2016年3月11日金曜日

国立大学法人運営費交付金改革の経緯と今後の方向性(2)|財務省の動向

(続き)

財務省の動向

次に、財務省の動向についてご紹介します。

<動向1>財政制度等審議会での議論

予算編成の前段階に開催される財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会財政制度分科会(平成27年10月開催)では、例年同様の厳しい議論が展開されました。

財務省は、文教科学技術予算を削減するため、国立大学の運営費交付金を今後15年間に、毎年1%ずつ減少させ、産学官連携収入などの自己収入を毎年1.6%ずつ増やす(要するに、運営費交付金を減らすから、寄付金や民間資金、授業料の引き上げなどにより運営費交付金以外の収入を増やす努力をするよう)提案を行いました。

この場合、財務省が示す試算では、国立大学法人の運営費交付金総額は、平成43年度で9,826億円となり、平成25年度に比べて1,984億円の減額になります。

財務省の説明及び意見交換の様子を議事録から抜粋してみます。長文になってしまいますが、特に財務省(主計官)の説明から、財務省の意図が透けて見えるのではないかと思います。

<財務省主計官による説明>

18ページ

四角でくくられた進学率2をご覧いただきますと、現在、進学率は56.7%%まで来ております。
昭和50年代、やや伸び悩んでいたときもありますが、ここ20年程の間は増加傾向、向上している傾向にあります。
ただ、棒グラフに示されている18歳人口の推移を見ますと、今後、かなりの勢いで18歳人口が減少していくことが明らかであります。
進学率がどうなるかというのは非常に難しい予想でありますので何とも言えないのですが、過去10年の伸びで伸びていったとするならば、20年後、25年後には7割程の水準に達します。
この7割の水準に達したとしても、恐らく18歳人口減の圧力のほうが強くて、20年後、25年後におきましては、18歳人口から供給される大学入学者の数というのは1割から2割にかけて減るであろうということが予想されます。
大学の規模をどう考えていくかという問題は、この18歳人口から供出される入学者の減といった問題、これは留学、社会人の教育、学び直しがどうなるかということにもよるのですが、そういったことも踏まえて、今日、明日に結論が出ることではないと思われますが、早急に検討を始めておく必要があると思われます。


19ページ

赤いのが18歳人口の推移であり、その下に見える青い実線が入学定員の推移であります。
入学定員は、ここのところ、過去10年間ほとんど変動がございません。
そういったこともあり、上のほうに四角でくくってありますが、国立大学は、志願倍率は4.7倍からじりじりと下がってまいりまして、現在4.0倍程度という状態になってきております。
志願倍率が何倍ならば適当かというのは一概には言えませんが、こういったことも大学、高等教育のあり方ということを考える点では、十分踏まえる必要があるということでございます。



20ページ

国立大学の学生数と教職員数の推移であります。
学生数自体は1万6,000人程減っておりますが、教職員数は逆に増えているというのが現状であります。
大学法人化されてからは、教職員の方々、それぞれの大学の知恵、工夫によって自由に雇うことができる状態になっておりますが、各国と比較しますと、学生100人当たりの教員数という点で見ますと、日本がやや高く見えますので、こういったことも踏まえて、その持続可能な国立大学経営ということを考える上では、こういったことも踏まえる必要があるのではないかと考えます。


21ページ

国立大学法人の収入構造の改革をご提案申し上げたいと考えます。
黄色い帯が国立大学法人が、国からの支出を受けて賄っている部分が7割で、その大宗は運営費交付金です。
これに対して残り3割が自己収入ということで、自己収入は半分程が授業料、その他寄附金、産学連携による研究収入などであります。



22ページ

左端が国立大学法人の収入構造です。
右側に3つ並べましたのが、試みに例として出させていただきました私立大学の収入構成であり、一見して色は違った状態にあります。
もちろん国立大学と私立大学を全く同じ収入構造にする必要はないとは思います。
ただ、左側にありますような、国立大学法人の薄い青色の運営費交付金に5割以上、過半を頼っている姿というものは、今後の財政事情などを考え、また、学生数の減少が見込まれる可能性が高いことを考えますと、この構造が持続的に続けられるものかどうかというのは、かなり疑問かと思いますので、自己収入の割合をより増やしていただきたいというふうに考えます。


