2009年6月12日金曜日

第2期中期目標期間に向けた課題

国立大学法人の第2期中期目標期間に向けた対応として、去る2月5日に文部科学省(国立大学法人評価委員会)から「国立大学法人の組織及び業務全般の見直しに関する視点」が、また、5月21日に総務省(政策評価・独立行政法人評価委員会)から「国立大学法人等の主要な事務及び事業の改廃に関する勧告の方向性について」が示されたことは既にこの日記でもご紹介しました。

これらを踏まえ、「国立大学法人の組織及び業務全般の見直しについて」(文部科学大臣決定)の案が、5月27日開催の国立大学法人評価委員会総会において審議され、6月5日付けで各大学に通知されました。また、大臣決定に合わせ、野依良治 国立大学法人評価委員会委員長所見も通知されています。

特に所見の中で、「総人口が減少期に入る局面において、現在、中央教育審議会でも大学の機能別分化や量的規模の検討がなされているところです。各法人における再編統合を含めた組織等の自主的な見直しを促すための財政的な仕組みを整えることも必要であると考えます。」と記述されている部分については、個人的には大変気になるところであり、今後の文部科学省や国立大学法人の動向が注目されるところです。

今後、各国立大学法人は、自ら策定する第2期中期目標・中期計画が、本決定等に沿った内容となっているかどうかなどについて最終的な検証を行い、「素案」を今月末までに文部科学省に提出することになっています。


関連する報道からご紹介します。

大学院博士課程:定員減を 大学院重視を転換、教員養成も見直し-文科省(2009年6月6日毎日新聞)
大学院博士課程の修了者の就職難が問題化していることなどを受け、文部科学省は5日、全国の国立大学に対して、博士課程の定員削減を要請する通知を出した。これまでの大学院重視の政策を大きく転換することになる。また、少子化の進展を踏まえて教員養成系学部の定員の削減なども要請しており、現場のリーダー養成を目指して08年度に始まった教職大学院制度にも影響を与えそうだ。文科省は通知で各大学が6月中に素案をまとめる10年度からの中期目標(6年間分)に反映させることを求めている。・・・

以下が文部科学省から通知された内容です。

国立大学法人の組織及び業務全般の見直しについて(平成21年6月5日 文部科学大臣決定)

国立大学法人法第35条において準用する独立行政法人通則法第35条第1項に基づき、文部科学大臣が国立大学法人の第1期中期目標期間終了時に行うその組織及び業務全般にわたる見直しの内容を、別添1のとおり決定する。
今後、第2期中期目標・中期計画が本決定に沿った内容となるように国立大学法人に求めるとともに、所要の措置を講じることとする。
本決定は、「中期目標期間終了時における独立行政法人の組織・業務全般の見直しについて」(平成15年8月1日閣議決定)の趣旨を踏まえつつ、国立大学法人の教育研究の特性に配慮する観点から、総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会の「国立大学法人及び大学共同利用機関法人の主要な事務及び事業の改廃に関する勧告の方向性について」(別添2)を踏まえ、国立大学法人評価委員会の意見を聴いた上で文部科学大臣が決定するものである。

(別添1)

国立大学法人の第1期中期目標期間終了時における組織及び業務全般の見直し(内容)

第1 国立大学法人の現状

1 国立大学の使命

国立大学は、我が国の学術研究と研究者等の人材養成の中核を担ってきたほか、全国的に均衡のとれた配置により、地域の教育、文化、産業の基盤を支え、学生の経済状況に左右されない進学機会を提供するなど、重要な役割を果たしてきた。
国立大学の法人化は、明治以来130年間国の機関として位置づけられていた国立大学を独立した法人とすることにより、1)自律的な環境の下で国立大学をより活性化し、2)優れた教育や特色ある研究に向けてより積極的な取組を促し、3)より個性豊かな魅力ある国立大学を実現することを目指したものである。法人化によっても国立大学の使命は変わるものではなく、法人化のメリットを活かした機能の充実が一層期待されているところである。

2 国立大学法人のこれまでの取組

国立大学の法人化により、組織編成等の運営面や財政面において自由度が高まったことを受けて、それぞれの法人において各々の特色に応じた目標を立て、様々な教育研究活動上の改革に取り組んでいる。
例えば、外部人材の積極的活用、学長等の裁量による戦略的な学内予算配分、年俸制や任期制の導入・拡充、企業からの委託研究の拡大などに、多くの法人が取り組んでいる。
それぞれの法人において一様ではないものの、全般的に、学長のリーダーシップの下での機動的、戦略的な法人運営・経営が定着しつつあるとともに、評価結果を活用した改善システムが有効に機能しているものと考える。

