2010年2月11日木曜日

国立大学法人への市場化テストの導入・第2弾

先日のこの日記で、現在、内閣府において国立大学法人への市場化テストについての検討が行われていることをご紹介しました。
http://daisala.blogspot.jp/2010/01/blog-post_4764.html

国立大学では法人化以降、取り巻く厳しい財政状況、中でも毎年の人件費削減に対応するため、組織・業務のスリム化とともに、経費削減・省エネ対策など懸命な努力が続けられています。

こういった取り組みの有効な方策の一つとして「市場化テスト」を国立大学法人が、内閣府における検討の結果を待つまでもなく、自ら主体的に検討し可能な部分から導入していくことは、大学経営の健全化のみならず、”税金の無駄遣い”防止の意味からも大切な事ではないかと思います。


去る2月2日(火曜日)に、内閣府の「官民競争入札等監理委員会公共サービス改革小委員会国立大学法人分科会」は、東京学芸大学、一橋大学から、当該大学の経営改善状況と施設管理運営業務、図書館運営業務の現状と課題についてのヒアリングを行いました。

公表された資料の中から、議論のポイントと委員から出されたコメントを抜粋してご紹介します。

議論のポイント(両大学共通)


経営改善の取組状況について
  1. 運営費交付金以外の計上収益の見通しはどうなっているのか。

  2. 一般管理費等経常経費を削減するためにどのような方針を持っているのか。
図書館運営業務の現状について
  1. 本年度、公共サービス改革法に基づく官民競争入札を行ったアジア経済研究所図書館、ジェトロビジネスライブラリーの場合、以下に掲げる業務(略)を入札対象範囲としたが、これらの業務について、貴学の場合は正規職員が行っているのか、非常勤職員や学生アルバイト等が行っているのか。

  2. 従事者数が○○人というのは、日常的に○○人の体制で業務を行っていると言うことか。その中で非常勤職員や学生アルバイト等は何人ぐらいか。

  3. 時間外開館の場合に外部委託している業務は、時間内の場合でも外部委託が可能ではないか。これらの業務は非常勤職員や学生アルバイトで対応しているのか。

議論のポイント(東京学芸大学)


施設管理運営業務の現状について
  1. 小金井団地の随意契約の内容は何か。

  2. 竹早団地の随意契約の内容は何か。

  3. エレベーターの保守契約をメーカー毎に行っているのは是正すべきではないか。

  4. 植栽は、特定の造園業者と長年にわたって契約する状況となっていないか。契約相手と契約金額が分る資料を明らかにしてもらえないか。

  5. 中小企業を含めた新規参入者の増加を図る観点は重要であるが、官公需についての中小企業の受注の確保に関する法律により、東京学芸大学が文部科学省や国の行政機関から特定の指導を受けているのか。

  6. 包括的発注を行うために中心となる企業が様々な中小企業を含めたコンソーシアムを組むという契約形態が存在するが、そのような方法を含めて検討すべきではないか。

  7. 清掃や管理業務、施設警備で単年契約を繰り返しているということは、それを管理監督するマネジメントの作業を外部委託できておらず、その分の仕事を正規職員が抱え込んでしまっていると言うことではないか。

  8. 外部の侵入者が児童生徒に危害を加える事態を想定して警備を外注するためには、どのような工夫が考えられるか。

  9. 中央省庁の少額随契が100万円以下とされているのに対し、東京学芸大学が500万円以下の基準というのは額が大きすぎるのではないか。
図書館運営業務の現状について
  1. 資料(古書)修復劣化対策業務とは、具体的にどのような業務なのか。また、この業務の一括発注が困難と助言した業者はどのような業者なのか。

  2. 中央省庁の少額随契が100万円以下とされているのに対し、東京学芸大学が500万円以下の基準というのは額が大きすぎるのではないか。

議論のポイント(一橋大学)


施設管理運営業務の現状について
  1. 平成19年度に国立キャンパスの建物設備保全業務と警備業務を包括化して入札を行ったところ、個々の契約に比し割高になったとのことであるが、一般論として、包括契約にしたほうが個々の契約より安価にあると考えられるが、一橋大学の場合に割高となった原因はどのように分析されているのか。

  2. 複数年契約は2年が適切と考えているのか。3年、5年等、どのように契約期間を考えるべきと捉えているか。

  3. 施設管理を総合評価方式によらず、個々の業務について価格競争方式の一般競争入札としているが、質の悪い業者を排除するためにどのように工夫しているか。

  4. 神田キャンパスについて、国立情報学研究所(主担当)や他機関が契約の包括化や複数年化に同意した場合は貴学も同意すると考えてよいか。

  5. 貴学の少額随意契約の上限はいくらか。

委員等のコメント


東京学芸大学
  • 各種の施設管理業務を包括化して、コンソーシアムを組む大きな企業体に包括的に発注すると、最初は全体のマネジメント部分を上積みして見積価格を提示してくるので個別業務よりも高くなるものだが、企業側と費用削減のための直接交渉をきちんと行えば、当初の個別発注よりも低い価格に落ち着くもの。

  • 施設管理業務の包括化・複数年度契約のメリットは、1)費用を1割から2割削減できること、2)全体の事務の流れとそのマネジメントの仕方が明らかになり効率的な管理が可能となること、3)個々の職員にコスト意識が芽生えること。

  • コピー機のレンタルの一括発注は費用削減効果が大きいし、さらにコピー機(物品)の調達から「コピー機能(役務)の調達」へと根本的に契約内容を変えて効果をあげた事例もある。貴学では既に行っているのか否か?

