、「国立大学の予算の課題」に関して主に次の6点を主張されています。
  1. 平成22年度から国立大学法人は第2期の中期計画に入る。その際には、競争的な環境、透明性、そして学部・学科ごとの厳格な相対評価を踏まえて、競争的な資金配分を行っていくことが重要。

  2. 第1期(中期目標期間)では、一律1%削減が行われてきたが、経費の効率化がどこまで行われているのか必ずしも判然としない。今後は、大学の特性、学部ごとの評価を考慮し、国が支援すべき研究、人材育成について運営費交付金を交付するといった考え方で進めていくことが重要。その際、研究コストは学部ごとに交付額を傾斜配分する、あるいは教育コストについても学費等の自己収入で賄うといった考え方も踏まえて検討していくことが必要。

  3. 国立大学の運営費交付金は毎年1%の削減だが、実は共同研究費あるいは寄付金等の収入努力によって、全体の事業費は毎年数百億円のペースで増えてきている。こうした努力をさらに進めていくことが必要。

  4. 大学の類型によって、あるいは同じ類型の中でも大学によって教員1人当たりの外部資金は相当差があり、こうした差を踏まえて、各大学の機能分化を進めていくことが重要。

  5. 国立大学の授業料は、私立大学あるいは諸外国の大学に比べると、まだかなり低い水準。ここ数年据え置いてきているので、第2期(中期目標)の期間に向けて、授業料の水準の在り方について引き続き議論していくことが重要。

  6. 国公私を通じた教育改革支援経費と、国立大学運営費交付金の中で個別大学ごとに計上する特別教育研究経費は、項目にもかなり重複があるので整理していくことが必要。
僭越ながら若干コメントさせていただきますと、大学間に競争的環境を醸成し、競争原理による各大学の自助努力を促すという政策は、総合的に考えれば、今後とも国公私の分け隔てなく推し進めるべきだと私は思います。特に、ぬるま湯にどっぷり浸かりきっている国立大学には、その大きな外波(大学の壁を乗り越える高波、あるいは壁を突き崩す強波)が押し寄せ続けることを希望しています。大学の中で、全学的視点からの予算配分や学部間の競争的環境を醸成するための仕掛け作りに一生懸命取り組んでも、なかなか「部局自治」というモンスターを倒すことはできません。モンスターと闘うには、「外圧」という助っ人が必須のような気がします。財務省の主張のように、今後は部局というセグメントごとに財務情報を公開し、全国レベルの土俵の上で相対評価を行っていくことが必要です。そこまでやって初めて改革がスタートできるような気がします。

また、財務省は、法人化後、国立大学予算の一律1%の効率化減を行ってきたことの検証は必ずやるべき、やる責任があると思います。「経費の効率化がどこまで行われているのか必ずしも判然としない」と他人事のようなことを言っていないで、自ら率先して、不可能であれば文科省を使ってでも実行すべきです。「政策なき一律削減の功罪」は税金を払う国民の前に明確にすべきでしょうし、授業料の値上げを要求するのであれば学生や保護者の前に「国立大学には、こういう理由で、あるいはこういった無駄なコストが眠っており、財政的にまだこれだけの余裕がある。したがって、今後これだけ国立大学から金を絞り取れる」と具体的に説明してもらいたいものです。ただし、「経済的弱者を排除することなく教育の機会均等を確保するとともに、教育・研究・診療の質の低下を絶対に招かない」という国立大学の使命達成が確約できることが前提になりますが。

最近感じるのですが、財務省のお役人達、教育を経済原理主義で考えすぎてやいませんか。国としての責任を放棄してやいませんか。結構イエローカード状態の思想だと私はとても心配しているのですが・・・。

[追加記事]

12月3日に「平成21年度予算編成の基本方針」が閣議決定されました。教育関係抜粋は以下のとおりです。

「教育振興基本計画」(平成20年7月1日閣議決定)に基づき、我が国の未来を切り拓く教育を推進する。その際、新学習指導要領の円滑な実施、特別支援教育・徳育の推進、体験活動の機会の提供、教員が一人一人の子どもに向き合う環境づくり、いじめ・不登校等子どもをめぐる諸問題への対応、学校のICT化や事務負担の軽減、教育的観点からの学校の適正配置、定数の適正化、学校支援地域本部、高等教育の教育研究の強化や国際競争力の向上、私学の振興、競争的資金の拡充など、評価を適切に反映させつつ、新たな時代に対応した教育上の諸施策に積極的に取り組む。

また、平成20年末に策定する「青少年育成施策大綱」に基づく青少年の健全育成、国際競技力の向上などスポーツの振興、日本文化の海外への戦略的発信や文化財の保存・活用、子どもの文化芸術体験など文化芸術の振興、留学生30万人計画の実現のため、総合的な施策を推進する。

幼児教育の将来の無償化について、歳入改革にあわせて財源、制度等の問題を総合的に検討しつつ、当面、就学前教育についての保護者負担の軽減策を充実するなど、幼児教育の振興を図る。また、「食育推進基本計画」(平成18年3月31日)に基づき、国民運動として食育を推進する。

全文→http://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2008/1203housin.pdf