2010年1月18日月曜日

国立大学法人の在り方の検証

社会的なインパクトが大きかった行政刷新会議による事業仕分け。今度のターゲットは「独立行政法人の抜本的見直し」のようですが、実は、国立大学法人も、独立行政法人通則法が適用(準用)されているれっきとした独立行政法人なのです。

国立大学法人は、教育研究の特性を踏まえ、独立行政法人通則法に基づく独立行政法人ではなく、国立法大学法人法に基づく独自の法人として設置されていますが、一方で、公共上の見地から確実に業務を推進する必要があり、国が設立し、財源措置が国に義務づけられている法人でもあり、かつ、その運営に当たっては法人の自主性が十分に尊重されるべきという枠組みでは独立行政法人制度と共通する部分もあることから、国立大学法人制度に固有の特例を必要としないものについては、独立行政法人通則法の規定が準用されることになっています。

今回の独法見直しに関する閣議決定(後記)を見る限りでは、見直しの対象にはなっていないようですが、今後どのような展開が待ち受けているか油断はできませんし、現に、去る1月8日(金曜日)の全国の国立大学長が集まった会合では、文部科学省から、国立大学法人の在り方については、国立大学法人評価委員会が次のようなスケジュールで検証を行うとの説明がなされたようです。
  • 有識者からの意見聴取(1月下旬以降)
  • 国立大学法人評価委員会における検証作業(1月下旬以降)
  • 全国国立大学法人からの意見聴取(2月上旬以降)

確かに、昨年末の事業仕分けでは、国立大学法人の運営費交付金に関する議論の焦点が「国立大学法人の在り方」にシフトしたような気がします。仕分けの取りまとめ役の枝野幸男衆議院議員からは「果たして国立大学は法人化して良かったのか」といった法人化そのものの意義について言及がありましたし、「多くの文部科学省の役人出身者が各大学に出向(世間では天下り)している」ことや、「まだまだ予算削減の余地はあり、経営努力が足りない」などの厳しい指摘もあったような気がします。

今回の文部科学省(国立大学評価委員会)の検証が、こういった事業仕分けにおける厳しいご指摘に影響されたものなのかどうかはわかりませんが、いずれにしても、間もなく第二期中期目標期間に突入する国立大学にとっては、第一期における様々な反省等も踏まえ、ふんどしのひもを締め直すいい機会なのかもしれません。


前述の学長会議において配付された「独立行政法人の抜本的見直しに関する動向(参考資料)」から抜粋してご紹介します。

1 独立行政法人の抜本的見直しについて(平成21年12月25日閣議決定)

●現在、優先度が高い独法についても事業仕分けを実施。この成果を踏まえつつ、年明け以降、独法の抜本的な見直しを実施。
(見直しのポイント)
1 基本姿勢
-全独法の全事務・事業について、国民的視点で、実態を十分把握し、聖域無く厳格な見直し
-独法制度自体の根本的見直しも含め、制度の在り方を刷新
-事業仕分けを通じて明らかになった組織、制度などの課題に取り組み、結論を得たものから順次速やかに実行
2 見直しの視点
-事務・事業の抜本的見直し
-独立行政法人の廃止・民営化等
-組織体制及び運営の効率化の検証
●内部ガバナンスについて法整備を行う

(関連事項)
●独立行政法人整理合理化計画(19年12月24日閣議決定)
-当面凍結し、抜本的な見直しの一環として再検討。ただし、随意契約及び保有資産に係る事項は見直しを継続。
●国の行政機関の定員の純減計画(18年6月30日閣議決定)の扱い
-計画上予定されていた新たな独法化案件による純減を除き継続。
●不要資産の国庫返納
-基金等の国庫返納ができるよう、速やかに通則法改正。

2 独立行政法人ガバチンス検討チーム

21年11月以降、行政刷新担当大臣の下、「独法ガバナンス検討チーム」を設置し、独法のガバナンスの在り方を検討。

3 研究開発法人の機能強化検討チーム

21年12月、研究開発を担う法人の機能強化検討チームを設置し、「国立研究開発法人」制度等について検討中。
-関係府省(内閣府、総務省、財務省、文科省、厚労省、農水省、経産省、国交省、環境省)の副大臣がメンバー。
-その他、21年11月に総合科学技術会議に「研究開発システムWG」が設置され、今後、検討する予定。


最後に、さほど関係はないと思いますが、これまで、総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会が行ってきた二次評価(国立大学法人評価委員会が行った国立大学法人の業務の実績に関する評価の結果についての意見)を年度ごとにご紹介します。

平成16年度
  • 学長・機構長のリーダーシップを発揮させるための各法人における運営体制の整備や、学長・機構長裁量の経費・人員枠の確保等の状況について把握し評価しているところであるが、今後は、これらの体制や仕組みが法人運営においてどのように機能を発揮しているかという観点からも各法人の状況を把握し評価を行うべきである。

