2010年1月27日水曜日

自分の大学の歴史を知る

私立大学に勤める事務職員と国立大学に勤める事務職員との違い、私のつたない経験から申し上げれば、同じ大学事務職員でも様々な意味で違いがあるように思えます。その代表的なものに「帰属意識」があるのではないでしょうか。

これまで、機会を捉えていろんなSD・FDセミナーに参加し、有識者や経験者の方々のお話を聞いてきましたが、そういった活動の中心となっているのは、ほとんどが私立大学の事務職員の方々です。

何がそうさせているのか、なぜそうなっているのか、一概に断定することはできませんが、私が思うには、私立大学の事務職員には、「建学の精神」という崇高な理念の下に、教育研究はもとより大学経営を担っているという責任感と自負心があり、日々大学や学生のために緊張感を持って懸命に自らのキャリアアップを目指した努力を重ねているという姿があります。

一方、国立大学の事務職員は、親方日の丸の庇護の下、努力してもしなくてもなんら変化の無いモチベーションの低い職場で相変わらず役人仕事に追われているという姿。(やや誇張であり、もちろん全ての国立大学事務職員がそうではありませんが)

したがって、当然ながら、知識・経験・能力、そして活力面において格段に差が開いているということではないでしょうか。

以前から感じていたことですが、国立大学には、自分の勤める大学、生活の糧である職場がどのような成り立ちで、どのような歴史を辿ってきたのか、独自の文化や特色はどういったものかなどについて知らない、もっと言えば無関心な事務職員が多すぎるような気がします。これは教員にも当てはまることです。

大学には、その大学を紹介するパンフレットが用意され、その中に必ずといっていいほど「大学の沿革」が書かれてあります。この沿革が頭の中に入っている、説明できる事務職員は、残念ながらほとんどいないといっても過言ではありません。(企業の方には不思議に思えるかもしれませんが)

長い間、文部科学省に附属する行政組織(国の出先機関)として生きてきた、身分は公務員、大学が潰れるといったことを全く考える必要がなかった国立大学の事務職員も、6年前の法人化によって、大学の経営に責任を持たなければならない立場に立たされました。その自覚と自分の大学を愛する心=帰属意識を持つことが今最も求められているように思います。

今、明治大学(東京都千代田区)で、約60の国立、私立大などから創設当時の校舎の写真や設立趣意書、制服など111点を集め、日本の各大学が幕末から現代まで、どんな時代を背負って生まれてきたかをたどる全国大学史展「日本の大学-その設立と社会-」が開催されているそうです(2月14日まで無休。無料)。主催者によれば、こういった「大学横断の歴史展」は初めてだそうですし、「大学の在り方が問われる今、その原点を見つめなおす機会」になればとの期待にも応え得る素晴らしい成果を収めることでしょう。

大学によっては、大学の位置する地域の名前を冠した「○○学」といった講座を開設し、学生や地域社会の方々へ提供しているところもありますし、高等教育学の一つとして当該大学の歴史を研究されている大学もあります。

これからは、日本の大学、あるいは自大学の歴史・伝統・文化について学ぶ機会を、事務職員研修のメニューとして位置づけ、大学という組織の一員としての帰属意識を高める取り組みを進めていくことも大事になっていくような気がします。