2014年11月6日木曜日

日本人であることの恩恵

ブログ「人の心に灯をともす」から平成生まれの愛国心」(2014-10-03)をご紹介します。


海外で活動していると、世界じゅうで日本人であることの恩恵を感じることができる。

たとえばタクシーに乗ったとき、ドライバーから「おまえは中国人か、韓国人か。それとも日本人か」と聞かれることが多いのだが、「日本人だ」と答えると、「日本人か!おまえたちはナイスだ!」と満面の笑みを返してくれる。

途上国の人びとにとっては、戦後の焼け野原から力強く復興した日本は、いまでも驚異の存在であり、自分の国が参考にできる点はないかと貪欲に学ぼうとしている。

僕の師匠、一橋大学の米倉誠一郎先生はインド、南アフリカなど世界各地でプレゼンテーションをするとき、東京の焼け野原の写真から始める。

上野から東京湾にかけて焦土が広がり、国会議事堂だけがぽつんとその姿を見せている。

そのあとに、モダンなビルが緑に囲まれている現在の東京の写真が続くと、会場はどよめく。

「なぜ日本はゼロから世界ナンバー3に駆け上がれたのか」。

こんなに底力のある国は、世界のどこを探しても存在しない。

こうした評価はとくにバングラデシュで強い。

ODA(政府開発援助)やJICA(国際協力機構)の関係者が数多く国際貢献活動に取り組んでおり、現地の人から「あの橋をつくったのは日本人なんだろう?」と、さも当たり前のように言われたこともある。

1971年にバングラデシュが独立した際、世界に先駆けて日本が独立国として承認したことも、彼らを親日家たらしめている理由。

国際貢献活動の目的の一つは、自分たちの国のブランド力を高めるところにあると僕は思う。

ことバングラデシュに関しては、その戦略が非常にうまくハマっているのだ。

もちろん僕自身も、海外にいるときに何度、日本のすばらしさ、力強さを実感したかわからない。

洪水に浸るバングラデシュの首都ダッカで、日本の都市計画の緻密さを。

険しい山間部を進むルワンダの路線バスで、日本の新幹線の快適さを。

F16戦闘機の飛行音が鳴り響くガザで、日本の平穏さを。

貧困にあえぐロマ族(ジプシー)を数多く抱えるハンガリーで、日本のセーフティネットの手厚さを。

自国の通貨が崩壊している国コソボで、円の世界的強さを…。

そのとき僕は、素直に、日本のことを「すごい」と思った。

「好き」だと思った。

「愛(いと)しい」と思った。

海外でプロジェクトに取り組む仲間に聞いても、みな口々に同じことを言う。

これこそが僕たち平成生まれの、リアルな「愛国心」である。

忘れてはならないのは、僕たちがこうした想いを抱けるのは、先輩世代の長年にわたる、とてつもない努力と貢献のおかげだということ。

そのことを認識し、感謝しないことには、海外で日の丸を背負って活動する資格はないと思っている。


税所篤快(さいしょあつよし)氏は、1989年生まれの25歳で、国際教育支援NGOの創業者。

19歳でバングラデシュに渡り、2014年には世界銀行本部イノベーションコンペ最優秀賞を受賞。

その後、仲間たちと五大陸での教育革命を掲げて7ヶ国で同事業を展開中の若き快男児だ。

「井の中の蛙(かわず)大海を知らず」という言葉があるが、日本にいると日本のよさに気づかない。

これは国だけでなく、会社や家族についても同じことが言える。

会社を辞めて起業したり、生まれた町や、家族から離れてみて初めて、その大切さや有難さに気づく。

日本にいるときに「愛国心」や「郷土愛」、家庭での「家族愛」の教育をしたところで、それがストンと腑(ふ)に落ちることは少ない。

なにもかも恵まれた生活ではその有難さに気づかない。

もっと日本のすごさに気づき、素直な愛国心を持ちたい。