2016年3月23日水曜日

国立大学法人運営費交付金改革の経緯と今後の方向性(8)|平成28年度予算案に関する文部科学省の説明(2)

(続き)

1 機能強化経費の配分の考え方

(経過)

平成28年度予算における機能強化経費の配分の考え方については、平成27年6月に、「第3期中期目標期間における国立大学法人運営費交付金の在り方について 審議まとめ」(以下、「審議まとめ」)をとりまとめるとともに、これを踏まえて、重点支援に向けた観点や留意点等を内容とする「平成28年度における国立大学法人運営費交付金の重点支援について」(以下、「観点及び留意点」)を各大学に示したところ。

機能強化促進係数の具体的な割合については、「審議まとめ」で記していたように、平成28年度の予算編成過程で決定。これに伴い、機能強化促進係数による各大学からの拠出額が定まるとともに、同じく予算編成過程で運営費交付金の全体規模が定まったこと等を受け、「教育研究活動(プロジェクト等)関係」と「教育研究組織整備関係」の具体的な予算額が決定。

その具体的な配分の決定については、「審議まとめ」や「観点及び留意点」を踏まえて、各大学から示された取組構想(ビジョン、戦略、評価指標、具体的な取組)について、有識者の意見を踏まえ、訓価に基づく配分を行ったところ。

1)教育研究活動(プロジェクト等)関係について

「教育研究活動(プロジェクト等)関係」については、機能強化促進係数によって各大学から拠出された財源(機能強化促進係数影響額)である約94億円を活用するとともに、第2期までの事業の継続性等を考慮して約10億円を加えて配分することとし、合計で約104億円を機能強化経費として措置。このうち、機能強化促進係数影響額の再配分については、8項目の評価指標(別紙1「3.評価の対象(2)評価項目と評価方法」)により、戦略ごとに評価し、配分。

なお、このほか、補助金からの移行分として59億円、さらに入学者選抜改革分として10億円を措置。

2)教育研究組織整備関係について

第3期において、教育研究組織や学内資源配分の見直しを進めることについては、「国立大学改革プラン」(平成25年11月)等を通じて、各大学に対して検討を求めてきたところ。

「教育研究組織整備関係」については、すべての大学が毎年度要求する性格のものではなく、その予算額の規模も、機能強化促進係数によって各大学から拠出された財源を基礎とする「教育研究活動(プロジェクト等)関係」とは異なり、運営費交付金の全体規模等によって決定されるもの。

平成28年度は、国立大学法人運営費交付金全体で前年度同額の予算規模が確保され、機能強化経費全体として308億円が確保できたこと、さらに、第三期初年度に当たる来年度措置すべき教育研究組織整備関係の提案が各大学から例年を大きく上回る規模であったことを踏まえ、101億円を措置。

「教育研究組織整備関係」についても、3項目の評価指標(別紙1「3.評価の対象(2)評価項目と評価方法」)により、評価を行い、来年度より組織整備を行うことが望ましい取組について、経費を配分。
平成28年度予定額  30,799百万円(20,489百万円)
・教育研究活動(プロジエクト等)関係  10,423百万円(12,713百万円)
・補助金移行分  5,880百万円(新規)
・入試改革分  1,000百万円(新規)
・教育研究組織整備関係  10,092百万円(5,319百万円)
・共同利用機関法人分  3,403百万円(2,457百万円)
※括弧内は平成27年度予算額


(別紙1)

平成28年度における国立大学法人運営費交付金の重点支援の評価結果について

1 第3期中期目標における国立大学法人運営費交付金の重点支援について

第3期中期目標における国立大学法人運営費交付金(以下「運営費交付金」という。)については、第3期における国立大学の機能強化の方向性に応じた取組をきめ細かく支援するため、予算上、3つの枠組みを設けて重点支援を行うこととしており、各国立大学法人は、それぞれの機能強化の方向性や第3期を通じて特に取り組む内容を踏まえていずれかの枠組みを選択することとなっている。

