2011年1月31日月曜日

大学の経営基盤強化

去る1月19日(水曜日)に開催された中央教育審議会大学分科会の資料「審議経過と更に検討すべき課題」の中から「教育研究機能の充実のための組織・経営の基盤強化について」に関する記述を抜粋してご紹介します。

全文をご覧になりたい方はこちらをどうぞ
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/houkoku/1301944.htm

教育研究機能の充実のための組織・経営の基盤強化について


教育研究機能の充実のための組織・経営の基盤強化について、これまでの成果を踏まえながら、さらに具体的に検討する必要がある。

(組織・経営基盤の強化に関し検討を要する事項)
  • 国公私立のそれぞれの設置形態において、大学・法人としてのガバナンスを強化していくための具体的検討。

  • 国公私立を超えた大学間連携、地域の産業界や公的セクター等との連携。

  • 組織基盤の強化に向けた大学職員の専門的資質の一層の向上。そのための大学を支援する団体、大学間連携による研修支援や、大学院の課程や履修証明プログラムのような大学教育を通じた研修。

  • 大学の主体的判断を促す情報提供の仕組みの整備。

    • 国は、各大学の自主的・自律的な取組を支援し、地域別・分野別の設置認可の動向や、人口当たり学生数の状況(分野別・学位段階別・地域別)等の各種の情報提供のための仕組みを整備。

    • 大学を支援する団体が、大学の教学・組織・経営に関する情報を整理・分析し、大学がそうした情報を活用。

  • 公財政に関し、1)基盤的経費、2)国公私立大学を通じた教育改革の支援、3)学生への経済的支援を通じた財政基盤の確立。また、大学の規模・分野等の多様性を踏まえつつ、機能別分化に対応したファンディング。

  • 各大学への経営相談等を充実。各大学が、自主的・自律的な機能別分化を通じて、それぞれの有する分野・機能に関し、自立・発展,連携・共同、撤退等の方向性を早期に判断できるよう支援。また、そのための支援体制の整備。

知識基盤社会において、大学は、社会の持続的な発展と成長に不可欠の存在であり、とりわけ、大学を取り巻く環境の変化や、多様化する社会的課題と要請にこたえていくことが求められる。そのためには、大学に求められる役割・機能を再認識した上で、大学教育の質の保証・向上を図り、その教育研究機能をより効果的に発揮できる環境や、意欲と能力がある者が安心して学ぶことができる環境を整備し、より発展的な大学改革を促進するため、大学の組織・経営に関する基盤強化を図ることが不可欠である。

この課題に関する論点のうち、これまで議論されているもののうち主なものは以下のとおりである。

大学の組織・経営を支える専門性の高い人材の育成

大学の組織・経営に関する取組を戦略的に進めるには、学内の各方面にわたり、専門性の高い人材を養成・確保することが不可欠である。学内で大学職員に求められる資質能力が多様化・高度化する中で、例えば、経営企画、学生支援・キャリア支援、留学生・国際関連業務、産学・地域連携といった各方面における職能開発が課題となっている。また、財務・教学等の従来から見られる分野でも、職務において期待される内容・水準が大きく変化している。

こうした職員の養成や職能開発に当たっては、各大学でのSD(スタッフ・ディベロップメント)が活発になっているが、その職員の所属する学内のみで対応するのにとどまらず、大学を支援する団体や大学間連携による研修支援、大学院の課程や履修証明プログラムのような大学教育を通じた研修により、複数大学の知見を生かしていくことが求められる。

大学の主体的な経営判断に資する情報の提供

国は、大学の量的規模や、大学教育を通じた人材需給見通しなどの情報を収集・整理し、各大学の経営判断に資するよう提供することが求められる。例えば、大学設置に関する地域別・分野別の動向や、人口当たり学生数の状況(分野別・学位段階別・地域別)等の情報の恒常的な公表が考えられる。

あわせて、大学を支援する団体は、各大学による教学・組織・経営に関する情報の公表・公開が次第に進んでいることを踏まえ、こうした情報を分かりやすく整理・分析し、大学に提供していくことも求められる。

公財政を含む大学財政の基盤の確立

大学は、新しい時代の変化や社会的要請にこたえ、多様かつ広範な分野にわたる学術研究を総合的に行い、人類の知的資産となる新しい知識と技術を創造・蓄積するとともに、それを踏まえた教育活動を通じて、次代を担う人材を養成するなど、本来的な使命を持っている。こうしたことから、大学教育は、学習者個人だけがその便益を受けるのではなく、現在・将来の社会も大学教育に多くを依存している。

国から大学への財政支援としては、
  1. 大学の教育研究活動を継続的・安定的に支える基盤的経費(国立大学法人運営費交付金、施設整備費補助金、私学助成等)、

  2. 公私立大学を通じた競争的な環境下で、大学の組織的な教育改革に関する新たな取組や、社会的要請に対応した取組への財政支援、

  3. 奨学金等の学生に対する経済的支援
が挙げられ、加えて、教員個人の研究活動に対する科学研究費補助金や、国家的課題に対応する研究プロジェクトへの支援等が行われている。大学への財政支援に当たっては、これらを総合的に展開し、全体として効果を上げることを基本とすべきである。

基盤的経費と、国公私立大学を通じた大学教育改革に関する支援は、両者あいまった支援方策(デュアル・サポート)として、教育の質保証・向上や、個性・特色の明確化と、機能別分化を促すために重要な役割・機能を果たしている。引き続き、それぞれの支援を通じた成果や、事業の効率的・効果的な実施に関し検証と必要な見直しを行いながら、大学教育の質の保証・向上に取り組むことが求められる。

その際、自主的・自律的な存在である大学は、大学への公財政支出が、大学としての機能の効果的な発揮を求めて、国民から負託されたものであることを自覚し、大学の教育研究への影響を含めた評価・検証等を行い、その成果を活用し、大学の経営改善を図りながら、その資源を適正に管理し、最大限有効に活用することに留意する必要がある。

なお、我が国では、高等教育への公財政支出の対GDP比が、国民負担率(租税負担率+社会保障負担率)の低さや、少子化の状況を加味しても、国際的に低く、その一方、私費負担の割合が多い状況にある。そうした中で、我が国の大学財政における公費と私費の負担の在り方をどう考えるか、今後、短期的な観点のみならず、中長期的な観点から検討を進めていく必要がある。

大学への財源としては、国・地方公共団体からの支援や学生納付金とともに、民間企業や個人等からの寄附金・委託費や付属病院収入・事業収入等の自主財源を確保し、財源を多様化していくことも、経営基盤の安定化に寄与し、大学の社会貢献を一層促すためにも有効である。各大学・法人が社会各層からの理解と支持を得ることで、民間企業や個人等社会全体から広く寄附金が集まるよう、国は、寄附税制の拡充を図り、寄附文化の醸成を図ることが求められる。また、資産の運用の在り方についても検討が必要である。

各大学の自主的・自立的な経営基盤の強化

これまで、大学において、学内の組織改革を進めつつ、限られた教育研究資源を効率的に活用して、経営基盤を強化する取組が自主的・自律的に進展している(例えば、大学間連携の強化、地方公共団体との連携、学部・学科等の改組、入学定員の調整、大学・学校法人の組織の一元化)。

各大学が、自律的な機能別分化を推進する中で、それぞれの有する分野・機能に関し、「自立・発展」「連携・共同」「撤退」の方向性を判断できるように、各大学の状況にきめ細かく配慮しながら支援していくことが求められる。これまでの大学分科会の提言を受けて、平成22年には日本私立学校・共済事業団が全国各地で「リーダースセミナー」を開催しており、そうした成果も踏まえ、引き続き、そうした際の支援体制の整備充実も含めて、各大学への経営改善支援を推進することが求められる。

2011年1月29日土曜日

大学のヒエラルキー

大学生の厳しい就職事情に関する報道が目につく昨今、学生の就職における出身大学のヒエラルキーについての記事を目にしました。学歴社会が生んだ負の遺産とも言うべきシステムが未だに残っていることにやや驚きでした。

さて、この「大学のヒエラルキー」、様々なものがあります。学生の受験や就職に関わるものだけではありません。例えば、国立大学法人の場合代表的なものとしては、東京大学を頂点とした旧帝大、旧六、新八といった大学の歴史的成り立ちに由来する序列。国立大学法人は未だにこのような序列の下に、様々な資源・制度・処遇面での格差が存在しています。また、法人化後は、国から措置される運営費交付金、補助金、競争的資金はもとより、授業料免除・奨学金制度など学生支援の面、教職員の人事・給与など処遇の面など、大学間格差は益々拡大傾向にあります。

旧帝大から地方単科大学に至る大学間格差は、事務職員の内面にも大きな影響を与えています。例えば、管理職の人事です。大学の事務職員の人事権は、法人化によって各大学長に委譲されました。しかし、現実には未だに文部科学省がその実権を握り続けています。

文部科学省出身の管理職の多くは、大学現場におけるやる気や能力の有無に関わらず、手当など処遇の手厚い大規模大学に優先的に配属され、2~3年のローテションで文部科学省や彼らにとって居心地のいい(やりやすい)大学への転勤をくり返しながら最短ルートで事務局長や理事へと昇進し、報酬も増え続けていきます。しかも、定年後の天下り先への斡旋付き。一方、大学出身の管理職は、同じノンキャリアでありながら、かついかに能力があろうとも小・中規模大学を回り続け、昇進もうまくいって部長どまりです。

こういった文部科学省の既得権益が国立大学法人を支配し続けている以上、各大学長は、法人化の趣旨に則った戦略遂行を進めていくことは不可能です。所属する会社の経営者(学長)ではなく、文部科学省の役人の顔色を見、その意向に沿って行動することが自身にとって有利であると信じて疑わない管理職に、責任をもった大学改革などできるはずはないでしょう。多くの学長がこのような不合理に大きな不満を持っているという話をよく耳にします。

また、このような管理職と日々の仕事を共にしている事務職員に与える心理的な影響も懸念されることの一つです。文部科学省や管理職の思想や行動によって、国立大学法人間の格差を目の当たりにし、彼らのモチベーションが向上するとはとても思えません。

最近、旧帝大で働く若い職員が、家族の生活を理由に実家に近い地方小規模国立大学法人への転勤を上司に相談したところ、はっきりと止めるように諭された話を耳にしました。反対の理由はどうも大学の大小、それに伴う処遇に関わることのようです。正確なところは定かではありませんが、仮にそれが反対の理由だとすれば、その上司の判断は必ずしも的を得ていないのではないかと思います。

確かに地方小規模大学は、旧帝大のような大学に比べ、財力、人力など全般的に劣っていることは否めません。地方小規模大学の教職員の仕事ぶりは、概ねスピード感に欠けているところがあることも確かです。しかし、彼らはそれなりに所属する大学の発展のためにそれぞれの立場で懸命に考え、行動していると思いますし、決して地方小規模大学だからといって働き甲斐のない職場とは言い切れないと思います。

そもそも旧帝大と地方小規模大学を比較すること自体、無意味なことですし、地方小規模大学にはそれなりの歴史・伝統や、他大学にはない特色・個性があり、それを十分に生かした大学づくりに前向きに取り組んでいる大学も少なくありません。

大学の事務職員は大学の構成員である以上、所属する大学の発展に寄与するために自分は何をすればいいのか、何ができるのか、それをすれば何がよくなるのかを日々考えながら生きていくという点では旧帝大も地方小規模大学も同じです。しかし、旧帝大と地方小規模大学では、事務組織の規模・構成・機能等の面において全く異なるところがありますし、当然ながら、業務の範囲・深さ・責任等の面で大きな違いがあります。

私見ですが、国立大学法人の事務職員は全国どの大学でも、それなりの資質を有し、やる気もある素晴らしい方ばかりであると思います。旧帝大でも地方小規模大学でも国立大学法人であることには違いなく、我が国あるいは世界の将来を背負う人材をどう育てるかという目的は変わりません。

学生や保護者の皆様から同一の授業料等をいただいて教育研究を行う国立大学法人が、学生や社会の目線に立った大学改革や経営努力を進めていかなければならないことを前提とした上で、国から措置される財源や大学で働く教職員の資質によって大学間の格差が生じてしまうことは、教育の機会均等という国立大学の設置趣旨からいっても決してあってはならないことだと思いますし、文部科学省、各国立大学法人の教職員は、自分の都合に安住することのないように自戒していかなければならないと思います。

2011年1月27日木曜日

職員育成システムの現状と課題

事務職員の職能開発の重要性・必要性を踏まえ、現在多くの大学では、事務職員のための研修方針・研修規程・研修マニュアル等が整備されています。

しかし、国立大学法人の中には、法人化以前の国家公務員としての研修体系をそのまま維持し、人事院による研修を中心としたメニューから脱皮することなく、相変わらず”公務員”を育成している大学も少なくありません。

次代の大学職員を育成するための考え方や方法が確立していない大学は、やがて衰退の一途をたどって行く危険性が大きく、”化石”ような研修制度を後生大事に維持している大学の学長や事務局長は、すぐさま意識の改革を図るべきでしょう。

さらに、研修担当の部署、責任者、担当者といった推進体制と彼らの責任と権限を明確にし、よりより研修体系の開発と推進を重要課題として認識させていくことも必須の事項ではないかと思います。

今回は、この日記ではおなじみの、日本福祉大学常任理事 篠田道夫さんが文部科学教育通信(No260 2011.1.24)に寄稿された「職員の力量向上の取り組み」をご紹介します。(※太字強調は私の判断で行ったものです。)


職員の力量向上の取り組み (日本福祉大学常任理事 篠田道夫)


問われる職員の開発力

学生満足度を向上させるための仕掛けをどう作るか、入学者確保のためにどんな企画が必要か、収支を安定させるための投資と経費削減の施策など、大学の進路や運営をめぐる現場レベルからの提案力、開発力量が問われている。大学危機の深化は、職員の専門性の強化、執行機能のレベルアップとともに、競争を勝ち抜く改革を担う開発力育成へのシフトを求めている。職員の役割への期待の高まりや職務の高度化に対応し、職員育成制度も従来型からの転換を迫られている。直面する危機を打開するためには、各分野の現場で厳しい事態に直面し、ニーズや要望また批判を受けながら苦闘している職員の、開発と統治の力量の向上が不可欠だ。

職員の専門力量を高めるための育成システムは、大学の内外を問わず急速に整備されてきたといえる。しかし、今もっとも肝心な大学の戦略遂行を担う開発力量、すなわち、現状を調査・分析、ベンチマークし、政策に取りまとめ、提案、決定後はその遂行マネジメントを行う力量の形成という点では、まだ十分とはいえない。今日までの職員育成システムの現状と課題を整理してみたい。


