2014年2月2日日曜日

アーリー・アダプター

鹿児島国際大学の橋口圭太さんが書かれた「大学職員が輝けば、大学改革は進む」を抜粋してご紹介します。

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第3章 大学職員の今日的役割

〈教員中心の歴史〉

日本の大学制度は明治以来、ドイツの大学に範をとった帝国大学を中心に成立・発展してきた歴史がある。それとは別に多様性を持ってスタートしたはずの私立大学も、帝国大学をモデルとする発展の努力が重ねられ、帝大の制度や慣行、文化等が色濃く反映されて私学の「官学化」が進行。よって、大学運営の面でも、教員団を中心とする意思決定のスタイルが私学も含めて確立していった。

このような中で、事務・技術職員は長い間、教員団の意思決定した事項を忠実に実行する役割しか与えられてこなかった。山本眞一(現広島大学高等教育研究開発センター長)は『IDE』(2002年5-6月号)の「なぜいまSDなのか」の項で、「職員という立場からみると、教員の指示を一方的に受けざるを得ない『従属的な立場』か、教員の活動を学内外の規則に照らして事細かにチェックする『管理的立場』のどちらかしかなかったのである」と述べている。

〈職員への期待の高まり〉

長く続いたそのような職員の位置づけに変化を生じさせたのは、18歳人口の急激な減少という最大の環境変化にある。大学は「知の共同体」から「知の経営体」への変革を迫られ、優れた経営トップを選ぶことができるのか、また、強力な経営陣を構成できるのかが、生き残りをかけた大学の命運を左右する大きなポイントになってきた。

しかし、教授会主導の大学運営を改めて、経営トップや学長が単独で意思決定と経営執行のすべてを担うことは不可能である。それらのトップを支える有能な専門的スタッフの存在がきわめて重要となる。その人材として、大学の管理運営や経営のための職種にある「大学職員」に対する期待が高まってきた。そして一方の教員には、その本来業務である教育研究にもっと専念させるべきとの声が大きくなってきている。

〈改革推進への「三輪車論」〉

高等教育の大衆化時代の到来で、学生の意識やレベルは多様化している。学生の変化に対応したきめ細かな教育支援・学修支援機能の充実は必須課題になってきた。研究の学際化・共同化・国際化に伴う推進機能や支援機能の強化もますます重要性を増している。

こうした業務の複雑化・多様化の結果、教員・職員のどちらの範疇にも属さない業務領域は増える一方で、職員が積極的に対応することが求められる。職員が教員とイコールの立場で仕事できる環境の構築が、大学改革を推進するカギとなろう。いわゆる「教職協働」だが、船戸高樹(桜美林大学大学院教授)は、「教員」「職員」が両輪となり、大学の方向性を位置づける前輪の役割である「理事会」の重要性を指して、「三輪車論」を説く。

第4章 大学職員に求められる力量

〈事務屋からの脱却〉

これまで論考してきたように、これからの大学経営や運営において、大学職員の役割の重要性が浮かび上がってきた。ただ言えることは、それぞれの仕事に必要な知識や技術はどんどん進歩しており、従前のような「単なる事務処理」という感覚ではついていけなくなる。自己研鑽を積み、知識・技術のレベルを上げる努力を怠ってはならない。

各大学は、教学・施設面における改革を休む間もなく進めている。しかし、改革の意味することを理解していない教職員が少なからず存在。職位の高い職員いわゆるベテランの中には「俺たちは事務屋だ」と豪語し、前例踏襲主義やカン・経験に大きく依存する硬直した業務スタイル・発想から抜け出せないでいる傾向にあるという。

〈求められる問題解決能力〉

今後、大学職員に必要な能力は何か。前出の山本眞一は『IDE』(2008年4月号)の「これからの大学職員」の項で、自身が一昨年に全国の事務局長に対して行ったアンケート調査の結果を元に、「職員に必要な能力は何といっても問題解決能力である」とし、その能力を育成するために、研修や大学院での教育の重要性を指摘している。さらに、「大学の経営環境が激しく変わる中、ジェネラリストと称する職員が、実は部下から上がってきた書類をチェックするだけであったり、学長や理事からの指示を部下に中継ぎしたりするだけであれば、その存在価値が疑われよう」と、戦略と業務を結ぶ管理者の力量が大きな影響力を持つことに言及している。

〈求められる職員の役割〉

大学の改革スピードよりも、社会の変化が早い時代にあっては、トップが方針を示し、改革を断行しなければならない。当然、学内には抵抗が生ずる。だからといって問題を先送りし、改革を進めなければ、解決はますます困難になる。

改革を進める人材の組み合わせについて、清成忠男(法政大学学事顧問)は『カレッジマネジメント146号』で、「イノベーターとアーリー・アダプター」という視点から論じている。イノベーターとは、創造性に富み、個性的。新しい事業を構想する、とがった人物であり、安定性に欠ける。説得力に問題があり、多くの人々の信頼を必ずしも得られない。それでも、カリスマ的存在である。これに対して、アーリー・アダプターはいち早くイノベーターの主張を理解し、多くの人にイノベーターの主張を翻訳する。安定的な性格であり、多くの人々に信頼される。したがって、改革のオーガナイザーになる、というものである。

鹿児島国際大学におけるイノベーターは学長であり、広い視野に立ち、長期的な視点から構想や戦略を提示。それをオーガナイズすべき、学部長や大学職員幹部といった層がアーリー・アダプターであろう。この層に、とりわけ大学職員に、専門性と自主性さらに創造性を持ったアドミニストレーターが求められている。


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