2011年1月16日日曜日

学生に対する経済的支援方策の在り方

学ぶ意欲と能力があるのに、経済的な理由によって学業を断念せざるを得ない学生を救うための、経済的な支援策の拡充が求められています。

昨年12月24日、中央教育審議会大学分科会学生支援検討ワーキンググループは、「今後の学生に対する経済的支援方策の在り方について(論点整理)」を公表しました。

抜粋版を作成しましたのでご紹介します。

今後の学生に対する経済的支援方策の在り方について(論点整理)(抜粋)

経済・雇用情勢の悪化など教育を取り巻く社会の変化から、経済的に困窮する学生に対する経済的支援の充実や「新たな公共」の担い手を育成するための社会的自立に向けた支援など、社会や学生からの多様なニーズが求められている。

1 現状と課題

(1)学生を取り巻く経済・雇用情勢等について
  • 我が国の高等教育費に占める家計負担の割合は国際的に極めて高く、諸外国の状況と比較した場合、日本の大学等の授業料は高く、奨学金の受給率は低い状況。

  • 親の平均給与に占める大学の授業料の割合が年々上昇するなど、教育費の負担は増加傾向。

  • 経済情勢等の悪化等により、近年の平均給与所得は減少傾向にあり、学生の生活費に占める家計からの給付も減少し、アルバイトや奨学金に依存する学生の割合が増加。

  • 両親の年収が高等教育への進学率に影響しているなどの調査結果もあり、教育の機会均等を図る観点からも、経済的に困難な者が修学を断念することがないよう、一層の教育費負担軽減策を充実することが必要。

(2)これまでの大学教育が有する公共性の役割と課題
  • 大学教育が持つ公共性や学生がこれまで受けてきた公的支援の意義等について、これまで学生に十分認知されていない。大学においては、学生が現在受けている、あるいは過去受けてきた教育自体が公共性を有し、社会から支えられていることを学生に自覚させ、大学での教育を通じて獲得した知識・技能等を現在及び将来においても社会へ還元していくよう促すこと。

  • 大学教育の公共性、教育を通じて学生が獲得した知識・技能、大学教育や研究活動において学生が担っている役割等について、広く社会に対し発信することは、大学の教育活動への公財政投資の必要性を示す観点からも有効。大学においては、教育に投じられた国費やその成果等について、適切な指標等を通じ、大学教育や学生支援等による人材育成の成果をわかりやすく国民へ情報提供する等の取組を促進すること。

2 「新しい公共」を踏まえた新たな経済的支援の在り方

(1)「新しい公共」の概念について
  • 「新しい公共」とは、「支え合いと活気のある社会」を作るため、当事者たちが一定のルールと役割をもって参加する「協働の場」であり、すべての人に居場所と出番があり、みなが人に役立つ喜びを大切にする社会の在り方。

  • 大学教育は本質的に公共を担う人材育成に資するものとして捉えられており、「新しい公共」の概念においても、国民自身が主体的に行動する姿を目指している点は共通。

  • 学生を支えている社会からの公的支援等に対する認識の不足や大学教育を受けた学生が円滑に社会に移行できていない等の課題も存在しており、学生に対して社会との相互関係をより一層意識させること。

  • 大学においては、学生の豊かな経験を生かせるよう、学生自ら参画する教育研究活動やその成果を社会へ伝えるアウトリーチ活動、学内外ワークスタディやボランティア活動等の教育課程内外の活動等に対して適切に助言等を行い、総合的かつ全人的な発達を促す教育活動の中で学生が成長するよう促していくこと。

  • そのためにも、大学において、現在の大学教育の捉え方や学習成果の在り方について、「新しい公共」の概念を踏まえた取組を促進すること。

  • 「新しい公共」の取組を通じ、学生に対し、学生支援を始めとした大学教育が有する公共性を明確化し、自分たちの学びが社会から支えられている事を再認識させるとともに、学生の役割意識を醸成し、社会を支える自立した人としての成長の契機となるよう促していく必要。

(2)新たな経済的支援の取組
  • 学生を取り巻く経済・雇用情勢等が悪化する中、教育の機会均等の確保のためにも、学生に対する経済的支援の充実が求められる。

  • 学生支援等の大学教育における公共性やそれを支える公的支援について、学生や社会における認知が十分でないといった課題も生じており、今後の社会の担い手となる学生に対し、大学教育が有する公共性や学生がこれまで受けてきた公的支援の意義等について十分認知してもらうとともに、学生自ら主体的に役割をもって社会に貢献し、支え合いと活気のある社会を創造できるよう促していくこと。