平成28年度の運営責交付金の重点支援に当たっては、重点支援の枠組みごとに、各法人から提案のあった取組構想の評価を有識者の御意見を踏まえて行った上で配分することとしており、その評価結果を公表するもの。

【重点支援1】

主として、人材育成や地域課題を解決する取組などを通じて地域に貢献する取組とともに、専門分野の特性に配慮しつつ、強み・特色のある分野で世界ないし全国的な教育研究を推進する取組等を第3期の機能強化の中核とする国立大学を重点的に支援する。

【重点支援2】

主として、専門分野の特性に配慮しつつ、強み・特色のある分野で地域というより世界ないし全国的な教育研究を推進する取組等を第3期の機能強化の中核とする国立大学を重点的に支援する。

【重点支援3】

主として、卓越した成果を創出している海外大学と伍して、全学的に世界で卓越した教育研究、社会実装を推進する取組を第3期の機能強化の中核とする国立大学を重点的に支援する。

2 各大学における取組構想について

各国立大学法人の取組については、第3期中期目標・中期計画の策定と並行して、予算上重点的に取り組む内容を新たに提案いただいている。

具体的には、図1のように、第3期における各大学の「ビジョン」を策定し、「ビジョン」の実現に向けた具体的な改革の方針をいくつかの「戦略」としてまとめるとともに、各「戦略」を具体的に実行する取組と「戦略」の達成状況を判断するための「評価指標」を設定して提案いただいた。


3 評価の対象

(1)評価の対象

評価の対象としては、各国立大学法人から提案のあった「戦略」ごとに実施するとともに、「戦略」を実行する取組のうち特に重要な取組となる「組織整備」についても評価を実施。


(2)評価項目と評価方法

評価項目については、今回の重点支援の趣旨を踏まえて次のように設定し、それぞれ3段階(A:十分に踏まえている、B:踏まえられているが十分とはいえない、C:ほとんど踏まえられていない)で評価を実施。

①「取組構想全体」及び各「戦略」に関する評価項目
  • 各大学が有する強み・特色に関する実績や今後の強み・特色の形成を踏まえた機能強化の方向性に沿った内容となっているか。
  • ビジョンの実現に向けた具体的な改革の方針となっているか。
  • 第3期中期目標・中期計画(素案)の記載事項との関係性が明確であるか。
  • 戦略の達成状況を判断するための測定可能な評価指標(KPI)等が設定されているか。
  • 選択した枠組みとの関連性が明確であり、戦略の実行に必要となる具体的な取組が提案されているか。
  • 教育研究活動の個々の取組が、戦略を実行するための手段として体系的に整理されているか。また、その内容が総花的になっていないか。
  • 3つの枠組みごとの観点として、各大学法人が選択した枠組みの項目を総合的に評価
【重点支援1】
  • 地域の活性化や持続的な発展に資するため、地域とのネットワーク形成や連携協力体制が十分に構築されているか。
  • 地域の期待に応え、貢献していくための方策が明確であり、教育研究活動に地域の声を反映する仕組みが整備されているか(外部委員会の設置や地方自治体の意見を聴取するなどにより、広くステークホルダーのニーズを取り入れる機会を設けるよう配慮する。)。
  • 強み・特色のある分野の教育研究における取組の卓越性や、世界的・全国的なネットワークの中核的な機能が、これまでの実績や今後の将来性に鑑みて十分に発揮できるような取組になっているか。また、当該分野の強化等と併せて他分野の見直し等が検討されているか。
【重点支援2】
  • 強み・特色のある分野の教育研究における取組の卓越性や、世界的・全国的なネットワークの中核的な機能が、これまでの実績や今後の将来性に鑑みて十分に発揮できるような取組になっているか。
  • 強み・特色のある分野における我が国の国際的な存在感を高めるための方策が明確になっているか。
【重点支援3】
  • 全学的な教育研究活動において、世界での卓越性や国際性が十分に期待できるものとなっているか。
  • 研究に特に強みのある大学として大学院の高度化に向けた方策が明確であり、大学全体として教育研究組織の再編や規模等の見直しが計画されているか。
  • 年俸制の拡大などの人事給与システム改革も活用しつつ、若手研究者や大学院生の国内外を通じた流動性が十分に期待できるものとなっているか。
  • 「取組構想全体」の評価として次の観点について総合的に評価
  • ビジョン・戦略・取組の整合陸が図られているか。
  • 各大学の現在有する又は今後形成される強みや特色を十分にいかしたものとなっているか。
  • 社会ニーズや人材需要、学問の進展を踏まえたものとなっているか。
  • 選択した枠組みに照らし、第3期中期目標期間のビジョンとして明確なものとなっているか。
  • ビジョン及び戦略を実現するための工程が具体的かつ明確に設定されているか。
  • 各取組について、平成28年度から取り組む緊急性・必要性はあるか。