  • 業務運営や財務内容の改善について評価を行う際には、財務諸表等の分析結果を積極的に活用するとともに、経常損益・当期損益の主な内容・要因や経費節減に係る財務上の改善状況等について把握・分析した上で評価を行うべきである。また、今後は、これらを含めた重要な財務情報等についての経年比較を行った上で評価を行うべきである。

  • 国立大学法人の運営において財務上大きな比重を占める附属病院の財務状況については、病院における教育研究診療が一体的に行われている実態にも留意しつつ、業務費用の主要な内訳を把握することが求められること、また、現状では、費用計上の内容も法人間で異なっており、各附属病院間における比較が可能となるよう費用に関する情報を適切に把握することが求められることから、これらの情報を把握・分析した上で評価を行うべきである。

  • 「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」(平成17 年6月21日閣議決定)において、公的部門全体の人件費を抑制することとし、こうした取組を通じ、法人に対する運営費交付金等を見直すこととされ、現在、各方面で議論が行われているが、今後の議論の動向も踏まえて、必要な評価を行うべきである。

平成17年度
  • 学長等による経営方針の明確化等の取組については、経営体制の効果的運用に関して注目される取組として評価した法人の取組も含め、各法人の実態や当該経営方針等の性格に留意しつつ、当該取組の進捗、機能発揮や見直しの状況等について継続的に評価を行うべきである。

  • 法人の実施している戦略的な資源配分の成果の事後チェック及び配分の見直しに関し、今後、法人の実施体制等の整備状況とその機能の発揮状況について継続的に把握し評価を行うべきである。

  • 経営協議会については、会議運営規則、議事要旨(議事録)及び法人運営に活用された指摘事項の具体例に関する資料を基に、必要に応じてヒアリングでの追加確認を行いつつ、その運営の合規性と活性化の状況、指摘事項の法人運営への活用について評価を行っている。法人運営における経営協議会の重要性を踏まえ、継続的にこのような評価を行うべきである。

  • 財務情報の活用については、各法人の財政規模、収支構造に着目して分類し、主要な財務指標について法人間比較と法人ごとの経年比較を行っている。また、法人ごとの経年比較結果については、財務内容の改善に関する取組等の評価の客観的裏付けとして活用しているところであり、今後、引き続きその充実を図るべきである。なお、昨年当委員会が指摘した各附属病院間における比較を可能とするための費用に関する情報の適切な把握については、会計基準等の改訂により対応がなされているが、今後、比較可能性をより高めるため、収益、資産等に関する情報についても適切に把握・分析した上で評価を行うべきである。

  • 法人運営に影響を及ぼすおそれのある各種事項に対する危機管理について、全学的・総合的な対応体制の整備状況について評価しているが、今後、引き続き予防的観点にも着目した危機管理についての評価を行うべきである。

  • 「行政改革の重要方針」(平成17年12月24日閣議決定)の総人件費改革の実行計画を踏まえ、各法人は中期目標に人件費削減の取組を記載するとともに中期計画に削減目標を設定している。国立大学法人評価委員会は、平成17年度の評価結果において、各法人に対し、今後、中期目標・中期計画の達成に向け、着実に人件費削減の取組を行うよう促しており、平成18年度以降は、その取組の進捗状況について評価を行うべきである。

  • 公的研究費の不正使用等の防止のため、総合科学技術会議が示した「公的研究費の不正使用等の防止に関する取組について(共通的な指針)」(平成18年8月31日)等に沿った、体制整備、ルールの整備・明確化等の取組状況についての評価を行うべきである。

  • 随意契約により実施している業務については、国における取組(「公共調達の適正化について」(平成18年8月25日付け財計第2017号。財務大臣から各省各庁の長あて。))等を踏まえ、各法人における一般競争入札の範囲の拡大、契約の見直し、契約に係る情報公開等についての取組状況等についての評価を行うべきである。

平成18年度
  • 各国立大学法人の中期目標の前文には、各国立大学の理念等である基本的な目標が記載されている。貴委員会は、各大学の基本的な目標の達成に向けた取組状況の評価に取り組んでいるが、その評価結果の説明には法人ごとに差異があり、大学の基本的な目標との関係においてどのような評価が行われたのか分かりにくいものもみられる。今後の評価に当たっては、各国立大学法人の基本的な目標の達成に向けた取組状況について、引き続き積極的に評価を行うとともに、評価の結果を分かりやすく説明するよう工夫すべきである。

  • 貴委員会は、本年度評価より、研究費の不正使用の防止のための体制・ルール等の整備状況についての評価を行っているが、その後も一部の国立大学法人において公的研究費の不正使用が発覚している例があることなどを踏まえ、公的研究費の不正使用の防止のための取組状況について、引き続き評価を行うべきである。

  • 随意契約の適正化の一層の推進について、政府全体で取り組んでいることにかんがみ、一般競争入札の範囲の拡大、契約の見直し、契約に係る情報公開等についての取組状況について、引き続き評価を行うべきである。

