2013年4月18日木曜日

給与減額の妥当性

現在、国立大学法人の教職員には、国家公務員に準じた取扱いとして、2年間にわたる給与減額が課せられており、今月から2年目に入ります。

先月末には、この給与減額を不服とし、国立大学法人では、福岡教育大学に続き、山形大学が提訴しました。

給与減額:山形大教授ら7人、不当と提訴(2013年03月27日 毎日新聞)

国家公務員の給与を削減する臨時特例法施行に伴って国立大学法人の教職員給与も減額したのは労働契約法に反するとして、山形大の教職員組合に所属する教授ら7人が26日、山形大に減額分計約364万円の給与支払いを求め、山形地裁に提訴した。国立大学法人の同様の提訴は、福岡教育大に続き2例目。

臨時給与減額訴訟 第2次提訴の共同記者会見(2013年3月27日 全国大学高専教職員組合)

国立大学法人等の給与臨時減額に対して、昨年11月27日の未払い賃金を請求する第1次一斉訴訟に続き第2次訴訟の共同記者会見を3月27日に実施しました。山形大学職員組合が3月26日に提訴し、富山大学教職員組合、京都大学職員組合が4月から5月に向け提訴の準備を進めています。・・・


私も国立大学法人の一職員なので、個人的には、給与減額は避けて通りたいところですが、私達の給与の原資を提供してくださっている国民の目線では、しごく妥当な措置といった意見が大勢を占めるのでしょうね。

国立大学法人における給与減額については、これまでこのブログでも何度か触れておりますが、予想以上にアクセスが多く、関係者の関心の高さをうかがい知ることができます。そこで、今回は、国立大学法人の教職員の給与水準を国家公務員に準じることの妥当性について、少し考えてみたいと思います。なお、かなりの部分を「国立大学法人経営ハンドブック」から引用・加工させていただいております。


1 国立大学法人の位置付けについて

国立大学法人は、国民の負託を受けて、我が国の高等教育及び学術研究の水準の向上と均衡ある発展を図るという使命を担っています。

また、国立大学法人の設置・廃止は、国の意思に基づき法律によって直接行われること、国立大学法人の所在地は法律によって直接指定され法人の裁量は認められないこと、つまり、国立大学法人の配置は、国の責任において全国的な地域バランスが十分に考慮され決定されることになっています。

さらに、国立大学法人の運営の基本方針は、各法人が6年ごとに定める中期目標・中期計画の策定過程を通じて、法人と国との間で直接意見の調整が図られることになるなど、国立大学法人が行う事業は、最終的に国が責任を負うべき事業であることが前提となっています。

(参考)国立大学法人法
第1条 この法律は、大学の教育研究に対する国民の要請にこたえるとともに、我が国の高等教育及び学術研究の水準の向上と均衡ある発展を図るため、国立大学を設置して教育研究を行う国立大学法人の組織及び運営・・・について定めることを目的とする。

国立大学法人は、大学の特性に配慮した特有の制度を有し、国立大学法人法に基づいて設立される法人であり、独立行政法人通則法に基づく独立行政法人ではなく、独自の法人制度です。

その一方で、公共上の見地から確実に業務を実施する必要があり、国が設立し、中期目標や評価等による一定の関与とともに財源措置が国に義務づけられている法人であり、かつ、その運営に当たっては法人の自主性が十分に尊重されるという枠組みでは独立行政法人制度と共通する部分もあることから、独立行政法人通則法の一定の規定を必要に応じ読み替えつつ準用することにより、独立行政法人制度を活用しています。

(参考)独立行政法人通則法
第3条 独立行政法人(読替:国立大学法人)は、その行う事務及び事業が国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要なものであることにかんがみ、適正かつ効率的にその業務を運営するよう努めなければならない。

2 国立大学法人の財政基盤について

国立大学法人に対する国の責任を前提に、法人の運営は、一般的には独立採算を前提とせず、国の予算において必要な財源が措置されることになっています。

具体的には、国との間で合意された中期目標・中期計画に記載される各法人の事業が確実に実施できるよう、国が運営費交付金、施設費補助金等を措置することになります。運営費交付金の額には業績評価の結果も反映されますが、その方法は、国立大学法人評価委員会における評価の基準、方法に関する検討を待って決定されることになります。

(参考)独立行政法人通則法
第46条 政府は、予算の範囲内において、独立行政法人(読替:国立大学法人)に対し、その業務の財源に充てるために必要な金額の全部又は一部に相当する金額を交付することができる。

3 国立大学法人の教職員の給与・退職手当について

国立大学法人の教職員は、国家公務員としての身分を有しておらず、民間の労働者と同様に労働関係法規の適用を受け、その給与等の労働条件は、労使自治により決定されます。

したがって、教職員の給与及び退職手当の支給基準については、法人の自律性と労使自治の尊重の観点から、文部科学大臣の認可事項ではなく届出事項とし、国の関与が排されています。

ただし、国立大学法人は、その業務の公共性が高く、政府出資により設立され、運営費の大部分を国の財源措置に依るものであることから、その給与は、当該法人及びその教職員の業績が反映される仕組みとすることが必要であるばかりでなく、教職員の給与及び退職手当の支給の基準を文部科学大臣に届け出るとともに、国立大学法人が自ら公表することとし、国民の不断の監視の下に置くこととされています。

また、給与及び退職手当の支給の基準を決定する際の考慮事項について、国家公務員ではなく、民間の労働者と同様、労働三権を有することから、国立大学法人の公共性等に鑑み、「社会一般の情勢に適合したものとなるように定められるべきものであること」が規定され、その支給基準が国民一般の理解と納得を得つつ、労働市場において必要な人材を確保し得るものであるべきことが定められています。

国立大学法人は、独立した法人格を有するとはいえ、国からの財源措置を受けて教育研究活動を実施する公的な機関です。

このため、予算決定も学校法人のように内部で完結するわけでなく、文部科学省や文部科学省に置かれる国立大学法人評価委員会、財務省及び国会の関与・統制を受けることを忘れてはなりません。

また、労働協約によって自由に教職員の給与を決定できるとしても、人件費総額が総事業費予算の一定のシェアを超えた場合は、経営体としての適正・健全経営という点での評価がなされることは論を俟ちません。

(参考)独立行政法人通則法
第63条 独立行政法人(読替:国立大学法人)の給与は、その職員の勤務成績が考慮されるものでなければならない。
2 独立行政法人(読替:国立大学法人)は、その職員の給与及び退職手当の支給の基準を定め、これを文部科学大臣に届け出るとともに、公表しなければならない。これを変更したときも、同様とする。
3 前項の給与及び退職手当の支給の基準は、当該独立行政法人(国立大学法人)の業務の実績を考慮し、かつ、社会一般の情勢に適合したものとなるように定められなければならない。

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