学内研修制度の体系的実施

職員の力量向上のために、学内において研修体系を整備し、新人教育から管理者まで一貫した育成を図ろうとする取り組みは強まっている。代表的なものに階層別研修があり、職員を業務遂行能力別あるいは年代別に分け、ふさわしいテーマと方法で育成を図るやり方である。どの大学でも取り組んでいる新任研修から、二十歳くらいまでを対象とした若手職員研修、四十歳くらいまでの中堅職員研修、五十代を中心とした管理職研修、さらには全職員共通テーマによる全体研修などがある。

またそれらを補完する特定の業務テーマに即した課題(部門)別研修、各種の通信講座での学習を奨励する通信研修、一定期間の海外研修、資格取得等を支援するスキルアップ研修、自己啓発への支援制度など様々な取り組みが行われている。これらの研修が職員の基礎的力量の向上に役割を果たしていることは間違いない。ただ中小規模の大学だとどこまで体系的な整備ができるか限界もあり、また講演を聴いて知識を学ぶやり方を毎年繰り返すだけで身に付いたものとなるかなど問題点もある。これを改善するため、研修を踏まえた現場からの実践報告や経験交流、さらには進んだ改革の取り組みを報告、事例研究することや実践的なトレーニングを行ったりするなどの工夫がなされている。つまり、こうした研修や知識も、現場の業務に実際的に適用し、その改善に使うところまで具体化することなしには生きたものにならない


外部セミナー等への派遣

内部での養成だけでは限界があることから、外部研修や各種セミナーへの派遣も拡大しており、またそうしたニーズから研修のメニューも増加している。私大協会や私大連盟を始め各大学団体が主催する多様な研修会、大学関連の民間研修機関や高等教育関係誌等が主催するセミナー、大学行政管理学会をはじめとする大学関連の研究機関等が主催する研究会やセミナー等、その数は膨大なものに上る。学内研修と併せて、これらをうまく活用し、最新の知識や考え方、ノウハウを学習することは大変意義がある。しかしこれも同様に、単に知識として学ぶだけでは力量形成に結び付かない。いくつかの大学では、研修報告の形で学んだことを文章にまとめ、学内で発表の機会を作って普及を図り、より身に付いたものとするための取り組みを行っている。学んだことを基本に、その視点から見れば自らの大学はどこに問題があり、解決を迫られている課題は何で、そのために自分は何をすれば良いか、というところまで分析・提案できれば生きたものとなる。その過程で自らの頭で考え、問題発見、問題解決できる力も付いてくる。つまり現場の直面する課題に接合させる仕組みが介在しなければ、せっかくの研修も身に付いたものにならないということだ。


職員対象の大学院への入学

大学院での職員育成の専門的な教育課程もここ数年で急速に整備されてきた。日本で最初に大学アドミニストレーション専攻を立ち上げ、通信教育課程も置いて現職職員中心に全国展開する桜美林大学大学院をはじめ、名城大学大学院の大学・学校づくり研究科、東京大学大学院教育学研究科の大学経営・政策コースなどで様々な教育が行われている。これらの大学院で学ぶことは、大学の歴史、法制度、高等教育体系や教育制度、経営・管理システムやマネジメント手法などを、集中して体系的に、しかもその分野で第一線にいる専門的な研究者から講義を受拂られる点で大きな意義がある。実務家教員から実践に即した講義も聞け、かつ現実のテーマや手法に基づいたトレーニングや調査分析の訓練も受けられる点で、総合的な力量を養成するカリキュラムとなっている。

東京大学の金子元久教授(当時)は、同大大学院の大学経営・政策コースの発足に当たって「こうしたコースでは大学の組織や財務経営などに関する理論的な学習が必要なことは言うまでもないが、・・・重要なのは大学での具体的問題についてのデータを分析し、目標を立ててその達成の手順、戦略を立てる、またそれを学内に説得していく、という能力を形成していくこと」(日経、2004年12月4日付)と述べ、そうした実践的教育方法に工夫がいることを指摘した。こうした現場での業務課題に即して、分析力、政策立案能力、マネジメント力をいかに養成するかという点は、多くの大学院で共通する課題でもある。

その上で、大学院を修了した職員が、大学の改革に力を発揮するにふさわしい現場、ポストに配置され、学んだ理論を実践に結び付けることが望まれる。


「三つのリテラシー」の修得

寺崎昌男氏が、「大学人、特に職員の基礎知識を考える」と題して「大学リテラシー試論」を、「教育学術新聞」に発表された。(平成20年3月5日、12日、26日の3回連載)事務員から職員へ飛躍しようとするとき、とりわけ大学全体を視野に将来方向を考えられる人材になるためには、この大学リテラシーが不可欠だとして以下の三つの柱を提起した。

その内容は「1)大学という組織・制度への知識と認識、2)自校への認識とアイデンティティの確認と共有、3)大学・高等教育政策への認識と洞察」だ。いずれも職員が大学改革について何らかの提案をしようとするとき、狭い分掌の現実からだけでなく広い視野から問題を捉える上で基本となる素養だ。また解決方策を決定に持ち込む上でも、部分最適ではなく大学全体を見据えた全体最適の視点が大切で、こうした提起ができる力をつくるためにも重要である。これらは「基礎知識」といわれているとおり、大学人としての職員が共通して身に付けるべきもので、特に2)の自校認識は、それぞれの大学で折に触れ意識的に教育プログラムに組み込むべき重要な柱である。

この三点とも日々変化する内容を含んでおり、一度学んだらそれで良いというものではなく、仕事の高度化に従って学ぶべき内容もまた高度化する。その点では学習を続けることのできる職員を作り出すことが大切だともいえる。そしてこれらの知識も、処理型の業務から使命感を持って大学の政策・運営へ関与し、開発型業務に転換しようとするとき、初めて切実な必要性を持ってくる。(文部科学教育通信  No.260 2011.1.24)

2011年1月25日火曜日

会議録からみる大学の姿

「大学の社会的責任」の重要な要素の一つに「情報公開」があります。学校教育法施行規則の一部が改正され今年4月1日から施行、全ての大学に共通した情報の公開が義務化されます。

(参考)
学校教育法施行規則等の一部を改正する省令の施行について(平成22年6月16日付文部科学大臣政務官通知)

これまで、一般社会の方々には、大学の中で何が行われているのか非常に見えづらい状況が続いてきましたので、今回の義務化を機に透明性が高まり、「大学と社会の常識の乖離」が少しでも改善されることを願っています。

さて、大学には様々な目的・役割があり、その使命達成のために多くの教職員が働いています。大学が健全な経営を成し遂げていくための仕組みも用意されています。特に国立大学法人は、その運営財源の多くが国民の血税に依っていることから、国立大学法人法に基づく自主的・自律的な経営、さらなるガバナンスの強化を図ることが求められています。

ガバナンスの強化を図っていくためには、学長のリーダーシップが遺憾なく発揮されること、大学の意思決定システムが迅速かつ効率的であり、責任のある決定がなされることが重要になります。

では、各国立大学法人はどのようなプロセスや学内議論を経て意思決定を行っているのでしょうか。各国立大学法人がホームページで公開している会議の記録を通じて、その一端を垣間見ることができます。

国立大学法人には、国立大学法人法によって、役員会、経営協議会、教育研究評議会という会議を設置することが義務付けられています。このうち、構成員のほとんどが学内の教職員である教育研究評議会について見てみましょう。教育研究評議会は、当該大学の「教育研究に関する重要事項を審議する機関」です。国立大学法人法には次のように規定されています。


国立大学法人法(抄)

第21条 国立大学法人に、国立大学の教育研究に関する重要事項を審議する機関として、教育研究評議会を置く。
3  教育研究評議会は、次に掲げる事項について審議する。
(1)中期目標についての意見に関する事項(前条第4項第1号に掲げる事項を除く。)
(2)中期計画及び年度計画に関する事項(前条第4項第2号に掲げる事項を除く。)
(3)学則(国立大学法人の経営に関する部分を除く。)その他の教育研究に係る重要な規則の制定又は改廃に関する事項
(4)教員人事に関する事項
(5)教育課程の編成に関する方針に係る事項
(6)学生の円滑な修学等を支援するために必要な助言、指導その他の援助に関する事項
(7)学生の入学、卒業又は課程の修了その他学生の在籍に関する方針及び学位の授与に関する方針に係る事項
(8)教育及び研究の状況について自ら行う点検及び評価に関する事項
(9)その他国立大学の教育研究に関する重要事項


以下にご紹介する国立大学法人ごとに公表している教育研究評議会の会議録と照らし合わせてみましょう。法定の審議事項を遵守した議題設定や真摯かつ生産的な議論を行っているかどうかに注目です。

会議録のホームページへの掲載状況は国立大学法人によってまちまちです。ほとんどが「情報公開」のカテゴリーに整理されてありますが、「サイトマップ」や「サイト内検索」から探さなければどこにあるのかわからないなど、とても見つけづらい場所に掲載されてあることがわかりました。

会議録については、全ての情報を網羅的に確認したわけではありませんが、大学によって温度差があります。議事録と称されていても内容は簡単な概要だったり、ほとんどの大学では、「・・・について説明があり、これを承認した」といった紋切り型の文章が並んでいます。これでは何をどのように議論したのかさっぱりわかりません。せめて意見交換や質疑応答の概要程度は記載していただきたいものです。

また、会議時間の短い大学は報告事項が少ない傾向があります。報告事項がやたら多い大学があり、どうも国立大学法人法で求められている「審議機関」ではなく、単なる学内の「情報共有の場」になっているようです。会議の効率的運営の観点からも無意味な会議になってはいないでしょうか。

なお、会議の内容そのものではありませんが、事務系職員の列席者がやたら多い大学があります。議案に関係の無い事務職員の列席は人件費の無駄ではないかと思いますがいかがでしょうか。

それでは、各国立大学法人がホームページを通じて公表している会議録をご紹介します。(※私の調査能力が不十分なため誤っている場合はお詫び申し上げます。コメントにてご指摘をいただければ訂正していきます。)


北海道・東北地区




関東・甲信越地区




東海・北陸・近畿地区




中国・四国地区




九州・沖縄地区

2011年1月23日日曜日

自分の道を進む

自分が周囲から浮いているように感じることがあるのはあなただけではない。信じられないかもしれないが、ほとんどの人がそういう経験をしている。その対策を紹介しよう。

  1. 自分の交友関係を検証する。あなたは周囲の人と共通点がないように感じているのかもしれない。彼らとは別の関心事を持つようになったのかもしれない。人は数年間たつと変わるものだ。そろそろ同じ関心事を持つ新しい友人を探したほうがいいかもしれない。

  2. 自分の仕事を検証する。自分に合っていない仕事をしているために、浮いているように感じるのかもしれない。戸外で体を動かして働くのが好きなのに、一日中オフィスの中でパソコンに向き合っているのでは、ストレスがたまるばかりだ。ワクワクして、しかも自分の才能を発揮できる仕事を見つけることが大切だ。

  3. 自分のユニークな性格を大切にする。その他大勢と違っている人は誤解されやすい。しかし、他の人の迷惑にならないかぎり、自分の思いどおりに生きればいい。成功者は独特の人生観を持っている風変わりな人が多い。他の人のまねをするより自分の個性を生かしたほうが成功する可能性が高いのだ。

ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日:2006-06-15

2011年1月20日木曜日

大学の社会的責任

大学において、ガバナンス、コンプライアンス、アカウンタビリティ等を考える際に、その前提として「大学の社会的責任:USR(University Social Responsibility)」を十分に認識しておくことが必要になります。

今回は、日本私立大学協会教育学術オンライン(平成18年 第2243号(8月23日)第2247号(9月27日)第2251号(10月25日))に掲載された、新日本監査法人 公認会計士 植草茂樹さんの論考「大学がUSRに取り組むために」を抜粋してご紹介します。少し長くなりますがおつきあいください。


大学にしかできない社会的責任

組織の社会的責任を考える際には、組織と「社会」のあり方を考えることが必要である。社会を構成する「市民セクター、企業セクター、政府セクター等」において、大学がどのような役割を果たし、どのような存在意義を示すべきなのかを考えることは重要である。小さな政府を目指す中で、企業や市民に求められる役割は大きくなっていくが、大学は(違った立場で)企業や市民の先頭に立って社会課題の解決に自ら取組み、先導していく役割が期待される。大学は教育・研究を通して、未来を創造する役割を担っている。その中で潜在的社会課題を予測し、問題の提起を含めて事前の取組みを教育・研究活動により積極的に行うことが、まさに大学独自の社会的責任を果たすことになるのではないか。

少子化が進む中で、大学の経営状況は厳しい時代だが、それぞれの大学が社会の中での存在意義を見出すことは、社会にとっても大学にとっても持続的発展につながる。今までも私立大学においては、建学の精神や経営戦略・経営計画が存在し、大学としての存在意義を発揮してきた。ところが、国立大学が法人化され個性を打ち出しており、国立大学と私立大学とは何が違うのかが見えにくくなってきている。改めて、自大学としての「社会」の中での存在意義が問われるだろう。大学という高等教育機関が環境保全を含む社会的責任を果たすことによって、持続可能な社会の実現がより確実になり、その結果大学自身の持続可能性を高めることが可能となると考えるべきであろう。

大学は環境の保全もしくは社会の持続的発展に資する教育・研究を積極的に行い、学生や地域等の取組みについてサポート・指導する役割が求められ、かつ持続可能な社会作りを先導していく存在となるべきではないだろうか。これを個々の研究者単位ではなく、大学全体で戦略を構築した上で組織的に実施していく経営体となることが期待される。多くの大学において、CSRに関する講座等を設けたり、文部科学省が「現代GP」の中で地域活性化や持続可能な社会につながる環境教育というテーマを設けたり、東京大学等の国立大学が中心となって「サステナビリティ学」を創設したりといった取組みが始まっている。また学生のボランティア等の自主的な取組みを大学が積極的に支援し、大学の戦略と結びつけることも重要であろう。学生の取組みは、マスコミ等に取上げられイメージ向上につながる効果もありえる。

社会コストを考える際に、例えば犯罪者が増加したため企業が税金を払い刑務所を増やす政策よりも、予防的に企業が雇用の拡大・教育機会の提供を行ったほうが、社会全体としては効果的であるといわれる。その点でみれば、大学はまさに教育・研究において予防的機能を発揮できる存在である。教育・研究への資源配分は社会コスト全体を考えても結果的に効果的であることを、もっと社会に積極的に説明することが必要なのではないだろうか。


大学を取り巻くステークホルダーとその課題

社会的責任を考える際にはまず、自大学のステークホルダーとその関係性を確認し、各ステークホルダーからの影響と大学が与える影響を整理することが必要である。

次に、ステークホルダーからの期待や要請を分類し、自大学の経営方針や戦略を踏まえ、どの課題を優先的に取組むべきかの優先順位づけを行う。優先順位づけにおいては、自大学独自の取組みが社会課題の解決に貢献・寄与できるものを優先させることも考えられる。

