2009年3月9日月曜日

成長戦略-経済財政諮問会議

去る3月3日(火曜日)に、本年第5回目の経済財政諮問会議が開催されました。経済財政諮問会議では、今後3回ほど成長戦略に視点を当てた集中審議を行うことにしているようです。

その第1回目である今回は、健康長寿、人財力、コンテンツについて議論されています。議事要旨が公表されていますので、その中から主に文部科学大臣の発言をピックアップしてみます。

1 底力発揮(人財力)

▼岩田議員:内閣府経済社会総合研究所長

論点3は人材育成ということで、小学校から高校、大学、大学院に至るまで、人材を育成するようなプログラムを強化する。特に社会人が、小学校等で教育を強化するための人材として活用できるのではないかということ。あるいは海外の有力大学との交流・連携ということ。日本の大学で圧倒的に弱いと思うのは、大学における外国人の研究者の比率で、4分の1か5分の1と、平均と比べるとかなり少ない。こういったことも含めて人材育成を強化する必要がある。

論点4としては、日本でも博士課程修了者が随分増えている。毎年 1.6万人修了する方が出ている。ところが、就職できる方がそのうちの6割で、残りの4割の方は就職できない。ポストドクターといわれていて、ここにはミスマッチがあるのではないかと考えている。もう少し産学連携の一環として、ポストドクターの方々の職がうまく見つかるような工夫をする必要があるのではないかと考えている。

▼塩谷臨時議員:文部科学大臣

資料の1ページから御説明する。

(説明資料)http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2009/0303/item8.pdf
(配付資料)http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2009/0303/item16.pdf

まずは、教育全般については、教育基本法を改正した後、昨年は学習指導要領を改定し、その一部を前倒しして今年からスタートする。
企業あるいはいろんな社会に出て、どうも最近の若い人たちは基本的なところがなかなかできない、再教育しなければならないというところが多く聞かれる。
まずは教育基本法と新しい学習指導要領に基づき、基本的なところを押さえようということで「生きる基本」というものをしっかりと明確にし、道徳あるいは基礎学力、更には職業観、そして体力というようなところに重点を置いて、これを新しい教育の中で、まずは基本として、それから世界のトップレベルの学力を育てていこうということを考えている。

そういう中で、理数教育の問題については、新しく理数の時間を増やしたり、内容も増やしたりしたが、それを指導する教員の質の向上、そして配置、これも予算で計上しているが、やはり定数の問題が非常にネックになっている。
現在はいわゆる40人学級を基本としているので、これが公務員の削減と合わせて、小人数学級になかなか向かないというところがある。そこら辺のところを検討してしっかりと方向性を定めて、例えば理科教師については、これは後で申し上げるが、特に高校レベルでは、ポスドクの人たちを高校教師にふんだんに使っていく。そうなると、子どもたちも、そういったレベルの先生方が来れば、やはり全然興味も違うと思うので、そういった活用の仕方をすることが大事だろう。

しかしながら、教育の中で体験教育とか、今まで実際にできなかったことをふんだんに入れて、やはり基本的に好奇心とかチャレンジ精神とか、そういったものを育んでいかないと、将来研究者になった時になかなか研究に没頭することができないなどの課題も出てくるので、そういった新しい義務教育での教育を進めてまいりたい。

2ページ目。成長力強化のための高度専門職業人の養成ということで、いわゆるポスドクの問題であるが、企業が求める人材と研究者とのミスマッチがなかなか多く、これについても、できるだけポスドク、研究者のキャリアパスのいろんなパターンを考えることが、まず一つある。
そして、先ほど申し上げたように、高校の教師などは、非常にいいキャリアパスの一つになると思っていて、そういったシステムを是非これから開発し、できるだけそういうところで教育者としても自分の知識、技能を教えるということの中から、次に企業へ行っても使える人間になるということだと思うので、ここら辺を大いに活用してもらいたい。

それから、特に若手研究員が少なくなってきたことで、資料の別紙にあるが、特に平成10年辺りでは25.2%だったのが、平成19年では21.3%と下がっている。人件費抑制という課題に対して、やはり大学の基盤的経費を大幅に増やしていかないと、限界にぶち当たっているのが現実であり、ここも是非検討していただくことが大事である。

