2011年1月20日木曜日

大学の社会的責任

大学において、ガバナンス、コンプライアンス、アカウンタビリティ等を考える際に、その前提として「大学の社会的責任:USR(University Social Responsibility)」を十分に認識しておくことが必要になります。

今回は、日本私立大学協会教育学術オンライン(平成18年 第2243号(8月23日)第2247号(9月27日)第2251号(10月25日))に掲載された、新日本監査法人 公認会計士 植草茂樹さんの論考「大学がUSRに取り組むために」を抜粋してご紹介します。少し長くなりますがおつきあいください。


大学にしかできない社会的責任

組織の社会的責任を考える際には、組織と「社会」のあり方を考えることが必要である。社会を構成する「市民セクター、企業セクター、政府セクター等」において、大学がどのような役割を果たし、どのような存在意義を示すべきなのかを考えることは重要である。小さな政府を目指す中で、企業や市民に求められる役割は大きくなっていくが、大学は(違った立場で)企業や市民の先頭に立って社会課題の解決に自ら取組み、先導していく役割が期待される。大学は教育・研究を通して、未来を創造する役割を担っている。その中で潜在的社会課題を予測し、問題の提起を含めて事前の取組みを教育・研究活動により積極的に行うことが、まさに大学独自の社会的責任を果たすことになるのではないか。

少子化が進む中で、大学の経営状況は厳しい時代だが、それぞれの大学が社会の中での存在意義を見出すことは、社会にとっても大学にとっても持続的発展につながる。今までも私立大学においては、建学の精神や経営戦略・経営計画が存在し、大学としての存在意義を発揮してきた。ところが、国立大学が法人化され個性を打ち出しており、国立大学と私立大学とは何が違うのかが見えにくくなってきている。改めて、自大学としての「社会」の中での存在意義が問われるだろう。大学という高等教育機関が環境保全を含む社会的責任を果たすことによって、持続可能な社会の実現がより確実になり、その結果大学自身の持続可能性を高めることが可能となると考えるべきであろう。

大学は環境の保全もしくは社会の持続的発展に資する教育・研究を積極的に行い、学生や地域等の取組みについてサポート・指導する役割が求められ、かつ持続可能な社会作りを先導していく存在となるべきではないだろうか。これを個々の研究者単位ではなく、大学全体で戦略を構築した上で組織的に実施していく経営体となることが期待される。多くの大学において、CSRに関する講座等を設けたり、文部科学省が「現代GP」の中で地域活性化や持続可能な社会につながる環境教育というテーマを設けたり、東京大学等の国立大学が中心となって「サステナビリティ学」を創設したりといった取組みが始まっている。また学生のボランティア等の自主的な取組みを大学が積極的に支援し、大学の戦略と結びつけることも重要であろう。学生の取組みは、マスコミ等に取上げられイメージ向上につながる効果もありえる。

社会コストを考える際に、例えば犯罪者が増加したため企業が税金を払い刑務所を増やす政策よりも、予防的に企業が雇用の拡大・教育機会の提供を行ったほうが、社会全体としては効果的であるといわれる。その点でみれば、大学はまさに教育・研究において予防的機能を発揮できる存在である。教育・研究への資源配分は社会コスト全体を考えても結果的に効果的であることを、もっと社会に積極的に説明することが必要なのではないだろうか。


大学を取り巻くステークホルダーとその課題

社会的責任を考える際にはまず、自大学のステークホルダーとその関係性を確認し、各ステークホルダーからの影響と大学が与える影響を整理することが必要である。

次に、ステークホルダーからの期待や要請を分類し、自大学の経営方針や戦略を踏まえ、どの課題を優先的に取組むべきかの優先順位づけを行う。優先順位づけにおいては、自大学独自の取組みが社会課題の解決に貢献・寄与できるものを優先させることも考えられる。

大学におけるステークホルダーには、学生・保護者・卒業生・教員・職員・企業・寄付者・マスメディア・格付機関・地域住民・市民社会・国際社会・政府・私学事業団・高等学校などが考えられる。また大学は未来創造の先導的役割を果たす役割があり、将来の世代も視野に入れる必要がある。

