記事紹介|天下り 何を反省すべきなのか

組織ぐるみの天下りを指摘された文部科学省は、2か月あまりにわたる内部調査の結果を公表し、関わった職員43人を処分しました。調査結果をもとに、組織ぐるみの体制がどう築かれたのか、実際にどんなことが行われていたのか、何を反省すべきなのかについてみていきたいと思います。



今回の調査では、事務方のトップである事務次官を頂点にOBという抜け道を介して、あるいは文部科学省本体が素知らぬ顔で天下りをあっせんしていたことがわかりました。



また、外務省など他省庁から大学に口利きをしていたことも新たにわかりました。結局、内閣府の再就職等監視委員会から指摘があったケースと職員全員を対象にした調査結果からあわせて62件が国家公務員法に違反すると認定されました。その上で関わった職員、退職した人も含め43人が処分、中には、事務方のトップである歴代の事務次官8人と人事課長経験者8人が含まれ、最も重い人で停職3か月、ほかに減給や戒告などになりました。文部科学省の歴史上もっとも大人数の不祥事です。

今回問題になった天下りとはどういうものなのでしょうか?



制度上、天下りそのものが禁止されているわけではなく、利害関係のある職場に役所が窓口になって転職のあっせんをすること、現職のうちに自らを売り込むことに限って禁止されているものです。今回の調査では、あっせんととられないように人事課の職員が連絡役となり、外部団体に転職した元人事課の職員OBを窓口に就職先の調整に当たっていた、いわば抜け道を作って天下りを続けていたケースが多く見られ、あわせて役所本体も直接あっせんに関わっていた2通りのケースがありました。

そもそもどうしてこういった組織ぐるみの体制が築かれていったのでしょうか?



今の制度は、10年前の2007年に国家公務員法が改正されて、省庁が天下りをあっせんすることが禁じられたもので、その翌年から実施されました。これ以降、役所が窓口になって口利きはできなくなりました。しかし、文部科学省の場合、人事課の経験の長いOBが定年退職となったのを機に、ボランティアとして買って出て再就職のあっせんを始めました。最初のうちは役所も後ろめたさがあったのか、様子見で控えめな対応でしたが、実績を積み上げるうちにこのOBを介して就職のあっせんをすることが次第に当たり前のようになっていきました。最終的には事務方のトップである事務次官の承認を得て、組織ぐるみの体制が築かれていきました。根底には、天下りは退官後の就職先の確保の手段としての必要悪という考え方があり、後ろめたさは持ちながらも、やむを得ないではないかという役所としての開き直りのようなものが感じられます。



こうした天下りがなぜいけないのかという声が聞かれますが、補助金や助成金の名目で税金がつぎ込まれている役所と利害関係のある職場ですと、人を受け入れる見返りになにがしかの恩恵が受けられるのではないかという思惑が生まれがちだからです。専門家の中には「天下りは形を変えたワイロだ」と言い切る人さえいます。

実際にどんなことが行われていたのでしょうか?



大学が天下り先としての指定席になっていたこと。違反とされた62件のうちの33件、ほぼ半数を占めていました。各省庁から経験を生かして大学の教員になっている人はいますが、文部科学省の場合は、私立大学に対しては私学助成の形で年間3000億円あまりの予算を投入している上に、大学の設立や増設について認可権限があり、利害関係先に当たります。あらぬ疑いをもたれないように日頃から襟を正しておくことが必要でしたが、当初問題になった早稲田大学のほかにも慶應大学にも口利きをしてOBを送りこんでいたことが明らかになるなど、むしろ当然のように人を送り込んでいました。私立大学をある意味植民地化していたとも言えます。一方で、私立大学の側も、求人情報を文部科学省に伝え、候補者を紹介してもらうというもたれ合いの構図になっていました。



もう一つは、ポストのたらい回しの実態。文部科学省の幹部職員というとかつては退職後に国立美術館や博物館、独立行政法人の理事長や理事として転職することがお定まりのコースでしたが、規制が強化されて以降は簡単には天下ることができなくなっていました。



しかし、これらのポストへの天下りが限定的になった分、文部科学省が関係する公益財団法人やNPOなど文部科学省OBの指定席とされるポストは、より一層、前任者が文部科学省に後任選びをさせるというたらい回しの構図になっていました。再就職先に収まっていたOBたちが確実に自分の後任を文部科学省の人事担当者に相談して紹介してもらう。まるで互助組織のようにも見えます。既得権は決して放さない身内意識の強さを感じます。

では、なにをどう反省すべきなのでしょうか?



まずは、天下りは許されないという倫理意識の徹底を。官僚の間には、天下りがなぜ悪いのかという意識が強くあります。民間会社も、子会社を作って職員を送りこんでいるではないか。不公平だというのです。しかし、大きな違いはそこにワイロと同様な持ちつ持たれつの関係が生じやすいことです。公務員としての倫理意識を改めて心に刻み、OBになって以降も持ち続ける意識改革が求められます。

2つめは、既得権益の見直しを。役所の外に一般の人ではなかなか作れない法人をいとも簡単に作り、そこに人を送り込む。そのポストをたらい回す構図が浮かび上がりました。そこに役所の予算で補助をするとなると税金をそのために使っていることになりかねません。公金意識がまったく欠けています。そうしたポストに就くことに必然性はあるのか、既得権益を一から見直し、説明責任が果たせるようにすべきです。

3つめは、転職に当たってのルールの厳格化を。ルールを守っているように見せかける。そうしたことでズルズルとここまで来てしまいました。政府は再就職等監視委員会が機能したから、今回のことが明るみになったとしていますが、ルールができて以降、ほぼ10年近く違反を繰り返してきたことになります。その間、なぜ歯止めをかけることはできなかったのか、その点を検証し、必要な対応をとることは国会が責任をもって行うべきです。一部で、刑事罰を科す議論が出ていますが、そうしたことも含めて議論を重ねてほしいと思います。あわせて、他省庁でも同様なことが起きていないのか、調査の徹底を求めたいと思います。

今回の調査で、誰がどのように指示した結果こうした組織ぐるみの体制が築かれたのかまでは明らかになりませんでした。誰が指示したのでもなくことが運ぶ、このところ国会で議論を呼んでいる国有地の売却問題にも似た構図です。証拠となるものを残さなければ何をやっても許されるのか。そういうことではないはずです。文部科学省は、今後第三者によるチェック体制を整えるとしています。来年春からは小学校で道徳教育を必修で行うことにしています。こどもに道を説くなら、外の目で監視するという形を作る前に、まずは自ら率先して襟を正し、こどもたちに大人として恥ずかしくない姿を見せる必要があります。そこから始めないと教育を語る資格はありません。

組織ぐるみ 天下りの構(時論公論)|2017年3月30日NHK解説委員室 から

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