大学におけるステークホルダーには、学生・保護者・卒業生・教員・職員・企業・寄付者・マスメディア・格付機関・地域住民・市民社会・国際社会・政府・私学事業団・高等学校などが考えられる。また大学は未来創造の先導的役割を果たす役割があり、将来の世代も視野に入れる必要がある。

大学が社会的責任に取組む際の主要課題は、ガバナンスに関するもの、コンプライアンスに関するもの、アカウンタビリティに関するもの、環境・人権・労働環境・コミュニティ参画等の社会課題に関するもの等様々想定されるが、自大学がどのような方針で取組みを行っていくかを、ステークホルダーとの関連で考えることが必要である。


アカウンタビリティ(情報開示)のあり方

社会的責任活動を通して、ステークホルダーとの良好な関係構築を考える際には、ステークホルダーとのコミュニケーションが欠かせない。コミュニケーションには、大学が積極的に情報開示を行うことから始まる。

大学の情報開示の内容・手法は、統一された考えや手法によって行っている大学は少ないように思う。大学案内にしても、どちらかといえば受験生募集のための情報開示に力点が置かれてはいなかっただろうか。また情報開示のあり方にしても、学部ごと等に様々な冊子が存在し、大学としての統一感が図られ情報開示がなされていただろうか。大学からの一方的な情報開示ではなく、ステークホルダーとのコミュニケーションへの取組みも必要となる。

ステークホルダーとのコミュニケーションツールは、冊子やHPだけではない。学生に対しては授業やポスターを通してだけでなく、いかに大学の取組みを理解してもらうかを、様々な形で伝える努力をすべきである。一部の大学では事業報告書を学生に送付しているが、教職員が学生に対し積極的に説明し質問を受けることも重要ではないか。例えば、立命館大学が学生・保護者等に「財政公開・大学公開」という取組みを行っているが、職員が財政等の状況を、積極的に学生・保護者等に説明されている。また、授業評価を行う大学は多いが、学生に適切にフィードバックを行うことや、学生からの大学への声(要望・期待など)を聞く窓口を設け大学経営に取り入れていくことも必要である。学生は将来の保護者になり寄付者になる存在であり、大学の理念・取組みを理解してもらうことは大学の持続的な発展にとっても重要となろう。授業料に対する説明責任も今後は課題の一つとなるだろう。授業料は他大学に比べてどうか、授業料は何のために使われているのかといった声に、これからの大学は応えていくことが必要となるだろう。

また学生だけでなく、教職員・企業・地域社会等とも積極的な対話を通じて、社会的責任活動に対する大学の取組みや将来の方向性を明らかにし、ステークホルダーからのニーズを確認していくことも必要である。

今後とも大学に向けられる目は厳しくなっていくと考えられるが、大学が社会的要請を踏まえて経営を行い、大学と社会が将来目指すべき方向を多くのステークホルダーに伝え、未来の社会を先導できる大学が、今後生き残っていくのではないだろうか。


大学におけるリスクマネジメントの広まり

最近、大学において「リスクマネジメント」が注目を集めており、実際に取り組んでいることを伺うこともある。これまで大学は、リスクマネジメントに取り組むメリットがなかったとも言われてきた。ここ最近になって、なぜこれだけ注目されてきたのだろうか。

民間企業の場合、リスクマネジメントに取り組まなければ、仮に不祥事の対応に誤ると、ブランドイメージが一気に低下し、売上減少、また最悪のケースでは、倒産に追い込まれることもある。しかし、大学の場合、仮に不祥事があったとしても、学生募集、ひいては退学率に大きく響くことはなかった(逆に入試の時期は、多少緊張感を持った対応が求められるが)。

しかし、性善説を前提とした大学においても、社会からの目は厳しくなってきた。公的資金を使う存在、教育機関として、高度な職業倫理が要求されるようになり、リスクマネジメントに失敗すれば、社会から批判を浴びることになる。一方で、大学を相手取った訴訟も確実に増加しており、訴訟リスクを軽減するためにも事前の策を適切に講じておく必要がある。大学もひとつの経営体として捉えるのであれば、リスクマネジメントは必要不可欠になってきたといえる。

例えば、代表的なリスクに「教育上のハラスメント」問題があるが、大学として対応を誤れば、マスコミ等から一斉に批判が集中する。学生に対して、日常的に適切に相談・対応を行っていればよいが、行えなければ学外に簡単に告発され、ケースによっては裁判沙汰にもなってしまう。最近では、研究費不正の問題も多く批判されているが、今まではどちらかといえば研究者個人の資質の問題を批判されてきたのに対し、今後は大学としての管理責任を問う声に変わってくるだろう。

さらに、大学病院などはリスクの塊といってもよい。今後、大学はこれらの多様なリスクに対して、どのように対応すればよいのだろうか。


リスクマネジメントとUSR・内部統制

会社法改正や金融商品取引法の影響で、民間企業においては、「内部統制」が注目を集めている。内部統制の定義は様々であるが、一言でいえば、組織内部にある「経営管理の仕組み」である。リスクマネジメントやコンプライアンス、内部監査と様々なキーワードが存在するが、全て経営管理の仕組みであり、内部統制の一要素である。

リスクマネジメントとコンプライアンスは別の概念として述べられることが多いが、私は大きな違いがないものと考えている。コンプライアンスを「法令遵守」という狭い概念で捉えた場合は確かに別の概念となるかもしれない。

しかし、桐蔭横浜大学の郷原信郎教授は、「法令遵守」コンプライアンスは間違いであり、コンプライアンスとは「Comply」という本来の語源からすれば「充足する、調和する」という考え方であり、コンプライアンスは「その組織に向けられた要請に応え、柔軟に反応し、目的を実現していくこと」と広い概念で捉えている。この考え方であれば、コンプライアンスへの取り組みとは、大学が社会的要請を経営にどのように取り込んでいくかという「経営そのもの」となる。

例えば、個人情報保護という問題は、本来大学は多様な個人情報を持っている機関であるから、リスク対応が重要であり求められていた。しかし、個人情報保護法ができた途端、それは法令となり、法令遵守コンプライアンスの枠内となった。このように、社会的要請を受けて法律が作られていく中で、法律だけを守っていれば社会的責任を果たせる、またコンプライアンスができている、とはいえない。

USRに取り組むとき、大学が社会からの要請をいかに経営に取り込めるかが、成功の鍵を握る。その意味では広義のコンプライアンスに近い。社会から大学への要請・課題は、短期的また将来的にも考えなければならない経営課題であり、対応していないと、それはリスクともなる。大学全体がUSRの意識を持って経営を行うこととは、長期にわたって持続的発展を遂げるための、長期的リスクマネジメントにつながるのである。


大学におけるリスク・アセスメント

それでは大学におけるリスクとは、どのようなものが重要だろうか。

リスクマネジメントを行う際には、通常どのようなリスクが存在するか、どのようなリスクが重要かを洗い出す必要がある。平成十七年度USR研究会の参加大学内で、どのようにリスク・アセスメントを実施しているかアンケートしたところ、表1のような状況であった。多くの大学において、部署ごとでリスク対応が行われており、学校法人本部でリスクが把握できる体制には至っていないことがわかる。

リスクは大学ごとによっても異なるので一概には言えないが、USR研究会において、一定のカテゴリーごとにリスク・アセスメントを行ったので、そちらを参照してほしい。その一例として、教育分野のリスク・アセスメントの結果を表2に掲げる。当然アンケートをとる時期等によって、順位はかなり変動する。各大学において、全学的にリスク・アセスメントを行うとき、組織内部で行うことも考えられるが、第三者のコンサルタントを使って行うこともありうる。ノウハウを持つ第三者的立場から調査を行うことで、効率的に行うことができ、内部関係者には直接言えない情報の吸い上げが行われるメリットもある。当法人においても、USR研究のノウハウをもとに、できるだけご担当者に負担をかけない手法にてリスク・アセスメントのサービスを提供しているので、ご興味があればお問い合わせ頂きたい。


内部監査への活用

現在、大学において内部監査室を設置する動きが広がってきているが、多くの場合、内部監査をどのように行ったらよいかわからないという声を聞く。内部監査部署としては、監査方針・計画を立てる際に、大学内にどのようなリスク・課題が存在しているかを把握することが重要である。まさにリスクアプローチによる内部監査を行い、大学全体のリスク低減につなげるということである。しかし、リスクマネジメントの仕組みがないため、内部監査室だけでは対応しきれないともいえる。

内部監査は、全ての部署に監査できるわけでないため、まずマネジメントの仕組み(内部統制)をつくり、そのマネジメントのPDCA(プラン、ドゥ、チェック、アクション)が適切に機能しているかを検証することが、監査の効率化にとっては不可欠である。是非、大学全体でリスクに強い大学・USRを果たせる大学作りを目指してもらいたい。


広がる情報公開の流れ

ここ数年、大学において情報公開が広まってきている。私立大学では私立学校法の改正により財務情報の公開が義務付けられ、財務情報を補完するために学校法人の概要、事業の概要等を記した事業報告書の作成が定められている。ただし、営利企業の事業報告書のように定型的な雛形が詳細にあるのではなく、各学校法人が趣向を凝らして作成を行っている。しかしながら、収支計算書の公開と比較すると、事業報告書については広報誌やホームページへの掲載割合は低い(左表参照)。その中でも開示に積極的な大学は、HPの探しやすい場所に設定したり、読み手に分かりやすい開示の工夫を行っている。財務情報を補完する情報だからという理由で、財務情報が中心の大学や、大学全体の広報戦略の一環として作成を行っている大学があるが、読み手を意識した情報開示を行っているかいないかでは、出来栄えの差は歴然としている。

一方、国立大学法人も法人化後、情報公開には積極的に取り組んでいる。そもそも国立大学法人は、組織、業務及び財務に関する基礎的な情報をホームページ等で開示することが法律により求められているが、定められている事項以外にもアニュアルレポートやフィナンシャルレポートを作成する大学もあり、より積極的に情報公開を行っている。さらに、環境配慮促進法により、今年度から多くの国立大学法人では環境報告書の作成が義務付けられ、九月末までに一斉に公開がなされた。この環境報告書も定型化されていないため、各大学により創意工夫が見られるが、学生が環境報告書の作成に関与している例や、環境教育と絡めて取り組んでいる例も見られる。


ステークホルダーと情報開示

情報開示を行う目的はステークホルダーへの説明責任を果たすためであるが、どのステークホルダーに開示を行うことを目的とするかで、開示する情報は当然変わってくる。特に、私立大学の事業報告書や国立大学法人の環境報告書などは創意工夫の余地が相当あり、どのステークホルダーに向けてどのような情報を伝えたいかという整理をしなければならない。

大学のステークホルダーは、学生・保護者・卒業生・企業・教職員等様々な方が想定されるが、当然報告書の開示対象でまず頭に浮かべるのは学生となるだろう。しかし、事業報告書や環境報告書を最もよく読むのは、実際は教職員ではないだろうか。実際、事業報告書で一番反響があったのが、内部の教職員であったという声を多く聞く。一般的に学校法人・大学は横の情報が伝わりにくいという組織風土であるが、こういった報告書を媒体として、学校法人全体への理解をしてもらうことも重要である。特に学校法人では系列校のことをあまり知らない大学の教職員が、事業報告書を通じて取り組みが理解できたという例もあるようである。

最近、多くの企業でCSR(企業の社会的責任)報告書を作成しているが、表だって言われていないが、内部ステークホルダーである従業員を最も重要な読み手として捉えており、社内で報告書の勉強会等まで行っている。従業員がまず自社の理念・取り組みを理解するという直接的効果だけではなく、例えば営業先での営業の話に使う、従業員の周りで会社のことを話題にしてもらうことを通じて、広まっていく間接的な効果も狙っている。

大学においても、まず教職員に対して学校法人の事業を理解してもらい、間接的に教職員の口から他のステークホルダーに伝えていくという戦略も重要である。例えば、高校に営業に行くときも、大学のことを理解してもらうために、報告書を使って説明するということが有効な手段ともなるだろう。

また学生との関わりにおいては、報告書上で学生の顔が見えるものが様々な読み手に伝わりやすいと感じる。教育・研究等に対する取り組みだけでなく、ボランティア活動や環境配慮活動なども伝えていくことが有効な手段である。できれば学生だけではなく、教職員と学生が一体となった活動を開示していけば、大学全体の一体感を伝えることができる。他には、学生が報告書作りそのものに関与するということも考えられる。実際、環境報告書の作成においては、学生が参加している例、ステークホルダー委員会に学生等が参加している例等、様々な事例が生まれている。とはいえ、事業報告書は事業実施主体からの報告であるため、なかなか学生を参加させるのは難しいという。学生が参加した報告書を実現するツールとしてUSR報告書の可能性が考えられる。


USR報告書に向けて

情報公開・説明責任を果たすのは、USRにおいて重要な視点である。大学がいくら経営努力をしていてもそれがステークホルダーに伝わらないのは、説明責任が十分になされていないからである。また、大学の情報にはプラスの情報ばかりではなく不祥事や事故等のマイナス情報も存在する。このマイナス情報についても適時・適切な開示方法を考え実施していかなければならず、もし、隠したと捉えられると社会から一斉に批判を浴びることになる。大学の持つ情報は、個人情報や機密情報を除けば多くは積極的に開示すべきものばかりである。

事業報告書においてUSRに関する情報を開示する大学が出てきた。特に国立大学法人の環境報告書には社会性情報が付け加えられて報告されている例が多くみられる。この動きは今後ますます加速していくだろうが、今後、是非USR報告書の作成を提言したい。USR報告書には大学と社会の関係を整理して説明を行うことが必要であり、私立大学の存在意義、社会に対するミッション・ビジョン・活動プロセス・結果の開示を行うことが重要である。現状の大学の情報開示においては実施したことを見つけて、その結果を報告している事例が多い気がするが、今後は大学としての方針・方向性や、行った活動のプロセスを重視して情報開示を行うことも期待したい。

USR報告書と事業報告書の違いはなにかという質問をよく受ける。確かに担当者にとっては事業報告書に加えてUSR報告書を作成するのは二の足を踏んでしまうだろう。しかし両者の趣旨はまったく異なる。事業報告書は大学の事業計画を実施できたかどうかという事業の実施報告書であり、USR報告書は大学と社会の関係の中で大学がどのように社会に対して責任を果たしているかというものである。公共性を持つ大学は教育・研究以外にも社会に対して多くの責任を担っているし、教育の質低下が指摘される中、本業に対しても責任ある教育を行ってほしいという社会的ニーズも存在する。社会的要請に対して大学としてどのようなミッションを掲げ、どのような体制で責任を全うできる取り組みを行っているか、そして結果はどうだったかを報告することが重要である。また事業報告書は単年度ごとの報告となるが、USR報告書は未来を先導していく大学の使命としてどのような将来像を示していくのかも重要な要素となるだろう。