②「組織整備」に関する評価項目

戦略の中で行う組織整備については、今回の重点支援の趣旨を踏まえて次のような評価項目を設定し、平成28年度から組織整備として実施するべき取組について選定。
  • 教育研究組織の再編を行うものであり、各大学の機能強化のために真に必要な整備であるか。
  • 学内資源の再配分が適切に行われているか。
  • 恒常的な教員等の配置が必要な取組であるか。

(3)有識者の意見聴取について

今回の評価の実施に当たっては、別紙のとおり、専門分野に配慮しつつ、国立大学に関する知見を有する有識者12名から、4回にわたり意見聴取を実施。

4 評価結果の概要

(1)「戦略」の評価結果

「戦略」の評価について、設定した8項目の評価結果を重点支援ごとにまとめると次のとおり。


(2)「組織整備」の選定結果

「組織整備」の選定結果について、重点支援ごとにまとめると次のとおり。


5 評価結果の予算への反映方法

各大学の戦略ごとの評価結果をとりまとめて点数化し、当該大学の戦略当たりの平均を算出。算出した結果を基に当該大学の「機能強化促進係数」による影響額を120%~75%の範囲で予算に反映。



2 平成29年度以降の国立大学法人運営費交付金についての考え方

平成29年度以降の国立大学法人運営費交付金の在り方については以下のとおりであり、この方向で具体的な検討を進めることとしている。
  • 第3期中期目標期間は、「3つの重点支援の枠組み」により、機能強化の方向性に応じた重点支援を実施。
  • この重点支援の財源として、「機能強化促進係数」により各大学から拠出された財源(毎年度約100億円程度)を確保した上で、このうち2分の1程度の額を、運営費交付金(機能強化経費)として再配分。
  • 残りの財源を活用して、人件費等恒常的な経費以外の組織改革に必要な設備や一定期間行う事業などの初期投資費用への支援として、運営費交付金の補完的役割を果たす「新規の補助金」を創設し、各大学に配分することを予定している。その内容については今後検討していくこととする(※専任の教員人件費など恒常的な経費は「機能強化経費」において支援)。
▶新規の補助金における支援経費(例)
 ・組織整備において新たに必要となる教育研究設備
 ・e一ラーニング・学修ポートフォリオなど教育の質の向上を図るためのシスデム開発費プログラム開発費用
 ・期間が明確に定められた形で雇用する外国人教員招へい費等
  • 29年度以降は、「運営費交付金(機能強化経費)」と「新規の補助金」により基盤的経費の確保に努力する。また、これらの経費は、28年度に準じて、有識者の意見を踏まえ、評価に基づき配分することとする。
  • なお、「機能強化経費」により支援を行っている取組のうち、おおむね3年程度の一定期間経過した優れた取組については、人件費を中心として「基幹経費化」することで、各大学の基幹経費の充実を図る。
  • なお、基幹経費化の規模については、毎年度30~50億円程度(機能強化経費で措置される額の2分の1程度まで)を想定しているが、そのための条件等の詳細については今後検討していくこととする。
(続く)