第2 組織及び業務全般の見直しの基本的な方向性

1 見直しの考え方

今回の見直しに当たっては、憲法で保障されている学問の自由や大学の自治の理念を踏まえ、国立大学の教育研究の特性への配慮や自主的・自律的な運営の確保の必要がある等の観点に十分留意する必要がある。
このため、文部科学大臣による国立大学法人に対する組織及び業務全般にわたる検討とその結果に基づき講ずる措置としては、一般の独立行政法人とは異なり、中期目標の実際上の作成主体である法人に対して文部科学大臣が見直し内容を示した上で、各法人から提出のあった中期目標・中期計画の素案等において、見直し内容が反映されているかを確認することが中心となる。なお、見直し内容を示すにあたっては、大学の自治の理念を踏まえ、個々の法人ごとの具体的な組織・業務に言及するのではなく、全ての国立大学法人を対象に、一般的に見直すべき点を示すこととする。したがって、本見直しの内容は、個々の法人に全ての項目が一律に該当するものではなく、各法人の状況に応じて該当する内容は異なる。

2 基本的な方向性

第2期中期目標期間においては、国立大学法人が第1期において果たしてきた役割を引き続き十分に果たしていくとともに、第1期において必ずしも国民の期待に応えられていない点は改善していく観点が必要であることから、第2期中期目標期間を迎えるこの機会にしっかりと組織及び業務を見直すことが必要である。
その際、個々の国立大学法人を見ると、規模、特性、状況等は千差万別であり、国民が各法人に期待する役割等も同じではないことから、第2期中期目標期間は、大学の機能別分化を進めるため、各法人の目指す方向性が明らかになるよう、各法人の特性を踏まえた一層の個性化が明確となる中期目標・中期計画とするとともに、目標の達成状況が事後的に検証可能となるよう、実現に向けた具体的な取組内容を可能な限り定量的に明らかにすること等が必要である。
また、世界の様々な状況が大きく変わる中、国立大学法人をとりまく状況も変化し、新たな課題が生じている。このような課題にも留意した中期目標・中期計画とすることが必要である。
さらに、我が国の人口が初めて減少局面を迎え、各種の社会システムの見直しが求められ、中央教育審議会において我が国の大学全体の量的規模の在り方について検討が行われている。また、地方分権についての議論や独立行政法人の見直しも進められている。国立大学法人の組織及び業務全般の見直しが全体として、このような状況を踏まえたものとすることが求められる。

第3 国立大学法人の組織及び業務全般の見直し

各国立大学法人は、各法人の状況を踏まえつつ、この見直し内容等に沿って検討を行い、その結果を中期目標及び中期計画の素案や年度計画に具体的に盛り込むことなどが求められる。

1 組織の見直し

(1)大学院博士課程の組織の見直し

大学院の博士(後期)課程においては、法人のミッションに照らした役割や国立大学の機能別分化の促進の観点、又は学生収容定員の未充足状況や社会における博士課程修了者の需要の観点等を総合的に勘案しつつ、大学院教育の質の維持・確保の観点から、入学定員や組織等を見直すよう努めることとする。

(2)法科大学院の組織の見直し

法科大学院においては、入学者選抜における競争性の確保が困難で、修了者の多くが司法試験に合格していない状況がみられる場合等は、法科大学院教育の質の向上の観点から、入学定員や組織等を見直すよう努めることとする。

(3)教員養成系学部の組織の見直し

教員養成系学部においては、教員採用数の動向等も踏まえ、入学定員や組織等を見直すよう努めることとする。

(4)その他の学部・研究科等における組織の見直し

(1)~(3)に掲げる学部・研究科以外の学部・研究科等においても、当該分野に係る人材の需給見通し等を勘案しつつ、必要に応じ、入学定員や組織等を見直すよう努めることとする。

(5)附置研究所の組織の見直し

附置研究所においては、大学評価・学位授与機構の現況分析の結果等を踏まえ、当該研究所の設置目的や特色ある研究の達成、COE性の発揮に加えて、共同利用・共同研究機能の向上等の観点を総合的に勘案しつつ、研究の質の向上に向けた研究体制等を見直すよう努めることとする。

(6)その他の組織の見直し

分野を融合した学際的な学部・研究科等の組織に関しては、当該組織の理念が達成されているか、社会の要請や時代の変化に対応した教育研究が行われているか等の検証を行い、各法人の実態に応じ、組織等を見直すよう努めることとする。
また、学内の様々な体制整備に際しては、必要に応じ、既存の組織の見直しも併せて進め、責任ある教育研究体制の維持・形成に努めることとする。

