2016年6月19日日曜日

国立大学法人法の改正(指定国立大学、資産の有効活用)

去る4月20日に参議院本会議、5月12日に衆議院本会議において「国立大学法人法の一部を改正する法律」が可決・成立しました。

国会審議においては、
  • 指定国立大学法人制度の趣旨や、スーパーグローバル大学などのこれまでの政策との違い、世界大学ランキングとの関係
  • 地方国立大学への支援の在り方
  • 資産運用の自由度を拡大する上での留意点
などの議論が行われました。

また、衆議院、参議院ともに附帯決議が付されており、
  • 指定国立大学制度の指定にかかるプロセスの透明性の確保
  • 指定国立大学への支援
  • 各地域における国立大学の重要性を踏まえた支援
  • 自己収入拡大の際の配慮
  • 高等教育全体のグランドデザインを踏まえた大学改革の推進
  • 国立大学法人運営費交付金をはじめ、高等教育に係る予算の拡充
などが盛り込まれています。



今般の法改正については、各大学の検討に資するため、「国立大学法人法の一部を改正する法律の施行に向けた準備について」という事務連絡が各大学に発出されています。

主な内容は、
  1. 指定国立大学法人の公募に当たって踏まえるべき観点
  2. 指定国立大学法人の指定に係る今後のスケジュール
  3. 国立大学法人等の資産の有効活用を図るための措置に係る今後のスケジュール
となっています。以下に全文ご紹介します。


国立大学法人法の一部を改正する法律の施行に向けた準備について(平成28 年6 月8日付事務連絡)

このたび、第190回国会において「国立大学法人法の一部を改正する法律(平成28年法律第38号)」(以下「改正法」という。)が成立し、平成29年4月1日(ただし、国立大学法人評価委員会への外国人委員の任命等については平成28年10月1日)から施行されることとなりました。

改正法においては、我が国の大学における教育研究水準の著しい向上とイノベーション創出を図るため、文部科学大臣が指定する指定国立大学法人については、世界最高水準の教育研究活動が展開されるよう、高い次元の目標設定に基づき、大学運営を行うこととしています。また、国立大学法人等の資産の有効活用を図るため、国立大学法人等の土地等の第三者への貸付けや寄附金等の運用に係る自由度を拡大することとしています。

これについて、各国立大学法人等の検討に資するため、下記のとおり、指定国立大学法人の公募に当たって踏まえるべき観点及び指定国立大学法人の指定に係る今後のスケジュール並びに国立大学法人等の資産の有効活用を図るための措置に係る今後のスケジュールについてお知らせいたします。なお、今後のスケジュールに関しましては、現時点の想定であり、今後変更になることもあり得ますので予め御承知おきいただければ幸いです。

各国立大学法人等におかれましては、現時点で検討されている内容等があれば随時意見交換等をさせていただきたいと考えておりますので、下記連絡先まで御連絡いただきますようお願いいたします。

なお、改正法の考え方や留意すべき点等については、改正法を受けた政省令の改正の後に、別途、施行通知において御連絡することを予定しております。


1 指定国立大学法人制度の創設について

(1)指定国立大学法人の公募に当たって踏まえるべき観点

改正法に基づき、今後、文部科学省において、国立大学法人評価委員会の審議を経て、指定国立大学法人の公募要領を策定することとしているが、指定国立大学法人の公募に当たって踏まえるべき観点については以下のとおり。

①指定に当たっての考え方

指定に当たっては、以下に示す目標設定と備えるべき要素について、優秀な人材を引きつけ、研究力の強化を図り、社会からの評価と支援を得るという好循環を実現する戦略性と実効性を持った取組を提示でき、かつ指定を受けようとする大学が定めた期間の中で、確実な実行を行いうる大学に限り指定することとする。

指定国立大学法人に申請する大学は、現在の人的・物的リソースの分析と、今後想定される経済的・社会的環境の変化を踏まえ、大学の将来構想とその構想を実現するための道筋及び必要な期間を明確化することが求められる。

