2009年8月31日月曜日

沖縄旅行記 2009 (9)「ちゅら海水族館」ははずせない

さて、寄り道に予定以上に時間を費やしてしまったので、本命の「ちゅら海水族館」へ急ぎます。

この水族館には毎年行っており、私は少々飽きているのですが、妻と子ども達が大フアンなので今年もお邪魔しました。

巨大水槽 黒潮の海

気持ちよさそうに泳ぐジンベイザメとマンタ



今回は、これまでの訪問と違って、ジンベイザメやマンタが泳いでいる「黒潮の海」という巨大水槽を真上から見るエリアに入ることができました。

これまでは、朝から並んで順番待ちをしなければこのエリアに入ることはできませんでしたが(通常は、人数制限・予約制なんです。)、今年は、7月18日~9月30日までの間は、観覧時間内であれば、誰でも見ることができるのです。貴重な体験ができました。


水槽を構成する巨大アクリルパネル

水圧に耐えるすごい厚さです




水槽の上部からみたジンベイザメ

悠然と泳いでいました








水上デッキから観覧

飼育係のおねえさんがいろんなことをわかりやすく説明してくださいました







日没とともに、沖縄滞在最後の宿である「カフーリゾートフチャク コンド・ホテル」(恩納村)へ向かいました。

このホテルは、開業して1週間の真新しいコンドミニアム方式のホテルで、普段は結構お高いのですが、我が家は、お得なモニターステイプランで宿泊しました。

ただ、夕食をとったあとのチエックインだったため、シャワーをあびて汗を流したらもう夜の11時を回っており、せっかくのリゾートホテルでのゆったりした時間を過ごすことができずとても残念でした。

ホテルのロビー





部屋のバルコニーからの素晴らしい景色








(つづく)

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2009年8月30日日曜日

沖縄旅行記 2009 (8)また来年、渡嘉敷島

沖縄四日目、いよいよ渡嘉敷島を離れる日がやってきました。夢のような二日間でした。

午前6時に起床し、退所のための荷造り。7時に朝の集いがあり、娘がみんなの前で渡嘉敷島での活動を紹介。この朝ご一緒した団体は、沖縄本土から来たスポーツ少年(少女)団、兵庫県姫路市から来たボーイスカウトの少年たちでした。昨日までは宮城県から来た団体がいましたので、皆さん結構遠くから来ておられますね。

交流の家のメインストリート

広々としています、ここは元米軍基地とか



我が家が宿泊した「すばる棟」

風通しの良い和室と洋室があります




周囲に張り巡らされたハブよけの塀

人の背丈ほどの高さがあります。おかげで安心して活動できます



7時30分に朝食、8時30分までに清掃完了。ここでは、使った部屋・トイレ・お風呂の清掃を退所前に自分でやることになっています。ゴミも渡嘉敷村のルールに従って分別することになっています。当然といえば当然ですね。

交流の家の職員の方による清掃チエックに合格するといよいよ退所。
9時に、「米浜交通」という村唯一のタクシーにて港へ行くことになっていたのですが、待てど暮らせどやってこない。よくある”沖縄時間”だろうと思っていたんですが、いよいよ出港時間が近づいてきたので、念のために電話をしてみたら、予約をすっかり忘れている。すぐに、おばちゃん運転のワゴン車が飛んできました。なんでも、ワゴン車2台で村中を走り回っているとか。この稼ぎシーズンに1台が故障してしまって、沖縄本土(那覇)にフェリーで車を送っているので、修理が終わるまでは、1台でのピストン輸送でしのいでいかなければならないとのこと。お気の毒な気がして、愚痴の聴きっぱなしでした。

10時過ぎに渡嘉敷港を出港しました。
家族にとっては初めて、私にとっては12年ぶりの渡嘉敷島でしたが、大変充実した思い出深い2泊3日の滞在でした。また来年も来ようと思います。(我が家の財務省次第ではありますが・・・。)


出発前の渡嘉敷港









到着する観光客を出迎える民宿の皆さん




さようなら渡嘉敷島

山上の白い建物が交流の家です





高速船マリンライナーとかしきの船内




泊港「とまりん」に到着。レンタカーを借り、一路お気に入りの”北部”へ向かいます。

途中、休憩と昼食を兼ねて「Gala青い海」(読谷村)というところに立ち寄りました。


美味! オリジナル「塩そば」




塩博物館があります













海水濃縮タワー




風の力等を利用して、上部のピラミッド型風車が回転し、それに連動して、海水で湿った回転式ネットドラムも回転することで海水の水分が蒸発。太陽の熱で室温が上昇し、水分の蒸発が促進。地球にやさしい国内初の海水濃縮設備だそうです。