USRに関する報告書を社会に示すというのは説明責任を果たす目的もあるが、もっと重要なことは学内の意識改革の仕掛けのひとつとなることである。USR報告書を作成するとなれば一部署だけでは成り立たず、様々な部署を巻き込んでプロジェクトチームを作っていくことが必要となる。そのプロジェクトの議論の中で学内のミッション・ビジョンを明確にしていくことや、ステークホルダーの意見を集約していくこと、大学と社会の関係・取り組みを整理していくことが望まれる。その中で様々な学内の意見を集約し、統合化していくことも必要である。また報告書作りに学生に参加してもらうことにより、大学のことをよく理解してもらうことができる。

今年のUSR研究会(私立大学の社会的責任研究会)の研究はUSR報告書のモデル*1を提示する活動を行っており、12月にUSR報告書モデルを発表する予定である。これを契機にUSR報告書の作成を検討していただき、大学と社会のコミュニケーションと学内の意識改革につなげていただければと思う。


(参考)私立大学の社会的責任に関する研究報告 平成19年版

編集:私立大学社会的責任(USR)研究会
発売:特定非営利活動法人 学校経理研究会
http://www.keiriken.net/usr.html


*1:USR報告書の記載項目例:報告書の基本情報、USRに関するビジョンと戦略、ハイライト情報、ステークホルダーとの関係、USRマネジメント態勢・建学の精神、行動規範、ガバナンス態勢、コンプライアンス態勢等、パフォーマンスに関する報告(教育、研究、環境・社会、経済・財政)、情報の信頼性の向上

2011年1月18日火曜日

危機感のない大学は社会から支援されない

大学人は、大学を取り巻く厳しい環境や、社会からの期待や要請を迅速かつ的確に捉え、教育研究機関としての社会的責任と公共的使命を自覚し、社会の信頼を確保することに努める必要があります。

そのためには、危機意識を持ち、社会の常識との乖離が生じないよう、常に自身への問いかけを怠らないようにしなければなりません。

論考紹介が続いておりますが、今回は、筑波大学大学研究センター長・大学院ビジネス科学研究科教授の吉武博通さんが、リクルートカレッジマネジメントNo166に寄稿された「大学の危機と経営人材の養成」を抜粋してご紹介します。


現状を大学の危機ととらえて変革の好機とすべき


大学を取り巻く財政環境が一段と厳しさを増してきたことは明らかである。国立大学は法人化したとはいえ国の財政状況は全86大学の経営に直結する共通問題である。悪化の一途の地方財政が公立大学をどこまで支えられるのかという問題もある。私立大学も既に半数近くが赤字経営を余儀なくされている。

入り口についても定員割れの大学が増え続け、学力の低下にも歯止めがかかっていないと言われている。そのようななかで2010年10月1日時点での就職率が過去最低を記録するなど、大学の出口も深刻な問題を抱えるようになってきた。

研究面では研究に専念できる時間が減り、我が国の発表論文数が減少傾向にあるとの指摘もなされている。大学が統廃合を余儀なくされ大学教員市場の縮小が進めば、研究者の育成やキャリア形成がさらに困難をきわめることも危惧される。

大学ごとに事情は大きく異なるものの、多くの大学が、あるいは日本の大学システム自体が、危機と呼ぶべき状況にあると認識すべきではなかろうか。


危機克服に向けた本気度が社会的合意の形成を促す

トップから現場の従業員にいたるまで情報や認識が共有されやすい組織である点も日本企業の特徴だろう。さらに、株式公開会社の場合、四半期毎に決算が開示され、社内外に経営状態の変化が知れ渡る。経営の安全性を示す指標や目安も広く共有されており、危機のシグナルが認識されやすいと言える。

それに対して、大学経営を取り巻く環境は総じて緩やかに変化する。18歳人口の減少や国・地方の財政状況の悪化などは見通せる変化であるにもかからず、深刻な経営状態に置かれない限り、危機はリアリティをもって認識されにくい。

高等教育に対する公財政支出の少なさをGDP比で示してみても、有力大学の学長やノーベル賞受賞者がメッセージを発しても、血の滲むような経営努力を重ねてきた企業関係者を含めて、社会の大学を見る目に冷めた面があるのもわからないではない。大学から危機感とそれを克服しようとする本気度や気迫が伝わってこない。そのことが、大学を支えようという社会的合意の形成を困難にしているように思われる。

家計を切り詰めてでも教育費を捻出し、小惑星探査機「はやぶさ」の帰還に胸を熱くする国民は、教育や科学の価値を理解しており大学という機関や教育研究に対する期待や敬意を有しているはずである。

必要なことは、それらの期待や敬意を、大学の教育研究と経営に対する、より確かな信頼に繋げ、前述の社会的合意の形成を促していくことである。

そのためには、興味・関心を無限に広げることのできる知の共同体としての基本的性格を尊重したうえで、知の経営体にふさわしい体制・運営を確立し、その姿を学内外に広く示していく必要がある。


資源制約と取捨選択があるから経営力は鍛えられる

右肩上がりの進学率と公財政支出の増に依存しつつ、供給側の論理で組織・定員の拡大を続けるだけでは、人材・施設・資金といった経営資源を効率的に活用し、事業の取捨選択をしながら、顧客価値や社会的要請の実現を進めていくという経営本来の姿は脇に追いやられてしまう。経営資源の制約があるから効率性を追求するようになり、取捨選択があるから真の議論や葛藤を通じて組織も個人も成長することができる。

大学のトップマネジメントには、概念的・抽象的な次元だけでなく、大学を取り巻く環境を具体的・客観的な事実として見つめ直すことが求められているのではなかろうか。世界・日本・地域で進む構造変化、産業・医療・福祉・教育・行政などの課題、学術・文化の動向などを洞察したうえで、長期的視野に立って自校の立ち位置を確認し、それを自らの言葉で学内外に訴えていかなければならない。自らの世界観・社会観・歴史観・学問観・人間観を土台に、考え抜いた結果としての大学の将来像を示せば、広く学内外の共感を得ることができるであろう。

もう一つ大切なことは、トップマネジメントを支え、大学の実務を担うとともに、将来の大学経営の担い手たり得る人材を育成することである。危機は人材育成の最大の好機である。解決すべき課題に事欠かないし、総じて難度も高い。一人で処理できることは限られるためにチームで取り組む機会も増えてくる。ゼロベースでの発想や新たなものを作り上げる力も養われる。

国公私立を問わず、今の大学にはその期待にこたえるだけのポテンシャルや意欲をもった大学職員が数多くいる。学長・理事長、副学長・理事、部局長・事務局長などのマネジメント層がそれぞれの立場で大きな方向を示し、場を与えエンカレッジすれば、危機を乗り越えるために努力を惜しまない職員たちがごく身近にいるのである。

ただ、多くの職員にとって、自分で問題を設定し、解決策を考え、関係者を巻き込みながら実現していくというプロセスは未経験であり、そのような経験を有する上司や先輩職員も周囲にいないといったケースが少なくない。

組織行動論では、学習のプロセスには形成とモデリングの2つがあり、試行錯誤に代表される形成がゆっくりと進むのに対して、模範に合わせて行動をとるモデリングは複雑な行動の変化をすばやく起こせる、と教えている。危機を好機として、課題解決の場を与えたとしても、模範がある場合とない場合とで解決のスピードや成果に大きな差が生じる可能性が高い。


育成環境整備のために構造的課題の解決が不可欠

このプログラム*1を通して考えたことをいくつか述べてみたい。

一つ目は、大学間で職員の育成環境に差があるのではないかという点である。大規模な私立大学は比較的環境が整っているのに対して、中小規模の私立大学や国公立大学の育成環境にはさらなる工夫の余地がありそうである。ここでいう育成環境とは、配置・異動・処遇、担当職務、職場環境、研修体系などを含む総合的な環境を指すが、中小規模校では当該業務を担当するのが自分三人で、指導や助言も受けにくいといった例も少なくない。

二つ目は、上位者や年長者の姿勢、彼らへの信頼の程度が、職員のモチベーションを左右するという点である。受講生が職場環境を詳しく語ることもないし、こちらからも立ち入ることはしないが、上位者との信頼関係が強いほど、仕事や本プログラムへの取り組みに積極性が表れるように思われる。

三つ目は、担当業務を理解していても、周辺業務や自分の大学の全体状況についての理解が不十分ということである。日本の大学の置かれている状況、自校の全体状況、そのなかで周辺業務との関係を含めて自身の担当業務を理解する。そのような基本的姿勢を身につけておくべきである。

四つ目は、大学の方針で実施された施策の背景や目的がわからず、戸惑うことが少なくないことである。例えば、自分が所属する部門の業務の一部が外部委託されたがなぜなのか、業務実態を踏まえたうえでの判断なのだろうか、といったケースである。これは一例であるが、大学の方針がその考え方まで含めて十分には伝わりにくい状況があるように思われる。

五つ目は、教授会や教員との関係である。教員・職員が協働で事に当たる事例も着実に増えているようであるが、教員以上に学生の視点に立った改善案を考えているのに、教員サイドに理解してもらえるかどうか分からないという声を依然として聞く。大学や学部間で差もあろうが、職員が主体的にかかわり判断する領域を大胆に増やしても良いように思う。


トップ・職員間の対話とチームによる施策検討

大学の現状を危機と認識した場合、危機を克服した企業のように、大学トップには現場を回り、構成員と向き合い、大学の現状や向かうべき方向を誠実に語ってほしい。特に、職員との対話に時間を費やしてもらいたい。

そのうえで、大学の将来のために真に必要な施策について、施策ごとにチームを作って実行可能なブランとなるまで検討させてみてはどうだろうか。日常業務は効率化して7割の時間で処理し、3割はチームの活動にあてる。役職・年代・部門を超えてチームを編成することで、職員同士の相互理解も深まり、新たな個性や能力の発見もできる。

繰り返しになるが、危機こそ人材育成の好機である。危機の克服を通して経営力を格段に高めることが高等教育の未来のために不可欠であると思う。


*1:筑波大学大学研究センターが、2008年9月から実施している「大学マネジメント人材養成プログラム」

2011年1月17日月曜日

アドミニストレーターへの飛躍 2

日本福祉大学常任理事の篠田道夫さんが、文部科学教育通信(No259 2011.1.10)に寄稿されている「『戦略遂行を担う職員』の続編」をご紹介します。

(過去記事)アドミニストレーターへの飛躍 1(2011年1月11日)

ちなみに、篠田さんは、リクルートが発行しているカレッジマネジメント(No166 Jan.-Feb.2011)でも、「戦略立案・遂行を担う新たな職員の役割」と題する同様の論考を寄稿されています。あわせてどうぞ。

戦略遂行を担う職員 2

教学、経営職員に求められる力

教学、経営職員には、具体的にどのような仕事が求められているのか。例えば教学分野では、全入時代の中、多様な学生を育成するための教育の充実は焦眉の課題である。それは正課授業のみならず、入学前教育からキャリア教育、資格教育、情報教育やeラーニング、実習やインターンシップ教育、国際交流、学習支援や各種相談業務など多岐にわたる。そして職員は、これら正課外教育体系を中心とする業務を企画段階から担っており、職員の教育マネジメントなしに成り立たない教育分野は急速に拡大している。これまでの教育条件整備的仕事から、学生の成長に入学から卒業まで直接責任を負い、教員任せでなく「エンロールメントマネジメント」*1としてトータルに学習支援するという姿勢なしに、真の学生満足度の向上や学生の成長は望めない。教育の事務処理から、教育を共に担い教育を作るスタンスへの転換が求められている。

今注目のIR(Institutional Research)も、学習到達度や授業評価、履修実態などの各種データに基づき教育成果を検証し、改善課題を明らかにし、恒常的な教育の充実を推進する上で大きな役割を果たす。ここでもデータを持つ職員の力は欠かせない。中退率を減らす取り組みなど、従来型の課の縦割り業務では解決できない課題が急増しており、横断的プロジェクトや教育開発専門部署の設置も必要となっている。

研究領域においても同様に、研究を企業・自治体や社会のニーズと繋ぎ、地域と連携して進めることが、大学の社会貢献を前進させ、また研究の活性化を促す。自大学の研究資源を把握し、外部ニーズと結びつける「研究プロデューサー」とも呼ぶべき職員業務、外部資金を獲得するための研究計画の策定支援やテーマに基づく適切な研究チーム編成、知的財産管理などの新たな力が求められる。

これらを基盤に進められる社会連携事業の企画推進業務は、地域に存立する大学の存在意義を明らかにするもので、とりわけ、自治体や地元企業との連携は大切である。普段からこれらとつながりを持ち、かつ学内の資源を熟知している職員が、いかに知恵を出して共同事業を組織できるかが要となる。

困難さを増す経営の分野ではもちろん中心的な役割を担う。例えば財務の基本業務は、出納の予算・決算・資産管理などだが、財務の本質は収入と支出の制御、有効な投資と効果を検証し、大学目標の達成を財政面から推進することにある。そのためには事業別・学部別収支分析、財政指標の設定とシミュレーション、予算投下の優先順位判断、さらには補助金獲得政策、経費削減計画など実務型から財務分析・政策型への進化が求められる。総務・人事においても、人事計画・処遇政策・業務改革・施設計画など経営を支える戦略プランニングに軸足を移していかねばならない。

学生募集は大学の盛衰にかかわる最も中心的な市場に接している。厳しい学募状況を打破するためには、徹底した現状分析に基づく、学募事業・入試制度・広報活動の革新が不可欠だ。あわせて重要なのが、高校生ニーズの変化、高校の大学評価、競合他大学の改革や強み、売りは何か等、市場の評価や競合関係とその対応策の学内機関への発信だ。営業部隊の中心任務の一つはここにあり、市場評価・ニーズに基づく大学の特色化のための改革提起こそ学募の根源的力といえる。

人事採用担当と面談し、企業からの大学評価に日々直面する就職業務もこの点まったく同じである。大学教育の最終結果が社会人としての輩出にある以上、企業等の人材要請にも応え得る大学四年間の充実した教育システムへの改善、教養教育や資格教育が求められる。

力量の形成、発揮のシステム

こうした能力を形成するためには、学内で新任研修から年代別研修、管理者研修の体系的な実施、外部セミナーへの派遣とフィードバック、全国に設置された大学院への入学などはいずれも有効だ。しかし大切なのはSDをそれだけに解消しては駄目だという点だ。危機の時代に直面する厳しい現実課題の解決を通してこそ、実践的な開発・統治力量を育てることができる。今あらためてOJTの再構築、さらに進んだ、名城大学大学院学校づくり研究科などで定式化されつつあるOJD(オンザ・ ジョブ・ディベロップメント)による育成制度の構築が求められている。

