2017年6月16日金曜日

記事紹介|国立大学の将来像

提言の趣旨

  • 本提言は、我が国及び世界の高等教育の歴史と現状、高等教育を取り巻く社会構造の変化について確認し、我が国における今後の高等教育の一層の重要性を強く再認識した上で、将来の我が国の高等教育全体の在り方を考察し、その中で国立大学に求められる使命を確認して、自らの将来像を提言し、その実現に向けた方策を示すものである。
  • 特に重要と考えるポイントは、将来の国立大学の方向性について、①全国的な高等教育機会の提供及び今後の地域・地方活性化の中核として期待される役割を踏まえること、②高い水準の研究を推進し、大学院の充実を基盤とした高度の教育研究を国際的競争力を持って展開すること、③産業界及び自治体との連携を強化し、地域との教育研究両面における本格的な協働による社会のイノベーションを先導すること、④優れた日本型教育システムの輸出を含む国際貢献を強化すること、を示した上で、⑤これらを支える大学運営・経営の効率化と基盤強化を図るために、「全国各都道府県に国立大学を置く」との原則を維持しつつ、各種大学間等の多様な経営的な連携・融合の在り方について、今後検討すべきモデルを提示したことである。


国立大学の今後の使命とその実現のステップ

  • 国立大学は、今後、少なくとも10数年後以降の将来(2030年頃)の我が国と世界が直面する状況を把握した上で、それまでに、①現在の国立大学が持つ機能を最大限に発揮できる環境を整備しつつ(国立大学の機能の最大化)、②将来の状況に対応できる準備を確実に進める必要がある(将来に向けての準備)。
  • 「国立大学の機能の最大化」とは、新たな価値創造の基盤となる先進的な研究の高度化と地域や産業界の変革や成長分野を切り拓きイノベーション創出を牽引できる人材を育む教育の充実である。
  • 「将来に向けての準備」とは、留学生や社会人を含む多様な入学者の受入れ拡大と教育の充実のための国立大学総体としての連携・協働、経営力の強化と国・地域・産業界等からの戦略的な投資の呼び込みなどである。


国立大学の将来像

教育

  • 学部・大学院教育においては、学士・修士・博士などの学位に着目したプログラムの体系的整備と学生の大学間の流動性の向上、大学間や地域・産業界とも連携した教養教育や学生の主体的学習を含む実践活動・課外活動の充実を推進する。
  • 特に大学院については、各大学の状況に応じ規模の拡充を図り、産業界と一体になった人材育成、社会革新をリードする自然科学系大学院はもとより人文・社会科学系大学院の強化、公私立大学を含む大学教員の養成、社会人を含む入学者の多様性拡大と流動性向上を推進する。
  • 初等中等教育の教員養成の高度化に対応するため教員養成課程の再編も含めた機能の強化・充実、教職大学院の拠点としての役割・機能の明確化を図る。
  • 入学者選抜については、高大接続システム改革を着実に実現するとともに、国立大学全体としての統一的な入学者受入れシステムを構築することを目指した抜本的な改革の在り方を検討する。


研究

  • 各専門分野の深く先鋭的な基礎研究に加えて、学部・研究科等の枠を越えた柔軟な組織を整備し、学際・融合分野の研究を推進する。また、各大学が強みを持つ分野を核とした他大学・研究機関とのネットワークを形成して、幅広い優れた研究者が交流・結集できる拠点を形成する。
  • 若手研究者を積極的に採用し、スタートアップ支援やテニュアトラック制の導入により、明確なキャリアパスの見通しを持って、研究に専念できる環境を整備する。また、大学・研究機関のネットワークを通じて、研究者の流動性を向上させる。
  • 女性研究者について、ライフイベントに応じた支援体制や環境整備を行いつつ、積極的な採用・登用を推進する。
  • 民間企業の研究者や海外の優れた研究者を、年俸制やクロスアポイントメント制を活用して積極的に招聘・採用する。


産学連携・地域連携

  • 教育面においては、インターンシップなどにより学生に幅広い学びの場を提供し、キャリア意識とアントレプレナーシップ(起業家精神)の形成を図るとともに、産業界や地域との共同による教育プログラムを開発する。
  • 教職員の産業界との人事交流を推進し、産学連携共同教育・研究への意識を高めるとともに、新たな視野と刺激をもたらし、更に大学マネジメントに関する能力開発を進める。
  • 研究面においては、特に産学連携共同研究について組織ベースを基本とし、大学としての戦略に基づいた大規模で長期間にわたる継続的な共同研究を推進する。また、企業・産業横断的な課題について、大学・研究機関のネットワークと企業群が共同して、文理融合によりオープン・イノベーションにつながる研究を推進する体制を構築し、その支援のための基金を創設することも検討する。
  • 地域との関係においては、各地方自治体における地域創生プラン等の立案に積極的に参画し、その核となる地域の特色を生かしたイノベーションの創出に向けて、地方自治体や地域の産業界と連携した人材育成と共同研究を推進する。また、地方自治体との連携の下に、地域の国公私立大学の連携協働の取組を推進する。


