2009年2月3日火曜日

研究開発力の強化

少し古い話になりますが、昨年6月に、国による資源配分から研究成果の展開に至るまでの研究開発システム改革を行うことにより、公的研究機関、大学、民間も含めた我が国全体の研究開発力を強化し、イノベーショの創出を図り、日本の競争力を強化することを目的として、「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律」というとてつもなく長い名前の法律(略称:研究開発力強化法)が成立しました。また、成立に合わせ、研究交流促進法及びその施行令・施行規則が廃止されました。

今日は、この法律に書かれた、国立大学法人関係の主な事項についてご紹介したいと思います。


1 国立大学法人等の責務等(第6条第1項関係)

研究開発力強化法の基本理念にのっとり、研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進に努める。

2 若年研究者等の能力の活用(第12条第2項関係)

研究開発等の推進における若年研究者等の能力の活用を図るよう努める。

3 卓越した研究者等の確保(第13条第2項関係)

海外の地域における卓越した研究者等の処遇等を勘案し、必要に応じて、卓越した研究者等の給与について他の職員の給与水準に比較して必要な優遇措置を講ずること等により、卓越した研究者等の確保に努める。

4 人事交流の促進(第15条第2項関係)

必要に応じて、研究者等が事業者とともにその研究開発の成果の実用化を行うための休暇制度を導入すること、研究開発法人と国立大学法人等との間で転職をしている研究者等の退職金の算定の基礎となる在職期間についてそれぞれの法人における在職期間を通算すること、その研究者等に退職金の金額に相当する金額を分割してあらかじめ毎年又は毎月給付すること等の措置を検討し、その結果に基づき必要な措置を講ずること等により、研究開発等に係る人事交流の促進に努める。

5 人材の活用等に関する基盤強化(第24条第5項関係)

研究者等の自主性の尊重その他の大学等における研究の特性に配慮しつつ、必要に応じて、研究開発法人の人材の活用等に係る研究開発等の推進のための基盤の強化に準じ、その人材の活用等に係る研究開発等の推進のための基盤の強化を図るよう努める。

6 会計制度の適切な活用等(第29条第1項関係)

研究開発等に係る経費を翌年度に繰り越して使用することその他の会計の制度の適切な活用を図るとともに、その経理事務の合理化を図るよう努める。

7 事業者等からの資金の受入れの促進等(第31条第2項関係)

事業者等の資金による研究開発等が、国の資金による研究開発等とあいまって、研究開発能力の強化に資するものとなるよう配慮しつつ、事業者等からの資金の受入れ及び事業者等からの資金により行われる研究開発等の推進に努める。

8 研究開発等の適切な評価(第34条第2項関係)

研究者等の事務負担が過重なものとならないよう配慮しつつ、研究開発等及び研究者等の研究開発能力等の適切な評価を行うよう努める。

9 研究開発施設等の共用及び知的基盤の供用の促進(第35条第2項関係)

保有する研究開発施設等及び知的基盤のうち研究者等の利用に供するものについて、可能な限り、広く研究者等の利用に供するよう努める。

10 特許関連情報の活用促進(第40条第3項関係)

研究開発等の効率的推進を図るため、研究開発において特許に関する情報の活用に努める。

11 研究開発成果の国外流出の防止(第41条第2項関係)

研究開発の成果について、我が国の国際競争力の維持に支障を及ぼすこととなる国外流出の防止に努める。

12 国際標準への適切な対応(第42条第2項関係)

必要に応じ、国際標準に関する専門的知識を有する人材の確保及び育成、研究開発の成果に係る仕様等を国際標準にすること、研究開発等の推進における国際標準の積極的な活用その他の国際標準への適切な対応に努める。

13 未利用成果の積極的な活用(第43条第2項関係)

未利用成果の積極的な活用に努める。

14 中小企業者等の革新的な研究開発の促進等(第44条第2項関係)

役務の給付又は物件の納入に対し対価の支払いをすべき契約の締結に当たっては、予算の適正な使用に留意しつつ、革新的な研究開発を行う中小企業者の受注の機会の増大を図るよう努める。


また、研究開発等の業務を行う法人においては、研究開発力強化法第24条第1項に基づき、内閣総理大臣の定める基準に即して、研究開発等の推進のための基盤の強化のうち、「人材の活用等に係るものに関する方針」(人材活用等に関する方針)を作成することとされています。

内閣総理大臣の定める基準

1 研究開発等の推進における若年研究者等の能力の活用に関する事項
  1. 当該研究開発法人の研究者等の総数に占める若年者(概ね37歳以下の者をいう。以下同じ。)、女性や外国人の割合の向上などについて、数値目標など具体的な目標を設定するなど具体的な計画を示すこと。

  2. テニュア・トラック制の導入、ポストドクター支援、国内外での研究機会の拡大、研究集会への参加の促進など、若年者である研究者等の自立と活躍の機会を与える仕組みの導入について具体的な計画を示すこと。

  3. 育児期間中の勤務時間の短縮、保育施設の整備、出産・育児を考慮した業績評価等の研究と出産・育児等を両立するための支援及び意識改革など、女性である研究者等の能力の活用のための取組について具体的な計画を示すこと。

  4. 外国人が応募しやすい環境の整備や外国人である研究者等の組織的な受入体制の構築など、外国人である研究者等の能力の活用のための取組について具体的な計画を示すこと。

  5. その他研究開発等の推進における若年研究者等の能力の活用に関する事項について具体的な計画を示すこと。

2 卓越した研究者等の確保に関する事項
  1. 卓越した研究者等の給与について他の職員の給与水準に比較して必要な優遇措置を講ずる等、卓越した研究者等の確保のために努める事項について具体的な計画を示すこと。

  2. 能力及び実績に応じた処遇を徹底するとともに、優れた研究開発等を行った研究者等に対する公正な評価を行い、その努力に積極的に報いるための措置について具体的な計画を示すこと。

  3. 事務スタッフ機能の充実、スタートアップ資金の提供、研究室等の施設・設備環境の整備など卓越した研究者等が、国際的かつ競争的な環境の下で研究に専念できるような環境の整備について具体的な計画を示すこと。

  4. その他卓越した研究者等の確保に関する事項について具体的な計画を示すこと。

3 研究開発等に係る人事交流の促進に関する事項
  1. 任期制の適用範囲の拡大や実施方法の改善(再任可能な任期制や、適性や資質・能力の審査を定期的に行う再審制などを含む。)等任期制の広範な定着に向けて、数値目標など具体的な目標を設定するなど具体的な計画を示すこと。

  2. 研究者等が事業者と共に研究開発の成果の実用化を行うための休暇制度を導入することなど産学官の間での人材の流動性を高めるための環境整備について具体的な計画を示すこと。

  3. 研究者等が研究開発法人と国立大学法人等との間で転職をしている場合における退職金の算定の基礎となる在職期間についてそれぞれの機関における在職期間を通算する、研究者等に退職金の金額に相当する金額を分割してあらかじめ毎年又は毎月給付するなど人材の流動性を高めるための環境整備について具体的な計画を示すこと。

  4. その他研究開発等に係る人事交流の促進に関する事項について具体的な計画を示すこと。

4 その他研究開発等の推進のための基盤の強化のうち人材の活用等に係るものに関する重要事項