2 教育研究、運営等の業務全般の見直し

(1)大学の教育研究等の質の向上

1)教育研究の質の向上

教育研究の内容に関しては、各法人が大学評価・学位授与機構による教育研究組織ごとの現況分析等の結果を十分踏まえ、自主的に見直すよう努めることとする。また、教養教育について、その内容や実施体制を含めた改善に努めることとする。

2)社会貢献・地域貢献の推進

国立大学法人の公的な役割に鑑み、各地域における知の拠点として、生涯学習講座の提供や、研究成果や学術情報の公表など、社会貢献や地域貢献を一層果たすよう努めることとする。

3)グローバル化の推進

高等教育のグローバル化を受け、国際化を一層推進するよう努めることとする。

4)教育研究資源の有効活用

教育研究資源を有効活用し、質の高い教育研究を行う観点から、必要に応じ、教育課程の共同実施を行うよう努めることとする。
また、教員の採用や配置に当たり、女性、外国人、若手等の比率を考慮した教員構成の多様化や、女性等の能力の一層の活用に努めることとする。

5)学生支援機能の充実・強化

経済的に困窮している学生等に対する支援の充実や、雇用情勢への対応を含めた就職支援の取組など学生支援機能の強化に努めることとする。

6)附属病院の機能の充実・強化

附属病院は、社会の要請に応えられる優れた医療人を養成する教育研究機関であるとの基本的認識を踏まえつつ、卒前教育と卒後教育の一体的な魅力ある教育プログラムの構築や地域との連携を推進すること等により、特色ある病院運営の強化に努めることとする。

7)附属学校の機能の充実・強化

附属学校は、学部・研究科等における教育に関する研究に組織的に協力することや、教育実習の実施への協力を行う等を通じて、附属学校の本来の設置趣旨に基づいた活動を推進することにより、その存在意義の明確化に努めることとする。

8)附置研究所の機能の充実・強化

全国共同利用機能を持つ附置研究所は、大学評価・学位授与機構の現況分析の結果等を踏まえて、共同利用・共同研究機能の向上に向けて業務を見直すよう努めることとする。

(2)業務運営の改善及び効率化、財務内容の改善、その他業務運営

1)法人のガバナンスの充実

法人本部が各部局等を含めた法人全体をマネジメントできるような仕組みとするよう、法人内部のガバナンスの在り方を検討するよう努めることとする。
また、法人の特性を踏まえつつ、学長等の裁量による経費や人員等の配分など、学長のリーダーシップが図れる取組を進めるとともに、法人の運営改善に資するよう、経営協議会における運用の工夫改善や意見の内容及びその法人運営への反映状況などの情報の公表等により、学外者の意見の一層の活用を図るよう努めることとする。
さらに、監事監査や内部監査等の監査結果を運営改善に反映するサイクルの構築を図るよう努めることとする。

2)財務内容の改善

各法人は、外部資金の獲得や多様な資金調達による自己収入の増加、管理的経費の一層の抑制等についてさらに努めることとする。

3)効果的・効率的な法人運営の推進

効率的な法人運営を行うため、例えば、他の大学との事務の共同実施の推進や、アウトソーシングの推進を図るとともに、農場、演習林、船舶等について、他の大学等との共同利用の推進を図るよう努め、併せて、保有資産の不断の見直し及び不要とされた資産の処分に努めることとする。さらに、既存施設の有効活用、施設の計画的な維持管理の着実な実施等の施設マネジメントの一層の推進に努めることとする。
また、総人件費改革の取組を平成23年度まで着実に継続するとともに、例えば、人員配置の見直しや人事評価結果の活用などにより、組織の活性化及び効果的・効率的な業務運営に努めることとする。
さらに、随意契約について、各法人の見直し計画に基づく取組を着実に実施するとともに、一般競争入札等により契約を行う場合であっても、特に企画競争等を行う場合には競争性、透明性を確保するなど、随意契約の適正化の推進に努めることとする。併せて、契約手続きの適正性について監事等へのチェックを要請するよう努めることとする。

4)国民に対する情報提供の改善

国立大学法人には多額の公的な資金が投入されていること、成果等が社会に還元されるべきものであることを十分認識し、国民に対する説明責任を十分に果たす観点から、各法人の実情や果たしている機能等を利用者の立場に立った国民に分かりやすい内容・形で情報提供するよう努めることとする。

