2009年2月23日月曜日

大学と、いわゆる「渡り」

つい先日まで、公務員制度改革の一環としての、いわゆる「渡り」の廃止に関する報道がさかんに行われていました。「渡り」とは、国家公務員が独立行政法人や財団などに天下りした後、さらに出身省庁の関連団体などに転職を繰り返し(渡り歩き)、その退職のたびに高額な退職金を受け取ることです。

2007年の国家公務員法の改正により、再就職のあっせんは「官民人材交流センター」で一元管理し、各省庁によるあっせんを禁止することになっていましたが、同法の施行に合わせて昨年12月に閣議決定した「職員の退職管理に関する政令」により、3年間の経過期間における再就職のあっせんは原則として禁止されているものの、例外規定として2回目以降のあっせんが認められることになったことから批判の声が上がっているわけです。

まずは、関連報道から

無法地帯化する霞ヶ関(2009年2月3日 ビデオニュース・ドットコム)

安倍政権下での国家公務員法の改正で、省庁による官僚の再就職の斡旋、すなわち天下りが実質的に禁止され、経過措置として3年間は新設される再就職等監視委員会が承認した場合に限り、天下りが認められることになっていた。しかし、ねじれ国会でこの再就職等監視委員会の人事が進まないのをいいことに、麻生政権はその間首相に天下りを承認する権限を与える政令を作ってしまった。国会で成立した法律の本則に反する行為を、法律よりも下位にある政令で可能にしてしまうというのだ。これは明らかに法律違反であり、「霞ヶ関のクーデター」(仙谷由人衆議院議員)と批判されてもしかたがないほどの暴挙だった。それにしても、なぜ官僚はここまで露骨に権益擁護に乗り出さなければならないのか。官僚たちは単に公共心を失ってしまったのか。あるいは、世論の突き上げで少しずつ特権を失い、いよいよここまでやらなければ、自分たちの権益を守れなくなってきているということなのか。・・・

おはようコラム 「“渡り”と麻生流官僚観」(2009年2月3日 NHK解説委員室)

天下り先をいくつも渡り歩く、だから「渡り」と言うが、国会で取り上げられた最高記録は、農林水産省のOBが6つの公益団体を20年以上渡り歩いて、退職金も含め推定で3億4千万円受け取っていたケース。このこと自体問題だが、役所を辞めた後は一民間人。だから、その人の再就職の世話を役所でやるのは公務員の職務専念義務に違反している疑いがあるし、必要もない天下り先を作って受け皿作りをしていたとしたら、それこそ税金の無駄使いだ。

一昨年の国家公務員法改正で禁止されたが、法律の運用基準を定めた政令が去年12月に決まって、その中に「必要不可欠の場合はこの限りでない」という文言が入っていることが分かった。自民党を離党した渡辺元行革担当大臣や民主党が「官僚が作った抜け道だ」と攻撃して、与党の中からも「認めるべきではない」という声が上がったが、麻生総理大臣はなかなかはっきりしたことを言わずに、ようやく先週になって「認めない」と明言した。

官僚の人事管理を一元化するための改革の工程表。内閣に権限を移される人事院が猛烈に反対して途中で立ち往生する場面もあった。自民党の改革推進派からは、麻生さんが官僚に弱いから足元を見られるんだという批判も出始めている。「渡り」の方も、野党側は、政令そのものを撤回すべきだとさらに攻勢を強めている。官僚政治の打破に向けて、麻生総理大臣がどこまで指導力を示せるか。政権の不安材料がまた一つ増えた格好だ。・・・


それでは私達の職場である大学に「渡り」というものは存在するのでしょうか?「渡り」と断定するにはいささか自信がありませんが、「天下りや渡りのようなもの」は存在するような気もします。実態を見てみましょう。

総務省は、昨年12月25日、「特殊法人等整理合理化計画」(平成13年12月19日閣議決定)、「公務員制度改革大綱」(平成13年12月25日閣議決定)等に基づき、各独立行政法人等における「役員に就いている退職公務員等の状況」を取りまとめ公表(平成20年10月1日現在)しています。

このうち、国立大学法人に関係する部分を抽出してみると、国立大学法人(大学共同利用機関法人を含む)90法人のうち、
  1. 役員(682人)中、退職公務員が19人(うち常勤497人中11人)
  2. 役員(682人)中、独立行政法人等の退職者が51人(うち常勤497人中25人)
  3. 役員(497人:役員出向対象法人)中、国からの出向者が64人(常勤のみ)
という状況になっています。各法人に係る詳細な内容については公表資料をご参照ください。