  • 私立大学の経営の場合、付属の小学校等の経営改革を行うと大学全体の経営改善に効果が出るが、国立大学の場合も付属の機関の経営努力が大学の経営改善につながる仕組をつくることはできないのか。

  • 「教育系大学は、総人件費の抑制を求めると、生徒数相応の教師が必要な付属学校の人件費の削減が困難なために、大学本体の人件費を更に削減しなければならなくなるという問題を抱えている」との説明は理解する。

  • 国立大学法人として経営改革を行うためには、経営協議会の活性化が不可欠である。また、そこにビジネスのわかる人が入ると改革が進む。

  • 経営改革には内規の見直しの視点も重要。東京大学の経営改革の際に、改革を行おうとすると「内規があるのでできない。」と職員にいわれることがあった。だが、その内規の中身の多くは法人化前と同じもので、法人化前はきちんと法律の根拠があったものの、法人化後は法律の根拠のない内規にすぎないということもよくあった。

  • 「官公需についての中小企業の受注の確保に関する法律」は、中小企業が包括化契約のコンソーシアムの一部である場合も中小企業の参加を実績としてカウントしてくれるのかを確かめる必要がある。国鉄改革の際には、当局が経営危機に直面した国鉄にコストの高い中小企業の受注を義務付けようとしたことに対して異議を唱えた前例があるので、大学も経営状況が厳しいのであればその旨を当局に明確に伝える工夫も考えた方がよいのではないか。

  • 「中央省庁の少額の随意契約の上限が100万円であることに対し、貴学の上限が500万円であるのは見直しが必要ではないか」という内閣府の指摘に対し、合理的な理由があるのであれば明確にした方がよいのではないか。

  • 「エレベーターの保守契約をメーカーと行うのは是正すべきでは」という内閣府の指摘に関しては、メーカーは必ずメーカーが管理した方が安全である、と大学の契約担当者に主張してくる。契約担当者は事故の際の責任問題を恐れるので、最終責任は担当者にではなく大学にあることを明らかにして担当者の負担に配慮すること、メーカーも入れた一般競争入札とすることが重要であり、そうすれば価格は下がるもの。

  • 清掃業務等が個別に単年度契約となっているのは一括した契約を検討すべきではないか。

  • 図書館業務については、「利用者の教育」機能等としてすべての業務に大学としての専門性を求めるのではなく、大学固有の維持すべき機能を選別すること、また、正規職員が行うべきとしている業務は本当に民間にノウハウが無いのかを確認することが重要。

  • 大学施設を外部企業や試験、映画等の撮影等に貸し出す試みはどの程度行っているのか。

  • 飲料販売機の設置が複数の企業で行われている場合は大学に何のメリットもない。一旦、すべての関係をキャンセルし、一括導入の入札を行うべきである。入札では大学側から様々な飲料等の要求も可能であるし、企業側が契約更改の場合の資金提供等を申し出てくることもある。生協との関係が問題となる場合は、生協を入札に参加させることも考えられるのではないか。

  • 教育関係の大学としては寄付金等収益が大きいがどのような努力がなされているのか?

  • 教育研究の充実が重要な一方で、人件費や一般管理費が増大し、運営交付金も見直し対象となる厳しい環境の中でご苦労されているが、これからも経営の効率化のための見直しを進めていただきたい。

一橋大学
  • 通常、大学運営においては学部自治が優先しがちであるが、学部の壁を越えた一括契約が進んでいることは非常に先進的事例であり、模範である。先進的な経営改善を更に進めていただきたい。

  • 多くの寄附金を集め、大学の規模からしても非常に大きな基金を設けているのが顕著であるが、どのように集めているのか。

  • ハーバード大学等海外では多額の寄附金を「基金」として運用し、その収益で様々な活動を行っているが、日本の国立大学法人の場合、法人法上そのような「基金」の位置づけがなく、法人化してもなお資金運用の自由度が小さい。貴学のような「基金」に関しては、より自由な運用が可能となるよう制度の見直しが必要ではないか。

  • 平成19年度の委託契約に際し、業務を包括化したところ割高になったとのことであるが、民間事業者も当初は管理的経費を多く見積もり高額になることが考えられるものの、「さらにもう一度」と相手を揺さぶって個別経費をチェックする等の業務仕様の工夫により、安価な契約とすることは十分可能である。さらなる検討が必要ではないか。

  • ソーラー・パネルの設置は体育館等設置場所を拡大すると長期的に節約となるものではないか。

  • 図書館業務の外部委託の期間が単年となっている理由が、毎年違う学年暦に対応する必要があるためとのことであるが、開館日数などの基本的な仕様で契約した上で、毎年休館日を設定するなどの対応により、複数年契約は十分可能であり、検討すべきではないか。

  • 夏休みや日曜日等に試験、企業や映画撮影に施設を貸し出す取組はどの程度行われているのか。

  • 神田、小平において同じ建物、同じ敷地に所在する他機関との共同契約が行われているが、これらをさらに進めて、他の機関や他の業務にも拡げることが可能ではないか。

  • 「中央省庁の少額の随意契約の上限が100万円であることに対し、貴学の上限がそれを上回る場合は見直しが必要ではないか」という内閣府の指摘に対し、合理的な理由があるのであれば明確にした方がよいのではないか。

  • 経営の効率化に関し、多くの先進的な取組を進められている。大学の教育研究を充実させるためにも、市場化テストの手法も含めて、これらの先進的取組を検討、推進頂きたい。