業務提案を決定に持ち込み、事業実施をマネジメントする。この政策目標の達成行動そのものの過程に、調査・分析・研修計画を組み込み、開発と統治の力量を持続的に評価し、育成するシステムがいる。これが、高い業務目標を掲げチャレンジする中で力をつけるOJDだ。そのためには大学の戦略課題に連動した業務課題の設定と遂行、すなわち業務を処理型から政策型に作り変えることが欠かせない。「目標管理制度」とも言いうるこのシステムは、専任職員のコア業務へのシフト、開発・企画と統治・マネジメントへの力の集中を求めるが、これこそが今日、プロフェッショナルとしての職員に求められる業務である。これを中核にして、さらに、採用方針から計画的異動、考課制度、管理者選抜などトータルな育成型人事政策が不可欠である。

もうひとつ重要な点に職員の管理運営への参画問題がある。職員の役割の重要性の一般論から、経営組織や大学機構への職員参加、ポストや権限の拡大などの具体策と実行が欠かせない。運営への責任を持った参加なしには、職員の主体性の確立、急速な力量形成、真の教職協働は難しい。特に重要なのは政策決定機関(過程)への職員の正式参加だ。そのためには学内の各種委員会等へのメンバー参加に始まり、理事や副学長をはじめ幹部スタッフへの職員の任命も大切だ。教職協働から教職幹部の一体的業務遂行への進化なしには、教職の壁を越えた行政管理専門職としての大学アドミニストレーターの実現はできない。

改革を担うチェンジリーダーの育成

最後に強調したいのは、これらの課題の推進を実際に担う現場責任者、リーダーの役割である。チームで仕事をする職員にとって管理者の役割や力量は決定的だ。元気な企業は、中堅層、課長補佐クラスが会社を動かす原動力になっており、現場の実態やニーズを熟知したミドル層が、自立的な動きで経営事業の立案に関与し、市場評価を勝ち取っている。トヨタでは都下の仕事のチェックばかりの「赤エンピツ」型ではなく、「黒エンピツ」を離さない実践型の管理者育成を重視してきた。ところが大学管理者は調整型、実務チェック型のスタイルもまだ少なくない。管理者は業務(現場)と戦略の結び目におり、その自覚や資質が事業の成否に大きな影響を持つ。現場からの発信を基礎におく大学運営の構築こそが、大学の革新性を維持し、持続的な大学改革を保障するが、これを担うのが管理者だ。

年功型の打破、実力主義に基づく管理職人事の刷新や若手幹部の登用、管理業務の水準の向上は、多くの組織改革の中でも最重要課題の一つである。戦略に確信を持ちその実現の先頭に立つのは、紛れもなくこの最前線で指揮を取る管理者集団以外にないからだ。戦略を現場の言葉で語り、課員を組織し、第一線から課題を構築し事業を構想する、この敏感な市場への対応と不断の事業革新こそ、チェンジリーダーたる管理者の今日の役割に他ならない。管理者集団のアドミニストレーターの進化こそが、困難な大学改革の推進を支える。

2011年1月16日日曜日

学生に対する経済的支援方策の在り方

学ぶ意欲と能力があるのに、経済的な理由によって学業を断念せざるを得ない学生を救うための、経済的な支援策の拡充が求められています。

昨年12月24日、中央教育審議会大学分科会学生支援検討ワーキンググループは、「今後の学生に対する経済的支援方策の在り方について(論点整理)」を公表しました。

抜粋版を作成しましたのでご紹介します。

今後の学生に対する経済的支援方策の在り方について(論点整理)(抜粋)

経済・雇用情勢の悪化など教育を取り巻く社会の変化から、経済的に困窮する学生に対する経済的支援の充実や「新たな公共」の担い手を育成するための社会的自立に向けた支援など、社会や学生からの多様なニーズが求められている。

1 現状と課題

(1)学生を取り巻く経済・雇用情勢等について
  • 我が国の高等教育費に占める家計負担の割合は国際的に極めて高く、諸外国の状況と比較した場合、日本の大学等の授業料は高く、奨学金の受給率は低い状況。

  • 親の平均給与に占める大学の授業料の割合が年々上昇するなど、教育費の負担は増加傾向。

  • 経済情勢等の悪化等により、近年の平均給与所得は減少傾向にあり、学生の生活費に占める家計からの給付も減少し、アルバイトや奨学金に依存する学生の割合が増加。

  • 両親の年収が高等教育への進学率に影響しているなどの調査結果もあり、教育の機会均等を図る観点からも、経済的に困難な者が修学を断念することがないよう、一層の教育費負担軽減策を充実することが必要。

(2)これまでの大学教育が有する公共性の役割と課題
  • 大学教育が持つ公共性や学生がこれまで受けてきた公的支援の意義等について、これまで学生に十分認知されていない。大学においては、学生が現在受けている、あるいは過去受けてきた教育自体が公共性を有し、社会から支えられていることを学生に自覚させ、大学での教育を通じて獲得した知識・技能等を現在及び将来においても社会へ還元していくよう促すこと。

  • 大学教育の公共性、教育を通じて学生が獲得した知識・技能、大学教育や研究活動において学生が担っている役割等について、広く社会に対し発信することは、大学の教育活動への公財政投資の必要性を示す観点からも有効。大学においては、教育に投じられた国費やその成果等について、適切な指標等を通じ、大学教育や学生支援等による人材育成の成果をわかりやすく国民へ情報提供する等の取組を促進すること。

2 「新しい公共」を踏まえた新たな経済的支援の在り方

(1)「新しい公共」の概念について
  • 「新しい公共」とは、「支え合いと活気のある社会」を作るため、当事者たちが一定のルールと役割をもって参加する「協働の場」であり、すべての人に居場所と出番があり、みなが人に役立つ喜びを大切にする社会の在り方。

  • 大学教育は本質的に公共を担う人材育成に資するものとして捉えられており、「新しい公共」の概念においても、国民自身が主体的に行動する姿を目指している点は共通。

  • 学生を支えている社会からの公的支援等に対する認識の不足や大学教育を受けた学生が円滑に社会に移行できていない等の課題も存在しており、学生に対して社会との相互関係をより一層意識させること。

  • 大学においては、学生の豊かな経験を生かせるよう、学生自ら参画する教育研究活動やその成果を社会へ伝えるアウトリーチ活動、学内外ワークスタディやボランティア活動等の教育課程内外の活動等に対して適切に助言等を行い、総合的かつ全人的な発達を促す教育活動の中で学生が成長するよう促していくこと。

  • そのためにも、大学において、現在の大学教育の捉え方や学習成果の在り方について、「新しい公共」の概念を踏まえた取組を促進すること。

  • 「新しい公共」の取組を通じ、学生に対し、学生支援を始めとした大学教育が有する公共性を明確化し、自分たちの学びが社会から支えられている事を再認識させるとともに、学生の役割意識を醸成し、社会を支える自立した人としての成長の契機となるよう促していく必要。

(2)新たな経済的支援の取組
  • 学生を取り巻く経済・雇用情勢等が悪化する中、教育の機会均等の確保のためにも、学生に対する経済的支援の充実が求められる。

  • 学生支援等の大学教育における公共性やそれを支える公的支援について、学生や社会における認知が十分でないといった課題も生じており、今後の社会の担い手となる学生に対し、大学教育が有する公共性や学生がこれまで受けてきた公的支援の意義等について十分認知してもらうとともに、学生自ら主体的に役割をもって社会に貢献し、支え合いと活気のある社会を創造できるよう促していくこと。

  • 「新しい公共」の概念を踏まえ、「経済的支援を通じて社会として学生の学びを支えること」と「新しい公共の担い手として在学中から学生が社会に貢献し、役割を担うこと」の循環を形成するといった、学生の「新しい公共」への取組を奨励するなどの大学における学生支援のための環境整備が必要。

(例1)大学における「新しい公共」担い手作り支援

奨学金事業や大学が行う学生への経済的負担軽減策において、学内外ワークスタディ(学生スタッフの雇用)等、学生の経済的負担の軽減のための幅広い援助を行う大学に対する支援を通じた、新しい公共に向けた取組の促進。

(例2)学生の新しい公共の担い手として気づきを促す仕掛け作り

奨学金貸与者等に対する通知において社会への責任と自覚を促し、学内外ワークスタディやボランティア活動等を奨励。
  • 学部生も対象としたSA(ステューデント・アシスタント)等の学内外ワークスタディは、奨学金と異なり、主に大学院生を対象としたTA(ティーチング・アシスタント)やRA(リサーチ・アシスタント)と同様に、役務の提供を踏まえた経済的支援であり、アメリカにおいて、教授のアシスタントや大学内の事務補助、また、小・中学校等でのチューター等の学外での活動など、学生のこれまでの教育研究活動等を踏まえた公共分野における取組に対しての経済的支援が行われている。日本においても、多数の国公私立大学において、留学生への支援や授業補助などの様々な取組を通じて学生に対する支援が行われており、社会の担い手となる学生に対し、主体的な役割を持った活動を促すための経済的支援策の新たな在り方として考えられる。

  • 大学においては、企業や地域住民等の大学を取り巻く様々な関係者に対し、大学という「新しい公共」の協働の場への参画の促進や、大学や学生が自ら主体的に地域社会や企業等と連携した活動などの取組を進めることは重要であり、大学において、それらの取組を支援していくことも重要。なお、大学においては、民間企業からの寄付等を通じた経済的支援など、民間企業等と連携した経済的支援の取組が進められており、様々な企業等のニーズも踏まえた、学生に対する独自の経済的支援の取組を進めていくことも重要。

3 学生への経済的支援方策における見直しや充実の方向性について
  • 近年の財政状況が厳しい中で、限りある資源をいかに有効活用するかという視点も踏まえつつ、真に経済的に困窮している学生に対し必要かつ十分な支援が行えるよう、より適切に制度や経済的支援の在り方について見直していくこと。

  • 様々な経済的支援が行われ、制度が複雑になる中で、進学を希望する者が必要な情報を得られず進路の変更を余儀なくされたり、学生が将来の経済的負担の見通しを立てられず進学を断念する等といったことがなく、学生一人ひとりにとって最適な経済的支援として選択・適用ができるような環境を整えることが必要。各大学においては、種々の経済的支援策についてよりわかりやすく情報提供するとともに、職員等に対する能力開発等の促進や事務局機能の充実等の学生支援体制の強化、事前予約制の導入など経済的支援制度の申請等における改善も必要。

以上のような観点を踏まえつつ、当面の学生への経済的支援方策の在り方について、以下のような課題に対する取組が必要。

(3)学生の進学に係る経済的不安軽減のための方策について
  • 各大学が実施する授業料減免措置において、学生の進学の機会確保のため、各大学の独自の判断に基づき、可能な限り事前予約制度を導入することを期待。

(4)その他奨学金に関する方策について
  • 授業料減免を受ける層は経済的状況がより厳しい者が多いため、真に経済的支援が必要な者に対しては、授業料減免や奨学金等の種々の経済的支援を重複して受けられる等、各種経済的支援施策の実施の際に、大学において適切に連携が図られるよう周知等が必要。

  • 各大学が授業料減免を行う際の家計収入を算定する場合において、経済的負担軽減のために受けた奨学金等の経済的支援による収入について、各大学の自主性も踏まえつつ、学生の経済的負担軽減に資するよう取り扱うこと。

  • 真に経済的に困窮している学生に対し優先して支援が行き届き、また、大学教育を受けた学生が円滑に社会に移行し、活躍、貢献できるよう、大学において、必要とされた制度や取組について見直し等を進めるとともに、検討事項についても適宜検討を行い、必要に応じて見直しを図ること。

2011年1月15日土曜日

大学は自覚を持って社会的責務を果たすべき

最近、文部科学省のホームページに、昨年12月24日(金曜日)に行われた、政務三役による平成23年度文部科学省予算(案)の記者会見の内容が公表されました。
http://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/detail/1301258.htm


掲載されたテキスト版の中から「高等教育関連部分」を抜粋してみましたのでご紹介します。


この中で、鈴木副大臣の「現状維持的大学ではなく改革をしてほしいということが我々のメッセージである。目的意識と計画性を持って大学改革をしてほしい。我が国は人と知恵でやるしかない。人と知恵の正に交差点というのは大学だ。大学のパワーアップが日本の浮沈にイコールかかっている。単に大学の自主性に任せるということから、正に社会総ぐるみで取り組んでいく」「これだけの血税を投入してやっているわけだから、大学も自覚を持って社会的責務を果たしてもらいたい」とのコメントが印象的でした。

大臣

本日、政府予算案が閣議決定されました。平成23年度予算案も、私どもがこれまで訴えてきたように、「コンクリートから人へ」の理念を継承して、我が国の成長の原動力である強い人材、これを実現する観点から、文部科学省予算として5兆5,420億円を確保いたしました。財政状況、極めて厳しい中ではありますが、対前年度マイナス0.9パーセントの微減にとどめ、補正予算・予備費を含めると、対前年度2.8パーセントの増となっております。

特に今回の予算編成の特色であります、元気な日本復活特別枠で要望した10項目については、国民の皆さん方からいただいた28万通に及ぶパブリックコメントに支えられて、粘り強い折衝を重ねられました。その結果、補正予算と合わせて、要望総額の9割を超える予算額を確保できました。国民の皆様、特にコメントをお寄せいただきました多くの方々に、この場を借りまして改めて感謝を申し上げたいと思います。

科学研究費補助金については、これは菅総理のイニシアティブによりまして、要求をはるかに上回る過去最大の633億円の増額が認められるとともに、若手研究者の参画による熟議などを通じて、現場の声として特に要望の強かった基金化が認められることになりました。

35人以下学級と科学研究費補助金の基金化は、先ほども申し上げましたように、政策コンテストや熟議に寄せられた多くの現場の声が実現の推進力となったことを申し添えておきたいと思います。

政策コンテストで7万通を超えるパブリックコメントをいただき、最も国民から支持された大学の機能強化については、大学関係主要経費が6年ぶりに増額に転ずることとなりました。国立大学法人については、法人化以降の基盤的経費の削減傾向に歯止めをかけることができました。また、私立大学等経常費補助についても、対前年度微減マイナス0.4パーセントにとどめて、総額を確保いたしました。一般補助のウエイトを拡大し、併せて税制面の充実も図っております。

政策コンテストの第2位の学び支援に関しましては、奨学金貸与人員や授業料減免人員を大幅に拡充して、保護者の教育費負担の軽減に努めております。また、政策コンテストで4位、6位、7位を占めました科学技術に関しては、対前年度3.3パーセントの増額を確保するとともに、若手研究者支援の大幅拡充、新成長戦略を踏まえたライフ・グリーンイノベーションの拡充、海洋資源確保のための探査システムの構築などを図ることができました。「はやぶさ」後継機の開発は要望満額の30億円が認められました。