大学が社会的責任に取組む際の主要課題は、ガバナンスに関するもの、コンプライアンスに関するもの、アカウンタビリティに関するもの、環境・人権・労働環境・コミュニティ参画等の社会課題に関するもの等様々想定されるが、自大学がどのような方針で取組みを行っていくかを、ステークホルダーとの関連で考えることが必要である。


アカウンタビリティ(情報開示)のあり方

社会的責任活動を通して、ステークホルダーとの良好な関係構築を考える際には、ステークホルダーとのコミュニケーションが欠かせない。コミュニケーションには、大学が積極的に情報開示を行うことから始まる。

大学の情報開示の内容・手法は、統一された考えや手法によって行っている大学は少ないように思う。大学案内にしても、どちらかといえば受験生募集のための情報開示に力点が置かれてはいなかっただろうか。また情報開示のあり方にしても、学部ごと等に様々な冊子が存在し、大学としての統一感が図られ情報開示がなされていただろうか。大学からの一方的な情報開示ではなく、ステークホルダーとのコミュニケーションへの取組みも必要となる。

ステークホルダーとのコミュニケーションツールは、冊子やHPだけではない。学生に対しては授業やポスターを通してだけでなく、いかに大学の取組みを理解してもらうかを、様々な形で伝える努力をすべきである。一部の大学では事業報告書を学生に送付しているが、教職員が学生に対し積極的に説明し質問を受けることも重要ではないか。例えば、立命館大学が学生・保護者等に「財政公開・大学公開」という取組みを行っているが、職員が財政等の状況を、積極的に学生・保護者等に説明されている。また、授業評価を行う大学は多いが、学生に適切にフィードバックを行うことや、学生からの大学への声(要望・期待など)を聞く窓口を設け大学経営に取り入れていくことも必要である。学生は将来の保護者になり寄付者になる存在であり、大学の理念・取組みを理解してもらうことは大学の持続的な発展にとっても重要となろう。授業料に対する説明責任も今後は課題の一つとなるだろう。授業料は他大学に比べてどうか、授業料は何のために使われているのかといった声に、これからの大学は応えていくことが必要となるだろう。

また学生だけでなく、教職員・企業・地域社会等とも積極的な対話を通じて、社会的責任活動に対する大学の取組みや将来の方向性を明らかにし、ステークホルダーからのニーズを確認していくことも必要である。

今後とも大学に向けられる目は厳しくなっていくと考えられるが、大学が社会的要請を踏まえて経営を行い、大学と社会が将来目指すべき方向を多くのステークホルダーに伝え、未来の社会を先導できる大学が、今後生き残っていくのではないだろうか。


大学におけるリスクマネジメントの広まり

最近、大学において「リスクマネジメント」が注目を集めており、実際に取り組んでいることを伺うこともある。これまで大学は、リスクマネジメントに取り組むメリットがなかったとも言われてきた。ここ最近になって、なぜこれだけ注目されてきたのだろうか。

民間企業の場合、リスクマネジメントに取り組まなければ、仮に不祥事の対応に誤ると、ブランドイメージが一気に低下し、売上減少、また最悪のケースでは、倒産に追い込まれることもある。しかし、大学の場合、仮に不祥事があったとしても、学生募集、ひいては退学率に大きく響くことはなかった(逆に入試の時期は、多少緊張感を持った対応が求められるが)。

しかし、性善説を前提とした大学においても、社会からの目は厳しくなってきた。公的資金を使う存在、教育機関として、高度な職業倫理が要求されるようになり、リスクマネジメントに失敗すれば、社会から批判を浴びることになる。一方で、大学を相手取った訴訟も確実に増加しており、訴訟リスクを軽減するためにも事前の策を適切に講じておく必要がある。大学もひとつの経営体として捉えるのであれば、リスクマネジメントは必要不可欠になってきたといえる。

例えば、代表的なリスクに「教育上のハラスメント」問題があるが、大学として対応を誤れば、マスコミ等から一斉に批判が集中する。学生に対して、日常的に適切に相談・対応を行っていればよいが、行えなければ学外に簡単に告発され、ケースによっては裁判沙汰にもなってしまう。最近では、研究費不正の問題も多く批判されているが、今まではどちらかといえば研究者個人の資質の問題を批判されてきたのに対し、今後は大学としての管理責任を問う声に変わってくるだろう。