それから、我が国の大学について、特にアメリカ等の大学と比べると、渉外機能というか、簡単に言うとセールスマンだが、大学でこういう人材がいるから使ってくれという、専門的な人材を養成しすばらしい人材を売り込む、そして研究をアピールして寄附を勝ち取るというような、大学にはそういう発想が少ない。アメリカなどは相当そこら辺で、企業側もそれにかなり誘発されることがあるので、日本の場合は、そこら辺のところが少ない。

それから、国際的なプレゼンス強化を目指し、グローバル30という形で、30大学ぐらいを、いわゆる海外からの研究者を入れ、英語だけの講座もたくさんつくり、研究交流をすることを現在進めており、それを一つの契機として、多くの人材を養成する。

もう一方では、今、各大学が海外とのつながりで、例えばある大学は中央アジアが強い。ある大学は、南アフリカが強い。各大学でそれぞれ強いところを持っているから、そこら辺は連携し、国家戦略としてそういった学術交流的な人的なつながりを持ち、効果的な両国の交流を進める中で、人材も養成していくことを、しっかりとうまく束ねて国家戦略的な方法で進めていくことが大事である。

3ページ目は、世界をリードし、将来の技術革新を生む研究開発の強化。
特に、昨年はノーベル賞の受賞者4名と大変画期的な年であり、改めて基礎研究のレベルの高さを証明した。今年は、実は文部科学省としては、いわゆる基礎科学力強化年というふうに位置付け、ノーベル賞受賞者の皆さん方からいろんな御意見をお伺いし、新たな強化推進本部を立ち上げながら、その構想を6月か7月頃までには練ってまいりたい。

これについても若手研究者が自由な発想ができることが1つの大きなポイントなので、それには、今までの研究者の在り方、先ほどのポスドクの話もあり、また、若手教員の話もあり、できるだけ研究体制を厚くし、そういう中からいろんなアイデアが出てくると思うので、特に基礎科学力強化を一つの柱として、今後、技術革新あるいは研究開発に力を入れていくこと、この分野で人材を育成することが我が国にとって大きな一つの方向性である。


2 底力発揮(コンテンツ)

▼塩谷臨時議員:文部科学大臣

資料「日本の魅力を発信する文化振興について」に従って御説明申し上げる。

(説明資料)http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2009/0303/item12.pdf

まずは「我が国の国際プレゼンスを高める文化芸術の振興」ということで、ただいま、それぞれお話があったように、アカデミー賞の受賞で我が国のこの分野における底力があることを証明したわけである。

メディア芸術やポップカルチャーについて、今後、積極的に海外でもいろんな形で取り組むと同時に、メディア芸術創造の中心的な役割を日本の文化芸術が担えるように戦略的な取組を行っていく必要がある。作品の制作の支援や、国内外で活躍できる機会の拡大を図ってまいりたい。

また、流通についても、その促進や人材育成等といった総合的な支援に加え、日本映画等のナショナル・アーカイブの充実を図るなど、さらなる振興策を検討していきたい。

次に2ページ目、「デジタルコンテンツの流通促進と海賊版対策」ということで、著作権の問題であるが、著作物の違法流通の規模の拡大やインターネットを利用した事業等の立ち遅れが喫緊の課題である。

今国会で提出を予定している著作権法改正案においてはこうした問題に取り組むこととしており、概要について簡単にご説明申し上げる。
違法な著作権の流通を抑止するための措置として、権利侵害品、海賊版と承知の上で行うインターネット販売の申し出を権利侵害とすること。それから、違法なインターネット配信からの音楽・映像の複製行為について、違法と知りながら複製することを私的使用目的でも権利侵害とすること。そして、著作物利用の円滑化を図るための措置として、Yahoo!やGoogleなどのインターネット上での情報検索サービスを実施するための複製や、過去の放送番組等の権利者が不明の場合に、インターネット等で二次利用を円滑に行えるようにすること等の内容を盛り込んでいるので、まずは本法案を早急に成立することに尽力していきたい。