2013年3月18日月曜日

報道の姿勢

教育評論家の梨戸茂史さんが書かれた「退職金騒ぎ」(文部科学教育通信 No.311 2013.3.11)をご紹介します。


退職金引き下げで地方公務員、特に教員に駆け込み退職者が続出したことを巡って、議論になっている。典型的な例が埼玉県。2013年2月からの退職金引き下げを決め、100人以上が1月末で辞める問題。

報道によると、埼玉県の標準的な教職員の例では、早く辞めると年度末の3月末より、退職金が140万円多くなるとか。3月まで働いた場合の給与分が失われるがそれを差し引いても、58万円多い計算となるそうだ。これを大きいと見るかどうか。個人的な観点から言えばこれは「大損」の部類でしょう。

これに対して、駆け込み退職をすることについて、批判が起こった。典型例は下村文科大臣。大臣は、クラス担任らがいるとして「決して許されない」と言ったとか。やれやれ。いろいろな発言がある。当人が精神的に一番こたえそうなのは、「生徒を放り出した」という批判。反対に「センセイも人の子」という意見もなきにしもあらず。NHKのキャスターは「こういう現象を生むような引き下げのやり方が悪い」といったニュアンスの発言をしたとか。正論かも。

これらの批判について、ネット上でも、「確かにこういう見方もあるな」などと共感の声はある。しかし、現場の公務員だけに責任をなすりつけることや、そもそもこういった事態になるだろうことの「想定」はなかったのか。報道は、想像力に欠ける「典型的な小役人」と批判したいのか。もっとも総務省の強い”指導”があったからかもしれない。「そもそも退職金制度を猶予期間も置かずポンといじること自体がおかしい」とか「これは結局はそうなるだろうと想定してなかったのが問題」やら「先生にも人生とか生活があるんだもの」という同情もある。皮肉な?視点からは、(嫌いな先生なら)「生徒もかえって清々する」とか「教師たちの最後の教えなのかもしれない」(反面教師論?)といった見方もあるそうだ。

現場への影響について、埼玉県教委は、駆け込み退職する教員については、臨時任用職員で補うめどがついたと言う。病欠などに備えた教職希望者が多数登録しているのを活用する。子どもたちへの影響が少ないように、担任については、校内で担任をしていなかった教員をあてがうようだ。担当者は、「校長からの慰留はあったはずで、最後までやってほしかったという思いはあります」と言う。「辞める先生にも、個々に事情があると思いますので、強くは言えません」とは現場の感覚ですよね。

でも、ちょっと待ってよね。報道の姿勢は正しいか?「子どもを置き去りにする悪い先生」という結論ありきの記事だったのではないか。これではまるで大本営発表とそのお先棒を担いで戦争に引っ張っていった昔の新聞と同じではないか。客観報道をめざし正義をかざすなら、事実を淡々と語るべきであり、仮に意見を言うなら両者の言い分を公平に示して、その上で新聞社としての意見を述べ、世論の批判を受けてたつべきでしょう。さらに、新聞も三面では「住宅のローンを抱えておりこの損失は少なくない」などという実際の教員の意見を載せたりしているから”悪質”だ。

他の公務員はこんなケースはないのかな?消防や警察官はどうでず?一般職は?センセイだけ批判するならへンですよね。さらなる後日談は、あんまり騒がれて、「退職取り消し」という先生も出たそうだ。それまたマスコミの圧力ではないか?いろいろ何度も記事が書けて紙面が埋められ良かったですね。

なんだか騒々しい騒ぎだったけれど、ちょっと時間がたったら誰も言わない。話題が下世話で、人の「ふところ」という嫉妬が絡むお話。マスコミは、「正義の味方」ぶって清々しだかな?

(以下は私見です。)

下世話ついでで恐縮なのですが、そういえば、国立大学法人でも例年より多くの方が年度途中の昨年末で辞められましたね。退職金の減額だけが退職の理由ではないのでしょうが、文科省から天下っておられる理事や事務局長も含まれていました。

高給取りなので減額幅も大きいでしょうし。でも文科省のお計らいにより、皆さん立派に私立大学等へ渡っていかれたようです。

こういった文科省ムラの特待生の方々には、早い時期から退職金減額の情報が伝えられ、渡り先の斡旋も行われていたとのうわさ話もありましたが、事実のほどは・・・。