2019年7月19日金曜日

記事紹介|遠きをはかる者は富み 近くをはかる者は貧す

「幸せな会社」とは、豊かな組織をつくること

最初に紹介する尊徳の言葉は、この言葉です。

「遠きをはかる者は富み 近くをはかる者は貧す。

それ遠きをはかる者は百年のために杉苗を植う。

まして春まきて秋実る物においてをや。

故に富有なり。

近くをはかる物は 春植えて秋実る物をも尚遠しとして植えず

唯眼前の利に迷うてまかずして取り

植えずして刈り取る事のみ眼につく。

故に貧窮す。」

尊徳は、目先の損得で物事をはかる者は貧窮すると言います。反対に富む者、つまり豊かになっていく者は、目先の損得ではなく将来芽吹く豊かさのために、様々な準備をしているのだとも言っています。たとえば、文中にあるような作物を育てたり苗木を植えたり、といった取り組みです。

目先の損得で物事をはかる者は、今すぐ手に入らないものに対しては労力を使いたがらないので、「その場しのぎ」「行き当たりばったり」となり、運よく一時的な豊かさが得られたとしても安定しませんし、豊かさを得続ける再現性もありません。

尊徳は上記の言葉で「者」と表現していますが、これは一個人の話ではありません。尊徳の取り組みで言えば「村」であり、また「会社組織」と置き換えても読むことができます。では、尊徳の言う「遠きをはかる者は富み 近くをはかる者は貧す」という考えが、具体的にどう「幸せな会社づくり」のヒントとなるのでしょうか。

遠きをはかるとは、将来のために投資をするということ

尊徳の言葉を「幸せな会社づくり」に置き換えて考えるならば、将来のために投資が行われる組織づくりをしましょう、ということです。それはつまり、新商品の開発や、専門分野の研究、人財育成、などが言えるでしょう。尊徳はその投資を「それ遠きをはかる者は百年のために杉苗を植う」、つまり100年という長期視点で考えよ、と説いているのです。

これはすべての投資を100年という長期視点で見なさい、という意味ではありません。それくらいの「長期的な視点」で、研究開発や人材育成といった投資をし続けるということが大切であるという意味です。

短期の成果を偏重する現代の風潮

最近は、何かというとコストパフォーマンが叫ばれ、成果の見えにくい物事には予算が与えられなかったり、あまりにも短期間で取り組みが打ち切られたりしがちです。

しかし尊徳は、すぐに成果が出る物事に対してだけ評価される現代の風潮に警笛を鳴らしています。

それは「近くをはかる物は 春植えて秋実る物をも尚遠しとして植えず 唯眼前の利に迷うてまかずして取り 植えずして刈り取る事のみ眼につく。 故に貧窮す」という言葉でも明確です。

たとえば売り上げが伸びていて、一見すると成長しているように見える組織でも、長期的な投資(新商品の開発、専門分野の研究、人財育成 など)がなされていなければ、やはり価格競争の波にのまれたり、他社商品に依存したような商売をしなければなりません。そのような組織では、社員も自分たちの仕事に誇りを持って働きにくいですし、会社の将来性が見えにくいので、幸せどころか不安を感じてしまいます。

幸せな会社をつくるためには、たくましい組織である必要があるのです。そのたくましさとは、自分たちの力で新たな商品やサービスを生み出していける力を持つということであり、尊徳の言葉にもある「遠きをはかる者は百年のために杉苗を植う」姿勢がその要となるのです。

二宮尊徳の名言「遠きをはかる者は富み 近くをはかる者は貧す」を実践する組織とは?|PHP人材開発 から