2013年11月10日日曜日

大学のガバナンス改革

去る10月29日に開催された、中央教育審議会大学分科会組織運営部会(第5回)において、「審議まとめ(骨子案)」が示されましたのでご紹介します。



1 はじめに

  • 社会環境の急激な変化の中で、大学は、これまで以上に社会のニーズに対して機動的に対応していくことが求められる。
  • 大学のガバナンスの在り方に対する社会的な関心の高まりがあり、大学はこれに応えていく必要。
  • ガバナンスは各大学それぞれの歴史や伝統・文化に根ざす面も大きい。自主的、自律的な改善を前提とすべき。
  • 国は一定の方向性を示し、その方向に基づいて支援。改革の実行性を確保するための工程管理が重要。


2 大学ガバナンスの現状

(1)大学ガバナンスに関する現行制度

  • 大学ガバナンスは教学面(学校教育法)と経営面(国立大学法人法、地方独立行政法人法、私立学校法)について、それぞれの法体系で規定。
  • 特に人事権については、法人化前の国公立大学では、一般公務員法制との関係で、教育公務員特例法(教特法)により学部教授会に強い権限が認められていたが、法人化により適用外とされた。
  • 大学は法体系に基づく運営体制を基本としているが、大学制度の歴史的な形成過程から生じた慣行も広く存在。
  • 国公立大学の法人化で各大学の裁量は拡大したが、教特法に基づく従前からの内部規則をそのまま継承するなど、大学の慣行が変わっていないケースも多い。
  • 私立大学では、各大学の実情等によりその実態は多様であり、国公立大学の影響を受けた慣行が形成されている場合や管理運営に教員の参加・意見反映が弱い場合もある。


(2)コーポレート・ガバナンスとの異同

  • 監督・執行体制の明確化、社会的責任の果たし方など、コーポレート・ガバナンスが参考となる点も多い。
  • 一方で、大学制度が、その特性に照らして、構成員自治に基づく自律的運営を基礎とし、また、学問の多様性・継続性を維持すべき社会的な使命を負うなど、営利を追求するコーポレート・ガバナンスとは本質的に異なる点もあることに留意。


(3)諸外国の大学制度との異同

  • 大学制度は、歴史的に構成員自治に基づいて形成され、国際的に確立・発展。
  • 欧米主要国の大学をはじめ各国でも、構成員自治は広く担保されている。特に、学術的・専門的な事項については、教員組織に広汎な権限が認められている。
  • 我が国の大学制度は、ドイツやアメリカ等欧米諸国の影響の下に形成されてきているが、人材の流動性が低いこと、また、一部の大学の規模が非常に大きいこと、などの特徴がある。


3 大学ガバナンス改革の推進

(1)大学ガバナンス改革の目的

  • ガバナンス改革の目的は、大学の教育・研究・社会貢献機能の最大化。
  • そのために、学内の資源配分を最適化していくことが必要。
  • その際、国公私立の設置主体の性格を踏まえた検討が必要。


(2)学長のリーダーシップの確立

  • 学長のリーダーシップは、所属教職員への明確なビジョンの提示、丁寧な対話やコミュニケーションにより発揮。
  • 法令上、学長は教育研究に関する最終的決定権、所属する教職員に対する指揮監督権が与えられている。しかし、長年の慣行を踏襲した内部規則によって各学部に権限が配分され、学長がリーダーシップを発揮しにくい構造となっている場合があり、内部規則の総点検が必要。
  • 人事については、学長は教職員ポストの再配置や、適正な選考手続等の確保に関与すべき。ただし、学問の専門性の確保や、情実人事等の防止のためにも、研究業績や論文等に基づく資格審査については、教員組織の審査を尊重すべき。
  • 予算については、めりはりある予算編成・配分を行うための裁量経費の確保が必要。
  • 学長が学内で組織再編やめりはりある予算・人事などリーダーシップを発揮していくためには、IRなどを通じた学内情報の集約が前提。
  • 副学長、学長補佐、学長室スタッフなど、学長の意思決定をサポートするスタッフの充実。特に、米国のプロボストのように、縦割りの分掌業務ではなく、教育研究全体を見渡しながら、学長を統括的に補佐する副学長等の設置を検討。
  • 例えば全学的な教育改革については、学長や執行部を中心とした最高意思決定機関を設置するなど、機動的な意思決定体制の整備。
  • 私立大学においては、理事会と学長との関係は各大学の設置形態や沿革等により多様であるが、それぞれの特色を踏まえつつ、学長と理事会との調和の下に、リーダーシップを発揮していくことが必要。


