2016年1月24日日曜日

オープンサイエンスの推進と機関リポジトリ

国の学術・科学技術政策の重要な柱の一つに「オープンサイエンス」が位置づけられています。

オープンサイエンスの推進第5期科学技術基本計画|2016年1月22日閣議決定抜粋)
オープンサイエンスとは、オープンアクセスと研究データのオープン化(オープンデータ)を含む概念である。オープンアクセスが進むことにより、学界、産業界、市民等あらゆるユーザーが研究成果を広く利用可能となり、その結果、研究者の所属機関、専門分野、国境を越えた新たな協働による知の創出を加速し、新たな価値を生み出していくことが可能となる。また、オープンデータが進むことで、社会に対する研究プロセスの透明化や研究成果の幅広い活用が図られ、また、こうした協働に市民の参画や国際交流を促す効果も見込まれる。さらに、研究の基礎データを市民が提供する、観察者として研究プロジェクトに参画するなどの新たな研究方策としても関心が高まりつつあり、市民参画型のサイエンス(シチズンサイエンス)が拡大する兆しにある。近年、こうしたオープンサイエンスの概念が世界的に急速な広がりを見せており、オープンイノベーションの重要な基盤としても注目されている。
こうした潮流を踏まえ、国は、資金配分機関、大学等の研究機関、研究者等の関係者と連携し、オープンサイエンスの推進体制を構築する。公的資金による研究成果については、その利活用を可能な限り拡大することを、我が国のオープンサイエンス推進の基本姿勢とする。その他の研究成果としての研究二次データについても、分野により研究データの保存と共有方法が異なることを念頭に置いた上で可能な範囲で公開する。

多くの大学では、既に、学術研究等の成果を、学内外に無償で公開するための「機関リポジトリ」を整備しています。しかし、自身の論文等を登録している教員は限られていると聞いています。

大学という公的機関における研究成果の公表は義務であり、今後「機関リポジトリ」への登録を徹底する必要があります。

図書館という一部局に任せても実効性に乏しいと思われ、今後は、先進大学のように、学長、理事のリーダーシップの下、大学が組織として強力に推進する必要があります。


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学術論文、ネットで原則公開へ 公的資金使った研究対象|2016年1月24日朝日新聞抜粋
(全文はこちら
公的資金を使った研究について、政府は学術論文やデータをネット上で原則公開させる方針を決めた。国内の科学技術関連予算は年間約4兆円に上るが、論文の多くは有料の商業誌に掲載され、自由に閲覧できない。成果を社会で広く共有し、研究の発展を促す狙い。
国内の大学や研究機関が関わる科学技術の論文数は年間7万本を超える。米国や英国で公的資金を使った研究論文の公開義務化が広がっており、日本でも進める。22日に閣議決定した第5期科学技術基本計画(2016~20年度)の期間中に実施を目指す。
国の研究費を配分する科学技術振興機構や日本学術振興会が大学などに研究資金を出す際、論文の公開を条件にする方法などを検討している。研究者は、論文を無料で読める電子雑誌に投稿するか、有料の雑誌に出す場合は大学などが設ける専用サイトで、ほぼ同様の内容を無料で読めるようにする。
STAP細胞などの研究不正が相次いだことなども受け、論文の根拠となったデータも公開の対象とする。知的財産などに問題のない範囲が対象で、データを管理、検索できる基盤作りを国立情報学研究所が中心になって進める。多くの人が論文やデータを目にしやすくなれば、成果の活用が進み、研究の透明性も高まると期待されている。
京都大と筑波大はこの方針を先取りし、雑誌に載った論文などを学内の専用サイトに登録、公開する方針を今年度に打ち出した。
文部科学省で公開について検討する委員会の委員を務める西尾章治郎・大阪大総長は「公開が進めば、異分野のデータが組み合わさって新たな研究領域をひらきやすくなる」と話している。
(関連サイト)

2016年1月15日金曜日

「特定研究大学(指定国立大学)」制度の創設をどう受け止め、どう行動するか

文部科学省に設置された「特定研究大学(仮称)制度検討のための有識者会議」は、去る1月13日に「審議まとめ」を取りまとめました。

この新制度は、「日本再興戦略」(平成27年6月)、「国立大学経営力戦略」(平成27年6月)において、国立大学改革、イノベーション推進等の観点から生み出された重要な施策の一つに位置付けられています。