  • 「新しい公共」の概念を踏まえ、「経済的支援を通じて社会として学生の学びを支えること」と「新しい公共の担い手として在学中から学生が社会に貢献し、役割を担うこと」の循環を形成するといった、学生の「新しい公共」への取組を奨励するなどの大学における学生支援のための環境整備が必要。

(例1)大学における「新しい公共」担い手作り支援

奨学金事業や大学が行う学生への経済的負担軽減策において、学内外ワークスタディ(学生スタッフの雇用)等、学生の経済的負担の軽減のための幅広い援助を行う大学に対する支援を通じた、新しい公共に向けた取組の促進。

(例2)学生の新しい公共の担い手として気づきを促す仕掛け作り

奨学金貸与者等に対する通知において社会への責任と自覚を促し、学内外ワークスタディやボランティア活動等を奨励。
  • 学部生も対象としたSA(ステューデント・アシスタント)等の学内外ワークスタディは、奨学金と異なり、主に大学院生を対象としたTA(ティーチング・アシスタント)やRA(リサーチ・アシスタント)と同様に、役務の提供を踏まえた経済的支援であり、アメリカにおいて、教授のアシスタントや大学内の事務補助、また、小・中学校等でのチューター等の学外での活動など、学生のこれまでの教育研究活動等を踏まえた公共分野における取組に対しての経済的支援が行われている。日本においても、多数の国公私立大学において、留学生への支援や授業補助などの様々な取組を通じて学生に対する支援が行われており、社会の担い手となる学生に対し、主体的な役割を持った活動を促すための経済的支援策の新たな在り方として考えられる。

  • 大学においては、企業や地域住民等の大学を取り巻く様々な関係者に対し、大学という「新しい公共」の協働の場への参画の促進や、大学や学生が自ら主体的に地域社会や企業等と連携した活動などの取組を進めることは重要であり、大学において、それらの取組を支援していくことも重要。なお、大学においては、民間企業からの寄付等を通じた経済的支援など、民間企業等と連携した経済的支援の取組が進められており、様々な企業等のニーズも踏まえた、学生に対する独自の経済的支援の取組を進めていくことも重要。

3 学生への経済的支援方策における見直しや充実の方向性について
  • 近年の財政状況が厳しい中で、限りある資源をいかに有効活用するかという視点も踏まえつつ、真に経済的に困窮している学生に対し必要かつ十分な支援が行えるよう、より適切に制度や経済的支援の在り方について見直していくこと。

  • 様々な経済的支援が行われ、制度が複雑になる中で、進学を希望する者が必要な情報を得られず進路の変更を余儀なくされたり、学生が将来の経済的負担の見通しを立てられず進学を断念する等といったことがなく、学生一人ひとりにとって最適な経済的支援として選択・適用ができるような環境を整えることが必要。各大学においては、種々の経済的支援策についてよりわかりやすく情報提供するとともに、職員等に対する能力開発等の促進や事務局機能の充実等の学生支援体制の強化、事前予約制の導入など経済的支援制度の申請等における改善も必要。

以上のような観点を踏まえつつ、当面の学生への経済的支援方策の在り方について、以下のような課題に対する取組が必要。

(3)学生の進学に係る経済的不安軽減のための方策について
  • 各大学が実施する授業料減免措置において、学生の進学の機会確保のため、各大学の独自の判断に基づき、可能な限り事前予約制度を導入することを期待。

(4)その他奨学金に関する方策について
  • 授業料減免を受ける層は経済的状況がより厳しい者が多いため、真に経済的支援が必要な者に対しては、授業料減免や奨学金等の種々の経済的支援を重複して受けられる等、各種経済的支援施策の実施の際に、大学において適切に連携が図られるよう周知等が必要。

  • 各大学が授業料減免を行う際の家計収入を算定する場合において、経済的負担軽減のために受けた奨学金等の経済的支援による収入について、各大学の自主性も踏まえつつ、学生の経済的負担軽減に資するよう取り扱うこと。

  • 真に経済的に困窮している学生に対し優先して支援が行き届き、また、大学教育を受けた学生が円滑に社会に移行し、活躍、貢献できるよう、大学において、必要とされた制度や取組について見直し等を進めるとともに、検討事項についても適宜検討を行い、必要に応じて見直しを図ること。