ガラス工房もありました









読谷村の美しい西海岸








子ども達に「塩づくり体験」をさせようと思ったのですが、30分間七論の前でぼーっとしているのは耐えられないだろうと思い、急遽「陶芸体験」に変更しました。

陶芸といっても、少しばかりの粘土で、思い思いに手びねりで好きなものを作るもので、子ども達はお店のおばちゃんに手伝ってもらって、”シーサー”を作りました。三人三様の個性がにじみ出た傑作(?)に仕上がったようです。焼きあがったものが1か月ほどすると自宅に贈られてくることになっています。

ちなみにこれが送られてきたシーサーの一つです。


(つづく)

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2009年8月27日木曜日

沖縄旅行記 2009 (7)再び、とかしくビーチへ

交流の家の朝は早いです。6時30分に起床し、7時からの朝の集いでは、国旗・交流の家の旗の掲揚とラジオ体操。8時30分には、食堂「ちゅら海」で朝食です。

集いの広場

朝の集い、夕方の集いはここに集合します。



食堂「ちゅら海」と朝食メニュー











交流の家二日目のプログラムは、終日「海洋研修」です。(ここでは「海水浴」と言ってはいけません。)
9時30分にレンタカーで出発し、途中、阿波連地区にある「慰霊碑」に立ち寄りました。


合 掌



今日の研修場(?)は、「阿波連ビーチ」です。ちなみに交流の家とは何の関係もない一般のビーチです。

阿波連ビーチに向かう途中、童話作家の灰谷健次郎さんの別邸(12年前はそうでした)がありました。とかしくビーチの真上に立地し見事な夕日を眺めることができます。灰谷さんは、既にお亡くなりになっており、現在どなたが使われているのかわかりませんが、玄関には、とてもきれいな黄色い花が咲いていました。




阿波連ビーチ到着後、陣地を確保しテントを設営し、海に飛び込みましたが、南西の風が少し強く波がやや高いためか、海がかなり濁っており、昨日の「とかしくビーチ」に移動することにしました。
この阿波連ビーチ、写真のように素晴らしく美しい海でしたが、意外とゴミが漂っていて、心無い人間達の身勝手がこのように環境を破壊していることに怒りと無念さを覚えました。


阿波連ビーチ









天に向かってまっすくに伸びるパパイアの木

阿波連地区には、庭にパパイヤの木を植えている家があります。なんでも、沖縄ではその昔、大抵どの家でもパパイアの木を1本は植えていたそうです。四季を通じてつける実は、青いうちに野菜として使うそうで、味噌汁の具にしたり、漬物や刺身の具(つま)などビタミンの補給に役立つそうです。



さて、波静かな「とかしくビーチ」に到着しました。このビーチは、半分ほどが、交流の家のプライベートビーチということもあって、全体としては意外と人も少なく、ホテルのような民宿が1軒だけというとてもゆったりとした穴場ビーチです。
ゆっくりと昼食をとり、その後家族みんなでシュノーケリングを楽しみました。


昼食のゴーヤチャンプルー定食





とかしくビーチ









ほんとうはいけないのですが、魚達を呼び寄せるために、那覇のコンビニで買ってきた魚肉ソーセージを粒状にしてまきました。
するとどうでしょう、見事に、寄ってくる!寄ってくる! 「コバンアジ」*1、「テバスズメダイ」*2、「ムラサメモンガラ」*3、「ミスジリュウキュウスズメダイ」*4など様々な色や大きさの熱帯魚が我先にと寄ってきます。
おかげで、浮き輪にのって水中をのぞいていた娘は、足の小指を餌とまちがえられかまれてしまう始末。大泣きでした。

今夜は「鯨海峡 とかしきまつり」というお祭りが、渡嘉敷小・中学校のグランドで催されるという耳寄りな情報をキャッチしましたが、残念ながら交流の家に夕食を予約していたので見ることはできませんでした。
このお祭りは、渡嘉敷村最大のお祭りで、島の芸能として、島の青年達が結成して活動している慶良間太鼓などのイベントが催されるそうです。
二晩にわたって行われるようですが、初日の今夜は花火も打ち上げられるそうです。あー見たかった・・・。

とかしきまつりの会場




とかしきまつりの模様が渡嘉敷島の公式サイトに載っていました。
http://www.vill.tokashiki.okinawa.jp/modules/myalbum/index.php 

午後5時に交流の家で夕べの集い、その後夕食をとり、日没まで子ども達と卓球を楽しみました。(卓球にはなりませんでしたが・・・。)
暗くなったところで、「西展望台」に星空観察に出かけました。渡嘉敷島は、天体観測に適した諸条件を備えていることでも有名ですが、確かに、周りに光(光害)がほとんどないので、晴れていれば満天の星空を堪能できると思います。当日は残念ながら雲の流れが早く、満天とまではいきませんでしたが、きれいな星の輝きを眺めることができました。

