2013年10月17日木曜日

若手研究者の自立と構造改革

今年のノーベル賞については、残念ながら日本人受賞者はいませんでした。受賞するにふさわしい卓越した研究者はいるものの、獲得はそうたやすいものではありませんし、だからこそ栄誉な賞なのでしょう。

日本の将来の研究力を支え、一層強化していくための方策として、若手研究者の養成が極めて重要であることが叫ばれて久しいわけですが、今日、様々な政策が講じられてもなお、克服しなければならない課題は山積しています。

大学の中には、未だに徒弟主義重視の教員がおり、若手の成長を阻む風土も残されているとの話を聞くことがあります。

我が国が名実ともに科学技術立国をめざし、実現していくためには、やはり若い人材をどう育て活かしていくのかを国はもとより、大学現場においても真剣に考えていかなければなりません。

文教ニュース(平成25年10月7日付)から「若手研究者の自立をどう実現するか」をご紹介します。


「急速に進展する知識基盤社会の中で生き残るために、各国が科学技術と人材育成に力を注いでいる。日本もここで手を打たないと取り返しのつかないことになる。」といった認識の下、過去10年以上関連政策が強化されてきたが、日本の地盤沈下に歯止めが掛かりそうにない。トップ10%論文引用数の指標などがそれを物語っている。

その主な要因は、日本の学界のガラパゴス化と、世界で通用する人材の育成.活用・確保の遅れである。長期海外派遣研究者数の減少傾向が続いている。また、35~39歳の研究者層の内、PI(研究代表者)はわずかに14%のみ。ボスドクなど若手研究者が論文の筆頭著者になる割合もアメリカに比べて相当低い(平成25年版科学技術自書など)。

世界標準の環境の下で、日本の大学、研究機関に多様な人材が集まり、優れた仕事をするようなシステムを如何に実現するか。打開策は、特に若手や女性研究者の活躍の場を広げることだ。

第7期科学技術・学術審議会(野依良治会長)の基本方針(平成25年4月策定)では、若手を自立させ、優れた成果を挙げられるよう、「laborからleaderへ」を提唱している。改正学教法(平成19年)が、ヒエラルキーな講座制からフラットな体制への道を拓いたが、その趣旨の徹底により、助教や准教授がボス支配から離れ、自らがPIとしてボスドクや院生を抱えて、世界の研究者としのぎを削る。そういう環境の創出を目指すという構想である。

異論もある。特に医学の世界だ。大学医学部は、教授を筆頭としたチームが教育、研究、臨床といった多機能を担って、日本の質の高い医療を支えている。医局改革によりチームを分断され、人事が回らなくなったことが地域医療崩壊の要因だとの指摘もある。

欧米では人材の流動が基本であり、大学で優秀な若手が独立して研究をスタートする際の資金手当てや専門スタッフ・共用設備環境も充実している。早くから独立することが前提で、移動すれば得をする文化だ。

日本の大学では、ボス教授が人材、資金、施設を囲い込み、そのチームが業績を上げ、若手の面倒を見てきた。その庇護の下、選ばれた者が教授席を譲り受け、自分の王国を作る。優秀な者が早く独立するのには損な環境だ。社会保障制度も人材流動を前提に組まれていない。

若手研究者の自立を促進するために、日本の構造的問題をどう変革するか。大変難しい課題である。


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