世界に伍し、我が国の高等教育を先導するミッション、厳しい申請要件に鑑みれば、旧帝国大学をはじめとする世界に通用する強い研究力を持つ大学に絞られることが当然に予想されます。

しかし、今回の審議まとめに書かれた内容のほとんどは、実は、このような卓越した大学のみに求められる特別なものとは思われず、大半の国立大学において当然に具備しなければならない役割・使命、要件のようにも思えます。

要は、今回の制度創設のもくろみは、社会、産業界、財務省、そして文部科学省等の要請に的確かつ迅速に応えることのできない多くの国立大学に業を煮やし、そのような大学の意識改革や大学改革を強力に促すための誘引策として、大学間の競争的環境を醸成しつつ、ある種の手本づくりをしようということなのかもしれません。

新制度に対して、国立大学は、今度どのように対応していくべきなのでしょうか。特定のエリート大学に限られたものだと傍観しているわけにもいかないでしょうし、教員養成等目的特化型大学以外の多くの国立大学にも適用可能と思われる次のような内容(審議まとめ抜粋)については、他人事とせず、自大学のこととして真摯に受け止め、柔軟に行動すべきなのでしょう。


《まえがき》
  • 国立大学においては、その設置形態、歴史的経緯と蓄積に鑑み、世界の大学がそれぞれの国と世界を支えるために展開している新しい価値創造の在り方を踏まえた上で、国際競争と国際協調の観点から、我が国のみならず世界が抱える課題に真摯に向き合い、新たな社会・経済システム等の提案が可能な国立大学へと更なる変革を進めていくことが求められている。
  • また、その成果を社会に還元することを通じて、社会からの評価と支援を得るという好循環を形成することにより、「知の創出機能」を持続的に発展させていくことにつながる。
  • これらの「知」の創出の場面においては、今日、学術及び社会が急速に高度化する中で、分野融合や新領域開拓による新たな価値創造と、それを生かした人材育成が必要となる。

《打破すべき様々な課題(壁)》

1 学内の「壁」
  • 部局(学部、研究科、研究所等)間の目標や情報の共有、リソースの流動性が少なく、融合分野、新領域の開拓が進みにくい。
  • 研究科・専攻ごとに収容定員が固定化されている実態によって、大学院生の所属が固定化され、優秀な人材獲得と流動性を阻害している。
  • 教員給与をはじめとする処遇について、国家公務員準拠の慣行が踏襲され、個々の教員の業績が適切に反映されていない面がある。
  • 大学が抱える課題に、教員と職員が協働して取り組む体制になっていない面がある。

2 学外との「壁」
  • 産学連携が研究者個人の単位で行われていて、組織的な取組が弱く、産業界のR&Dが海外の大学に流出する一因となっている。
  • 社会・経済の新たなシステムの変革に向けての提案等について、大学が組織全体で総合力を発揮して取り組む活動が十分に行われていない。
  • 社会からの評価を受けることが少なく、社会の要請に対して真摯に向き合う姿勢に欠けるところがある。

3 海外との「壁」
  • 留学生が学びやすい環境の整備に努めているが、途上である。
  • 現在大学に在籍する教職員の活動が「内向き」の場合には、海外からの研究者が、学内で自由闊達な活動を行うことができない面がある。
  • 海外からの研究者を引き付ける教育研究環境の充実や、生活環境も含めた支援についても途上である。