午後10時には就寝。家族全員、疲れてぐっすりでした。

(つづく)

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*1:【コバンアジ】沿岸やサンゴ礁のやや浅い砂底の下層にすみます。幼魚は夏から秋に、砂浜の波打ち際でよく見られます。全長40cm。

*2:【テバスズメダイ】浅いサンゴ礁の枝サンゴの周りに群れて生活し、危険を感じるとすばやくサンゴ礁の間に隠れます。主に動物プランクトンを食べます。全長8cm。

*3:【ムラサメモンガラ】サンゴ礁でごくふつうに見かけます。雑食性でウニ類、カニ類、貝類、海藻などを食べます。すりばち型の巣をつくって産卵します。全長30cm。

*4:【ミスジリュウキュウスズメダイ】水深20mより浅い枝サンゴの周りに群れてすみ、危険を感じるとすばやくサンゴの間に隠れます。全長8cm。

2009年8月25日火曜日

沖縄旅行記 2009 (6)渡嘉敷島といえば、海

午後は、渡嘉志久(とかしく)ビーチにある交流の家の海洋研修場へ行きました。

渡嘉志久(とかしく)湾の全景




交流の家の「海洋研修場」

研修場前はプライベートビーチになっています。











海洋研修場マップ(交流の家ホームページ)


研修場利用上の注意、海の生物の紹介、利用する用具類の説明が終わると、いよいよ海へ入ることができます。

まずは、底が透明のアクリル板になっている「シーカヤック」に乗りました。
キラキラと輝く青い海の上をゆっくり漕ぎ出すと、ほぼ干潮に近かったこともあり、サンゴ礁がすぐ下に見えます。
所々波間からサンゴ礁が顔を出しているところもあり、座礁しないように気をつけながら、海底の様子を観察しました。
さすがに世界屈指の透明度を誇る渡嘉敷の海です。美しいサンゴ礁のまわりには、南国ならではのカラフルな熱帯業が群をなし、地上とは異なる世界が広がります。

シーカヤックの次には、「スーパーフロート」(海底観察用の特殊な浮きで、透明なのぞき窓が付いている)を使った熱帯魚やサンゴ礁の観察をしました。
途中、干潮の影響で、サンゴ礁の谷間に入り込んで迷路をさまよう珍事も経験しました。

午後4時には全員引き上げです。
夕食は、阿波連という集落にある「海鮮居食屋シーフレンド」というお店で沖縄料理をいただきました。

(つづく)

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2009年8月23日日曜日

頭の痛い新型インフルエンザ

このところ感染が猛スピードで拡大し、全国的に流行期に入ったとされる新型インフルエンザですが、各大学では、これから入試の本番を迎えるに当たり、対応をどうするか頭が痛い日々が続いています。

今月18日には、国立大学協会から各国立大学長宛に「国立大学一般入試における緊急時対応について」という文書が配付され、各国立大学に対し、新型インフルエンザの流行に伴う大学入試センター試験、各大学が行う個別試験への影響とその対応について検討を行うよう求めています。

以下、通知の概要(編集後)をご紹介します。


今春世界的に流行した新型インフルエンザが、この冬、我が国において流行した場合、センター試験と個別学力検査等の組合せにより選抜を実施している国立大学の一般入試(一部推薦入試等を含む。)に多大な影響を及ぼすことが懸念されています。

万一このような事態が発生しますと、センター試験や個別学力検査等の試験日程に影響を及ぼすことや、志願者本人の責に帰すことのできない理由により受験できないケースも想定されることから、このような場合の対応を念頭に、下記事項にご留意の上、志願者の受験機会の確保を図る観点から、必要な対策についてご検討をお願いします。(途中略)

また、大学入試センター試験の日程変更や個別学力検査日程の変更が広域にわたって生じる場合等については、私立大学、公立大学の入試日程等との関係にも配慮しながら、新しい入試日程を検討することが必要となることから、今後、文部科学省等関係機関との協議等も含めて入試委員会において検討する予定となっておりますので、ご承知おきください。


1 志願者の受験機会の確保措置について=国立大学の使命役割を果たすために志願者の受験機会の確保を図る必要がある。

(主な検討ポイント)(=センター試験は最大限実施されることを前提)

新型インフルエンザ羅患等、志願者の責に帰すことができない特別の配慮を要する理由により、個別学力検査を受験できなかった者への代替の選抜方法による受験機会付与の在り方について検討

