2009年2月10日火曜日

教育再生懇談会第3次報告

政府の教育再生懇談会は9日、第3次報告を麻生太郎首相に提出しました。

この報告は大きく「大学改革」、「子供の携帯電話利用」、「教育委員会改革」の3つで構成され、大学改革に関しては、1)いわゆる「全入時代」を迎えた大学の質向上のための私学助成や国立大学法人運営費交付金などの公費支援を大幅に拡充すること、2)納税者の理解を得るため、教育内容や研究水準などの評価結果に応じて公費配分に差をつけること(取り組みが不十分な大学には公費は投入しないこと)、3)学生に必要な学力があることを確認するため、高卒者の基礎学力を測る「高大(高校・大学)接続テスト」を導入すること、4)全大学に義務付けている第三者評価を厳格に実施することなどが提言されています。

また、報告を受けた首相は、今後の課題として、1)国際社会で通用する人材の育成、2)科学技術立国として理工系、理数系の人材育成等について検討を進めるよう指示したようです。

それでは、第3次報告の大学改革に関する提言「大学全入時代の教育の在り方について」のうち、「大学自身(財政支援については国)が取り組むべき方策」を抽出してご紹介したいと思います。


1 学生の質の担保

(1)大学は入学者の基礎的な学力を確保する

大学教育の質を確保し、高校生の学習意欲の低下を防ぐ観点から、一部の大学が推薦・AO入試に名を借りたり、極端な少数科目入試により、学力不問で多数の学生を受け入れる現状を早急に是正する必要がある。大学は以下のような対応策を講じる必要がある。
  • 入学者選抜において、大学入学後に必要となる学力を備えていることを確保する。このため、一般入試にあっては、個別学力検査の実施や大学入試センター試験の活用において、入学後の学修に必要な教科・科目について確実に学力検査を行うとともに、推薦・AO入試にあっては、これらを単なる学生確保の手段として用いることなく、本来の趣旨に沿って実施する。 
  • 推薦、AO、一般入試等の区分毎に、入学定員及び実際の入学者数を毎年、保護者・志願者を含め広く公開する。 

(2)大学は卒業生の質に責任を持つ

大学には、研究拠点としての役割のほか、卒業後に社会が求める人材を育成する場としての役割が期待されている。大学は、教育サービスの充実により、付加価値のある人材を送り出さなければならない。

GPA制度の運用、単位・進級・卒業認定の厳格化、FD等の取組を徹底し、学生を鍛錬し、体得した知を使いこなせるようにする。その際、以下のような能力の向上に留意する。
  • 課題解決力、コミュニケーション能力、自らの考えを的確に纏め、表現する能力の向上(グループ研究、プロジェクト・ベイスト・ラーニング、卒業論文の必修化など) 
  • 英語力の体得(英会話の必修化、TOEIC・TOEFL等の到達目標の設定など) 

2 大学教育に対する外部チェックの厳格化

(1)設置認可段階での質の担保を図る(略)

(2)大学の質に関する第三者評価の在り方を見直す

質の担保の努力を怠る大学が淘汰されるよう、事後チェックとしての第三者評価制度も有効に機能しなくてはならない。そのため、大学関係者は、以下のような観点から、現在の認証評価制度の見直しや改善も含め、第三者評価の在り方について検討を行う。
  • 第三者評価は、被評価大学(学部、大学院)の分野毎の教育、研究水準の比較を可能にするため、評価指標を明確化し、数値化された評価結果を用いるなど、分かり易く公正かつ客観的なものとする。 
  • 結果は広く国民に公開され、大学志願者も容易にその情報を入手し得るよう、提供の仕方に工夫を凝らす。 

3 大学財政が私費負担に依存せざるを得ない構造を転換する

大学財政を支える費用負担の方法としては、公費負担と私費負担とがあるが、我が国の高等教育は、主要各国と比較しても、授業料等の私費負担に依存する割合が高いため、以下のような弊害が生じている。

  • 経営安定のために学生確保が優先される結果として、学生及び教育の質の低下を招いている。
  • 私費負担が重いため、大学教育に相応しい意欲や能力を有しながら、経済的理由によって高等教育を受ける機会が失われている。

今後も、私費負担に依存した構造を続けた場合、将来にわたって、大学の質の低落を招く恐れがある。今後、大学財政の公私負担割合の在り方について抜本的な検討をし、私費負担の軽減を図り、公的支援を大幅に強化することが必要である。

しかしながら、質の担保をなおざりにしたまま、高等教育の量的拡大に応じて公的支援を増額することについて、納税者の賛同を得ることはできず、質の担保に努力しない大学は淘汰されることも止むを得ない。知識基盤社会を支える社会インフラとして、良質の大学教育を提供できて初めて、公的負担への理解を得ることができる。したがって、公的支援の拡充にあたっては、大学の質の担保が前提であり、「選択と集中」により、納税者の支持を得られると評価される大学に公費を投入することが適切である。

これを通じて公的支援を受ける大学は、安易な学生確保に走らず、質の確保が可能となるとともに、授業料を低い水準に抑制することが可能となるため、意欲と能力を有しながら経済的理由から大学進学を諦めていた学生や社会人にも、良質な高等教育の門を開くことが可能になる。


以上の考え方に立って、今後、次のような点について検討することが必要である。
  • 国立大学法人運営費交付金、私学助成金、各種GPなどの公的支援の配分にあたっては、大学教育の質の担保・向上に向けた取組を厳正に評価した上で、その評価に応じ配分の在り方を大胆に見直すことを前提に、国はこれらの公的支援を拡充する。その際、取組が不十分であり、納税者の支持を得られないと評価される大学には公費は投入しないことも選択肢として含めること

  • 国及び大学関係者は、上記の配分に活かすことのできる厳正な評価の在り方を確立すること(適正な入学者選抜による学生の質の担保、魅力ある教育カリキュラム、GPA制度の運用や単位・進級・卒業認定の厳格化、FDなどの取組、学術研究水準の向上、トップクラスの人材育成、大学入試や経営に関する基本的な情報公開の取組や、地域への貢献等の観点を含めた評価の在り方を確立すること)

  • 新しい仕組みにおいては、家庭の経済状況にかかわらず、意欲と能力のある者こそが大学教育を受けられるよう、上記の公的支援を受けることとなる大学においては、その支援に基づいて、質の担保・向上を図りつつ、私費負担を軽減し、授業料を低い水準に抑えることが実現されるようにすること


4 家計への支援により、意欲ある学生に学問への途を開く(略)

5 学術研究の担い手・教育補助者としての大学院生の貢献を正当に評価して、給付制の支援方法を拡充する(略)

6 高大連携の推進により優れた高校生の能力を伸ばす

全体として大学が大衆化する中で、能力の高い人材を養成・確保することも、知識基盤社会の構築と、我が国の国際競争力向上のための重要な課題である。このため大学は、以下のように、優れた資質を有する高校生の能力を高める学習機会を提供するなど高大連携を推進する。
  • 大学は、高校生を対象に大学レベルの講座を開講し、その学修成果に応じて、大学入学後に修得単位として認定する。世界最高水準の教育研究拠点となることを目指すトップ大学は、飛び入学の受入れ等を大学の責務として実施する。

  • 国際科学オリンピックなどで特に顕著な成績を示した高校生について、大学は、高等教育に足る学力水準に到達している者として、推薦・AO入試の活用等により、入学者選抜において特段の配慮を行う。

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