2010年4月1日木曜日

ミンダナオの希望

まさか、フィリピンの紛争地でこんな人に会うとは思ってもいなかった。
南部ミンダナオ島マギンダナオ州。反政府イスラム武装勢力と比国軍が激しく対立する地域である。
関係者への取材をしている時、日本大使館の担当者が奥地の村に出かけることを知った。学校の教室を建てるための現地調査だ。同行させてもらった。
一行を現地で待っていたのが松居友(まついとも)さん(57)だ。NGO「ミンダナオ子ども図書館」の代表として、紛争で親を亡くした孤児や、貧しい家庭の子供たちに奨学金を出して学校に通わせている。
村へ入った。警護役の比軍兵士が銃を手にピリピリしている。ところが松居さんは、自分の車の運転席から「ハロー」と村人に手を振りながら、笑顔であいさつしている。村人も松居さんだけに手を振ってこたえる。
「子供たちへの支援を積み重ねたおかげで、村人が私を信頼してくれている。だから、こわさは感じません。身を守るためにはこれが一番でしょう。」
以前は絵本の編集者だった。10年近く前にたまたま訪れた島で、紛争に打ちひしがれた子供たちの姿を見て、そのまま居ついてしまった。絵本の読み聞かせ活動を続けながら約80人の子供と起居を共にしているという。苦境にある子どもたちに大きな希望を与える仕事だ。
日本での支援を広げるためNPO法人の認定を得る準備を始めた。息の長い支援を期待したい。(2010年3月30日 朝日新聞 論説委員室から)