また、指定された結果、当該大学が、社会や経済の発展に与えた影響と取組の具体的成果を積極的に発信し、国立大学改革の推進役としての役割が期待される。

②指定国立大学法人の指定に係る申請要件

指定国立大学法人に申請する大学は、国内の競争環境の枠組みから出て、国際的な競争環境の中で、世界の有力大学と伍していくことを求めることに鑑み、「研究力」、「国際協働」、「社会との連携」の3つの領域それぞれにおいて、既に国内最高水準に位置していることを確認するため、それぞれの領域において一定の水準にあることを指定の要件とする。

それぞれの領域における具体的な項目や各項目について求められる水準については今後さらに検討することとしているが、現時点において想定する項目例については以下のとおり。なお、要件の設定に当たっては、各大学の規模等についても考慮する予定。

【要件とする項目例】

<研究力>

  • 科学研究費等の獲得状況
  • 論文数、論文被引用数
  • 国際共著論文数


<社会との連携>

  • 産学連携等収入
  • 寄附金額
  • 大学発ベンチャー数
  • 社会人向け高度人材養成プログラムの状況


<国際協働>

  • 国際共著論文数
  • 留学生受入数
  • 留学生輩出数


③指定国立大学法人の目標設定

指定国立大学法人に申請する大学は、その将来構想において、以下の二つの観点からの目標を掲げることとする。

その際、海外大学における具体的な取組や、海外大学の研究分野別の状況などを踏まえたベンチマークを活用し、目標を設定する。

その目標については、実現するために必要な期間を明確化した上で、各法人の中期目標・計画に盛り込むこととする。

<教育研究の卓越性の観点からの目標設定>

世界の有力大学と伍して、国際的水準で競い合い、独創的・先端的な我が国の学術研究を発信することで、求心力を持ち、「国際的な研究・人材育成拠点」となるための目標を設定する。

<社会への貢献の観点からの目標設定>

社会の持続的発展に向けて「知の協創拠点」となるため、人類全体の持続的発展に資する社会・経済に関する新たなシステムの提案や産学連携など、これまでの社会との連携の状況を踏まえ、目標を設定する。

④指定国立大学法人の構想

指定国立大学法人に申請する大学は、上記の設定目標を実現するため、次に示す【人材獲得・育成】【研究力強化】【国際協働】【社会との連携】【ガバナンスの強化】【財務基盤の強化】の6つの要素を含む構想を提出する。

各構想には、②に示した目標を達成するための具体的な取組を掲げるものとし、その具体的取組については、各法人の中期目標・計画に盛り込むこととする。

その際、自らが伍していこうとする海外大学の取組を踏まえ、ベンチマークを設定する。

【人材獲得・育成】

国内外の優秀な教員・研究者及び大学院生の獲得を進めるため、必要な教育研究環境整備を行う。

世界市場から優秀な大学院生を獲得できる大学院の組織改革等を推進し、将来的には全ての大学院生への経済的支援を実施することを視野に取り組む。

優秀な教員・研究者に対してはその能力や業績を踏まえた評価による採用・登用や処遇の設定を行うとともに、卓越研究員制度も活用する。

大学院教育においては、卓越大学院(仮称)制度等も活用し、専門性とともに、課題を俯瞰的に把握し、解決できる教育を実施する。

学位取得者の質を保証するための厳格な修了認定を行う。

研究者養成とともに、優れた研究力を背景とした高度専門職業人等の育成を行い、社会に貢献する。

具体的取組(例)

  • 国際的な標準に見合う大学院生に対する経済的支援の充実(TA・RA、奨学金、授業料減免)
  • 大学院の研究室配属の振り分けの見直し
  • 専門(研究室)の枠を越えた学際分野を含めた幅広く体系的な大学院教育・研究指導の実施
  • 学修成果及び学位論文等に係る厳格な評価に基づく修了認定の実施
  • 若手研究者に対する支援(研究費の拡大、ポストの拡充、スタートアップ資金の確保、共用機器等の活用方策、研究者の適切な年齢構成の確保、テニュアトラック制の活用)
  • 教員ポストの本部での管理等による戦略的な教員採用
  • 教員業績の可視化・エフォート管理・評価に基づく処遇の設定


【研究力強化】

国内最高水準に位置する研究力を生かし、その研究成果により社会に対して有意なインパクトを与えるとともに、分野融合・新領域の開拓を進め、既存の学問分野にとらわれず、独自性のある新しい価値を創造するための組織の見直し、研究戦略の策定等に取り組む。

