2014年12月27日土曜日

財政審の建議

財務省から「平成27年度予算の編成等に関する建議」が公表されています。大学関係部分を抜粋してご紹介します。


平成27年度予算の編成等に関する建議(平成26年12月25日財政制度等審議会)


3 教育・スポーツ

(2)国立大学改革

①国立大学改革の目的

日本の大学進学者の大宗を占める18歳人口は、4年度をピークに減少に転じ、今後も減少傾向が続くと予想される。他方、高等教育機関の入学定員については、18歳人口の減少傾向と逆行して、4年度の473,268人から25年度には583,618人まで増加し、進学率・収容力はともに大きく伸びている。

我が国は、大学全入時代とも言われる中、グローバル化等の急激な社会変化に直面しており、改めて、国立大学には、

  • 世界で活躍できるグローバル人材、新たな価値を創造するイノベーション人材の育成
  • 各大学の強み・特色を生かした研究を通じた地域諸課題の解決
  • 地域の拠点として、産業界と一体となった地域経済の活性化

などの社会的役割を担うための機能強化が求められている。

文部科学省は、25年11月に「国立大学改革プラン」を策定し、ミッションの再定義による強み・特色を活かした重点化、ガバナンス強化、大学の枠を超えた連携、人材養成機能の強化などを目指して、運営費交付金の配分方法の見直しなどの様々な改革を行うこととしている。これらの取組は、国立大学の自主的な改革を促すものであり、その方向性は評価できるが、実効性ある仕組みとするための具体案の検討が十分に進んでおらず、改革プランで掲げた目的を達成する道筋が見えない。28年4月から開始される国立大学法人の第三期中期目標に向けて、改革具体案の検討を早急に進める必要がある。

大学改革は、大学自らが積極的に推し進めるべきものであり、社会的役割を担うために必要な組織改革等に取り組まなくてはならないことは、国立大学に限ったことではない。人材育成機能の確立、研究能力の向上に向けた取組みが、公立・私立大学を含む全ての大学に対して求められていることは言うまでもない。

②国立大学の現状

現在、国立大学は全国に86校設置されているが、16年度の法人化以降も、必ずしも各々の特色を活かした大学運営、教育研究機能の強化を行っているとは言い難く、競争力低下が深刻な問題であるとの懸念が各方面より示されているところである。

まず、世界トップレベルの大学と対等に渡り合うことが出来る潜在力を有する大学について、国際的な存在感が低下傾向にある。世界大学ランキング51における上位200位圏内の日本の大学5校の順位は、過去5年間で東京大学が26位から23位に上昇していることを除いて、軒並み低下している状況である。この間、これらの国立大学の事業規模は増加傾向であったところであり、資金や人的資源の一層の有効活用が求められている。

また、地方の国立大学は、地域に根差した文化的拠点としての強みを活かし、地域のニーズに応じた人材育成拠点、地域社会のシンクタンクとして様々な課題を解決する地域活性化機関としての役割を果たすことが求められている。

これらの国立大学を巡る現状を踏まえ、今後実効性のある大学改革を進めるためには、各大学の機能強化の目的と対象を明確にして、教育研究組織の再編、学内資源の再配分など、大学の自主的な取組みを促す環境整備が必要である。それは、他のあらゆる組織がそうであるように、自ら掲げた目的に基づく成果を達成するための環境整備であり、その成果は明確に社会に対して説明されなければならない。

③運営費交付金予算の配分の在り方

イ)見直しの視点

現在、我が国では、運営費交付金の大宗を占める一般運営費交付金について、教員・学生数などの規模に応じた配分方式を採っているため、学内資源の重点化・再配分に向けたインセンティブが働かない構造となっている。これに対して、諸外国における大学への交付金制度の中には、政府から独立した機関が研究成果・獲得研究収入等の成果に応じた重点配分を行うことにより、大学の自主的な取組みを促す制度がみられる。

また、世界トップレベルの大学や研究機関では、積極的に外部資金を獲得するなど多様な資金調達が行われている。我が国では、運営費交付金が各国立大学の収入財源の半分程度を占めており、多様な研究資金の獲得に向けた取組みが進んでいるとは言い難い。学生への支援を含め、教育研究環境の改善のためには、学長のリーダーシップ・適切なガバナンス体制の下で、多様な資金調達手段を確立するほか、授業料の引上げについても積極的に検討すべきである。

ロ)取組み成果を反映した予算配分及び評価手法の確立

大学の自主的な改革の取組みを促すためには、従前の一般運営費交付金の配分方式を見直し、各大学の取組み成果に応じた配分を行うことが必要である。具体的には、以下の方向を基本として、一般運営費交付金について、競争性の高いメリハリの利いた配分方式とすることを検討すべきである。