  • 国立大学法人会計基準の実務上のガイドラインに当たる「「国立大学法人会計基準」及び「国立大学法人会計基準注解」に関する実務指針」の改定により、財務諸表において開示すべき国立大学附属病院(以下「附属病院」という。)のセグメント情報については、平成18年度から物件費について診療経費と一定の教育研究経費とが区分され、更に19年度からは教員人件費についても各教員の勤務実態に応じて附属病院と医(歯)学部との切り分けが行われることを踏まえ、今後の評価に当たっては、従来にも増して、一般診療部門における経営の効率化の進展状況、経営努力が十分に行われているかといった点に着目した評価を行うべきである。

  • 各附属病院において、国立大学病院管理会計システム(HOMAS)又はこれに類する会計システム(以下「HOMAS等」という。)が導入されたことにより、従前に比べて附属病院の経営に係る分析手法及びHOMAS等により得られる各種統計データが整備されつつある。こうしたことを踏まえ、今後の評価に当たっては、附属病院を置く各国立大学法人が、例えば、HOMAS等により得られたデータを基に他の附属病院との比較検討による経営分析を行うなど、各種統計データ等を活用して附属病院経営の効率化に向けて取り組んでいるかといった点に着目した評価を行うべきである。

  • 大学共同利用機関法人の「外部研究資金その他の自己収入の増加」の評価において、「競争的研究資金の増加を目指す」との年度計画に対して、申請件数の増加に関する取組及びその数のみを注目される取組として評価結果に取り上げている例があるが、今後は年度計画の達成状況を評価するという観点から、申請の結果についても確認し、併せて評価すべきである。

  • 大学共同利用機関法人の共同利用・共同研究の評価結果においては、共同利用・共同研究者数や国内外の大学・研究機関の参加実績数値が記載されているが、それに基づき、どのように評価したのかが分かりにくいことから、今後は、その数値を踏まえ、法人の設立目的に照らした適切な運営が行われているかについて評価を行うべきである。

  • 中期目標期間開始以降、大学共同利用機関の組織・業務の統合による事務の一元化の取組による業務の効率化が期待されているが、その取組状況について、できる限り定量的に評価を行うべきである。

平成19年度
  • 公的研究費の不正使用の防止のための体制・ルール等の整備状況についての評価を行っているが、一部の国立大学法人において公的研究費の不正使用が発覚している例があることなどを踏まえ、公的研究費の不正使用の防止のための取組状況について、引き続き評価を行うべきである。

  • 法人運営に影響を及ぼすおそれのある各種事項に対する危機管理について、全学的・総合的な対応体制の整備状況について評価しているが、一部の国立大学法人において薬品管理等に係る法令違反が発覚している例があることなどを踏まえ、引き続き、各国立大学法人等が整備した危機管理に係る全学的・総合的な対応体制の運用状況について評価を行うべきである。

  • 随意契約の適正化の一層の推進について、政府全体で取り組んでいることにかんがみ、一般競争入札の範囲の拡大、契約の見直し、契約に係る情報公開等について評価を行っているところであるが、今後の評価に当たっては、国立大学法人等が作成した随意契約見直し計画の実施状況についても評価を行うべきである。

  • 昨年度当委員会が指摘した附属病院に関する評価については、収入増やコスト削減の取組における数値目標の設定状況、国立大学病院管理会計システム(HOMAS)又はこれに類する会計システム等により得られた各種統計データの活用状況を把握し、病院管理運営に関する実績等の評価を行っており、一部の法人に注目される取組がみられる。今後の評価に当たっては、国立大学法人会計基準の実務上のガイドラインに当たる「「国立大学法人会計基準」及び「国立大学法人会計基準注解」に関する実務指針」の改訂により、より実態に即したセグメント情報の把握が可能になったことを踏まえ、引き続き、先進的な取組を行っている附属病院の例も参考にしつつ、各附属病院の経営効率化の取組を促進する観点から評価を行うべきである。

平成20年度
  • 経営協議会については、議事要旨(議事録)及び学外委員の意見を法人運営に活用した具体例に関する資料等を基に、必要に応じてヒアリングでの追加確認を行いつつ、その運営の合規性や、学外委員の意見の法人運営への活用について評価を行っているが、法人が提出した資料や評価結果からは、学外委員の意見をどのように法人運営に活用したのかが分かりにくいものもみられる。今後の評価に当たっては、国民の幅広い意見を法人運営に適切に反映させる役割を持つ経営協議会の重要性にかんがみ、経営協議会が期待される役割を十分に発揮しているか明らかにする観点から、学外委員の意見の法人運営への一層の活用について、その情報の公表状況も踏まえ、評価を行うべきである。

  • 情報提供については、現在、各大学が公開することが必要と考えられる項目や方法を定めた指針の策定に向けて中央教育審議会で議論が行われているところであり、今後の議論の動向も踏まえて、国民に対する説明責任を十分に果たす観点から必要な評価を行うべきである。

  • 公的研究費の不正使用の防止のための体制・ルール等の整備状況についての評価を行っているが、一部の国立大学法人において公的研究費の不正使用が発覚している例があることなどを踏まえ、今後は、各国立大学法人等が整備した公的研究費の不正使用の防止のための体制・ルール等の運用状況についても評価を行うべきである。