詳細は両副大臣からそれぞれ説明がありますが、中期財政フレームの大変厳しい財政制約の下で、メリハリのきいた良い形の予算が編成できたのではないかと思っております。そして、この原動力になりましたのは、政策コンテストや熟議に寄せられた多くの率直な国民の御意見であったと考えております。最後に、文部科学省予算を御支援いただきました国民の皆様方に重ねて感謝を申し上げるとともに、23年度予算、関連法案の成立や、24年度予算編成に向けて更なるですね、御支援もお願いをしたいと存じます。

記者

幹事からお伺いします。科学技術関連の予算ですけれども、総理の指示を受けてですね、要望を大きく上回る形で予算が付くという異例の経緯をたどった訳ですけれども、大臣のこの経緯に対しての受け止めですとか、改めてのこれだけ多くの予算が付いたことについてのご感想をいただけますでしょうか。

大臣

科学研究費の補助金についてはですね、これは昭和40年の制度創設以来、いわゆる今日まで長い歴史の中で最大となる633億円の増額を実現をした、総額2,633億円を計上しております。これはですね、私どもが厳しい財政状況の中ではありますが、概算要求、そして要望額の2,100億円を上回る予算になります。これはひとえに、菅総理大臣のですね、強いイニシアティブがあったと。特に総合科学技術会議においてもですね、総理はわがままを言わせていただきたいという、そういう言及までしておりますようにですね、今の我が国の国際的な位置付けから考えますとですね、将来に向けて、正に人への投資、これを実現をしたいと、そういう強い強い熱意だと思います。

同時にですね、ノーベル化学賞のお二方の先生の受賞、あるいは「はやぶさ」の帰還、そして微粒子の持ち帰り、こういった画期的なですね、成果が多くの国民に対しまして勇気と励みを与えたと、そのこともですね、私は大きな力であろうと思っております。したがって、総理の指導力に敬意を表しますとともに、担当大臣としてはですね、これを有効に活用しなきゃならんなと、このように思っております。それから、これまた重要なことでありますが、これは研究者からですね、特に要求・要望されておりましたけども、年度にとらわれない研究費の制度を実現する、いわゆる基金化についてもですね、認められておりますので、第四期の科学技術基本計画の初年度を飾るにふさわしい予算だと思っております。関係者の皆さん方、また皆さん方にもですね、改めてお礼を申し上げたいと思っております。

記者

特例的にというかですね、今回いろいろと話題がある中で、一過性のブームであったりとか、今年特別にということだけで、来年以降ちゃんと続いていくのか、ちょっと気も早いとこがあるかもしれませんけども、来年以降もちゃんとこういうことがですね、確保していけるのかどうか、その辺についての意欲はいかがでしょうか。

大臣

これもある意味では大変なまた課題になりますけれども、私どもはこれを一つのスタートにしてですね、これはまた次の年度に向けてもですね、しっかり取り組むことが重要であろうと思っております。したがいまして、検証すべきことは検証する、あるいは奨励すべきことは奨励する、そういった関係者の皆さん方のですね、今後更なる一つの努力も強く求めていきたいと思っております。

記者

大学予算の関係なんですけども、国立大学運営費交付金がですね、骨太の方針などでですね、予算が削られてましたけれども、減額案が廃止になったということと、併せて特別経費ということで、減額と同額が計上されておりますけれども、これに対しての受け止めというか、どのように思われたかということを。

大臣

これはですね、大学関係者のある意味、悲願ということでしょう。各大学もですね、国私立問わず強い強い要望がありましたし、先ほども触れましたように、パブリックコメントではですね、そこに関係する多くの学生も、こういったことを強く望んでおりました。したがって私どもとしては、小学校の少人数学級に並んでですね、やっぱり我が国のトップレベルの水準を目指すという大きな旗印から、もうこれは引けないところでした。したがって結果的にはですね、そのことを理解いただいて、これからまた大学もですね、元気を出していただけるものだと、私は強く思いますし、またそう期待を持っております。

記者

他方で、私立大学関係予算に関しては、去年に比べて0.1パーセント減で、大学関係でいうと0.39減だと思いますけれども、国立大学がこれでトントンということになるとすればですね、まあ私学は若干減るわけですが、それについてどういうふうにお考えになってるかどうかお聞かせください。

大臣

私立大学等経常補助については、これ一般補助のウエイト拡大ができました。平成22年、約66パーセントありましたけども、平成23年度予算では88パーセントになっておりまして、同時にですね、学校法人の寄附の税額控除制度が初めてできましたので、税制面においてはですね、かなり充実しておると、そのように認識をしております。

記者

復活特別枠の扱いなんですけれども、政策コンテストではルール違反だとか厳しい評価を下され、結果的に9割を超える形で予算確保できて、結果オーライという部分もあるとは思うんですけど、その途中経過の紆余曲折、かなりブレがあった印象も受けたんですけど、こういった予算の編成過程について、どうあるべきだとお考えでしょうか。

大臣

いわゆる政策コンテストの継続をこれからもするのかどうかということにもかかわる話ですが、私はですね、政策コンテストというのはあくまでも最終的には政治決断で決定しますけれども、やはり幅広い国民の声を聞くという意味では非常に良いことではないかと思っております。

したがってですね、24年度予算編成について、どうするのかこうするのかというのはですね、これは正に国家戦略担当大臣や財務大臣が中心となってですね、今後検討されることだと思いますけれども、私としてはですね、どういう形になることになってもですね、やっぱりこのような国民のですね、生の、それらの地域・現場の声を聞くということはですね、政策決定過程にあってもいいんではないかというふうに思っております。

したがって、我々はもう予算に限らずですね、文部科学行政を進めていく上で、常にもう決まったからいいじゃなくて、できるだけ現場主義に立ってですね、自らが進めておる政策の是非について不断のですね、検証をしていく、このことが大事じゃないかと私は思っております。したがって今回はですね、ある意味ではユニークな、文部科学省としての、ある意味では積極的なですね、取り組みだったと、私はそういうことに考えております。

鈴木副大臣

大学の主要経費につきましては6年ぶりに531億円の増額を図ることができました。運営費交付金については0.5パーセントの削減ではございますが、今回新たに基盤的経費といたしまして、国立大学教育研究特別整備費という事業といいますか、項目を新設をいたしました。それと併せまして、基盤的経費の確保ということに努めたわけであります。

しかしながら、これについては留保条件がございまして、大学における機能別分化・連携の推進、教育の質保証など、大学改革を推進するということと併せてやることという条件が付されております。真摯(しんし)にこたえていきたいと思っております。

大学教育改革支援の充実でございますけども、おかげさまでリーディング大学院は39億円新規に認められました。それから鳩山前総理の時に決まりました「キャンパス・アジア」、来年4月から始められます。それから菅総理のイニシアティブでございます、米国大学等との協働教育創成、これについても認められたところでございます。

私立大学につきましては、これも先ほど大臣から御説明申し上げました長年の私学からの御要望でございました一般補助のウエイトを20年ぶりに高い比率に復活をいたしました。

授業料減免についても増額が認められております。それから学校法人への寄附の税額控除、これは長年の悲願でございましたが、笹木副大臣の御活躍によりまして創設することができました。

科学研究費補助金の抜本拡充ということで、菅総理ならびに研究現場の強い声を踏まえました。それから、若手研究者の皆さんにお集まりをいただいてユーストリームでも流し、そしてその後、熟議でも議論が活発に行われました基金化が認められました。複数年度の使用が実現をされます。おおむねですね、2万5千ぐらいの科研費のうちの2万件、約8割が複数年度対応ということが可能になるというふうに思っております。若手研究者のいろいろな事務手続き等々、機動的な研究活動に資するというふうに思っております。これについては、学術振興会法の改正が必要となりますので、予算関連法案の提出ということになります。

日本人学生を海外に派遣をし、そしてアジア・アメリカ等の外国人学生を受け入れる。それぞれ7千人ずつ要求をいたしておりましたが、人数としましては要求どおりの査定をいただきました。

国立大学(施設)につきましては、補正予算を含めまして529億円の額でございます。

学生、これは先ほどの繰り返しになりますけれども、奨学金127万人、授業料減免7万5千人ということでございます。

就業力育成支援事業につきましては、仕分け等々の議論ございましたけれども130件、継続分については29億円が認められております。

笹木副大臣

我々政務三役と大臣を筆頭にですが、そしてギリギリのところでは菅総理、官邸の強力なリーダーシップもあって、この科学技術予算については、政権交代前の一昨年に比べても、21年度に比べても234億円の増と、もちろん当初でですが、当初でいっても増と。去年に比べても増という、これを達成することができたわけです。

若手については一つあって、先ほどから話が出ている科学研究費補助金の抜本的拡充、これは総合科学技術会議でも、総理も出席して、私も出席しておったんですが、基金化は、これはやはり絶対に大事だと、総理が議員のお一人お一人に質問して確認をしてリーダーシップを発揮されたということです。

第四期科学技術基本計画の初年度ということですね。注目していただきたいのは、今回の基本計画で対GDP比1パーセント政府の投資ということと、総額25兆円、両方ともが丸括弧とか欄外じゃなくて本文に明記をされたということです。その初年度に当たるということで、これは我々も一生懸命運動しましたし、髙木大臣はもちろんですが、総理のバックアップもあったということだと、そういうふうに考えております。

今の科研費の補助金以外で若手のバックアップとしては、若手研究者が研究に打ち込める環境の整備ということで、優秀な博士課程修了者が生活費相当額を支援される仕組み、特別研究員事業、これの採用者数を1,052名から1,385名に増やす。あるいはテニュアトラック制の普及、制度改革ですね。よく、これは3つ目になるんですが、内向きと言われるわけですが、それは外に行って帰ったときの環境とか、あるいは研究の分野における若手が本当にどんどん伸びていけるか、そういう環境の問題もあると思います。そういう制度の改革もやっているということです。国内機関との所属関係を保ったままで安心して海外で武者修行ができるような、そういう若手研究者戦略的海外派遣事業18億円、200名程度、これを創設もしてます。さらに、長期で2年間研究に海外で専念できる、そのための海外特別研究員事業19億円、新規でこれも確保をしてるということです。

ライフイノベーション、グリーンイノベーション、これは総合科学技術会議、府省連携を図って重点化をということで、概算要求前にアクションプランというのが取りまとめられておりました。これを踏まえて要望を行って、前年比66億円増の778億円を、予算を得ることができたということです。

内容については、iPS細胞等を活用した再生医療、あるいは次世代がん医療の戦略的な推進と、あるいは精神・神経疾患の克服、脳科学研究、こういうふうなものについてライフとしてはやっております。グリーンについては、大学の知を集約し、大学間のネットワークの構築等を目指す、大学発グリーンイノベーション創出事業。そして、基礎段階から革新的な技術の開発までをやる先端的低炭素化技術開発、これに42億円。こうした事業をやっております。

記者

大学関係で何点かお伺いしますけど、国立大学法人運営費交付金が0.5パーセントの下げ幅で縮小したということと、あとプラスで国立大学教育特別整備費が新設されて前年度並を確保したと、このことの意義を改めてお伺いしたいんですが。それに併せて、大学改革を推進することということが条件というような形になっていると、で、1年以内に方策を示すこととなっておりますが、これに対してどのように取り組んで、まあこれ、先ほどの条件が付いた経緯とこれに対してどのように取り組んでいくかと。あともう1点が、大学関係のGPですとかで、事業仕分けで大分厳しい判定出ましたけれども、GPとグローバル30は廃止が考えられていましたけれども、それはちゃんと予算が計上されたと、この経緯について改めてお伺いできますか。

鈴木副大臣

はい、1点目でございますが、これはマニフェスト等々でもですね、国立大学の基盤的経費の削減を、これをなんとか改善をするということの議論をずっと続けて参りました。その中で、今後は運営費交付金と大学教育研究特別整備費を合わせてですね、基盤的経費というふうに位置付けていくと、そういう趣旨で大学教育研究特別整備費というものを創設をいたしました。そして、その両方を足し合わせたものといたしましては、基盤的経費を昨年同額、正に確保したということで、これによって完全に国立大学法人化以降の基盤的削減は食い止めることになりました。

そして加えまして先ほど来、何度も申し上げておりますように、この科研費の大幅増ということにつなげることができて、法人化以降、大変、大学現場、教育においても研究においても厳しい現状になっておりましたけれども、これによってV字回復、予算的にはですね、する第一歩を切れたことは本当に良かったと思っています。

しかしながら、極めて財政状況厳しい中でですね、大学に関しては率直に言って破格の対応を財政当局、あるいは総理にしていただいたというふうに思っております。この厳しい中で納税者の皆様方の血税を投入する以上ですね、正に強い日本復活のために大学関係者は、そのことを自覚していただいて、そして、それぞれの大学としてのですね、いろいろな御努力、効率化の御努力等は今までしていただいたとは理解しております。ぎりぎりのところで踏ん張っていただいたというふうに思いますけれども、更にですね、もっとこの大学界全体として、あるいはいろいろな連携を深める中でですね、この大学の特性というものも踏まえて、そして、この税金の正に投資対効果と、それはもちろん数値化できるものと数値化できないものいろいろございますけれども、正に強い日本を支える元気復活のための強い人材を養成する、あるいは知恵を作っていくという観点でですね、この大学の機能別分化・大学間連携の推進と、あるいは質の保証と、こうした大学改革をきちっと推進してほしいと、こういうメッセージでございます。

具体的にはですね、月曜日に大学関係者と早速お会いをしたいというふうに思っておりますが、既に国大協会長からはですね、この半年程度を目途にですね、そうした検討に着手をしたいと、こういうお話についてはおそらく来週伺えるんだと思いますけれども、そうした御議論をですね、私どもも十分聞かせていただいて、そしてフォローアップさせていただいて、そうした改革案の速やかな、かつ中身の濃いものを作っていただきたいというふうに考えております。

それから、その中でですね、大学のステークホルダーというのは、この社会全般なわけでありますけれども、そういう意味で教育面で申し上げると、やはりもっと実業界の皆様方も大事なステークホルダーの一つでありますから、そういった方々との連携によってですね、日本を担う強い人材を、社会総ぐるみで作っていくと、そういったことも指向していただきたいというふうに思っております。

グローバル30につきましては、仕分け等々ございましたけれども、30億円の要求に対して29億円の額が確保できたことで、グローバル30の事業運営はですね、これでおおむね計画どおり来年度も実施できるというふうに思っております。これにつきましては仕分けがございまして、その後ですね、仕分けは一旦廃止をして、そしてきちっと見直すと、こういう仕分けをいただきました。文部科学省といたしましては、速やかにその仕分け結果を受けてですね、現場の関係者あるいは国際化に関する有識者等によるチームを作り、そしてその方々に、連日連夜精力的な御検討をいただきました。漫然とこれまでの事業を繰り返すのではなくてですね、真の意味でこの国際化の拠点になるようなものにしていただきたいということを強く申し上げ、そして、それに対して大変精力的に委員の方々、関係者の方々に見直しを行っていただいたと、そのことが理解をされたということだと思います。

