2014年2月8日土曜日

骨太な生き方

日本経済新聞に掲載された記事仕事を通じて社会にどう貢献するか 原田泳幸・日本マクドナルドHD会長兼社長 経営者編」(2014年2月3日)をご紹介します。


●経営陣が若者を育てるための議論を活発化させるべき。
●ビジネスで活躍できる人の育成には、民間企業で働いた人間を教壇に。
●若い皆さんが社会に必要な価値を作り上げ、社会に貢献ができるかどうかを考えて。

まずは、経営者を代表して若い読者の皆さんに反省の弁を述べたいと思います。経営者に課せられた仕事の一つに人材、後継者の育成があります。しかし、そのことに真剣に取り組んできたと言えるのでしょうか。本当に若い人たちの能力を引き出そうと見守ってきたのでしょうか。もっとストレートに言うなら「若者をちゃんと使いこなしてきたか」ということです。

成長を妨げる上司

残念ながらそうなっていないのが今の経済社会なのです。上司が部下の成長を妨げるブロッカーになっていることが往々にしてあります。「失敗を恐れずチャレンジしろ」と言ったところで、リスクを恐れ、保守的な考えに立つ上司の下にいる若者がチャレンジ精神を発揮できるはずはありません。定年近くなればその管理職は大過なく企業人としての人生を終えようとします。その管理職の部下は同じ行動をとるでしょう。部下の失敗を許す度量を持っていません。マネジメントの原則は「自分の部下がおかしいと思うなら、(そうさせた)自分がおかしいと思え」です。責任は上司にあるのです。

経営者は常日ごろから人材のグローバル化、多様性、流動性、女性の活用の必要性を訴えています。これから社会に飛び出そうとする学生の皆さんにも同じ言葉を投げかけることがよくあります。ところが自分の会社の経営陣に外国人や外部から迎えた人材がどれほどいるでしょうか。誰一人としていないのが一般的です。そんな環境の中でグローバルなどの議論ができるはずがありません。

今、私がいる会社には海外の人材や私を含めフードビジネスと畑違いの分野の人材が多くいます。それでも事業会社の社長を約10年も務めてきた私は後継者の育成に失敗してきたと言っていいでしょう。変わらなければいけないのは、まずは今のニッポンの経済社会を設計した国や経営陣ではないのかと痛切に感じています。若者の意識を変える前に経営陣がもっと若者を育てるための議論を活発化させなくてはいけない。国が「社長は5年まで」といった期限を設けてもいいかもしれません。それくらいしないと変わらないと思います。

教育現場の改革は待ったなしです。多くの若者が学校を出た後に企業で働くにもかかわらず、教育現場にビジネス感覚をもった先生が少ないのはおかしいと言わざるを得ません。ビジネスとは価値(バリュー)を提供して、対価(リターン)をもらうのが基本です。ビジネスの世界で活躍できる人間を育てるとするなら、教壇に立つ必須条件として民間企業で働いた経験を加えるべきだと考えます。

ここまでは大人の反省ですが、若い皆さんも甘ったれていては困ります。世の中は刻々と変わっているにもかかわらず、皆さんたちは誰かに守ってもらえるという意識があるように思えてなりません。企業は変化に対応しないと巨大企業でも社会からはじき出されてしまいます。社員のコンピテンシー(能力要件)も変わっていかなくてはなりません。社会に求められるための変化に対応できるように皆さん自身はどうやって変わっていこうとするのですか。

日本を忘れるな

皆さんが社会に必要な価値を作り上げ、社会に貢献ができるかどうか考えてみてください。国の成長に国民がどう貢献するかです。日本人としての誇り、国家観なくしては成長も変化もできないし、議論も深めることができません。

グローバルな人材になるためには英語を話せることも大事ですが、相手の異文化を知るコミュニケーション能力も求められます。日本語と英語の言い回しは異なり、翻訳できない言葉も多い。自分がどのように振る舞ったら相手がちゃんと自分のことをわかってもらえるのかを考えるべきです。「微力ながら頑張ります」を直訳したら、相手が戸惑ってしまいますよ。外資系の会社に入り、海外で働く日本人は多くなりましたが、思うように活躍できない人もいます。そうした人たちは「日本を忘れてしまった」のだと思います。だったら、本国からの人材を登用すればいいだけです。日本人としてのアイデンティティーを持ち、異文化を理解することが、新しい価値を生み出す力になると確信しています。

皆さんは社会に出て会社やその先にある国にどのように価値をもたらし、貢献できるのか、キャリアアップのような小手先ではない「骨太な生き方」を考えていただきたいと思います。

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