さらに、大学病院などはリスクの塊といってもよい。今後、大学はこれらの多様なリスクに対して、どのように対応すればよいのだろうか。


リスクマネジメントとUSR・内部統制

会社法改正や金融商品取引法の影響で、民間企業においては、「内部統制」が注目を集めている。内部統制の定義は様々であるが、一言でいえば、組織内部にある「経営管理の仕組み」である。リスクマネジメントやコンプライアンス、内部監査と様々なキーワードが存在するが、全て経営管理の仕組みであり、内部統制の一要素である。

リスクマネジメントとコンプライアンスは別の概念として述べられることが多いが、私は大きな違いがないものと考えている。コンプライアンスを「法令遵守」という狭い概念で捉えた場合は確かに別の概念となるかもしれない。

しかし、桐蔭横浜大学の郷原信郎教授は、「法令遵守」コンプライアンスは間違いであり、コンプライアンスとは「Comply」という本来の語源からすれば「充足する、調和する」という考え方であり、コンプライアンスは「その組織に向けられた要請に応え、柔軟に反応し、目的を実現していくこと」と広い概念で捉えている。この考え方であれば、コンプライアンスへの取り組みとは、大学が社会的要請を経営にどのように取り込んでいくかという「経営そのもの」となる。

例えば、個人情報保護という問題は、本来大学は多様な個人情報を持っている機関であるから、リスク対応が重要であり求められていた。しかし、個人情報保護法ができた途端、それは法令となり、法令遵守コンプライアンスの枠内となった。このように、社会的要請を受けて法律が作られていく中で、法律だけを守っていれば社会的責任を果たせる、またコンプライアンスができている、とはいえない。

USRに取り組むとき、大学が社会からの要請をいかに経営に取り込めるかが、成功の鍵を握る。その意味では広義のコンプライアンスに近い。社会から大学への要請・課題は、短期的また将来的にも考えなければならない経営課題であり、対応していないと、それはリスクともなる。大学全体がUSRの意識を持って経営を行うこととは、長期にわたって持続的発展を遂げるための、長期的リスクマネジメントにつながるのである。


大学におけるリスク・アセスメント

それでは大学におけるリスクとは、どのようなものが重要だろうか。

リスクマネジメントを行う際には、通常どのようなリスクが存在するか、どのようなリスクが重要かを洗い出す必要がある。平成十七年度USR研究会の参加大学内で、どのようにリスク・アセスメントを実施しているかアンケートしたところ、表1のような状況であった。多くの大学において、部署ごとでリスク対応が行われており、学校法人本部でリスクが把握できる体制には至っていないことがわかる。

リスクは大学ごとによっても異なるので一概には言えないが、USR研究会において、一定のカテゴリーごとにリスク・アセスメントを行ったので、そちらを参照してほしい。その一例として、教育分野のリスク・アセスメントの結果を表2に掲げる。当然アンケートをとる時期等によって、順位はかなり変動する。各大学において、全学的にリスク・アセスメントを行うとき、組織内部で行うことも考えられるが、第三者のコンサルタントを使って行うこともありうる。ノウハウを持つ第三者的立場から調査を行うことで、効率的に行うことができ、内部関係者には直接言えない情報の吸い上げが行われるメリットもある。当法人においても、USR研究のノウハウをもとに、できるだけご担当者に負担をかけない手法にてリスク・アセスメントのサービスを提供しているので、ご興味があればお問い合わせ頂きたい。


内部監査への活用

現在、大学において内部監査室を設置する動きが広がってきているが、多くの場合、内部監査をどのように行ったらよいかわからないという声を聞く。内部監査部署としては、監査方針・計画を立てる際に、大学内にどのようなリスク・課題が存在しているかを把握することが重要である。まさにリスクアプローチによる内部監査を行い、大学全体のリスク低減につなげるということである。しかし、リスクマネジメントの仕組みがないため、内部監査室だけでは対応しきれないともいえる。