  • 各国立大学を、ミッションの再定義を通じた自らの選択により、①世界最高の教育研究拠点、②全国的な教育研究拠点、③地域活性化の中核的拠点の3つの大学群(機能強化の方向性)に機能分化する。
  • 一般運営費交付金全体の3割程度を改革経費として位置付けた上で、学長のリーダーシップを発揮した活用を促すとともに、上記3大学群の中で改革経費を重点配分する。改革経費の配分にあたっては、客観的成果指標を設定の上、2年程度ごとの短期間で取組み成果を評価する方式とする。
  • 客観的指標については、大学群ごとに設定する。例えば、世界最高の教育研究拠点を目指す大学については、国際競争力強化の視点が、地域活性化の中核的拠点を目指す大学は地域人材育成の視点が重視される。
  • 客観的指標の設定にあたっては、定量的・定性的指標が考えられるが、研究成果、人材育成などの客観的な取組み成果のほか、競争的資金獲得状況や寄附金等外部資金獲得状況など、大学自らの資金獲得努力に関する指標も採り入れる。

なお、特別運営費交付金についても、一層の重点化を図るため、政策課題に向けた大学の自主的取組みを評価した上で配分する仕組みに改めるべきである。また、一般運営費交付金のうち、上記改革経費を除いた部分の配分に当たっては、教員・学生数などの大学規模に加え、特別運営費交付金の各大学への配分実績を加味すべきである。これまで、政策課題に対応するために措置される特別運営費交付金の配分終了後は、一般運営費交付金の範囲内で各大学は取組みを継続してきているが、これにより、政策課題に対する円滑な継続環境が整備されるものと考える。


4 科学技術

科学技術振興費は、平成元年度比で約3倍に増加しており、社会保障関係費をも上回る伸びを確保してきた。その結果、政府・民間含めた研究開発費の対GDP比は主要国随一の水準である等、我が国の科学技術に対する資源投入は相当な高水準にある。その間、総論文数の増大や日本人研究者のノーベル賞受賞など一定の成果もあがっているが、厳しい財政事情に鑑みれば、財政資金の量的拡大をのぞむ環境にはなく、今後は「質」を向上しながら、研究開発の成果を最大化していくことが喫緊の課題である。例えば、論文の質についても、主要国に比べて低水準の被引用度を向上するなど、我が国の将来への「先行投資」として費用対効果を高めていくべきである。

(1)基礎研究分野

基礎研究分野については、質の高い研究成果が見込まれる分野融合的研究や国際共同研究といったアプローチに「選択と集中」を進めるとともに、高額な汎用大型研究設備などの共用化を促進することで研究費支出の効率化を進めるべきである。また、研究資金について、国立大学改革の動きも踏まえ、科研費、科研費以外の競争的資金のみならず、大学向け運営費交付金も含めた全体像を俯瞰し、制度全体の中でそれぞれの位置付けを明確化しつつ、制度間の連携強化・統合化を推進すべきである。その他、若手人材育成や国際共同研究といった事業についても、様々な主体が事業を行っており、全体戦略を構築した上で、重複を排除し、整理合理化を進めていく必要がある。

(2)研究不正等への対応

理化学研究所における一連の研究不正に鑑み、資源配分の固定化を防止し、PDCAサイクルを徹底するため、ガバナンス強化が不可欠である。具体的には、外部有識者による評価・助言の反映を徹底し、特段の理由なく反映されない場合は各センターに対する配分額の減額や責任者解任といった厳しいペナルティーを課すべきである。また、財務省予算執行調査における指摘を踏まえ、一括購入や単価契約を徹底し、調達改善が実施されない場合は研究費執行の一部停止等の罰則を導入し、ルール遵守の実効性を担保すべきである。なお、他の研究開発法人についてもこうしたガバナンス強化・調達改革を総点検し、徹底を図るべきである。

(3)事業化に近い研究開発や拠点事業

産業化やベンチャー創出につなげる研究分野については、資金配分に規律を働かせ、新陳代謝を図るため、現在は多くが事業開始後5~10年を目途に評価しているところであるが、原則研究開始後2年ごとに評価しプロジェクト数を絞り込むことをルール化すべきである。その際、客観性・透明性・事務負担軽減を踏まえた評価方法をもって実施する必要がある。地域拠点事業についても、過去累次にわたり展開されてきたことを踏まえ、まずは、これまでの課題を総括した上で、官民分担の在り方や効果的な手法を検証し、地に足のついた姿にしていく必要がある。

(4)大規模プロジェクトの後年度負担

次世代スパコンや宇宙開発などの大規模プロジェクトは、多額の後年度負担が生じることが多く、予算の硬直化を招きかねない。こうした一定規模以上のプロジェクトについては、要求段階において、後年度も含んだプロジェクト全体の資金計画を明らかにした上で、リース等の柔軟なファイナンス方式や官民の費用分担など財源調達の考え方を整理させることとし、自律的に財政健全化目標との整合性を確保する仕組みを作るべきである。

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