国際展開

  • 学生交流については、海外からの学部留学生受入れのための国立大学総体としての統一的なシステムの導入の検討、英語による学位取得プログラムの拡充と日本語・日本文化教育やインターンシップの提供による日本企業への就職支援、大学院を中心としたダブル・ディグリーやジョイント・ディグリーのプログラムの拡充を進める。
  • 研究交流については、若手研究者や大学院生に対する海外における長期間の研究機会の確保、大学としての戦略に基づく組織的な国際共同研究を推進する。
  • 海外との交流拠点・ネットワークについては、複数大学による交流拠点の共同利用を推進し、国立大学全体としての活用を進めるとともに、複数大学のコンソーシアムによる海外の大学との交流協定締結と交流活動の実施を推進する。
  • 海外からの国際協力の要請に対して、国立大学が連携・協働して対応する体制を構築し、案件ごとに関係大学がコンソーシアムを形成して、役割分担等を調整して協力できるようにするとともに、特に我が国の外交政策上の課題でもある日本型教育システムの輸出については、国立大学全体として積極的に役割を分担して対応し、教員養成系大学が連携して留学生が過半数を占めるような教員養成プログラムを展開することも検討する。


規模及び経営形態

  • 国立大学全体の規模は、留学生、社会人、女子学生などを含め優れた資質・能力を有する多様な入学者の確保に努めつつ、少なくとも現状程度を維持し、特に大学院の規模は各大学の特性に応じて拡充を図るとともに、学部の規模についても、進学率が低く国立大学の占める割合が高い地域にあっては、更に進学率が低下することのないように配慮する。
  • 全都道府県に少なくとも1つの国立大学を設置するという戦後の国立大学発足時の基本原則は、教育の機会均等や我が国全体の均衡ある発展に大きく貢献してきたものであり、この原則は堅持する。
  • 国立大学の1大学当たりの規模については、スケールメリットを生かした資源の有効活用や教育研究の高度化・シナジー効果を生み出すために、規模を拡大して経営基盤を強化することを検討する。このため、アメリカのカリフォルニア大学システムやフランスの複数大学による連合体の成果や課題を参考にしながら、全都道府県に独立性・自律性を持った国立大学(キャンパス)を維持しつつも、複数の地域にまたがって、より広域的な視野から戦略的に国立大学(キャンパス)間の資源配分、役割分担等を調整・決定する経営体を導入することを検討する。
  • また、附属病院及び附置研究所について、大学との緊密な連携を確保しつつも、その経営の独立性・自律性を高める観点から、国立大学法人の独立した事業部門としての位置付けをより明確にするなどの方策についても検討する。
  • 附属学校については、少子化や多様な教育課程への対応を踏まえ、地域の状況や各学校の機能にも留意しつつ、教員養成大学・学部の機能強化につながるように、その組織・運営形態を含めた適切な制度設計を検討する。


マネジメント

  • 国立大学の学長は、経営と教学のすべてを統括するものであるが、資源の有効活用や新たな資源の獲得などの困難な経営上の課題に対応するため、経営に関する高度な専門的知識・経験を有する人材の経営担当理事・副学長としての活用などを進める。
  • 学長をはじめとする国立大学の将来の経営層を育成するシステムや研修プログラムを、国立大学の共同により構築する。
  • 変化する社会のニーズや学術の進展に対応して、教育プログラムや研究プロジェクトを柔軟に編成するとともに、学際・融合分野にも機動的に対応できるようにするため、教育組織と教員組織の分離などの望ましい組織の在り方を検討する。
  • 教育研究の活性化を図り、教員のモチベーションを高めるため、各教員のエフォート管理、業績評価、処遇への反映等の適切な制度の在り方を検討する。また、民間企業や海外の大学等を含めて人事交流が実効的に促進されるようにするため、年俸制やクロスアポイントメントを含む制度設計についても、国立大学全体で連携・協働して検討・普及を進める。
  • 事務職員等の職員の企画力や専門性の向上を図るとともに、URA等の専門職の位置付けを明確化するため、国立大学が連携・協働して人材の育成・活用方策や望ましい制度の在り方を検討する。
  • 経営の効率化とIR機能の強化による教育研究の向上や経営戦略の立案を進めるため、各種の基盤システムを統一化し、クラウドサービスを利用して国立大学全体で連携・協働して維持・運用することを検討する。
  • 財源の確保と多様化のため、産業界との組織的で大規模な共同研究の拡充と間接経費の確保に努めるとともに、複数大学のネットワークによる共同研究やキャンパス内への企業の研究拠点の誘致を進める。また、寄附金については、税額控除制度を活用して修学支援基金の拡大に努めるとともに、税額控除の対象範囲拡大などを求めていく。


今後の検討の進め方

  • 我が国の高等教育全体の将来像の検討に当たっては、国公私立大学のそれぞれが描く独自の将来像を尊重しながら、国公私立の間での率直かつ緊密な討議を行うとともに、広く社会の各方面との意見交換を進めていかなければならない。
  • 今回の提言は、それらの真摯な議論の端緒となることを期待して示したものであり、各方面の忌憚のないご意見を期待するとともに、提言の深化・発展を図るべく検討を継続していきたい。

高等教育における国立大学の将来像(中間まとめ)(概要)|国立大学協会

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