2014年7月22日火曜日

学制改革

「学制改革」に関する三つの記事をご紹介します。


教育の多様性広げる学制改革を進めよ(2014-07-05 日本経済新聞)

6・3・3・4制の見直しによる「平成の学制大改革」を-。安倍晋三首相が昨年の施政方針演説でこう意気込んだわりには、政府の教育再生実行会議がまとめた第5次提言は控えめで、現実的な内容となった。

しかし自治体の判断で「小中一貫教育学校」を設置できる制度づくりを求めるなど、いまの硬直的な仕組みに風穴を開けようとしているのは評価したい。中央集権的に、全国一律に学制を変えるよりも理にかなっていよう。

文部科学省は提言を生かし、教育の多様性と選択肢を広げる改革につなげるべきだ。

今回の改革案の柱である小中一貫校は、子どもの心身の発達状況が必ずしも6.3の区切りとは合わなくなっているという声を踏まえ、9年間の義務教育を同じ学校で展開できるようにする制度だ。これにより地域や学校ごとに「4・3・2」「5.4」などの設定が可能になる。

提言はこのほか、実践的な職業教育を担う新たな高等教育機関の創設や、高校の早期卒業、大学への飛び入学、大学間での編入を容易にすることなどを求めている。おもに不登校の子どもが学ぶフリースクールなど「学校外の教育機会」をどう位置付けるか、議論を促したのも注目すべきだ。

総じてみると教育コースの複線化、弾力化を強く意識した今回の改革案だが、具体化にあたって文科省が画一的な方向付けをするのでは意味がない。地域や現場がなるべく自由に切り盛りできる仕組みを心がけるべきである。

とりわけ2016年スタートが想定される小中一貫校には地域住民の関心が集まりそうだ。国があまり細かな部分まで口を出すのは避け、教育委員会制度改革で誕生する「総合教育会議」などでの議論を重んじてほしい。施設形態や学年の区切り方、カリキュラム編成など課題は山ほどある。

実行会議は今回の提言で3~5歳児の幼児教育の段階的無償化を訴え、さらに5歳児の就学前教育の義務教育化についても検討課題として盛り込んだ。

しかし5歳児の教育を無償化するだけで年に約2600億円かかるうえ、義務教育年齢の前倒しにはもっと議論が必要だ。実行会議が、いずれも将来的なテーマにとどめたのは妥当だろう。現時点では、少子化対策としても優先度が高いとは言えまい。


小中一貫校 課題をしっかり見すえ(2014-07-06 毎日新聞)

小学校と中学校を足して一つにするだけでは意味はない。そのメリットと可能性をどう引き出すか。

「学制改革」で、政府の教育再生実行会議第5次提言が柱とする「小中一貫教育学校」(仮称)の制度化である。学校、教育委員会だけでなく地域の参画、協力が欠かせない。

小中一貫校は、義務教育9年(小学校6年、中学校3年)を一体化し、発達状況を勘案して「4・3・2」や「5・4」などのように、柔軟に区切りをつけて編成する。

この制度導入の判断やカリキュラムの組み立ては、市区町村の判断に任せられる。

いくつか利点が挙げられている。

一つは、中学進学時、教育環境と内容の急変に子供が対応できず、不登校やいじめの原因になりやすいという「中1ギャップ」の解消だ。

学力面では、教員が小中段階にまたがって授業を工夫することで、円滑に学習指導しやすくなる。英語に期待が高い。また幅広い異年齢集団は、社会性を豊かにし、責任感や思いやりを育むとも指摘されている。

懸念もある。例えば、9年間固定的な人間関係が続く場合のデメリット。転校した先でカリキュラムが整合せず、混乱する可能性。高校との接続。教員の負担増−−などだ。

一貫校に適した教員養成や幅広く多様な教え方ができる新しい免許もいる。教科書はどうするか。施設整備などで、財政力など地域の条件によって格差が生じないか。

文部科学省は、中央教育審議会と国会での法改正を経て2016年度にも制度化の方針だが、これまでの論議は国民的な関心があまりついてこず、前のめり気味ではなかったか。きめ細かな説明がいる。

その意義と仕組み、地域での必要性や生かし方などについて広くコンセンサスを得ることが欠かせない。

この制度で肝心なのは、それぞれの学校が創意と多様性を確保できるかどうかだ。横並びでどれもが似たような形式になっては弾力性を失い、「一貫」の意義を失いかねない。

実行会議の今提言は小中一貫校のほか、幼児教育の段階的無償化や5歳児の義務教育化も将来の検討課題に挙げた。高度な職業教育の高等教育機関創設や、大学の編入学、飛び入学推進なども提起している。

