2012年7月2日月曜日

始動 「大学改革実行プラン」

去る6月19日に、文部科学省主催の「国立大学法人学長・大学共同利用法人機構長会議」が開催されました。文部科学省は、6月5日に公表した「大学改革実行プラン」などを中心に説明して理解を求めたようです。

会議の様子が、文教ニュース(平成24年6月25日 第2194号)に掲載されてありましたので、抜粋してご紹介します。

森口事務次官の挨拶概要は次のとおり。

本日は、御多忙のところ、本会議にご出席をいただき、厚く御礼を申し上げます。また、各学長・機構長におかれましては、日頃より我が国の高等教育の発展にご尽力いただき、感謝申し上げます。私からは、国立大学法人をとりまく現状について、特に以下の3点についてお話ししたいと思います。

まず、先般公表させていただいた「大学改革実行プラン」についてご説明を申し上げます。

世界各国が高等教育進学率を急速に伸ばし、人材育成に傾注している中で、日本においては、少子化に応じて大学の数を減らすという政策ではなく、都市・地方ともに日本が持続的に発展していくために、高等教育を受ける子どもの質と量の両面の確保をめざし、大学の質を高めていくという政策を採るべきであると考えております。

こうした認識の下、昨年設置された「大学改革タスク・フォース」において、大学改革の方向性を整理してまいりました。

また、4月に行われた国家戦略会議において、野田総理から大学改革を推進すべく、今後の取組方針について取りまとめるよう、ご指示をいただいております。

これらを受け、去る6月4日の国家戦略会議において、平野文部科学大臣から教育改革の方向性について報告を行い、さらに、文部科学省として、翌5日、大学改革について、当面の工程を含めて取り組む方向性の全体像をまとめたものを「大学改革実行プラン」としてとりまとめました。

「大学改革プラン」は、①大学の機能の再構築、②大学のガバナンスの充実・強化をその柱として構成されているものであり、我が国が目指すべき社会、求められる人材像を念頭に置きながら、大学改革の方向性を示しているものです。

「大学改革実行プラン」の詳細は、先ほど担当局よりご説明しておりますが、私からは、国立大学改革についてご説明を申し上げたいと思います。

国立大学の再編や統合自体を目的として政策を推進することが、日本の高等教育の水準を高めることにつながるとは考えておりません。他方で、国立大学法人といえども、未来永劫にわたって今と全く同様の形態で存続し続けることを前提とするのではなく、存在する意義・価値を含めて適切にミッションを見直すことが必要であります。

ミッションの再定義とは、こうした考え方の下、国立大学の各学部の研究科等について、今後のミッションを明確にすることによって、社会に対して当該学部・研究科の存在理由を明らかにするとともに、今後の大学改革の方向性を定めるに当たっての出発点とするものです。

この、再定義した全国86大学毎のミッションとともに、今後の国立大学の改革の方向性をとりまとめ、国立大学改革プランを策定することといたします。文部科学省において、ミッションの再定義及びその後の国立大学改革プランを策定するに当たっては、大学との緊密な協働の下に取り組んでまいりたいと考えております。

さらに、ミッションの再定義と合わせて、効果的な大学関係予算の執行に取り組んでいきたいと考えております。今後は、限られた資源を最も有効に活用していくため、文部科学省の中で大学の状況について積極的に情報共有を図り、高等教育局予算だけでなく、省全体として横断的に支援するよう戦略的・重点的な資源配分に努めてまいります。(途中略)

むすびに国立大学は、我が国の高等教育の中核を占め、多大な役割を果たしているとともに、国民の大きな期待が寄せられております。

他方で、国民から厳しい目を寄せられていることもまた事実であり、率先してスピード感をもって大学改革を実行していただくよう強く期待します。

学長がリーダーシップを発揮し、意欲的・戦略的に改革に取り組む大学については、当省としても、しっかりと支援をしていく所存でございます。各法人の今後ますますの御発展を祈念いたしまして、私の挨拶とさせていただきます。

続いて、坂東高等教育局長が国としての大学改革の基本方針「大学ビジョン」の策定を重点的に説明、特に国立大学の個々のミッション再定義とプランの策定実行、多様な大学間連携の促進と、そのための制度的選択肢の整備などに言及した。特に国立大学改革のロードマップについて詳細に説明した。(途中略)

文科省からの説明に続いて意見交換が行われ、特に「大学改革実行プラン」中の「国立大学改革プラン」に質疑が集中した。中でも「大学ごとのミッションの再定義」について各学長とも関心が高く活発なやり取りが行われた。

各学長からの具体的な質問や意見(骨子)では「プランの目標や方向性は政官財の各方向でどのくらい共有されているのか」「医学等3分野からミッションを再定義するタイムスケジュールを示されたい」「国大協はナショナルセンター、リージョナルセンターの両面から機能強化を図る提言をまとめたが、プランではリサーチユニバーシティやCOCを掲げており対立するのではないか」「第2期中期目標期間中で再定義されたミッションに基づき中期計画を変更するなどの対応が必要か」「プランの公表で大学の仕分けと誤解される恐れがあり慎重に行ってほしい」「大臣は国立大学再編・統合に慎重だったはずだがスタンスが180度方向転換しているのはなぜか」などさまざまな疑問や考えが出された。

これに対して、坂東高等教育局長と芦立国立大学法人支援課長が質問に答える形で国立大学改革プランの趣旨について懇切丁寧に説明した。

坂東局長と芦立課長の説明の概要は次のとおり。

「国立大学改革プランは文部科学省が示したものだが、政官財一丸となって推進していくものと認識している。国立大学は様々な役割の果たし方があり、国立大学だからといってその存在意義は一律の類型にとどまるものではない。ただし地域における国立大学の存在感は大きいので、地域社会、産業支援、人材育成においていかなる役割を果たしていくのか寄せられる期待に応えられる改革を目指していただきたい。」

「大学ごとにミッションの再定義を行い、総論としての国全体の改革と86大学の改革プランがセットとなり、まとめられるものである。いかに存在意義を社会に示していくかという点につき、定量的なデータも踏まえたうえで、ミッションを策定することとなる。スケジュールについて検討中であるが、スピード感を持って大学改革を進めるために、なるべく早くお示ししたいと考えている」

「第一期中期目標、第二期中期目標において、ミッションをどのようにあらわしているのかという点をあわせて踏まえた上で、社会においてどのように存在感を発揮していくのかという点について各大学と協議の上、決定していくことになる」

「全大学が同じような機能を果たしているわけではないという理解が出発点。機能を固定化させる意図もない。世間から見ると国立大学は改革の努力が見えにくいので、いかに説明責任を果たしていくのかというところ」

「大学改革全体のスケジュールについては、平成24年度が改革始動期、25・26年が改革集中期、27~29年が検証・深化期と位置付けられている」

「予算を重点配分するに当たっては、疲弊・衰退している地域産業に貢献するという観点で、大学の中でもとんがった部分に配分することが考えられる」

「大臣のスタンスに変更があったわけではない。統廃合ありきの高等教育政策は、大学の強化につながらないという視点を一貫してお持ちであり、大学が有する機能を最大限発揮するためのシステム改革の必要性を問うているものと考えている。『実』をいかに追究していくかという問題意識である」