2017年4月5日水曜日

記事紹介|国民に対する畏れの喪失

官僚の天下り規制を巡るイタチごっこに、終止符を打たねばならない。逸脱行為には、もはや刑罰を科すべきではないか。天下りによる支配を排し、法の支配を貫徹させる仕組みが欠かせない。

官僚は公僕としての高邁(こうまい)な精神を見失い、私利私欲を満たす道具として公務を利用しているのではないか。違法天下りの実態を調べた文部科学省の最終報告は、そうした強い疑いを抱かせる。

2008年施行の改正国家公務員法は、現役職員による再就職のあっせんなどを禁じた。ところが、規制の網をかいくぐるために人事課OBを隠れみのにしたり、現職が仲介したりして62件の違反を犯していた。

遅くとも10年には逸脱行為があったことが確認され、歴代の事務次官を含めて43人が処分された。組織ぐるみであっせんシステムを築き、水面下で引き継いでいたとは深刻な事態である。

法律作りのプロ集団である官僚が不正に走った根底には、順法意識の欠如もさることながら国民に対する畏れの喪失をうかがわせる。もとより、それは官僚機構を統制すべき政治の責任といえる。

外務省や旧経済企画庁のOBの口利きまでしていた現実は、天下りの慣行が全省庁共通の既得権益として固守されている証左と見るほかない。他省庁の実態調査を徹底せねばならない。

文科省は許認可や助成といった権限を背景に、教育界に対して影響力を持つ。文教行政の中立性や公正性がゆがめられた事実はなかったか。今度の調査はその肝心な点に切り込んでおらず、かえって国民の不信を増幅させかねない。

官僚とはいえ、職業選択の自由は守られるべきだし、民間の場で公共の福祉のために再び才能を発揮する道があってしかるべきだろう。だからこそ、天下りを一律に禁じるのではなく、法律で再就職の適正手続きを定めたわけだ。

しかし、文科省の組織的な法律破りはその甘さを露呈させた。不正に天下りを送り出した側と天下ったOB、さらには受け入れた側の三者に刑罰を科す仕組みを導入することが効果的だろう。

改正前の国家公務員法では、離職後2年間は密接な関係のある企業への再就職を禁じていた。違反すれば、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処された。参考にしてはどうか。

天下りを介して文教行政が差配されては困る。権力を法律で縛る法の支配原理に立ち返りたい。

文科省天下り 法の支配を貫徹させよ|2017年4月4日中日新聞社説 から

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