次に、 文部科学省の官僚と言われる方々の国立大学法人(理事)への出向状況が詳細に示されているサイトをご紹介します。

まずはサイトにおける指摘の概要(拙者の主観で抜粋しています)を見てみましょう。関係者の皆さんはどうお感じになりますか?
  1. 「役員出向」制度は、本来「キャリア官僚の天下りへの批判」に応えるために作られたルールであった。この「役員出向」制度によって、これまで強い批判があった「退職金の二重取り」は(部分的には)解消したが、天下りそのもの、中央省庁による各種法人支配の構造は全く改善されていない。それどころではない。「国立大学法人」における「役員出向」は、この制度の本来の目的を外れた拡大運用である。国立大学法人発足以来の文部科学省人事は、文部科学省がこの制度を幹部公務員のポスト確保に利用していることを示している。

  2. 現在の国立大学法人の理事の任命の多くが文部科学省の人事都合で行われており、それは国立大学法人法に違反することを示す。国立大学法人発足当時、過半数を大きく超える大学で事務局長が理事職に就いた。さらにその事務局長出身理事は文部科学省からの役員出向者であることが判明した。そもそも未だ2年を経過していない国立大学法人の理事に、学長の交替という事情が生じたわけでもないにも関わらず、なぜ異動が発生するのか疑問である。学長に任命された理事は、特段の理由がない限り、本来の任期期間中「学長を補佐して国立大学法人の業務を掌理」(国立大学法人法第11条)しなければならないはずである。その理事をごく短期のうちに中央省庁へ復帰させたり、格段の失態等が認められないにも関わらず職務を解いて他の理事を中央省庁から招致したりするのは、学長の職務遂行能力に欠落があるものと認められる。しかし、中央省庁の意思により出向役員が異動を余儀なくされたとすれば、この限りではない。つまり、異動が生ずるのは、学長の職務遂行能力に欠落があるか、当該大学の理事人事に中央省庁の意思が働いていたかのいずれかであり、後者の場合は、学長の理事任命権に対する中央省庁の不当な介入と称されよう。

  3. 「国立大学間」、「国立大学と他の独立行政法人間」になぜ異動が発生するのか疑問である。わずか2年の短期間の間に、2つの大学法人の理事を勤める人物がいる。各大学には各大学の固有事情が存在し、理事はそれを十分勘案して「学長を補佐して国立大学法人の業務を掌理」しなければならないはずである。学外者から起用された多くの理事が任期を勤め上げているにも関わらず、「役員出向」の理事だけがこのように短期間の異動を繰り返すのは、この種の人事が文部科学省の人事ローテーションに従っていることを示しているのではないか。だとすれば、理事の任命権(学長に帰する)に対する文部科学省の不当な介入である。

  4. 文部科学省によるローテーション人事は、「国立大学法人法」審議時の政府答弁、衆参両院の「附帯決議」にも違反している。当時の遠山大臣、河村副大臣は、03年7月8日、次のように答弁しているのである。
(河村建夫文部科学副大臣、平成15年7月8日参議院文教科学委員会)
理事の任命に当たって学長は、これは責任を持って自ら行うということになっておるわけでございまして、それに対して文部科学省が学長の意に反して理事を割り振るというようなことは全くあり得ないと、このように考えております。
(遠山敦子文部科学大臣、平成15年7月8日参議院文教科学委員会)
学長が適材適所の観点から自らの判断によって文部科学省職員又は職員であった者を理事に選任することもあり得るわけではございますけれども、それは大学の自主性、自律性を阻害すると批判されることがないように、法人化の趣旨を十分踏まえて私どもとしても配慮をしていきたいというふうに考えております。
「大学の自主性、自律性」が尊重され、「文部科学省が学長の意に反して理事を割り振るというようなことは全くあり得ない」のであるならば、なぜ「文部科学省の人事異動」により理事が異動することが生じるのであろうか。


このサイトに掲載された実態及び指摘が、いわゆる「天下り」あるいは「渡り」に当たるのかどうかの判断はなかなか難しいところですが、「法人化によって、国立大学の人事権が学長に移行した(法律によって保証された)にも関わらず、相変わらず文部科学省が国立大学法人の役員(のみならず事務系幹部職員)の人事を行っている」ことは事実ですし、個人的な経験から申し上げても的を得た指摘ではないかと考えます。

諸事情あって国の時代の制度が未だに生き続けていることは理解しつつも、このことは法人制度の根幹に関わる重要な事項であり、第2期中期目標期間を迎えようとしている今こそ、文部科学省は法律に書かれた制度の趣旨と実態との乖離を一日も早く無くす取組を進めるべきだと考えます。

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