IDE(2014年4月号)に掲載された記事「取材ノートから-宮崎大学とCOC」(日本経済新聞社編集委員 横山晋一郎氏)をご紹介します。
宮崎大学の「食と健康を基軸とした宮崎地域志向型一貫教育による人材育成事業」が文科省の2013年度「地(知)の拠点整備事業」(大学COC事業)に採択され、2月初めに宮崎市内で開かれた。
COC、地元自治体と連携して、全学で地域志向の教育・研究・地域貢献に取り組む大学を支援する。地域コミュニティの中核となれる大学の育成で、大学に機能強化(機能分化)を促す政策の一環だ。
2013年度は大学・短大・高専から319件の応募があり52件が採択された。国立大学の申請は単独48件、共同3件で、単独20件、共同2件が採択された。
採択された51件の内容は多岐にわたるが、中でも宮崎大学の計画は良くできている。宮崎県は基幹産業である農業の振興と、深刻な過疎化と少子高齢化対策が最重要課題だが、どれも宮崎大学の4学部(教育文化、医、工、農)と深い関わりを持つ。「食と健康」をキーワードに、地域を活性化する人材の育成と技術の創出ができれば、地域とwin-win関係を築ける。
ただ、複数の幹部から、「COCの申請が研究大学への道を閉ざすことにならないかという懸念が学内にあった」と聞いた。確かに、文科省の国立大学改革プランは、国立大学の機能強化(機能分化)の方向性として、①世界最高の教育研究の展開拠点、②全国的な教育研究の拠点、③地域活性化の中核的拠点,を示した。地域貢献を強調し過ぎると、①や②としての活動が難しくなるという心配はよくわかる。これは、多くの地方国立大学に共通の思いだろう。
だが現実問題として、86の全国立大学が世界レベルの研究大学になることは難しい。他方で、東京への過度の一極集中が進んだ結果、地方は疲弊し困難が山積する。
地方大学が足下を見れば、やるべきことは無数にある。国立大学の6割近くがCOCに申請したことは、真剣に地域との関わりを探す意欲の証だと信じたい。
一方で、気になることもある。ある旧帝大がCOCに採択されたことだ。旧帝大といえども地域社会への貢献は極めて重要だ。だからといって、大学の機能強化を求める国の施策に、学内リソースが豊富な有力大学が名乗り出ることには違和感を覚える。機能強化とは、ある機能を諦め別の機能に特化することだ。研究大学として国際的な活動を期待される旧帝大も例外ではない。