内部監査は、全ての部署に監査できるわけでないため、まずマネジメントの仕組み(内部統制)をつくり、そのマネジメントのPDCA(プラン、ドゥ、チェック、アクション)が適切に機能しているかを検証することが、監査の効率化にとっては不可欠である。是非、大学全体でリスクに強い大学・USRを果たせる大学作りを目指してもらいたい。


広がる情報公開の流れ

ここ数年、大学において情報公開が広まってきている。私立大学では私立学校法の改正により財務情報の公開が義務付けられ、財務情報を補完するために学校法人の概要、事業の概要等を記した事業報告書の作成が定められている。ただし、営利企業の事業報告書のように定型的な雛形が詳細にあるのではなく、各学校法人が趣向を凝らして作成を行っている。しかしながら、収支計算書の公開と比較すると、事業報告書については広報誌やホームページへの掲載割合は低い(左表参照)。その中でも開示に積極的な大学は、HPの探しやすい場所に設定したり、読み手に分かりやすい開示の工夫を行っている。財務情報を補完する情報だからという理由で、財務情報が中心の大学や、大学全体の広報戦略の一環として作成を行っている大学があるが、読み手を意識した情報開示を行っているかいないかでは、出来栄えの差は歴然としている。

一方、国立大学法人も法人化後、情報公開には積極的に取り組んでいる。そもそも国立大学法人は、組織、業務及び財務に関する基礎的な情報をホームページ等で開示することが法律により求められているが、定められている事項以外にもアニュアルレポートやフィナンシャルレポートを作成する大学もあり、より積極的に情報公開を行っている。さらに、環境配慮促進法により、今年度から多くの国立大学法人では環境報告書の作成が義務付けられ、九月末までに一斉に公開がなされた。この環境報告書も定型化されていないため、各大学により創意工夫が見られるが、学生が環境報告書の作成に関与している例や、環境教育と絡めて取り組んでいる例も見られる。


ステークホルダーと情報開示

情報開示を行う目的はステークホルダーへの説明責任を果たすためであるが、どのステークホルダーに開示を行うことを目的とするかで、開示する情報は当然変わってくる。特に、私立大学の事業報告書や国立大学法人の環境報告書などは創意工夫の余地が相当あり、どのステークホルダーに向けてどのような情報を伝えたいかという整理をしなければならない。

大学のステークホルダーは、学生・保護者・卒業生・企業・教職員等様々な方が想定されるが、当然報告書の開示対象でまず頭に浮かべるのは学生となるだろう。しかし、事業報告書や環境報告書を最もよく読むのは、実際は教職員ではないだろうか。実際、事業報告書で一番反響があったのが、内部の教職員であったという声を多く聞く。一般的に学校法人・大学は横の情報が伝わりにくいという組織風土であるが、こういった報告書を媒体として、学校法人全体への理解をしてもらうことも重要である。特に学校法人では系列校のことをあまり知らない大学の教職員が、事業報告書を通じて取り組みが理解できたという例もあるようである。

最近、多くの企業でCSR(企業の社会的責任)報告書を作成しているが、表だって言われていないが、内部ステークホルダーである従業員を最も重要な読み手として捉えており、社内で報告書の勉強会等まで行っている。従業員がまず自社の理念・取り組みを理解するという直接的効果だけではなく、例えば営業先での営業の話に使う、従業員の周りで会社のことを話題にしてもらうことを通じて、広まっていく間接的な効果も狙っている。

大学においても、まず教職員に対して学校法人の事業を理解してもらい、間接的に教職員の口から他のステークホルダーに伝えていくという戦略も重要である。例えば、高校に営業に行くときも、大学のことを理解してもらうために、報告書を使って説明するということが有効な手段ともなるだろう。