23ページ

国立大学の授業料についての資料です。
国立大学の授業料の水準につきましては様々なご議論があるとは思いますが、自己収入というものを引き上げていく上で、現在の授業料がどういう状況にあるかということは示してありますが、現在、国立大学の授業料は、標準額が年額53万5,800円と定められており、その2割増しまでは各大学が学則で増やすことができる。
ちなみに、下限はありません。そういう状態になっており、各大学はそれぞれの判断で上げることができるという制度はできておりますが、この標準額と異なる額を設定している大学は、右に掲げてある7つの大学しかなくて、そのうち、引き上げの方向で設定されておられるのは、一番下にある2つの大学、学部しかないという状態であります。
従いまして、授業料を直ちに引き上げるべきであるというような、べき論を申し上げるわけではありませんが、自己収入を引き上げる努力というものが何もない、手は尽きているという状態とはまだなかなか言えないのではないかという一例として申し上げました。



24ページ

私どもとしては、今後15年間程の時間をかけて、国立大学が収入のうち運営費交付金に依存する割合、自己収入で稼いでくる割合を同程度とするということを目標とされてはどうかと考えます。
運営費交付金の依存度は15年間をかけて同程度ということでありますと0.5%ずつということになるわけです。一例としまして、例えば、運営費交付金を毎年1%減少させることにしますと、自己収入を毎年1.6%ずつ増加させることが必要になってくるということでございます。



25ページ

特に私どもとして申し上げたいことは、自己収入の割合と運営費交付金依存度を同じ程度にするためには、例えば、自己収入だけ引き上げていけば依存度自体は下がるわけでありますが、そういうことになりますと、財政健全化に何ら貢献がないということが一つ。
もう一つは、自己収入と運営費交付金につきましては、かねてから、大学にとっては自己収入を引き上げるとその分、翌年、運営費交付金をその分、削減されてしまうのではないか。そういうことになると大学にとっては自己収入を稼ごうというインセンティブがなくなってしまうのだというご批判もあります。
こういったご批判も踏まえて、私どもとしては、まず先に運営費交付金について1%減額といったような目安を置くことによりまして、大学が自己収入をそれ以上稼いでいただいても、それを理由として運営費交付金を削減することはしないということをコミットすることにより、はっきりしたインセンティブとさせていただきたいということであります。
4つ目の◯であります。その上で、この1%削減によって確保される財源の一部につきましては、当面、一定の明確な基準に応じてpay for performanceの観点から補助金として再配分をするということで、さらなるインセンティブとさせていただきたいと考えております。



26ページ

科学技術の話であります。
まず、26ページは、官民合わせた研究開発等であります。
まず、日本は、GDP比で見ますと、官民合わせた研究開発投資の水準は主要国の中で最も高い水準を過去25年にわたって維持しているということをご紹介させていただきたい。



27ページ

そうした中、政府の研究開発投資が少ないというようなご指摘もあったことから、過去20年間、社会保障を上回るようなかなりのペースで拡充してきたわけでありますが、現在の財政事情に照らしますと抑制は不可避という状況かと思います。



28ページ

我が国の科学技術関係予算におきましては、量的拡大は非常に難しい状況でありますので、質を改善していただくということが不可欠かと思います。
左にありますように、予算の額と論文の数はかなり相関しており、お金を増やせば論文の数は増えるという傾向はかなりはっきりしているように思われますが、右側のトップ10%論文数という目で見ますと、これだけで質を判断するわけではありませんが、このトップ10%論文数の割合を見ると、日本の水準は諸外国と比べて低いということ、それから、予算が拡大期に増加していないというように見えるといったことでありますので、予算をたくさん投入することによって質のいい論文が排出される、次々に生まれるというわけではないのではないかということを申し上げたいと思います。



