2017年4月8日土曜日

記事紹介|天下りの下地ー国立大学への出向人事

違法なあっせんで退職者が大学に天下りをしていた文部科学省。その下地の一つに現役職員の大学への出向がある。出向中に他の職員の再就職に関わるケースがあるほか、過去8年間で26人が復職当日に退職し翌日には再就職していたことが判明。出向中は国家公務員でなく違法ではないが、政府の再就職等監視委員会は「しっかり監視する必要がある」としている。

「先生として教えてもらった実績があり、継続して採用した」。東北地方のある公立大学は2005年に文科省から出向した職員を09年4月に教授として迎え入れた理由をこう説明する。

この職員は同年3月31日に復職した当日に同省を退職、翌4月1日に公立大に再就職。内閣人事局の資料によると、この職員を含め16年9月までの約8年間で26人が同様に1日だけ復職して再就職していた。うち4人の再就職先は出向していた国公立大。出向を終え1日だけ同省に戻るのは「退職金を受け取るため」(同省人事課)という。

出向中は国家公務員ではなく再就職活動が可能だ。以前は退職後2年間は職務に関係する大学や企業などへの再就職は原則禁止だったが、08年の国家公務員法改正で在職中の就職活動や省庁のあっせんがなければ違法ではなくなった。このため「1日だけ復職して再就職」が可能になった。

再就職等監視委によると、大学に出向している文科省職員が、出向先大学への他の職員の再就職に関わっているケースもあるという。同委の加藤真理監察官は「出向者は国家公務員法の適用外だが、しっかりと監視していく必要がある」と指摘する。

文科省によると、1月1日時点で241人が国立大全86校のうち83校に理事、事務局長などとして出向。同省は「幹部人材を求める大学の要請に応じて派遣している」という。

同省にとっては「大学の現場で経験を積めば復職後、行政に生かせる」(人事課担当者)という狙いもある。だが出向から戻ってすぐに退職して再就職してしまえば、現場の経験は生かせない

出向先と再就職先には偏りもある。

出向先のほとんどは国立大だ。国家公務員退職手当法の規定で、退職金に関わる勤続期間に国立大は出向期間を算入するが、私立大は原則適用されないためだ。

04年の国立大学法人化の前は国立大は国の機関で、頻繁に同省本体との間で人事異動があった。同省人事課は「(出向は)制度ではなく慣習」という。

国立大の人材育成が十分に進んでいないこともある。現役出向の受け入れが10人で最も多い千葉大は「調整能力に優れた、幹部になり得る人材を大学で育てるのは難しい」(人事課)と漏らす。

一方、3月末に最終報告が出た違法な再就職先は私大が目立つ。関東圏のある国立大職員は「現役出向者がいれば、再就職者を受け入れるメリットはあまりない」と明かす。1日だけ復職して再就職した案件でも26人のうち13人の再就職先は私大だった。私大は現役出向を受け入れにくい分、再就職者を積極的に迎える構図が浮かぶ。

同省は職員の大学などへの再就職の自粛を決めたが、現役出向は続ける見通し。天下りに厳しい目が注がれる中、下地ともなっている出向を教育行政の改善につながるよう検討する必要がある。(下線は拙者による)

文科省から大学の天下り、現役出向が下地 復職翌日に再就職|2017年4月7日日本経済新聞 から