2011年6月8日水曜日

政治は政治の体をなしていない

日本の政局 世界の物笑いになるな (2011年6月8日毎日新聞)

内閣不信任案否決後、さらに混迷を深めるかのような政争劇。被災者そっちのけの権力ゲーム。これでは日本の復興を応援したくてもその気がなえてくるのではないか。

主要8カ国首脳会議(G8サミット)首脳宣言が「日本はこの危機から迅速に立ち直り、より強くなることができると深く確信している」と連帯を示したのはわずか10日余り前だ。菅直人首相の退陣表明で来年のサミットにはまた別の首相が出席する。毎年くるくる首相が代わるのはいつもの日本の風景とはいえ、大震災という非常時に「辞める時期は」「次は誰」と時間を空費する政治が国際社会にどう映るか。世界の物笑いにならないことを祈る。

「3・11」で壊滅的な打撃を受けた日本に世界各国は深く同情し、物心両面で復旧を支えてくれた。だがいつまでも同情しているわけではない。日本が早く復興してくれなければ地域の安定にも世界経済にも不都合が生じる。3カ月がたとうとし、国際社会は震災前の厳しい視線で日本を見始めている。世界の善意に甘えるばかりではいられまい。

確認しておきたい。福島第1原発の事故は日本だけの問題ではない。事故や事故後の処理のあり方の検証もそうだが、なにより現在進行中の原子力災害であり、放射能汚染の行方に神経をとがらせている世界中が一刻も早い収束を望んでいる。日本という国家のグローバルな危機管理能力が問われているのだ。「収束のめど」が菅政権の退陣時期を巡る綱引きの材料にされるだけではあまりにお粗末であり、国際的にも無責任とのそしりを免れないだろう。

震災からの復旧・復興でも、もっと世界の目を意識してほしい。多くの最貧国も含め世界中の人たちが支援物資を送ってくれたのは、被災者の毅然(きぜん)とした態度に強く印象づけられたからでもあろう。私たちはそれから勇気と希望をもらった。にもかかわらず、当事者の日本の政治の振る舞いはどうか。連帯どころか「被災者のことを本当に考えているのはこちら」とばかりに相互非難と責任のなすりつけ合い、足の引っ張り合いを繰り返す。支援してくれた世界の人たちの気持ちを裏切ることになるような気がして恥ずかしい。

菅首相がもうしばらく続けるにせよ、大連立に向け与野党の協議が進むにせよ、原発事故の収拾も復興への取り組みも一日一日が勝負だ。国民の大半が一致結束して事態収拾にあたってほしいと願っているのに、それを実現できない政治は政治の体をなしていない。この政争は世界が見ている。震災に「一定のめど」をつけるのは世界への責務でもある。それを忘れないでもらいたい。

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