就業力育成支援事業につきましてもですね、30億円の要求に対して29億円が確保されました。これについても、特に雇用の問題については内閣官房等々が中心となってですね、関係省庁の取組があったわけであります。そこでの、もう一度仕分けを受けての再議論というものをいたしまして、そして中身の精査をいたしまして、就業力育成事業についてはこの当初の事業遂行に可能な29億円の予算を確保できたということでございます。もちろんその運用等々についてはですね、仕分けの意向というものを十分に反映して、そしてこの予算を、無駄使いをしないというのは当然でありますが、いかに生かした使い方にするかということについては、きちっと万全を期して参りたいというふうに思っております。

記者

例えばグローバル30は、どういうふうに組み立て直したのですか。

鈴木副大臣

グローバル30についてはですね、仕分けの方々に十分、既に事業が進んでいると、そしてこの留学生の予約というんでしょうか、見込みを前提にいろいろな募集活動等々をやっていると、こういうことの実態をもう一回把握をさせていただきました。そしてですね、その実行に当たっては、やはりその中身あるいはその目的についてですね、もう一度原点に返って確認をし直すという執行体制及びそのチェック体制についてですね、もう一回きちっと整備していただくということで、今回の結果に結びついたと、こういうことでございます。ですから、より正しいグローバル30についての理解を、内閣というか政府全体で深めていただいたと。それに当たって、その関係者の方々にですね、再度もう一回議論の整理をしていただいたと、こういうことでございます。

記者

GP関係の事業に関して、仕分けの反映の中でですね、新規事業は認めずに継続事業について認めるという判断なんだと思うんですが、これはそうすると24年、翌年度廃止されるという方向になるんでしょうか。

鈴木副大臣

事業についてはですね、繰り返しになりますけれども継続分についてと、こういうことでございます。ですから、来年度はそういったことでやっていくということですけれども、今後のことについては雇用情勢あるいは就業力育成あるいは様々な、特にGPの中で本来事業ではないかという御指摘もございました。それもそういう部分もあるなあとも、仕分け結果は受け止めております。

したがってですね、今回私立大学等経常費補助の中での一般補助の割合の見直し等々も行いまして、各大学がですね、本来事業の中でそうしたことにきちっと取り組めるようなことに誘導していく。それからもちろん特別補助の中でもですね、そうした教育、ガバナンスも含めてですね、質向上にちゃんと自立的に向上が行われるというようなことも特別経費の中にも組み込んでですね、私学助成の運用の中でGPが目指していたようなことはやっていくと。

今回、このGPも含めて、あるいは特別補助も含めてですね、本来一般補助でやるようなことも、これまで一般補助がずっと抑えられてきたと、予算構造の中でですね、無理矢理と言うとややちょっと言い過ぎですが、この私立大学等経常費補助の額を確保するがために特別補助はGPでっていうふうに予算要求の構造がなってきたことも否めないという部分はあるかと思います。その点が、仕分けで指摘された部分もあるということでございますので、本来の姿に立ち返ってですね、教育の質を向上するというのは、これは本来事業という御指摘は御指摘としては大いに受け止めて、こうした対応にさせていただいたと、こういうことでございます。

記者

国立大学の教育研究特別整備費というのは、運営費交付金とどこがどうちがうのですか。具体的にどういったことをするので、運営費交付金とは。何が何が違うのか、分かるように説明してください。

鈴木副大臣

あのですね、運営費交付金は人件費であれ設備であれですね、何であれ使途については限定はないわけであります。この新しく作りました大学教育研究特別整備費というのは、対象はですね、大学運営にとって必要となる設備の整備というふうに使途限定がされているわけであり、そういうことでございます。

今回これを作らせていただいて、何ていいますか、将来のことを言うとやや口が滑るかもしれませんけれども、まずは大学改革の中でですね、例えば連携あるいは機能別分化、機能強化といったある種の中期計画や今後の大学改革の中で位置付けられていくそうした改革に不可欠な設備・機器等々の導入といったものについてはですね、正にこの大学教育研究特別整備費の活用ということについての一定のプランというものをですね、出していただくというスキームになると。

スキームは今詰めてるところですけれども、私のイメージとしてはそういうことを考えています。そして、そうしたその機能別分化・連携の推進あるいは大学改革という、そうしたことに資する、あるいはそうしたことを支えるそうした教育研究特別整備についてですね、私どももその応援をすると、こういう格好になっていくんだろうなというふうに考えています。

記者

大学の裁量で使途を選べる交付金の制度、つまり大学にちゃんと任せるというのが、法人化の一つのPRだと思うんですけれども、それから考えるとちょっと使途的に全部変わってきたなって感じがするんですけれども。

鈴木副大臣

だから、要するにハードに限定はしてます、それは。今まではヒューマンというか、人件費とハードもそれも一緒くたにですね、運営費交付金は使えたわけですね、そういう意味ではハードに限定しているという御指摘はおっしゃるとおりだと思いますが、ただハード整備がゼロの所はないわけですね。それをただ漫然とやっていた、漫然とっていうのはおかしいんだけれど、必要不可欠な維持等々についてはこれ既存の運営費交付金で大学を、何ていいますか現状維持していくと、大学機能をと、いうことは運営費交付金でやっていただくわけでありますが、先ほど申し上げましたように、これからの大学はやはりですね、その機能強化あるいは機能別分化をして、その機能を強化してもらうと。それぞれの個性を理解した上でですね、連携を推進していただくと。こういう現状維持的大学ではなくて、やはり改革をしてほしいということが我々のメッセージでございます。

それについてはですね、やはり目的意識と計画性を持ってですね、大学改革をしてほしいということについてはですね、100パーセント任せてたところから、我々政府と大学一体となって大学の機能強化をやや誘導するということにおいては、ただそれは大学の本来業務ではありますのでですね、ただそういうことのインセンティブになるようなですね、運用をしていきたいということです。正にそれが大学改革を推進するという条件に付されているわけですね。我が国は、菅総理も言っておられますけれども、人と知恵でやるしかないと。人と知恵のですね、正に交差点というのは大学だと、大学のパワーアップが日本の浮沈にイコールかかっているという中でですね、単に大学の自主性に任せるということから、正に社会総ぐるみで政府も、そして社会全体もですね、そうしたことに取り組んでいくと、こういう第一歩というふうに位置付けております。

記者

確認ですが、大学の裁量に任せるという路線を、大学の裁量などに任せてたんではいつまでたっても、大学改革が進まないから、政府側が一緒になってその方向性を意識付けるということでしょうか。

鈴木副大臣

そこまで露骨には言いませんけれども、やはりこれだけの血税を投入してですね、やっているわけであります。やはり大学にも自覚を持ってですね、そうした社会的責務というものをですね、果たしていただきたいという思いを込めているというふうに聞かれれば、そうだと。


記者会見の模様はこちらをどうぞ



2011年1月13日木曜日

いいアイディアを見きわめる

いいアイデアが思い浮かんだかどうか、どうすればわかるのか。その指標となるポイントは次のとおりである。
  1. ワクワクする。いいアイデアが思い浮かぶと、片時もそれを忘れることができなくなる。夜寝る前も、朝起きたときも、それについて考えている。

  2. 一部の人がそのアイデアを拒絶する。そういう人は「それはうまくいくはずがない」「今までやってみたがダメだった」と言うが、それは人生があなたの決意を試しているのだと考えよう。がっかりする必要はない。多くのいいアイデアは受け入れられる前に酷評されるものなのだ。

  3. あなたの能力に合致している。アイデアはあなたの能力を生かすときにうまくいく。そのアイデアがあなたに合っていることの証しである。

  4. 独創的である。誰も試したことのないアイデアなら独創的なアイデアだ。独創性というのは、完全に新しいものを考案するという意味ではない。新しいコンセプトとは、従来のコンセプトを5パーセント変えたもので十分だ。

  5. アイデアを生かす条件が揃う。いいアイデアが思い浮かんで、それを実行に移そうという強い意志があれば、あなたの探し求める条件は自然と揃うものだ。

いいアイデアが思い浮かんだら行動を起こそう。行動を起こせば必ず成功するという保証はないが、行動を起こさないかぎり成功しない。


ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日:2006-06-15

2011年1月12日水曜日

戦略を着実に実現していくことのできる組織づくり

標題は、大学の在り様を真剣に考える大学人であれば誰しもが悩み求め続けるテーマではないかと思います。

岩田雅明氏(共愛学園前橋国際大学入試広報・進路支援センター長)がアルカディア学報(教育学術新聞掲載コラム No.429)に掲載された「戦略を実現できる組織に 意欲を高める組織風土づくり」をご紹介します。


組織が生き残っていくためには、戦略的ポジショニング(Strategic Positioning)と組織能力(Organizational Capability)が必要だとされている。戦略的ポジショニングとは、差別化された存在意義ということで、例えば旅館業界であれば、最高の料理や空間を提供してくれる高級旅館と、家庭的なサービスで廉価で泊まれる旅館というように、それぞれが個性を発揮している状態である。大学の場合であれば、設置学部や教育内容、教育手法、就職支援等のサービス内容がその要素となる。この戦略的ポジショニングの取り方が重要であることはもちろんであるが、大学の場合、人が人に対して、しかも4年間という長期間、教育サービスを提供するという組織体であることからすると、組織能力、中でも構成メンバーの意欲といったことが最も大切になってくると考えられる。

前稿(アルカディア学報421、平成22年10月6日付)でビジョンを持つことの大切さと、ビジョン実現のための戦略づくりという戦略的ポジショニングについて述べたが、今回はその戦略を着実に実現していくことのできる組織づくりについて私見を述べたい。

その大学の魅力的な将来ビジョンが描けたら、それを着実に実現していくことが成果を出すためには当然ながら不可欠である。そのために必要なことは、実施に当たる教職員の意欲である。前稿で、アメリカでの調査によると、強い意欲を持って業務を遂行しているビジネスパーソンの割合はわずか19%という結果であると書いたが、最近、大手企業の人材育成を担当している研修会社の幹部の方に話を聞いたら、日本もほぼ同じか、もしくはそれより悪いというのが現状ではないかと話していた。先日、人事担当者対象の研修会で、参加者に対して自分の会社で意欲的に働いている人の比率はどのくらいかという質問をしてみたところ、最高で80%、最低が20%未満という結果であった。同じ人数の組織であっても、働き方に4倍の開きがあることになるのである。

組織のメンバーの業務遂行意欲を高めるということは、経営戦略における重要な課題の一つで、多くの理論や実践が出されている分野であるが、その前段階として、自分がその業務を推進する役割を担っているということ、すなわち当事者であるという意識を持ってもらう必要がある。やらされているという意識でなく、自分の職務として主体的に行っているという意識である。この意識を持ってもらうためには、ビジョンとその実現のための戦略を共有してもらうことが不可欠である。私の知っているケースでも、この当事者意識の欠如が戦略実施を妨げている例が多いように感じている。優れた戦略だから必ず実施されるはずである、というのは幻想に過ぎないといえるだろう。

では、ビジョンとその実現のための戦略を共有してもらうためには、どうしたらいいのだろうか。そのためには関わってもらうことが不可欠であると思う。出来ればビジョンを描くという最初の段階から、関係している教職員に関わってもらうことである。人は関わることによって、はじめて出来上がった戦略を自分の戦略と意識することができるのである。

戦略の遂行に当たる人たちに当事者意識を持ってもらうことができたら、つぎはその遂行意欲を高め、かつ継続していくことが必要となる。人の意欲は、欲求を充足させようとすることで生じると言われている。有名なマズローの欲求段階説によれば、人の欲求には段階があって、低次の欲求が満たされると次の段階の欲求が出てくるという。具体的な内容としては、もっとも低次な生理的欲求から始まり、安全の欲求、所属の欲求、承認の欲求、自己実現の欲求と五段階の欲求からなっている。生理的な欲求を満たすための働きは、「食うために働く」ということになる。現在の日本の職場、特に大学ということでいえば、3つ目の所属の欲求までは満たされているといっていいと思う。したがって、意欲を引き出すために必要とされるのは、その上の『承認の欲求』ということになる。『承認』という言葉は普段あまり聞きなれない言葉であるが、文字どおり認めるということである。その人の存在意義を認める、その人の努力や貢献を認めるといったことである。

企業の社員旅行や社内運動会の復活とともに言われ出してきた言葉に、エンゲイジメント経営がある。厳密な定義ではないが、組織のメンバーが自己の成果のみ追求するのでなく、お互いが尊重し合い、成長を認め合う風土の中で組織の成果と自己の成長を図っていける経営の在り方というような意味である。このような経営手法は、個人の成果というものが見えにくい、大学という組織には非常に相応しいものではないかと思う。例えば、一年間を振り返って、各個人、各部門が大学のためにどのように貢献したかということを確認していくというようなことをすることで、教職員の『承認の欲求』を満たしていくことができるのではないだろうか。また認め合う中から、権限委譲による現場尊重という風土が育まれ、そこから自己実現の機会増大という、さらなる意欲喚起のサイクルへと繋がっていくことができるようになる。

このような承認による意欲喚起とともに、組織風土づくりに欠かせないものとして『問い』を共有するということがある。情報を共有することが大切である、とよく言われる。確かに情報を共有できていないと現状認識が一致せず、正確な判断ができないので、情報の共有は重要なことである。ただし、現在のように大学を取り巻く環境が厳しくなり、各大学に個性的な価値創造が求められている時代においては、情報だけでなく「ビジョンに向かうために必要なものは何か」という『問い』を共有し、教職員一人一人がその『問い』に関して考え続けていくことが求められていると思う。そして、『問い』は組織のけん引力になるとともに、組織の風土をつくることにも作用するのである。

ある大手化粧品販売会社の例がビジネス誌に紹介されていたが、その会社では目標売上達成が社内の至上命令であったので、とにかく売ることが最優先であったという。すなわち、その組織の『問い』は「売るためにすることは何か」というものであった。しかし売りつけるという意識が強く出てしまい、客はかえって離れて、意図とは逆に売上は下がっていってしまった。業績低迷の中で考え出した戦略は、顧客満足度を上げることで売上の回復を図るというものであった。そうなると、今度は社内における『問い』は「顧客の満足度を上げるためにできることは何か」というものになる。その結果、離れた客足が戻り、売上は以前を上回る状況になったという。

『答え』を与えて、やるべきことを示しても行動は起きるのであるが、革新を起こすためには『問い』を発し続けることが必要である。皆さんの大学ではどのような『問い』が求められているのだろうか。

2011年1月11日火曜日

アドミニストレーターへの飛躍 1

新年に入り1週間が経ちました。皆さんは、大学職員(事務職員)としての今年一年の抱負をどのようにお考えでしょうか。

今回は、今私たち大学職員に何が求められているのか、そのために私たちは何を考え、どう行動しなかればならないのかなど、大学職員のあるべき姿について、ひとつの示唆を与えてくれる論考をご紹介します。

