2014年6月6日金曜日

財政が求める大学改革

平成27年度予算に係る骨太方針の策定に向けた経済財政諮問会議の議論が山場を迎えています。

今回は、大学関係の議論の様子を会議の議事概要から抜粋してご紹介します。


平成 26年第9回経済財政諮問会議

日時:平成 26 年5月 27 日(火)
議事:歳出分野の重点化・効率化(教育)・教育再生について など
資料:

議事要旨(全文はこちら

歳出分野の重点化・効率化(教育)・教育再生について

(甘利議員)

まず、教育分野の重点化・効率化及び教育再生について、議論を行う。本日は、下村文部科学大臣の代理として、西川文部科学副大臣に参加いただいている。資料については、簡潔にポイントをご説明いただき、議論をしっかりと進めたい。 まず、小林議員からポイントをご説明いただく。

(小林議員-三菱ケミカルホールディングス代表取締役社長)

資料1-2をご覧いただきたい。

我が国がグローバル競争を乗り越え、イノベーションによって持続的成長を実現するには、人財が大いなるポイントであり、教育のあり方を抜本的に見直し、予算を効率的に用いるべきということは言を待たない。厳しい財政制約のもと、財源確保がなされないまま予算を増やす環境にはなく、文教関係についても「経済再生」と「財政健全化」の両立に向け、計画的な取組を進めるべき。教育の質を高める観点に立ち、時代の変化に対応した教育のあり方について、意見を申し上げたい。

(略) 

大学改革について。少子化で学生数が減少する中にあっても、大学はここ10年で130校以上も増え、大学進学率は5割を超えている。こうした状況にもかかわらず、大学経営は依然として学生数に依存しており、教育の質の低下も懸念される。
 
日本の大学生には、1週間全く勉強しない者が10人に1人もおり、極めて考えさせられる状況である。また、世界ランキングに入る大学数も減少している。
 
こうした状況を踏まえれば、大学経営にも教育の質の向上が問われるべきである。そのためには大学での成績評価や卒業認定の厳格化、企業における能力やスキルを重視した中途採用枠の拡大等を図るべきであり、加えて世界で通用する正しい英語による授業の必修化、リベラル・アーツ教育の強化等、国際的な人財育成に向けた対応も急務である。
 
その際、Education(エデュケーション)にICT、すなわち Technology(テクノロジー)を適用した「EdTech(エドテック)」と呼ばれる教育方法の活用を進め、世界の著名教授や事業家のネット授業等、世界レベルの取組をもっと大胆に取り入れるべきである。また、産業界と連携して、優秀な学生への支援拡大や授業内容の充実を図ること、さらに授業料設定を柔軟にして、成績優秀者の授業料免除や多様な奨学金の導入等の取組を促進すべきである。 

次に、質の向上にはPDCAサイクルの確立が特に重要である。「経営協議会」において、定量的な手法を用いながら、大学の価値を機能ごとに比較可能な形で整理した上で第三者評価を交えて公表し、その結果が運営費交付金の配分に反映されることで、質の向上に努力した大学が報われるようにすべきである。
 
また、教育の質を担う大学教員が研究や教育に専念できるよう、事務スタッフの配置・増員を行うこととあわせ、大学のガバナンスをしっかりと見直すべきである。今年は第2期中期計画の最終年度に当たることもあり、次期計画を見据えた総括を大学が自ら行い、文部科学省はそれに適切に対応してレビューをすべきである。

これに加えて、世界トップレベルを目指す大学においては、飛び入学をより積極的に実施すべきである。早い段階から研究経験を積ませ、若手研究者へのポスト振替を進めることで世界最高水準の人財を育成すべきである。また、我が国の多様性を踏まえれば、各地域の得意分野を活かす教育、研究拠点(リージョナルCOE)を創設・選定し、人財育成、地域貢献を果たすべきである。

(甘利議員)

続いて、西川副大臣からお願いする。 

(西川文部科学副大臣)

資料2をご覧いただきたい。 

本日は教育投資の必要性、少子化に対応した学校教育と教育条件の整備、時代の変化に対応した大学改革について御報告申し上げる。

(略)

