2009年7月5日日曜日

異文化理解

一人の地球人として自分が生きる日本以外の国々のこと、あるいはそこに生きる人々のことを考えるとき、健康で平和な暮らしをしてほしいと願うのは私だけではないでしょう。

世界には、政治、経済、文化、宗教など様々な違いの国と国民があり、残念ながら飢えや貧困と闘う人々がいます。また、独裁的政治体制の中で基本的な人権が守られず抑圧の中で生涯を終える人々もいます。

毎日のように報道される他国の様子を、自分のこととして考える、そして何か自分にできることはないだろうかと考えることは、平和な国に暮らす恵まれた私達がなすべき一つの国際貢献への第一歩のような気がします。

今日は、途上国の子ども達を伝染病から守るための取り組み、日本で生きるいわゆる「脱北者」の苦悩、そして、海外研修の経験を基に教科書だけでは学べない途上国の現状を伝える活動を行っている教師達の話をご紹介します。


ワクチン債(2009年6月29日 朝日新聞 論説委員室から)

途上国の子供たちを伝染病から守ろうと、ワクチンや予防接種を打つプロジェクト資金を賄う「ワクチン債」が静かなブームを呼んでいる。世界保健機関(WHO)や世界銀行の息がかかる国際調達機関「IFFIm」が発行する。

このプロジェクトを支えているのは、英仏伊など7ヵ国が20年分割で払い込む53億ドルの寄付だ。これを裏付けにして総額40億ドル規模の債券を発行し、まとまった資金を前倒しで調達する。この結果、ワクチンの大量購入が可能になった。それがまた大量生産につながり、価格が半値になるといった効果も出ている。

これまで世界で発行されたのは日本円にしてざっと2千億円分。うち800億円近くが日本で売られた。欧州などではもっぱら機関投資家が買うのだが、日本ではすべて個人投資家だ。購入層は60歳以上が中心で、女性も多い。

発行条件は普通の世銀債並みで格付けは最高のAAAだ。外貨建てなので、見かけの金利は高いものの、為替リスクがある。収益性や安全性だけでなく、「社会貢献を通じて満足感を得たい」という動機も働いているらしい。

日本の個人金融資産は1400兆円余り。そのうち100兆円以上が過剰貯蓄だとの推計がある。30兆円は「たんす預金」になっているともいわれる。

それらに比べると至極ささやかな動きだが、日本の個人マネーは「有意義な目的」さえあればもっと動く用意があることの表れだと考えたい。


あの国に生まれて(2009年7月1日 朝日新聞 論説委員室から)

北朝鮮から逃れて日本で暮らす「脱北者」は現在、百数十人いるとされる。60~70年代に帰還事業で渡った在日朝鮮人が中心だが、子どもたちの世代もいる。

大阪で会った彼女もそのー人だ。

中朝国境の町で18歳まで過ごし、中国での潜伏生活の後、3年半ほど前に日本にたどり着いた。夜間中学などで学び、この春、大学進学を果たした。

入学早々「ミサイル発射」騒ぎがあった。続いて核実験。彼女はまだ、学生仲間に出身地を打ち明けられずにいる。

北朝鮮というだけで、何もかもバッシングする空気がある。脱北者だと自己紹介した途端、「スパイだ」「こわい人」と誤解されるのではないか。そんな不安が先に立ってしまうという。

金正日体制を擁護するつもりはさらさらない。庶民には、本当のことは何も知らされない国だった。物心ついて以来、「戦争だ、戦争だ」と軍事訓練が繰り返されていたのも、いやな記憶だ。

でも、あの国で生まれたことを恥ずかしいとは思わない。歌が好きだったり一時期やんちゃをしたりと、少女時代の普通の思い出もある。北朝鮮の子どもがみなガリガリにやせているわけでもない。

日本の若い友人たちに、そんなことをいつかわかって欲しいと思う。

うわさされる「後継者」とは同い年の26歳。日本で生きる北朝鮮人の葛藤を、リ・ハナの筆名でつづったブログは「アジアプレス・ネットワーク」のサイトで読むことができる。

(参考)リ・ハナの一歩一歩
http://www.asiapress.org/apn/archives/0001/1079/index.html


途上国の現状 学生に伝える 海外研修参加の教師ら公開講座(2009年7月4日 読売新聞)

国際協力機構(JICA)が実施している教師の海外研修に参加した県内の教員が集まる「海外経験・素材を広める教師の輪」が、高校生や大学生向けの公開講座を開いている。アジアやアフリカの学校の様子を映像を交えて講演したり、テーマを出して討論してもらったりする。教科書だけでは学べない途上国の教育の現状を知ってもらうことで、受講生たちにも海外支援について考えるきっかけにしてもらうのが狙いだ。・・・