また学生との関わりにおいては、報告書上で学生の顔が見えるものが様々な読み手に伝わりやすいと感じる。教育・研究等に対する取り組みだけでなく、ボランティア活動や環境配慮活動なども伝えていくことが有効な手段である。できれば学生だけではなく、教職員と学生が一体となった活動を開示していけば、大学全体の一体感を伝えることができる。他には、学生が報告書作りそのものに関与するということも考えられる。実際、環境報告書の作成においては、学生が参加している例、ステークホルダー委員会に学生等が参加している例等、様々な事例が生まれている。とはいえ、事業報告書は事業実施主体からの報告であるため、なかなか学生を参加させるのは難しいという。学生が参加した報告書を実現するツールとしてUSR報告書の可能性が考えられる。


USR報告書に向けて

情報公開・説明責任を果たすのは、USRにおいて重要な視点である。大学がいくら経営努力をしていてもそれがステークホルダーに伝わらないのは、説明責任が十分になされていないからである。また、大学の情報にはプラスの情報ばかりではなく不祥事や事故等のマイナス情報も存在する。このマイナス情報についても適時・適切な開示方法を考え実施していかなければならず、もし、隠したと捉えられると社会から一斉に批判を浴びることになる。大学の持つ情報は、個人情報や機密情報を除けば多くは積極的に開示すべきものばかりである。

事業報告書においてUSRに関する情報を開示する大学が出てきた。特に国立大学法人の環境報告書には社会性情報が付け加えられて報告されている例が多くみられる。この動きは今後ますます加速していくだろうが、今後、是非USR報告書の作成を提言したい。USR報告書には大学と社会の関係を整理して説明を行うことが必要であり、私立大学の存在意義、社会に対するミッション・ビジョン・活動プロセス・結果の開示を行うことが重要である。現状の大学の情報開示においては実施したことを見つけて、その結果を報告している事例が多い気がするが、今後は大学としての方針・方向性や、行った活動のプロセスを重視して情報開示を行うことも期待したい。

USR報告書と事業報告書の違いはなにかという質問をよく受ける。確かに担当者にとっては事業報告書に加えてUSR報告書を作成するのは二の足を踏んでしまうだろう。しかし両者の趣旨はまったく異なる。事業報告書は大学の事業計画を実施できたかどうかという事業の実施報告書であり、USR報告書は大学と社会の関係の中で大学がどのように社会に対して責任を果たしているかというものである。公共性を持つ大学は教育・研究以外にも社会に対して多くの責任を担っているし、教育の質低下が指摘される中、本業に対しても責任ある教育を行ってほしいという社会的ニーズも存在する。社会的要請に対して大学としてどのようなミッションを掲げ、どのような体制で責任を全うできる取り組みを行っているか、そして結果はどうだったかを報告することが重要である。また事業報告書は単年度ごとの報告となるが、USR報告書は未来を先導していく大学の使命としてどのような将来像を示していくのかも重要な要素となるだろう。

USRに関する報告書を社会に示すというのは説明責任を果たす目的もあるが、もっと重要なことは学内の意識改革の仕掛けのひとつとなることである。USR報告書を作成するとなれば一部署だけでは成り立たず、様々な部署を巻き込んでプロジェクトチームを作っていくことが必要となる。そのプロジェクトの議論の中で学内のミッション・ビジョンを明確にしていくことや、ステークホルダーの意見を集約していくこと、大学と社会の関係・取り組みを整理していくことが望まれる。その中で様々な学内の意見を集約し、統合化していくことも必要である。また報告書作りに学生に参加してもらうことにより、大学のことをよく理解してもらうことができる。

今年のUSR研究会(私立大学の社会的責任研究会)の研究はUSR報告書のモデル*1を提示する活動を行っており、12月にUSR報告書モデルを発表する予定である。これを契機にUSR報告書の作成を検討していただき、大学と社会のコミュニケーションと学内の意識改革につなげていただければと思う。


(参考)私立大学の社会的責任に関する研究報告 平成19年版

編集:私立大学社会的責任(USR)研究会
発売:特定非営利活動法人 学校経理研究会
http://www.keiriken.net/usr.html


*1:USR報告書の記載項目例:報告書の基本情報、USRに関するビジョンと戦略、ハイライト情報、ステークホルダーとの関係、USRマネジメント態勢・建学の精神、行動規範、ガバナンス態勢、コンプライアンス態勢等、パフォーマンスに関する報告(教育、研究、環境・社会、経済・財政)、情報の信頼性の向上