日本福祉大学常任理事 篠田道夫氏が、文部科学教育通信(No258 2010.12.27)に掲載された「戦略遂行を担う職員」です。年頭にふさわしい内容だと思います。ご一読いただければ幸いです。

戦略遂行を担う職員 1

戦略経営の確立

「大学の市場化」の中、私大の最重要課題はこれと切り結ぶ、目標を鮮明にした経営の確立であり、私大の職員像は、まさにこの課題を担い推進することにある。

この間、私学高等教育研究所が訪問調査した大学経営の特徴を要約すると、第一に、ミッションに基づく戦略や目標が明示され、強みや伝統に特化した事業に資源を選択集中している。しかもトップダウンだけではなく、現場からの適切なボトムアップを生かす仕組みが機能している。また専門的な企画部門を置いて計画をリサーチ、立案している。第二に、こうした戦略を実行計画に落とし込み、教育計画や業務計画、予算編成に具体化し、PDCAサイクルが年間スケジュールとして実体化している。第三には、そうした戦略をトップ自らが直接構成員に語り掛け浸透を図るとともに、各組織が政策推進に知恵を出し、責任分担や期限をはっきり定めて実践に取り組む組織運営に努力している。そして第四に挙げられるのは経営・教学の政策一致、事務局も含む全学協力体制の構築だ。

戦略遂行を担う職員

では、なぜ職員がこうした改革推進に中心的な役割を担い得るのか。今日、戦略が現実課題の解決に有効性を持つためには、現場の実態から出発し、実際のデータや現実の問題点に立脚したものでなければならない。

私大の職員は経営や数学の現場におり、学生と接し、大学の評価に繋がる高校や企業や地域との接点に立っている。外からのニーズ、要望あるいは批判がまず最初に来るのは、この現場にいる職員のところであり、学長や理事長ではない。ここがどのような感度、問題意識を持って業務を遂行し、またそこからどんなレベルの提案が出てくるのか、ここに大学総体の改革水準が規定される。

厳しい環境の中で改革を前進させようとするとき、現場で教育・研究を支え、財政・経営を担い、学募や就職を推進する職員の、まさに開発力量が問われている。

本学の創立50周年式典で、当時トヨタの社長だった張富士夫氏に「ものづくりは人づくり」のテーマで講演していただいた。トヨタが世界の先進をいき、他の追随を許さないのは、個々の技術や生産システムの優秀さではない。根源は、現場からカイゼンし続けることのできる「トヨタのDNA」、進化能力の伝承、すなわち「人づくり」にあり、その育成システムが簡単には真似ができないということだ。

職員は、大学のすべての分掌業務の客観データを持っており、大学のあらゆる政策や計画は、こうしたデータや情報、経験の蓄積をベースに成り立っている。教員は教育行政に一部は従事しているが、大学職員は全員が大学運営を、業務を通して末端まで担っている。事業や計画の素案の立案、決定後の具体化や執行は、そのほとんどが職員の手を経ており、正確な現状分析や課題設定、適切な解決策の立案の総和で、大学全体が動くことになる。

戦略とか中期計画とかひと括りで言っても、それは、分解すれば、教育支援、就職、学募、地域連携、財務など、一つ一つの分掌になってくる。この一つ一つが、他大学より一歩でも進んだものにならない限り、政策全体の優位性は確保できない。つまり、個々の分掌の業務遂行レベルが全体政策の水準を決めることになる。

職員の「専門性」「プロフェツショナル」

ではあらためて職員の専門性とは何か。この議論には、求められるのがスペシャリストかゼネラリストかという議論が付いて回る。職員のこれまでの処理型業務の反省から専門職化を追及する向きも多い。しかし狭い専門家でも職員のプロとは言えないし、数学や経営を動かし得れば、ゼネラリストでも専門家だと呼び得る。要はプロフェッショナルな職員とは何かということだ。

今日の職員業務は多くの分野に細分化し、専門化している。学術情報管理、教育事業やカリキュラム開発、情報教育推進、研究コーディネートや知的財産管理、国際交流事業企画、就職支援やキャリアアドバイザー、学募広報政策、資産運用や財務管理、ビル管理や施設建設、学部申請許認可業務等挙げればきりがない。では職員の専門性の向上は、こうした専門職への特化や資格取得によって実現できるかというとそうでもない。

今日求められる戦略推進を担う職員像を成り立たせるためには、まず共通する基礎的な能力が必要だ-。それはコミュニケーション力や文章力、プレゼンテーション力であり、調整力や交渉力、対人支援力、調査・分析力、論理思考力、そして政策提言力や事業統治力であると言える。この上に、高等教育の歴史や制度、法体系の知識等大学固有の基礎知識が必要だ。さらに、当該大学のミッションや戦略、教育研究の概要、財政や人事の知識等大学個別の知識が求められる。最近急速に進む戦略思考を支えるツール、SWOT分析、マーケティング、ベンチマーク、戦略プランニングさらにはカウンセリングやアドバイザー等の学習も必要かもしれない。

自分の足場である業務の専門力量にこうした基本的な力が加わって、大学全体のあるいは各部課室の目標実現を担えなければ、専門家とは言えない。つまり専門分野の知識や経験がゼネラリスト的視野と結合し、ミッションの前進に結び付く事業や教育の企画、改革、推進ができたとき初めて大学職員としての専門性が身に付く、プロフェッショナルへ一歩前進できたと言える。

アドミニストレーターへの飛躍

つまり、大学アド"〉- ストレーターとは、たとえ高度であっても、つくられた政策や方針に基づく業務遂行だけでは成立しない。現場の状況を分析し、他大学を調査・研究し、その中から先駆的に取り組むべき課題を明らかにし、解決策を立案し、機関決定に持ち込み、予算をつけ実践し評価する、この一連のサイクルをマネジメントすることが求められる。どんなに専門的な仕事でも、定められた方針、指示された枠組みでやる業務には限界がある。たとえ限られた分野であっても政策づくりに参画し、また方針を豊かに具体化し、現場から大学をつくり上げる一翼を担うところにアドミニストレーターの本質がある。

大学には膨大な処理的業務、ルーチン業務が存在する。これなしには大学は存立し得ないが、専任業務は、こうした現場の業務やデータをベースにした問題発見や解決策提案に力点を置き、大学の掲げる目標を前進させねばならない。しかし、この開発するという仕事は、前例がなく、すぐにアイディアが出てくるものでもなく、勉強もいるし、調査も必要となる。正解だという保証はなく、常にリスクが伴う。また、改革には抵抗勢力が付きもので、これを説得して決定に持ち込まねばならない。

しかし、ここにこそ専任、常勤の職員の真の役割がある。事務処理から業務目的そのものの達成(創造)へのシフト、教育事務から教育づくりへの参画が求められている。この事務の目標実現から教育研究目標そのものの実現への目標の転換高度化は、単なる事務業務の変化ではなく飛躍がいる。受動的業務遂行の意識から根本的に脱却し、大学づくりへ主体的に責任を持って参画する意思が求められる。孫福弘氏が「『戦略的に仕事をする』というアプローチによって、初めてミッションの達成も、業務の卓越性も獲得できる」と言ったのはまさにこの指摘である。専門性を持った職員からアドミニストレータヘの飛躍が求められている。

2011年1月10日月曜日

正月の風物詩・どんと焼き

近所の神社で行われた町内会主催の「どんと焼き」を見に行きました。

どんと焼きとは、正月飾りを焼いて、1年の家内安全や無病息災を願う年中行事のひとつです。

あいにくの天気でしたが、近所の子ども達やお年寄りが松飾りやしめ縄をたくさん持ち寄って燃やしていました。

書初めを燃やし、燃えた炎が高く上がると字が上達するという言い伝えもあるようで、我が家ではしめ縄とともに、子ども達が書いた書初めを持参し燃やしました。



今日は「成人の日」です。各紙の社説をご紹介します。身の引き締まる思いです。

今年も皆様にとりましてよりよい年になりますように。

2011年1月9日日曜日

年のはじめに渾身の一枚

週末に、小学生の娘が参加した書初め大会を見に行ってきました。このような大会は各地で行われているようですが、私が見にいった大会は、県下の予選を通過した小中学生約1200人が出場し、毛筆の半紙と条幅、硬筆の3部門で健筆を競うものでした。

当日会場で発表された課題を制限時間の1時間以内に5枚清書し、その中から自分で1枚選んで提出するというルール。審査は、公開で行われ、各学年の最優秀者が選ばれていました。

子どもたちは、大勢の保護者や引率者が見守る中、緊張しながらも、日頃の練習の成果を発揮すべく一筆入魂の熱戦を繰り広げていました。中でも感心したのは、毛筆に挑戦したほとんどの子どもたちが、昔と違って普段の生活ではほとんどすることのない正座の姿勢を1時間以上続けていたことでした。

このような大会は、子どもにとっても、大人にとっても、とても意義のあるいい取り組みではないかと思った年の初めの一日でした。


健筆を競う1200人の子ども達

2011年1月6日木曜日

財務省との合意にご注目

来年度の大学関係予算の動向については、昨年末ご紹介したところですが、このうち、文部科学省所管の科学技術関係予算については、厳しい財政事情の中で、理系出身の管総理の強い意向もあり、大幅な増額が図られているようです。

政府全体の科学技術振興費は、対前年度18億円(0.1%)増の13,352億円ですが、このうち、文部科学省所管の科学技術振興費は、他府省(環境省を除く)が▲0.9%~▲17.1%の軒並み減額となっている中で、対前年度357億円(4.2%)増の8,929億円と唯一、断トツの増額です。

(関連)国立大学法人運営費交付金の削減止まらず(2010年12月26日 大学サラリーマン日記)



関連して少し気になる記事をご紹介します。

憂楽帳:主計官の苦笑(2010年12月28日 毎日新聞)

「スーパー高度の政治判断です」。研究者に配られる科学研究費補助金が文部科学省の要求額より533億円、25%も上積みされた異例の11年度予算案。記者に問われた財務省主計官は、苦笑交じりに理由を述べた。

「多いにこしたことはないが、積算根拠があるのは要求額まで」と文科省も当惑を隠さない。「科学技術予算を減らすな」という菅直人首相の意向で伸縮自在な補助金を増額、中でも少額の若手支援拡大で帳尻を合わせた。

事業仕分けで批判を浴びたスーパーコンピューター開発や宇宙開発もほぼ満額が認められ、国立大の収入の大半を賄う運営費交付金も、大学法人化後初めて減額に歯止めがかかった。

「理系首相の英断」に沸く関係者。だが、喜ぶのは早い。大学予算の据え置きは1年以内に大学間の合従連衡や「すみ分け」の改革案を出すとの条件付き。定員割れの私学には容赦なく補助金半減の「規律強化」で臨む条項も入った。「未来への投資」のため借金してツケも未来へ回すのか、増税か。苦笑の意味は深そうだ。

http://mainichi.jp/select/opinion/yuraku/news/20101228k0000e070060000c.html


特に、最後のパラグラフは気になります。どういうことなのか詳細はよくわかりませんが、、今後の財務省や文部科学省の動向を注視しておく必要がありそうです。


参考までに、財務省が作成しホームページで公表している「平成23年度文教・科学技術予算のポイント」という資料から、大学関係予算の特徴と思われる主な記述を拾ってみました。

国立大学法人運営費交付金
  • 国立大学等が安定的・継続的に教育研究活動を実施できるよう、基盤的経費を措置(16年度法人化以降、対前年度最小減額、最少減率)

  • 意欲と能力のある学生が経済状況にかかわらず修学の機会を得るために授業料減免枠を拡大

大学教育研究特別経費
  • カリキュラムや組織の見直しなど、積極的に大学改革を推進する大学を重点的に支援することとし、そのための教育研究環境整備として、国立大学法人施設整備費補助金の中に58億円を新設

  • 国立大学法人運営費交付金と合わせると大学の基盤的経費は前年度同額以上(+7百万円)を確保

※下記の大学改革を推進することを条件

大学改革について

大学改革について文部科学省と以下の合意がされた。

時代の要請に応える人材育成及び限られた資源を効率的に活用し、全体として質の高い教育を実施するため、大学における機能別分化・連携の推進、教育の質保証、組織の見直しを含めた大学改革を強力に進めることとし、そのための方策を1年以内を目途として検討し、打ち出すこと。


私学助成
  • 教育情報や財務情報等に係る情報公開を促進(「経常費補助金取扱要領」の改正を予定)

  • 定員割れ、定員超過、高額給与を支払う大学等への補助金の減額を強化

奨学金事業(無利子)
  • 意欲と能力のある学生が経済状況にかかわらず、修学の機会を得ることができるよう貸与人員を増加。有利子奨学金も含めれば、8.8万人の貸与人員の増

  • 奨学金の貸与基準については、「主たる家計支持者1人の収入」から「共働き世帯については双方の収入」で年収要件を見ることとする改善措置を実施

科学研究費補助金
  • 過去最大の増額を行い、挑戦的なハイリスク研究や若手を含む幅広い研究者からのニーズが高い小規模な研究を柔軟に支援するために、基金化*1を初めて導入

*1:独立行政法人日本学術振興会に基金を設置し、後年度の研究費を含めて一括措置することにより、研究の進捗に応じた資金配分の前倒しや次年度使用を容易にするもの

2011年1月4日火曜日

新春おすすめ読本

広島大学教授・高等教育研究開発センター長の山本眞一さんが、文部科学教育通信(No258 2010.12.27号)「冬休みの読書~2010年新刊から」で、高等教育の現状や今後を考えるに当たって参考となる書物を紹介されていました。一部ご案内します。


大学の危機(草原克豪著・弘文堂)



ホームレス博士(水月昭道著・光文社)




大学教授の資格(松野弘著・NTT出版)



教育政策入門 3(渡辺一雄著・玉川出版部)



教育政策入門 4(渡辺一雄著・玉川出版部)



日本の留学生政策の評価(佐藤由利子著・東信堂)


現代日本の大学革新(清成忠男著・法政大学出版部)


2011年1月3日月曜日

謹賀新年

新年明けましておめでとうございます。
旧年中はこの日記を気にしていただきまして誠にありがとうございました。

2011年 初日の出

年末からの記録的な大雪により、交通網の遮断や停電などで大変な状況に遭遇され、平穏な年明けとはいかなかった方々も多数おられたようですが、皆様はいかがでしょうか。

来年度の大学関係予算はなんとか激減に歯止めがかかったようですが、一方、次世代にツケを廻し、甘いことばかりを語り、現実の厳しさには向き合おうとせず、この国の将来のために真摯に国民に負担を語ろうとしない日本の愚かな政治は健在のようです。

迷走する民主党政権に振り回されるこの国の在り様は、どこか大学の経営に似通ったところがあります。今年は、理屈、評論から、実行、実践、実現、実績へ着実に移行できる一年でありたいと心に念じてがんばりたいと思っています。

今年もどうぞよろしくお願いいたします。

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