2014年9月26日金曜日

子どもの貧困

「子供の貧困対策大綱」閣議決定」(2014年09月23日毎日新聞)をご紹介します。


◇政権の本気、感じられず

やはり、安倍政権は本気ではなかった−−。政府が8月29日に閣議決定した「子供の貧困対策大綱」への、偽らざる感想だ。「日本の将来を担う子供たちは国の一番の宝」だとし、対策の重要性を強調したことには一定の意義がある。だが、崇高な理念に見合う実効性を担保できたかは、残念ながら疑わしい。

平均的な年収の半分を下回る世帯で暮らす17歳以下の子供の割合を示す「子供の貧困率」は、2012年に16・3%と過去最悪になった。困窮家庭の子供や親の養育を受けられない子供は、経済面をはじめさまざまな苦境にさらされる。大綱には1月に施行された「子どもの貧困対策法」に基づき、国の具体策や理念が盛り込まれた。

策定にあたり、子供を支援する専門家や当事者らは、返済の必要がない給付型奨学金などの現金給付を充実させ、国としていつまでにどれほど貧困を解消するか数値目標を定めるよう声を上げ続けた。だが、政府は財源不足などを理由に、提案をことごとく退けた。並んだのは従来の施策やその延長線上の事業ばかりで、大胆さに欠けていた。

◇本音隠す官僚と後ろ向き財務省

一連の取材で最初に違和感を感じたのは、対策を主に受け持つ内閣府、文部科学、厚生労働両省の官僚の姿勢だ。大綱づくりに役立てようと内閣府に設置された検討会は教育、福祉など幅広い分野の専門家らで構成された。各界の第一人者が、現在の課題と大綱への希望を力説した。

会合に同席した官僚たちは、専門家らの訴えを神妙な表情で聞いた。だが、彼らは一度その場を離れると「財源確保は困難」と一様に小難しい顔をするのだ。なぜ会合で発言しないのか。ある官僚は「現実をぶつけると議論がつまらなくなる」と説明した。

居並ぶ官僚が本音を隠し、関係者に言いたいことを吐き出させる構図はどこか異様で、誠実さに欠ける。限りある財源を有効に使うため、官民で知恵を出し合えばよかったのではないか。「要するにガス抜きですね」。ある傍聴者の見立てが、あながち外れていないと思えてくる。

財務省からの横やりも、政権の「本気度」を疑わせた。3月末、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の分科会。子がいる世帯が受け取る生活保護費は、年収300万円未満の低所得世帯の消費水準を上回るとして、同省は生活保護の母子加算を削減するよう主張した。この事実が5月中旬、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の部会で紹介されると、委員からは「母子加算削減と子供の貧困対策を一度にするのはブレーキとアクセルを同時に踏むようなもの」と反対の声が噴出した。田村憲久厚労相(当時)ら関係閣僚からも、財務省をけん制する発言が相次いだ。

財務省は結局、生活保護の別の扶助や加算の削減を主張する立場へと転じた。だが、一連の経緯は「貧困問題になるべくカネを出したくない」という財務省の本音だけでなく、政府が一枚岩ではなかったことまで露呈させたといっていい。

◇首相のアピール、中身なく失望

私は安倍晋三首相の「本気度」も怪しいと思っている。首相は子どもの貧困対策法に基づいて設置された「子どもの貧困対策会議」の会長でもある。どんなに官僚が渋っても、首相が仕向ければ重点的に予算が投入されるはずだ。でも、そうした指導力を発揮した様子は、残念ながら見受けられない。

がっかりさせられる出来事があった。大綱の閣議決定直前に開かれた子どもの貧困対策会議。首相は前日に検討会メンバーと懇談したことに触れ「(大綱は)私自身も昨日有識者から直接お話をうかがったうえでとりまとめた」と述べたのだ。あたかも大綱の充実に首相が一役買ったような言いぶりだったが、内容は関係省庁や与党の調整を経て既に固まっていた。

懇談は首相側の要請で実現した。積極姿勢をアピールすることはあるのかもしれないが、懇談後に内容が拡充されたわけではない。誇張が過ぎると、子供たちの失望につながる。少なくとも、首相にとって子供の貧困対策は、特定秘密保護法や集団的自衛権の行使容認のように、反対を押し切ってまで断行する政治課題でなかったことは確かだ。

子供の貧困は長い間、その存在すら認知されない問題だった。生半可な対策では、人知れず己の運命に涙する子を減らすことにはならないだろう。数値目標を掲げて優先的に予算を配分し、現金給付などの施策を実現させる必要がある。安倍政権は今後、本気で問題に取り組むのか。取材を続けたい。


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