2012年4月14日土曜日

働く環境を知る(ドラッカー)

成長するには、ふさわしい組織でふさわしい仕事につかなければならない。基本は、得るべき所はどこかである。この問いに答えを出すには、自らがベストを尽くせるのはどのような環境かを知らなければならない。

学校を出たばかりでは、自分のことはほとんどわからない。成果をあげるのは、大きな組織か小さな組織か。人と一緒にか一人でか。不安定な状況を好むか嫌うか。締め切りは必要か必要ないか。意思決定は速いか慎重か。

最初の仕事はくじ引きである。最初から適した仕事につく確率は高くない。しかも、得るべきところを知り、自分に向いた仕事に移れるようになるには数年を要する。

われわれは気質と個性を軽んじがちである。だがそれらのものは、訓練によって容易に変えられるものでないだけに、重視し、明確に理解することが必要である。決定したことを完全に理解しなければ行動できない人は、戦場には向かない。右サイドが崩れたときには、闘うか退却するかを八秒以内に決めなければならない。もちろん決定に時間を要する者であっても、そのようなときには無理にでも決定するだろう。だが、それでは、せっかくの決定も間違ったものとなる公算が大きい。

得るべき所はどこかとの問いへの答えが、いま働いている所ではないということであるならば、次の問いは、それはなぜかである。組織の価値観に馴染めないからか。組織に緊張感がないからか。そのようなとき人は確実にだめになる。組織の価値観が自らの価値観に合っていないならば、人は自らを軽く見るようになる。あるいは上司が利己的なことがある。上司としての役目、部下を育て引き上げる役目を果たさないことがある。

組織が腐っているとき、自分が所を得ていないとき、あるいは成果が認められないときには、辞めることが正しい道である。出世はたいした問題ではない。重要なことは公正であることであり公平であることである。さもなければ、やがて自らを二流の存在と見るようになる。