5ページ、大学教育について。まず、教育の質の向上については、学生が徹底して学ぶことのできる環境整備をするために、本年度からアクティブ・ラーニングによるリベラル・アーツ教育の充実とともに、英語による授業の拡大等、いろいろな取組をしている大学を重点的に支援していくことを開始したい。 

そのためには、厳格な成績評価・卒業認定について、私立大学では、定員超過にカウントする基準が1年になっていると、これがたまってしまい、いろいろな新しい取組に大学が足踏みするので、予算運用のルール改正をして、国立大学と同様2年に延長している。そういうことで、このいろいろな取組を大学がやりやすい環境にしたい。

そして、グローバル化に対応して、国際化に取り組む大学に重点支援を行う事業や、官民が協力した新たな海外留学支援制度(トビタテ!留学 JAPAN 等)を創設している。それと外国の大学と連名で単一の学位を授与できる「ジョイント・ディグリー」の制度化に向けて検討を進めている。

国立大学改革については、今、「国立大学改革プラン」で、大学の強み・特色を最大限に活かした機能強化を加速しており、選択と集中でそういう努力をしている大学に重点支援をしてまいる所存である。

ガバナンス改革については、今ちょうど法案を提出中であり、学長がリーダーシップを発揮し、より一層の大学改革を図ることを目指している。柔軟な所得連動返還型奨学金制度の導入や、授業料減免の充実、無利子奨学金の充実と教育費の負担を軽減するための施策も改めて行う方向で検討している。国立大学の授業料については、教育の機会均等の確保の観点から、適正な水準を守る必要がある。 

(甘利議員)

伊藤議員、続いて、佐々木議員から御意見をいただきたい。

(佐々木議員-株式会社東芝取締役副会長) 

我が国の教育は、戦前の思想教育への反省や、戦後の復興期でもイデオロギー・コンフリクト等から知識教育に重点が置かれ、学力水準では相応に効果は上げてきた反面、やはり確固たる意思の確立、多様な個性の伸長、こういうものに課題があって、また、ナショナル・インタレストへの意識醸成もかなり希薄になって、体系的なビジョンや意思、心情をベースとした本質的な議論ができていない。 

そういうことをベースに、海外との調整局面でもなかなかWin-Winの関係を作りにくくなっている。その打破という意味では、リベラル・アーツ教育を含めた見識教育への転換、自治体に蓄積するような産学連携の拡大、そういうもので多様な個性や確固たる意思を自立的に醸成した上で、多様な価値観を孵化させて人材ポートフォリオを確立していくことで、自国をリスペクトしながら、グローバルな視点で活躍できる人材を育成していく必要がある。そのための教師の見識教育に向けた質的向上とカリキュラムの改革。それから、即時的な課題と接触する機会を増やす産学連携の飛躍的な拡大をしていくことが必要である。
  
(甘利議員) 

麻生副総理、小林議員の順に御意見をいただく。

(小林議員-三菱ケミカルホールディングス代表取締役社長)

西川副大臣の参考資料の11ページ。2020年までに所要額が4兆円から5兆円に上る各施策を新たに実施するとあるが、何かを減らせる、削減できるというアイテムはあるのか。

(西川文部科学副大臣)

(略)大学の問題については、大学改革を文部科学省でもドラスティックにいろいろな法案を出して取り組んでいるところだが、日本の大学生が勉強しない現状については出口を厳しくし、成績評価を厳正に対応してやっていきたい。そして、各大学の情報収集・発信、認証評価等も各大学の取組のチェックを充実して検討してまいりたい。それから、定員管理の弾力化を図っていきたい。


次に、関連して、財政制度等審議会が取りまとめた財政健全化に向けた基本的考え方」(平成26年5月30日)における大学関連部分を抜粋してご紹介します。


4.文教

(略)国立大学においても、近年事業規模は増加しているにもかかわらず、それが評価の向上に結び付いていないことから、資金の有効活用がなされていないのが現状である。

我が国の厳しい財政状況の下では、教育予算についても、「質」の向上により、様々な問題に対応していくことが求められる。

(2)国立大学改革

① 次期中期目標期間に向けて必要な取組み 

イ)国立大学の現状
 
日本の大学の世界における評価は、現状、必ずしも高いものとはなっていない。近年国立大学への運営費交付金が削減されていることが日本の大学の評価が向上しない原因であるとする見解もあるが、正確とは言えない。なぜならば、国からの競争的資金や寄付金等の自己収入等を含めた国立大学の事業規模全体は近年毎年度増加しているにもかかわらず、大学を評価する一つの指標である大学ランキングなどの評価が連動していないからである。〔資料Ⅱ-4-10 参照〕