5)法令遵守体制の充実

経営協議会は審議すべき事項が法定されていることから、法定されている事項を報告事項として扱うことのないようにする等、法令遵守(コンプライアンス)体制を確保するよう努めることとする。

第4 制度改正等の措置

1 国立大学法人運営費交付金の算定ルールの見直し等

国立大学法人運営費交付金の個別の算定については、各法人の努力と成果を評価し資源配分に適切に反映させることを通じ競争的環境を醸成し切磋琢磨を促すこと、各大学の改革を支援し大学の多様化と機能別分化を促すこと、各大学の特性・状況に配慮しつつ大学経営の効率化を促すことを基本として、以下のような見直しを行う。
    1. 全法人について一律に設定されている「効率化係数」について、各法人の規模(事業費)や人件費比率等に応じて設定すること。
    2. 附属病院運営費交付金について一律に2%の増収を前提として同交付金を減ずる仕組みを見直した上で一定の削減を実施すること。
    3. 各法人の個別の教育研究プロジェクトに対する支援に当たって、大学の機能別分化を促進させる仕組みを導入するなど、現行の特別教育研究経費の区分や内容を見直すこと。
    4. 国立大学法人運営費交付金の一部の算定の際、国立大学法人評価委員会及び大学評価・学位授与機構の行った平成16~19年度の業務実績に係る評価の結果を反映させ、これに基づく配分を行うこと。
    5. また、各大学の個性に応じた意欲的な取組を支援する経費の配分対象となった取組の進捗状況を確認するほか、共同利用・共同研究機能に係る経費が配分されている施設の機能の発揮状況について検証、公表を行う。
2 組織・業務全般の見直し内容の中期目標・中期計画等への反映の確保

大学の自主性を考慮しつつも、第3における検討結果が各法人の作成する中期目標・中期計画の素案に具体的に反映されているか等を確認し、国立大学法人評価委員会の意見を聴いた上で、財政上の理由など真にやむをえない場合には、中期目標・中期計画の素案の修正を行うなどの所要の措置を講じる。


最後に、野依良治 国立大学法人評価委員会委員長所見をご紹介します。

国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて(平成21年5月27日 国立大学法人評価委員会委員長 野依良治)

1 本日、国立大学法人評価委員会は、文部科学大臣による「組織及び業務全般の見直しについて(案)」の審議を行いました。

「組織及び業務全般の見直しについて(案)」の内容は、1月27日に当委員会がとりまとめた「組織及び業務全般の見直しに関する視点」を基本的な内容とし、総務省政策評価・独立行政法人評価委員会からの「勧告の方向性」の趣旨も取り入れたものであり、本日の審議を経て文部科学大臣決定として各国立大学法人等に示されることになっています。

各法人におかれては、本日の審議を経て文部科学大臣から示される組織及び業務全般の見直しの内容を踏まえ、今後の大学の機能別分化の方向性や法人を取り巻く諸状況に留意した上で、自らが果たすべき使命や機能はどうあるべきかについて主体的に検討し、学長・機構長のリーダーシップの下で、必要な組織及び業務全般の見直しを真摯に行っていくことを強く求めたいと思います。

2 なお、総人口が減少期に入る局面において、現在、中央教育審議会でも大学の機能別分化や量的規模の検討がなされているところです。各法人における再編統合も含めた組織等の自主的な見直しを促すための財政的な仕組みを整えることも必要であると考えます。

3 今後、組織及び業務全般の見直しも踏まえて、各法人において第2期の中期目標・中期計画の素案が作成されることになっていますが、中期目標・中期計画は、国民が各法人の活動の方向性や取組内容を知るための重要な情報源でもあります。第1期の中期目標・中期計画の記載について、抽象的で具体性を欠いたものなど達成状況の判断に苦慮するものが見られたことから、次期中期目標・中期計画の検討にあたっては、適宜数値目標や目標達成時期等を盛り込んで記載の具体化を図ったり、計画の進捗状況の管理を適切に行う工夫をすることなどが求められます。

4 最後に、法人化して6年目を迎えますが、法人の基盤的経費である運営費交付金の削減等により、各法人を取り巻く環境は非常に厳しいものとなっています。各法人において、経費の削減等による経営の効率化、外部資金の獲得等に努めながら教育研究等に取り組んでいることは評価できますが、さらなる運営費交付金の削減は基礎的な教育研究への影響が憂慮されます。第2期以降も引き続き教育研究の質を維持向上してくためには、各法人における継続的な努力に加えて、公的資金の充実が喫緊の課題であることを、この機会に再度関係各位に強く求めたいと思います。

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