(3)学長の選考・評価

  • 学長選考の仕組みが、適任者を選考するにふさわしい仕組みになっているか、各大学において徹底した点検が必要。
  • 学長を選考する組織は、大学が求める学長像(任期中に達成すべきミッション、求められる資質・能力等)を明確に示すとともに、適任者を選任すべき責任を負う。
  • 学長候補者は、示されたミッションをどのように達成していくか、ビジョンを示すことが必要。
  • 学長の職務執行状況について、学長を選考した組織や監事等が継続的にフォローアップ。
  • 国公立大学法人については、学長選考方法が法定されていることの趣旨を再確認すべき。教職員による意向投票を実施するとしても、その結果は一つの参考として、学長を選考する組織がその権限と責任において学長を最終的に決定すべき。


(4)学部長等の選考・評価

  • 学部長は学部教員の代表者であるとともに、全学方針と学部との間の調整役であるべき。
  • 学部長の任命権は法人の長である学長や学校法人の理事会にあり、学長のビジョンや大学の経営方針の下で、適切な役割を果たすことのできる学部長を選任することが必要。
  • 学部長の選考方法は、教授会での投票による場合や持ち回りになっている場合があるが、学部長の職責を果たすにふさわしい仕組みになっているかどうか大学全体で再点検すべき。
  • その中で学長や理事会が学部教授会に複数の候補者を示すよう求めたり、候補者が適任でないと考える場合には、選考のやり直しを求めるなどの方法も検討。


(5)教授会の役割の明確化

  • 教授会は学校教育法に基づいて設置される機関であり、その仕組み上、所掌業務は当然に教育研究に関することとなる。
  • 法律上、教授会は審議機関として位置付けられており、議決機関ではない。(人事の一定事項に関しては、教特法で議決機関と位置付けられているが、法人化された大学には適用されない。)
  • 教育研究に関することのうち、教授会による審議が特に必要と考えられるのは、①教育課程の編成、②学生の身分に関する審査、③学位授与、④教員の研究業績等の審査。
  • 「シェアド・ガバナンス(Shared Governance、共同統治)」の考え方もあるが、教授会にどのような権限を持たせるかはそれに伴う責任との関係で慎重に検討すべき。


(6)監事の役割

  • 監事は財務や会計の状況だけでなく、教育研究や社会貢献の状況、学長の選考方法や大学内部の意思決定システムなど大学ガバナンス体制などについて監査することが必要。また、そうした能力のある監事を広く求めることが必要。
  • 監事が役割を果たしていくためには、重要な会議への出席、事務局からの資料提出、情報提供などサポート体制の整備が前提。


(7)その他のガバナンス改革

  • FD、SD等を通じ、ガバナンス改革についての教職員による理解を促進。
  • 他大学、民間企業、国際機関等も含めた大学以外の組織における幅広い勤務経験を促進。
  • マネジメント能力の高い教職員を、学内や大学団体等の研修、人事交流等を通じて、将来の執行部人材として養成。
  • 大学ポートレートやHPの工夫等、積極的な情報公開が重要。


4 国によるガバナンス改革の支援

  • 学長のリーダーシップが発揮されるような環境整備をあらゆる手段で支援。
  • 大学の内部規則の徹底した総点検を推進するため、所要の制度改正。
  • 国の予算事業等において、学長のリーダーシップを後押しする仕組みを導入、競争的資金の間接経費の措置等。
  • 各大学の様々な取組を共有するため、国、大学団体等の協力により、フォーラム等を開催。
  • 国立大学については国立大学改革プラン(仮称)を推進。第三期中期計画においてガバナンスについて明記することを検討し、改革状況を評価・フォローアップ。


5 おわりに

  • ガバナンス改革は、本来、大学が自主的・自律的に行うべきもの。
  • 一過性の動きとせずに、各大学のガバナンスの恒常的な見直しにつなげる。
  • 戦後70年にわたって築かれてきた大学の慣行を、改めるべきは大胆に改め、大学が社会のニーズに機動的に応えられるように再構成。

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