29ページ

そういうことで、質の向上という観点からすると、29ページにありますように、科学技術の世界においても成果目標にきっちりとコミットしていただくことが必要かと思います。
今年は年末から年明けにかけまして第5期の科学技術基本計画5年間、これを策定する時期に当たっております。


30ページ

科学技術基本計画につきましては、下の注1、少し小さい字で恐縮ですが、そこにありますように、現行の第4期科学技術基本計画におきましては、政府研究開発投資の総額規模約25兆円とするというようにインプット目標が明記されております。
私どもとしては、こういったインプット目標は、ほかの政府の基本計画にはもはやありませんので、こういうインプット目標を次期科学技術基本計画に盛り込むべきではないと考えておりますし、そこは様々な議論があるかもしれません。
仮にそのインプット目標を置かざるを得なくなるとしても、成果目標、アウトカム目標にもっときちんとコミットしていただくような計画としていただく必要がぜひともあるというふうに考えます。



31ページ

2つ目の提言です。
これは先程の国立大学の話とも関連しますが、大学における研究開発費、研究開発費に占める企業からの受け入れをもう少し増やす努力をしていただけないかという話でございます。
31ページの左側のピンク色の線にありますように、企業からの受入金額というのは、金額自体は3倍強となっているのですが、緑の線にありますように、受入割合という目で見ますと横ばいということです。
よりたくさん確保していただく努力をしていただきたい。




32ページ

最後に、競争的研究資金改革ということで、配り方の改革についての提案をさせていただきたいと思います。
4つ程ございますが、1つだけご紹介させていただきますと、1番にありますように、競争的資金の審査は国内に留まっております。
英文のピアレビューなど、外国人審査員によるレビューを一部でも取り入れていただき、そういった国際的な審査を経ることで、より質の向上を図ることができるのではないかといった提案をさせていただきたいと思います。






<分科会委員による意見>


田中弥生 (独)大学評価・学位授与機構教授

予算を削減、運営費交付金を1%、経常的に削減をし、その分、15年かけて毎年1.6%ずつ自己収入を上げるという話。
このグラフ(24ページ)を見ると、片方は確実に削減が1%できるのだが、1.6%の収入の増というのは、不確実要素がとても多い自己努力の分。
例えば、景気の動向の影響を受けるかもしれない、あるいは、授業料を上げるのであれば、学生たちとの合意形成にリードタイムが必要かもしれないということも考えられるので、幾つかの自己収入計画というものを様々な条件を踏まえてつくった上で、段階的に考えていくような議論が必要ではないか。

大学を一律的に考え過ぎているのではないか。
研究型と教育型の大学では、自己収入の取り方、調達の仕方というのは能力にすごく差があるので、大学の機能分化、役割に応じて運営費交付金のあり方、あるいは削減の仕方も捉えていく必要があるのではない。

赤井伸郎 大阪大学大学院国際公共政策研究科教授

学生定員の規模をどうするのかとか、大学進学率をどうするのかとか、国立と私学の定員配分をどうするのかとか、国としての方向性を考えることをしないとなかなか先に進めないのではないか。

授業料のアップは、教育費のあり方の議論も大事だし、今、議論している所得連動型奨学金などとの関連も大事。授業料も、今横並びだから多様性も広げていくことが大事。

いきなり自己収入をアップしろといっても、これまでの経緯もあるので、その改善余地や収入拡大努力にどういう問題点があるのかを精査して、例えば、規制緩和と組み合わせるなど、それをどのようにしたら促すことができるのかということを議論しながら、それとともに運営費交付金のあり方を考えていくことで、この議論の意義が出てくる。