財源の裏づけや具体性には欠けるが、総じて学制を弾力化し、幅広い選択と学習機会を多様化するという方向性は示したとはいえよう。

財源などの難題と切り結び、学制改革という大テーマで、政府が持続的な取り組みと国民的コンセンサス作りを進めるか、棚上げと忘却のかなたに遠ざけるか。

「教育立国」の真価が試される。


教育再生実行会議 羊頭狗肉の「学制改革」2014年7月 5日 (教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説

予想通りとはいえ、ひどいものだ。教育再生実行会議の第5次提言「今後の学制等の在り方について」のことである。客観報道を旨とする新聞各紙はさぞ大事のように報じざるを得ないのだろうが、本来ならまともに扱うような代物ではない。

「幼児教育の無償化」がいい例だ。本文をよく見ると、「財源を確保しつつ」「段階的に推進し」と逃げを打ってある。明らかに財務省サイドに負けた表現だ。5歳児の義務教育化に至っては、段階的無償化の「次の段階の課題」に位置付けられている。無償化が実現されなければ義務化もできない、と読むべきだろう。

議論する前から意図は見え見えだった。義務教育年齢の引き下げなどという大風呂敷を広げて、実際に狙うところはいかに幼稚園に落すカネを増やすかという話である。確かに幼児教育の充実は経済協力開発機構(OECD)も推奨しているように高い教育投資効果が見込めるのだが、だったら保育所も含めた2610億円の財源措置まで示すのが「国家戦略」(第5次提言「はじめに」)というものだろう。

敗戦直後に比べて子どもの発達が2歳ほど早まっていることは、議論するまでもなく明らかなことだ。それでも首相直属の会議で学制改革を見直すというなら、6・3制を改める提言ぐらいしてはじめて「戦後レジームからの脱却」と呼べよう。しかし最初から学制改革に手をつけるつもりがなかったことは、3月の段階で示した「論点」を見ても分かる。委員から積極的な見直し論が出なかったら、というのは隠れみのにすぎない。

代わりに出してくる目玉が小中一貫教育の制度化であることも、想定の範囲内だった。しかし中等教育学校と同様、実態として行われている一貫校を追認するものでしかない。しかも実施自治体から「義務教育学校」(仮称)の創設を要望されながら、民主政権下の2012年7月に中央教育審議会の作業部会が制度化見送りを結論づけていたことを忘れてはいけない。その時に「現行制度下でもだいたいのことはできる」と主張していた人が今回は一転して制度化の旗を振っているのは、理解に苦しむ。

「実践的な職業教育を行う高等教育機関」は確かに成長戦略としても、社会人の学び直しが要請されることからも意義はあろう。しかし、これも実際には11年1月の中教審答申にあった「職業実践的な教育に特化した枠組み」の再掲でしかない。提言は結局実現せず、今年度から専門学校の「職業専門実践課程」に姿を変えている。それでも新しい学校種の創設にこだわるのは、1条校化して国から助成金を流そうという意図があることは明らかだ。

評価すべき点があるとするなら、「所得連動返還型奨学金の充実」くらいだろうか。12年度から年収300万円になるまで返還が猶予されることになったものの、300万を1円でも超えた段階で全額返還となる「1かゼロか」の不十分なスタートだった。有識者検討会での審議も進んでおり、ぜひ年収に応じた返還額の設定や、どうしても返せない人には一定期間で返還を打ち切る「徳政令」も実現してほしい。

教育財源確保に関するくだりは、もろ刃の剣ではないか。苦学経験を持つ下村博文文部科学相が教育投資の充実を訴え、幼児教育や高校はおろか大学まで無償化したい考えを表明しているのは大いに共感できる。しかし独自財源の確保にまで踏み込むのは、それまでは予算が拡充できない危険性も伴う。現に第5次提言では「安定的な財源を確保しつつ」という一文が入っている。「社会総がかり」という言葉は心地いいが、裏を返せば政権は第一義的には責任を持たないということでもある。

実行会議はこれで実質的な審議を終えるようである。一連の過程で明らかになったのは、教育改革に対する安倍晋三首相の無関心ぶりではなかったか。これで「教育再生」に着手できたと胸を張られては、いつまでたっても疲弊した教育現場は真に再生できない。「改正教育基本法の趣旨」を盾にカネの掛からない政権の意向ばかり押し付けられては、むしろ将来に禍根を残そう。

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