2017年2月28日火曜日

記事紹介|大学不動産の有効活用

はじめに

昨年(2016)5月に国立大学法人法の一部を改正する法律案が国会で成立し、本年(2017)4月より、国立大学法人の資産の有効活用を図るための措置として、その対価を教育研究水準の一層の向上に充てるため、教育研究活動に支障のない範囲に限り、文部科学大臣の認可を受けて、土地等を第三者に貸し付けることができるとされたことはご案内の向きも多いかと思う。

本改正は、国立大学法人の財政基盤の強化にとって大きな効果をもつことが期待されるが、そもそもこうした措置がとられた背景には、公的セクター全体として不動産を有効活用しようという流れが影響しているといえる。

すなわち、公共施設等の整備・運営に、民間の資金や創意工夫を活用することによって、効率的かつ効果的な公共サービスを実現し且つ公的負担の抑制を図るべく、多様な官民連携事業を推進していこうとする大きな政策動向が根底にあるという捉え方である。

本稿では、地方公共団体を中心にその意義が大いに注目されている公的不動産(PRE-Public Real Estate)の利活用を巡る現状や国立大学法人法の今次改正の影響を踏まえて、大学法人が保有する不動産の有効活用に関する方向感につき私見を述べたい。

公的不動産(PRE)の利活用を巡る現状

わが国の不動産全体(2400兆円)のおおむね4分の1(590兆円)を占めるPREは、地方公共団体の庁舎や学校施設などが典型的なものであるが、その利活用は、「経済財政運営と改革の基本方針2016」(骨太方針)において政府全体で取り組むべき課題と位置付けられている。その具体的な目標として、「日本再興戦略2016」において、2022年までに人口20万人以上の地方公共団体で平均2件程度、事業規模4兆円が実施目標として掲げられ、関係省庁がそれぞれの諸施策を推進しているところである。

PRE利活用の意義について

PREの利活用は、公共側および民間側双方にとって意義があるが、公共側にとっての意義は、大きく二点ある。一点目は、「財政健全化への貢献」である。たとえば、PREを民間事業者に賃貸すれば賃料収入を得ることができる。あるいは、民間事業者がPRE上の建物を保有すれば固定資産税収入等を得ることができる。つまり、公共側にとっては、新たな財源や税収の確保が可能となる。また、保有意義のないPREの処分やPREの管理・運営に民間を起用すれば、PREの管理運営コスト削減や売却収入等が期待できる。

二点目は、「地域活性化への貢献」である。PREを活用した民間収益事業等の導入や、収益事業と公共サービスとの複合化により、PREの利用価値を高めつつ集約・再配置等を進め、都市・生活サービスを効果的に提供するなど、PREを拠点として地域の活性化を図っていくことが考えられる。

PRE利活用に向けた政府の取り組み

地方公共団体におけるPREの利活用に関して、政府は、これまでも事例集やノウハウ集の整備など推進策を打ち出してきているが、2016年度から2017年度にかけて実現される以下施策により、より一層の進展が期待されているところである。

第一に、すべての地方公共団体で、公共施設に関し、長期的な視点をもって、更新・統廃合・長寿命化などを計画的に行う公共施設等総合管理計画の策定を進め、管理の基本方針を定めること。第二に、保有する固定資産の内訳といえる固定資産台帳の整備を2017年度中メドに進め、PREの個別資産の価値把握を進めること。第三に、2016年度中にすべての人口20万人以上の地方公共団体において、一定規模以上の公共施設等整備を行うにあたり、従来型の手法ではなく民間活用に基づく事業手法を優先的に検討する規程を導入することである。

とりわけ、上記のうち、公共施設等総合管理計画の策定と固定資産台帳の整備はPREの所謂「見える化」と捉えることができ、PREの価値が改めて見直され、PREの利活用を軸とした様々な議論・検討が行われる素地となる可能性があるといえる。

大学法人の保有する不動産の有効活用について

これまで述べたPRE利活用を巡る状況は、類似点・共通点を鑑みると、国立大学法人をはじめとする大学法人の不動産有効活用の方向感にも影響を与える可能性があるのではないかと考えられる。

まず、「日本再興戦略2016」において、「公的サービス・資産の民間開放」の中で「新たに講ずべき具体的施策」の中に、「文教施設」がとりあげられたことが挙げられる。文教施設は、スポーツ施設・社会教育施設・文化施設と定義されているが、2016年度から2018年度までの間で3件の公共施設等運営権方式を活用したPFI(Private Finabce Initiative)事業の具体化が既に目標として掲げられているなど、国立大学法人の保有資産と比較的近い領域において、PRE利活用の推進と同様の構図がすでに存在しているといえる。なお、こうした重要業績評価指標(KPI:Key Perfomance Indicator)が設定されたことは決して唐突ではなく、例えば、「学校の小規模化について対策の検討に着手している自治体の割合」や「企業から大学等・公的研究機関への研究費総額」といった項目についてもKPIが議論されてきたという経緯がある。いわば「経済・財政一体改革推進」という大きな流れの中で今回のKPIがあるという点は注目に値しよう。

また、前述のとおり、公共施設等の整備・運営に、民間の資金や創意工夫を活用することで、効率的かつ効果的な公共サービスを実現し且つ公的負担の抑制を図るとする大きな政策動向がPRE利活用のストリームを生み出しているわけだが、国立大学法人法の今次改正の効果も同様の捉え方ができる。

現状では、国立大学法人が土地等の貸付を行う場合は、国立大学法人法第22条第1項各号の「業務規定に合致する」範囲内で行われる必要があり、具体的には、大学に直接関係する事項、例えば、学生寮や職員用社宅等の用途であれば第三者への貸付けが可能とされていた。今次改正により、例えば、学生寮や職員用社宅等のみならず、分譲・賃貸マンション等収益を生み出す不動産を整備するためにも保有する土地を第三者に貸すスキームが成立していくことは、教育研究水準という「サービス」を実現しつつ施設整備・維持管理費用の抑制や新たな資金源を獲得する可能性を秘めていると考えられよう。

こうした点を鑑みれば、国立大学法人が保有する不動産の有効活用についても今後政府を中心に一層の推進策が示されていく可能性は否定できず、その場合大学法人全体の資産戦略に波及する流れが発生してくるのではないだろうか。

大学保有不動産の有効活用を取り巻く諸環境-みずほ銀行証券部長 大類 雄司|文部科学教育通信 No.405 2017・2・13 から

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