《備えるべき要素》

1 人材獲得・育成
  • 国内外の優秀な教員・研究者及び大学院生の獲得を進めること。このため、必要な教育研究環境整備を行う。また、大学院生に対しては、研究を支える人材でもあることから、経済的支援の在り方が海外の有力大学の取組において重要視されている。このため、世界市場から優秀な大学院生を獲得できる大学院の組織改革等を推進し、将来的には全ての大学院生への経済的支援を実施することを視野に取り組む。優秀な教員・研究者に対してはその能力や業績を踏まえた評価による処遇の設定を行う。卓越研究員(仮称)制度も活用する。
  • また、大学院教育においては、卓越大学院(仮称)制度等も活用し、専門性とともに、課題を俯瞰的に把握し、解決できる教育(教育プログラムと研究指導)を実施する。あわせて、学位取得者の質を保証するための厳格な修了認定を行う。研究者養成とともに、優れた研究力を背景とした高度専門職業人等の育成を行い、社会に貢献する。
(具体的取組例)
  • 国際的な標準に見合う大学院生に対する経済的支援(TA・RA、奨学金、授業料減免)
  • 大学院の研究科の収容定員の設定の見直し(硬直的な研究室配属の振り分けの是正)
  • 大学院生に対する専門(研究室)の枠を越え、異分野を含めた幅広く体系的な教育・研究指導の実施
  • 学修成果及び学位論文等に係る厳格な評価に基づく修了認定の実施
  • 若手研究者に対する支援(スタートアップ資金と共用機器等の活用方策)
  • 教員ポストの本部での管理
  • 教員業績の可視化・エフォート管理

2 研究力強化
  • 国内において研究力が最高水準に位置すること。また、その研究成果が社会に対してインパクトを持つこと。その研究力を生かし、分野融合・新領域の開拓を進め、既存の学問分野にとらわれず、独自性のある新しい価値を創造するための組織の見直し、研究戦略の策定等に取り組む。国内外からの求心力を高め、強力な拠点(ハブ)を形成する。
(具体的取組例)
  • 強化したい分野等への資源の戦略的な重点配分(資金、スペース等)
  • 大学院の研究科の収容定員の設定の見直し(硬直的な研究室配属の振り分けの是正)
  • 教員ポストの本部での管理
  • 研究設備・機器の共用化
  • 研究マネジメント人材(リサーチ・アドミニストレーターを含む。)の適切な配置

3 国際協働
  • 国際協働を積極的に推進すること。海外キャンパスの展開、ジョイント・ディグリー(JD)の実施等、海外大学との連携・協働等を含め、教育研究活動の国際展開による世界的な課題解決に資する学問分野の展開に取り組む。
(具体的取組例)
  • ジョイント・ディグリー(JD)やダブル・ディグリー(DD)プログラム等、海外大学との連携を含め、多言語で学位を取得できるコースの設置
  • 海外の研究者や学生を受け入れるために必要な教育研究環境等の充実

4 社会との連携

  • 大学間及び大学と企業・研究機関等の共創の場の構築・深化を進めること。大学全体での大型共同研究の推進や、学生・教員によるベンチャーの創出・育成に取り組み、ベンチャー創出のプラットホーム機能を構築する。さらに、社会人を対象とした高度人材養成機能を強化する。
  • また、社会との連携の強化を図る中で、産学連携収入、寄附金収入の拡大に取り組む。
(具体的取組例)
  • 教員個人ベースの活動ではなく、大学全体での産学連携や寄附募集(例えば、担当の理事の配置等を含めた体制整備等を含む。)
  • 起業家プログラムの提供や、ベンチャーを支援する者等との交流の場の設定
  • 大学院生の産業界を含む外部機関での長期インターンシップ等の導入
  • 産学連携等に係る活動を教員業績評価において評価
  • クロスアポイントメント制度の活用
  • 社会人を対象とした高度人材養成プログラムの構築

5 ガバナンスの強化
  • 学内外に信頼されるガバナンス強化を行うこと。学長のリーダーシッフの下、教育研究において強みや特色を発揮し、社会的な役割をより良く果たすことができるようにする。学長の任期、選考の在り方や、学長選考会議、経営協議会及び監事を含めた学長のチェック機能の強化など、ガバナンスの強化を自律的に推進する。
(具体的取組例)
  • 学長のリーダーシップの強化(経営戦略・資金配分・企画体制・学内外の広報広聴体制の強化)
  • IR機能の強化
  • 経営への国内外の優秀な人材の参画
  • 教員と事務職員の協働体制の構築
  • 専門人材の育成・確保
  • 学内情報の可視化
  • 学外への情報公表等

6 財務基盤の強化
  • 財務基盤の強化に取り組むこと。産学連携収入、寄附金収入の拡大を促進するとともに、規制緩和策により、既存の資産(寄附金、不動産等)や子会社による事業展開(出資事業)を効果的に活用する。
(具体的取組例)
  • 人事給与改革等を通じた自己財源の捻出
  • 外部収入の拡大


(参考)特定研究大学(仮称)制度検討のための有識者会議 配付資料

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