2008年12月21日日曜日

高等教育政策の動向

去る12月18日、麻生内閣発足後初めての教育再生懇談会が開催されました。報道によれば、麻生総理は、教育を国家戦略の中心に据える考えを示し、「公教育の充実」に向け、早急に具体策をまとめるように要請したようです。また、教育再生懇談会は、総理に教科書の充実など教育の「質の向上」に向けた具体策を提言した第2次報告を提出したようです。

首相「教育を国家戦略の中心に」 再生懇メンバーも拡充へ(2008年12月19日 産経新聞)
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/081219/plc0812190046000-n1.htm


教育再生懇談会では、これまで初等中等教育を中心に議論が行われてきましたが、今後高等教育に関する議論が進行していくものと思われます。

今回の会議で示された資料「大学全入時代の教育の在り方について(論点メモ)」のうち、前回の日記でご紹介した高等教育予算との関連が深い部分を抜粋しておきたいと思います。


高等教育に対する公的支援の在り方

優れた教育研究を進めるための、大学への公的支援の在り方とは何か。大学への支援が納税者の支持を得られ、かつ、大学教育の質の向上に資するようにするには、どのように支援方法を変革することが必要か。

1 質の担保を前提とした高等教育に対する公的支援について

質の担保をなおざりにし、量的拡大に応じて公的支援を増額することは納税者の賛同を得られないのではないか。質を担保した大学については、学力不問入試などによる学生の確保に囚われることなく、安定的な経営ができるよう、公的支援を増やすべきではないか。反対に、質の担保が得られない大学を公的支援の枠から外すことで、選択と集中を図るべきではないか。

2 高等教育に対する公的支援の拡充について

(1)運営面への支援

国立大学運営費交付金、私学助成、各種GPなどの公費についても、「質が担保された大学」のみを対象とすることについてどう考えるか。

(例)質が担保された大学への公的支援の重点化に際しては、私費負担軽減の観点から、授業料の上昇を抑制する。

(2)家計負担への支援

家計負担の大きな日本の高等教育の実態を踏まえ、優秀で意欲のある学生に教育機会を与えるために、どのような方策を講じるべきか。

【高等教育に係る学生1人当たりの私費負担割合】※「OECDインディケータ」(2008年版)
日本:66.3%、米国:65.3%、英国:33.1%、フランス:16.4%、ドイツ:14.7%(OECD平均:26.9%)

(2-1)大学院生、特に博士課程学生への給付制の支援方策(RA等)の拡大

経済的支援を受ける博士課程在籍者のうち、月額5万円未満の受給対象者は過半数に達しており、なおアルバイトや家庭からの給付に頼らざるを得ない状況にある。研究に専念し得る環境づくりのための、博士課程学生への支援をどのように考えるか。

【経済的支援を受ける博士課程在籍者の支給月額】
5万円未満:52.8%、5万円以上10万円未満:20.7%、10万円以上15万円未満:5.8%、15万円以上20万円未満:10.7%、20万円以上:9.6%、不明:0.3%
※文部科学省「大学・公的研究機関等におけるポストドクター等の雇用状況調査」(平成18年度実績)

(2-2)現在の奨学金制度(日本学生支援機構奨学金:貸与制)の問題点を踏まえた給付制の導入可能性など

現在の奨学金制度(貸与制)の問題点
(例)返還総額が過大になったり、親の経済的格差の世代間移転に繋がるのではないか。

【貸与型奨学金の受給者割合】※日本学生支援機構(平成19年度)
大学院:41%、大学(学部)及び短大:30%

【貸与月額と返還の例】※日本学生支援機構(平成20年度)
私立大学学部生(自宅外通学、貸与期間48ヶ月)の例
第一種奨学金(無利息):月額6.4万円の場合 → 返還総額307万円(18年返還)
第二種奨学金(利息付):月額12万円の場合 → 返還総額775万円(20年返還)

給付制奨学金制度の導入可能性
(例)現在の貸与制奨学金の制度を維持しつつも、特に優秀かつ経済的に厳しい家庭の学生については、給付制奨学金を給付する仕組みを導入してはどうか。その際、大学院・学部の途中段階における評価(*CAAP等)を反映させる仕組みとすることはどうか。

*CAAP(Collegiate Assessment of Academic Proficiency)
米国における高等教育の評価手法の1つ。大学毎に教育プログラムの向上等に活用するため、読解力・文章表現技能・数学的能力・科学的能力・批判的思考・小論文の各分野から選択して試験を実施し、学生の一般教育における到達度を測定する。

【大学生のアルバイト従事状況】※日本学生支援機構「学生生活調査」(平成18年度)
博士課程:77.6%(*65.4%)、修士課程:78.9%(*47.2%)、大学学部:76.4%(*35.4%)
※「*」は全体のうち、「当該アルバイトに従事しない場合に就学不自由・困難」と回答した者


また、教育再生懇談会は、大学ごとの評価結果を、国からの資源配分に反映させることも提言しており、公教育の在り方とあいまって議論を呼びそうです。個人的には当然のことと受け止めますが、費用対効果のみを追求した経済原理に偏った議論に終始せず、大学の存在意義に立ち返った深みのある議論と提言を望みたいと思います。


大学改革、第三者評価で公費配分=教育再生懇 (2008年12月18日 時事通信)

政府の教育再生懇談会は18日、大学教育改革に関する議論のたたき台をまとめた。各大学が受けている第三者評価の結果を、国からの助成金の配分額に反映すべきだと提案。評価が極端に低ければ公費の投入対象から外すこともあり得るとした。大学の質を担保するのが目的だが、実現すれば大学の淘汰(とうた)にもつながりそうで、議論を呼びそうだ。

詳細を詰め、携帯電話の弊害から子供を守る対策や教育委員会改革の提言と併せて、来年1月にまとめる3次報告に盛り込む。

すべての国公私立大は7年に1度、大学評価・学位授与機構などの第三者機関から、経営状態や教育内容に関する評価を受けるよう義務付けられている。

しかし懇談会は、「各大学が設定した努力目標に達しているかといった基準で評価されており、大学間の比較ができない」と効果を疑問視。評価方法を見直した上で、結果を国立大の運営費交付金や私大の私学助成金の配分額に反映させるよう提言。評価が一定レベルに達しなければ、私学助成金などの投入対象から外すことも考えられるとした。

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