運営費交付金の配分額が上位の国立大学をみても、事業規模の増加が大学の評価と比例していない。これらの大学が世界トップレベルの教育研究拠点を目指すためには、マネジメント能力の強化、グローバル人材の育成、産学連携の強化等によって資金を一層有効活用していくことが必要である。〔資料Ⅱ-4-11 参照〕

また国立大学86校のうち、いわゆる総合大学は47校を占めているが、これらの大学が各々の特色を活かした大学運営を行っていないことも、日本の国立大学の評価が向上しない一因となっているのではないかと考えられる。〔資料Ⅱ-4-12 参照〕

ロ)予算配分の重点化による教育研究組織の見直し
 
こうした状況を改善していくためには、各大学が、例えば世界トップレベルの教育研究拠点や地域活性化の中核的拠点といった機能強化の方向性を定めた上で、それを踏まえて教育研究組織を柔軟に見直し、資源配分の重点化を行っていくことが必要である。これまでの運営費交付金の配分を見ると、必ずしも各大学の機能強化に向けた取組みを促すメリハリある配分とはなっていない。28年度から開始される国立大学法人の第三期中期目標に向けて、一般運営費交付金も含めた運営費交付金全体のメリハリある配分を行うことが出来るよう、実効性のある配分方法の見直しを行う必要がある。〔資料Ⅱ-4-13参照〕

具体的には、自らの強みや特色、社会経済の変化や学術研究の進展を踏まえて教育研究組織や学内資源配分の見直しを行う大学や、寄附金の獲得、授業料引上げによる自己収入の増などの教育研究環境充実に向けての自助努力を率先して行う大学については、重点的な支援を行う。そ
の他の大学については、より有効に社会的要請を果たせるよう、教育研究組織の思い切った合理化や再編、アンブレラ化等による他大学との再編統合による機能強化を図っていくべきである。

こうした重点支援を行う前提として、国立大学の機能強化の方向性に対応した制度・規制の枠組みを検討するとともに、機能強化の方向性や学問分野に対応した評価基準を設けて比較可能な外部評価を厳正に行う必要がある。また、各大学は学生・企業・海外研究者・納税者等に対して主要なデータを積極的に公開する必要がある。〔資料Ⅱ-4-14 参照〕

②ポストドクターについて

これまで、少子高齢化により大学の教員ポストの増加が見込めない状況にあったにもかかわらず、「我が国の研究開発能力を強化する」との名目の下、ポストドクターの増加が図られてきた。その結果、ポストドクターの総数は、1996年には6,274人であったものが2009年には17,116人と約2.7倍に増加した一方、大学における若手教員数は、1998年に36,773人であったものが2010年には34,779人と減少し、大量に増加したポストドクターの受け皿として不足を来している。このため、本来は「研究者のキャリアパスのステップ」として位置づけられていたはずのポストドクターの状態が、現実には継続・長期化する傾向にある。〔資料Ⅱ-4-15 参照〕

また、ポストドクターの分野別の内訳を見ると、例えば、生物系のポストドクターは人数が多いにもかかわらず、他の専攻と比べて教員や研究職への転換が進んでいないなど、分野別にも偏在が見られる。〔資料Ⅱ-4-16参照〕 

こうした問題を解決するため、ポストドクターが能力に応じたキャリアパスを的確に描けるようにしていく必要がある。具体的には、年俸制や混合給与の導入加速化によるシニア教員から若手研究者へのポスト振替等の推進や、産業界との連携・研究独法との人事交流・海外大学との共同研究を通じたポストドクターの進路の多様化が必要である。同時に、ポストドクターが滞留している学科については、学位授与を厳格に行い定員を抑制するなど供給の適正化を図る必要がある。こうした取組みを率先して行う大学については運営費交付金の配分において重点的に支援する仕組みを導入する一方、努力が不足している大学については縮減を図るなど、予算のメリハリのある配分を検討していく必要がある。〔資料Ⅱ-4-17参照〕

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