国内外からの求心力を高め、強力な拠点(ハブ)を形成する。

具体的取組(例)

  • 強みとなる分野の特定と当該分野等への資源の戦略的な重点配分(資金、スペース等)
  • 大学院の研究室配属の振り分けの見直し
  • 教員ポストの本部での管理等による戦略的な教員採用
  • 研究設備・機器の共用化、学内共同利用の促進
  • 世界の学術研究を先導する大型プロジェクトの推進
  • 国内外から第一線の研究者を引き付ける研究環境の整備(研究者の国際公募の実施、英語の公用化、事務支援部門の強化、最先端の研究設備や学術資料の整備等)
  • 当該大学の附置研究所・センター等既設の研究組織を活用した、我が国の学術研究を先導するような研究組織体制の構築
  • 研究マネジメント人材(リサーチ・アドミニストレーターを含む。)の適切な配置


【国際協働】

国際協働を積極的に推進する。

海外キャンパスの展開、ジョイント・ディグリー(JD)の実施等、海外大学との連携・協働等を含め、教育研究活動の国際展開による世界的な課題解決に資する学問分野の展開に取り組む。

具体的取組(例)

  • ジョイント・ディグリー(JD)やダブル・ディグリー(DD)プログラム等、海外大学との連携を含め、多言語で学位を取得できるコースの設置
  • 海外の研究者や学生を受け入れるために必要な教育研究環境等の充実


【社会との連携】

大学間及び大学と企業・研究機関等の共創の場の構築・深化を進め、社会的課題の解決に取り組み、ソーシャル・イノベーションを生み出し新しい社会を創造できる人材育成に取り組む。

大学全体での組織的な大型共同研究の推進や、学生・教員のベンチャーの創出・育成によるベンチャー創出のプラットホーム機能の構築を図る。

さらに、社会人を対象とした高度人材養成機能を強化する。

また、社会との連携の強化を図る中で、産学連携収入、寄附金収入の拡大に取り組む。

その際、本年秋までに策定する予定の大学・国立研究開発法人に対する産学連携に関するガイドラインの内容を踏まえた取組を進める。

具体的取組(例)

  • 教員個人ベースの活動ではなく、大学全体として組織的に産学連携や寄附募集を進める(例えば、担当の理事の配置等を含めた体制整備等を含む。)
  • 起業家人材育成プログラムの提供や、ベンチャーを支援する者等との交流の場の設定
  • 産業界を含む外部機関との大学院生の長期インターンシップの推進及び共同研究への参画
  • 産学連携等に係る活動を教員業績評価において評価
  • クロスアポイントメント制度の活用
  • 社会人を対象とした高度人材養成プログラムの構築


【ガバナンスの強化】

学内外に信頼されるガバナンス強化を行う。

学長のリーダーシップの下、教育研究において強みや特色を発揮し、社会的な役割をより良く果たすことができるようにする。

指定国立大学法人としての取組を進めていくためには、リーダーシップのある学長が安定的に大学運営を推進できるなど、当該大学の特性に応じた工夫が必要となる。

これを踏まえ、その任期、選考の在り方や、学長選考会議、経営協議会及び監事を含めた学長のチェック機能の強化など、ガバナンスの強化を自律的に推進する。

具体的取組(例)

  • 国内外の優秀な人材の経営への参画等による経営戦略の確立
  • 大学本部予算の確立や部局予算の把握による効果的な資源配分
  • 人材育成プログラム等による執行部に参画する人材の育成・確保
  • 質の高い職員及び専門人材の育成・確保(キャリアパスの明確化等)
  • 学長のリーダーシップを支える教員と事務職員の協働体制の構築
  • 教育研究及び財務等の情報を可視化するIR 機能の強化(部局ごとの情報も含む)、学外への情報公表等


【財務基盤の強化】

財務基盤の強化に取り組む。

産学連携収入、寄附金収入の拡大を促進するとともに、規制緩和策により、既存の資産(寄附金、不動産等)や子会社による事業展開(出資事業)を効果的に活用する。

具体的取組(例)

