2012年12月15日土曜日

沖縄の民意を政権選択の判断基準に

記憶に残したいので、転載させていただきます。


2012選択 沖縄米軍基地 耐えがたき、この断絶(2012年12月14日 東京新聞社説)

米軍基地を減らす、なくす。そのためにいくら投票しても、その思いは届かない。日本の政治はいつになれば、沖縄県民との断絶を埋められるのでしょう。

三年前の前回衆院選では大いに語られながら、今回、ほとんど論戦にはなっていないことがあります。沖縄県宜野湾市にある米軍普天間飛行場の移設問題です。

前回衆院選で、当時の鳩山由紀夫民主党代表は、普天間飛行場は「最低でも県外」移設が望ましいと公約しました。

在日米軍基地の約74%が集中する沖縄。日々の騒音や事故、米兵による犯罪、戦争に加担するという心理的重圧など、基地の負担に苦しむ県民の間で、県外移設への期待が高まったのも当然です。

この選挙で沖縄県内四小選挙区すべてで県内移設反対の候補が当選したのも、政権交代に現状打破を託したからにほかなりません。

ただ、この期待は程なく裏切られます。首相に就いた鳩山氏が名護市辺野古への県内移設に回帰したからです。公約をいとも簡単に破ったことは許し難い。沖縄の民意は顧みられることがないのか。

沖縄県内四選挙区の候補者は今回、現職閣僚や日本維新の会などを除き、県外移設を主張しています。民主、自民両党の候補者を含めてです。いまや県外移設は県民の総意と言ってもいい。

鳩山発言に唯一、効用を見つけ出すとしたら、沖縄の民意を覚醒させたことかもしれません。

しかし、沖縄以外ではどうか。鳩山発言の「後遺症」からか、政権を争う民主、自民両党から普天間返還を実現する説得力のある主張を聞いたことがありません。

海洋進出を強める中国に対抗して、沖縄に基地を押し付けて日米同盟を強化する動きさえある。

前回の衆院選で、治外法権的な日米地位協定の「改定を提起」すると主張した民主党は、「運用改善」へとトーンダウンしました。

垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの沖縄配備の是非も問われる選挙戦の最中に、米軍が本格運用開始を宣言し、日本政府がこれを追認するのも無神経です。

この三年間で沖縄と本土との断絶は、耐えがたいほどに広がってしまったのではないでしょうか。

日米安全保障条約が日本の平和に必要なら、基地負担は日本国民が等しく負うべきです。同じ国民として沖縄の苦悩に寄り添えるのか。政治家だけでなく私たち有権者の覚悟も問われているのです。