岡本圀衞 日本生命保険相互会社代表取締役会長

科学技術予算について。
左側の折れ線グラフ(27ページ)を見ると、平成元年をベースにした指数で、社会保障関係費以上のペースで拡充と書いてあるが、一方で、過去10年で見たらどうかというと、ほとんど伸びていない。
指数ばかりで語っているが、では実際の予算規模ではどうかというと、これは社会保障関係費と科学技術振興費は大分違う。

ある程度、「必要な投資」についてもきちんと考えていかなければいけないのではないか。
それぞれの予算について、どれが今日本に求められていて、どれがこれは長い間やっているからもうやめようとか、こういうことにもっともっと切り込んでいく必要があるのではないか。

井堀利宏 政策研究大学院大学教授

運営費交付金が、ある客観的な水準で変化して、それが自己収入の変動と連動しないというのは、インセンティブの面では非常に重要。
これは、地方税収を増やしたときに交付税を減らされると地方税収を増やすインセンティブがないというのと同じ話。
将来の運営費交付金のあり方を自己収入と連動させない形で示すというのは、非常に望ましい姿。
それが結果として国立大学の、ある意味では、護送船団方式的なあり方に、様々な再編も含めて改革を促す努力になる。

機関への補助金を獲得するために、大学の教官は時間的に相当ロスをしている。
大学は研究が主なので、なかなかそこが難しくて、どうしても教官がここにかかわらざるを得ない。
大学への補助金をもう少し客観的に長期の形で出すようにいただけると非常に助かる。

竹中ナミ (社福)プロップ・ステーション理事長

大学の自己収入を増やすというのも、多分すごく苦手。
自己収入を増やされた大学を「よくやったね」とほめてあげて、ここがこういう自己収入を増やすモデルになりましたということをきちんとアピールする、社会全体でそれが大学同士で共有できるようになればいい。

黒川行治 慶應義塾大学商学部教授

授業料は、奨学金制度というものも勘案して考えないと問題。
授業料はこの程度だが、奨学金で戻ってくる採択率が高ければ、実質的な負担額はもう少し小さい。

高原豪久 ユニ・チャーム(株)代表取締役社長執行役員

国の研究開発費についてKPIを導入して成果や効果を追及していくことに対しては大きな意義がある。
ただ、本質的に重要なのは、効率だけではなく、効果をいかに最大化させるかということなので、論文の数といったことよりも、どうすれば効果を大きくすることが出来るのかということについて、民間を含めて議論すべきではないか。
なお、KPI管理というのは、比較的短期間で成果が出せるものに対しては設定・運用をしやすい傾向にあるが、中長期のテーマの場合には様々な工夫が必要。

佐藤主光 一橋大学国際・公共政策大学院教授

国立大学において今後、社会動向の変化を見きわめながらどの程度の経費がかかるのかは少子化だけではだめ。
留学生も受け入れているし、社会人もいるので、子どもの数が減ったイコール教育費がかからないという意味ではない。
研究大学院というのもあるので、国際的な競争力を持つ研究をどの程度やるかということによっても必要経費が出てくるはず。
まず、それが出てきて、次に今度は自己収入の割合が出てくる。
例えば、私立並みに授業料を段階的に引き上げたらどうなるか。
ただし、低所得者に対する配慮はどうするかというところは別途で考えなければいけない。

産学連携を進めたらと言うが、産学連携をこれくらい進めたらこれくらい自己収入が上がりますという推計があって初めて、じゃあ、結果的にこれくらい交付金は減らせますという議論。
つまり、最初に国立大学の必要総経費があり、自己努力によって得られるだろう自己収入があり、差額として交付金が出てくるという、この順番でなければ、いきなり交付金を切ることを前提に自己収入を上げろと言われても、議論としてはなかなか成り立ちにくいのではないか。

地方大学に対するてこ入れを今後どうするのか、例えば、都会の国立大学は何とかなりそうな雰囲気もあるので、そういうところとのメリハリのつけ方など、少し幾つかのシナリオとケース分けをして、機能別に必要な交付金の所要額を少し出していくという、そういうきめ細かい対応が求められるのではないか。


配付資料(全資料) こちら
(続く)

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