  • 産学連携収入や寄附金収入等の外部収入の拡大(体制の整備)
  • 共同研究に係る間接経費等のコストの可視化を通じた必要財源の確保
  • 既存の資産(寄附金、不動産等)の活用による収入の拡大
  • 人事給与改革や教育研究設備の共用化等を通じた自己財源の捻出


(2)今後のスケジュール

平成28年11月 公募要領の策定、公募開始
平成29年3月 各大学からの申請〆切
平成29年4月~ 国立大学法人評価委員会における指定についての意見聴取
平成29年夏頃 指定国立大学法人の指定

2 国立大学法人等の資産の有効活用を図るための措置について

(1)土地等の貸付けについて

改正法により新設する第34条の2では、その対価を教育研究水準の一層の向上に充てるため、教育研究活動に支障のない範囲に限り、文部科学大臣の認可を受けて、土地等を第三者に貸し付けることができることとしている。

この認可の基準については、平成28年末を目途として策定・公表し、また、各国立大学法人等が認可を受けようとする際の提出書類については、平成28年度末までに、国立大学法人法施行規則において規定することを予定している。

なお、認可の申請については、改正法の施行日である平成29年4月1日より、順次受け付けることを予定している。

認可の基準については、現時点においては、例えば以下のような点につき確認することを想定しているが、詳細については、上記のスケジュールに沿って、策定次第、改めて周知させていただきたい。

  • 貸付け先による当該土地等の用途が、国立大学法人等の土地等の活用方法として、不適切なものではないこと
(不適切な用途の一例)
  • 騒音・振動等を伴うなど、周囲に迷惑を及ぼすような用途
  • 公序良俗に反する用途その他国立大学法人等の品位を損なう用途
  • 不特定多数の者が出入りすることが見込まれるもののうち、当該国立大学法人等における、静かな環境の下での教育研究活動の実施に支障が生じる可能性があるような用途
  • 当該土地等の、国立大学法人等としての将来的な活用予定と、第三者への貸付けの期間とが整合するなど、貸付けの期間に合理性があること
  • 国立大学法人等が教育研究活動上使用する部分との動線を分離する等、必要に応じてセキュリティの確保のための配慮がなされていること


(2)寄附金等の運用について

改正法により新設する第34条の3では、文部科学大臣の認定を受けた国立大学法人等に関しては、公的資金に当たらない寄附金等の自己収入を、同条第2項各号に規定する方法により運用することができることとしている。

この認定の基準については、平成28年末を目途として策定・公表し、また、各国立大学法人等が認定を受けようとする際の提出書類については、平成28年度末までに、国立大学法人法施行規則において規定することを予定している。

実際の認可の申請については、改正法の施行日である平成29年4月1日より、順次受け付けることを予定している。

なお、第34条の3第2項第1号における「金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)に規定する有価証券であって政令で定めるもの(株式を除く。)」については、現時点において、国立大学法人法施行令に、社債(無担保のものを含む。)、投資信託の受益証券、外貨建てのものを含む外国債等を定めることを予定している。また、同項第2号の「貯金又は預金(文部科学大臣が適当と認めて指定したものに限る。)」については、文部科学大臣の指定に外貨預金を含めることを予定している。

文部科学大臣の認定にあたっては、同条第1項各号にあるように、①運用を安全かつ効率的に行うに必要な業務の実施の方法が定められていること、②運用を安全かつ効率的に行うに足りる知識及び経験を有するものであることのいずれにも適合していることを確認することとする。

具体的な基準としては、現時点において、①については、例えば、投資先の分散等の運用方針、学長・担当理事・実務担当者など運用関係者の権限と責任、運用に係る意思決定の手続き、学内における運用状況のモニタリングの方法等が明確化されていることを確認することを想定している。また、②については、例えば、資産運用のための委員会を学内に設置し、その委員に、資産運用に関する専門的知識・経験を有する者を任命する等、当該国立大学法人等において資産運用に関する専門的知識・経験を有する者を含めた、運用のための体制が整備されていることを確認することを想定している。これらの認定基準の詳細については、今後、文部科学省において有識者の意見を聴きながら取りまとめることとしており、上記のスケジュールに沿って、策定次第、改めて周知させていただきたい。

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