代替の選抜方法を検討する上で、受験できた者と受験できなかった者との間での公平性につい可能な限り配慮する必要がある。

少数かつ例外のケースとして、センター試験を受験できなかった者がでてくるケースも想定される。

強毒性のインフルエンザ発生等により、センター試験の追・再試験や個別学力検査が4月以降実施されるケースも想定される。このケースにおいては、入学時期が遅れることから、前期の授業時間確保等についても予め検討の必要がある。

2 試験会場、試験監督者等の確保について=追・再試験等の実施に必要な会場と要員を確保する必要がある。

(主な検討ポイント)

所定の試験日程により試験実施できない場合や追試験等の実施に備え、予め検討・準備

3 志願者、学内外等への周知(広報)方法について=試験日程変更等について迅速かつ適切に周知する必要がある。

(主な検討ポイント)

個別学力検査等における試験日程変更等の入学志願者への周知方法、問合せ窓口の設置

2009年8月21日金曜日

夏休みの読書

8月も残り10日あまりとなりました。いつの間にか蜩が鳴くようになり、季節は秋を迎えようとしています。我が家では、子ども達が夏休みの宿題と格闘しています。
さて今日は、この日記ではおなじみになりました、広島大学高等教育研究センター長の山本眞一氏お勧めの夏休み読本(文部科学教育通信 No225 2009.8.10 抜粋)をご紹介します。

「大学の誕生 上下」(中公新書)・天野邦夫著

最初に紹介したいのは、天野郁夫署「大学の誕生 上下」(中公新書)である。この本は、新書という形式ではあるが、上巻が391ページ、下巻が431ページという大部なものであり、全部を読み通すには少々骨が折れる。しかし苦労して上下二巻を読めば、今日のわが国の大学が抱える多くの問題のルーツが、明治初期にさかのぼるほど奥の深いものであることを、よく理解できることであろう。同書はわが国の大学の誕生の経緯を、明治初年すなわち帝国大学以前の姿から説き起こし、大正期の大学令によって高等教育の秩序が一応定まるまでのおよそ50年間を取り扱ったわが国の「大学誕生」の物語である。

ここで繰り返し出てくるモチーフは、帝国大学に対するその他高等教育機関の位置付けである。著者の言葉を借りれば「大学誕生の時代に形成された、わが国の大学組織と高等教育システムの基本的構造の、強固な持続性」であり、またそれは「高等教育システム内部に形成された大学・学校間の序列構造は、すべての高等教育機関が新しい大学として制度上の同等化を達成(注:戦後大学改革のこと)してから半世紀以上たった今も、大学間の格差構造として継承され、拡大再生産されている」のである。

豊富な資料紹介による記述には、100年を超える昔の出来事をあたかも目前に見るかのごとき躍動感をもって読者に伝える力がある。本書は一見大学の歴史を取り扱うようであるが、実は歴史の背後にある大きな流れと、決して変わることなく今日に至るまで続いている高等教育機関間の序列の構造をしっかりと分析した教育社会学的著作なのである。




「大学の教育力」(ちくま新書)・金子元久著

第二に紹介すべきは、一昨年の出版ではあるが、金子元久著「大学の教育力」(ちくま新書)である。この本は、その表題にもかかわらず、大学そのものを扱った書物である。著者の視点は、わが国の大学教育の現状分析にとどまらず、中世の大学生成から始まり、日米の大学比較に至るほど広く、また近年話題の中心になっている大学における教育のあり方を、「職業教育・コンピテンス・教養」という分析軸で鮮やかに描いている。同書のカバーには「社会が変われば大学も変わる。・・・今後も大学が未来の社会を考える場であり続けるためには、何が必要なのか」とあり、この本が教育のあり方を扱うものだけではなく、広く高等教育システム全般を扱うものであることが分かる。とくに第一章の「大学教育の歴史的潮流」はお勧めのチャプターであり、大学問題を世界的かつ歴史的視野で広く考えたい人にとっては非常に役立つ部分である。

なお、この本は著者の意図としては「広く高等教育に関わる人」を読者と想定しているが、私の印象では高等教育に専門的立場から関わっている人こそ読むべき本のように思える。多少の予備知識を持っている人が、自分の学識を一歩進めたい折には必読書だと私には思えた。



「大学教育を科学する」(東信堂)・山田礼子編著

話が大学の教育にまで及んだところで、第三にお勧めなのは、山田礼子編著「大学教育を科学する」(東信望)である。この本の副題は「学生の教育評価の国際比較」とあり、昨今話題に上ることの多い教育の質の保証という観点から、大学の教育成果というものを単に学習達成度評価に限定することなく、「学習意欲や関心などの学習を達成していく上での基盤となるべき意欲や満足度、自己評価・価値観などから成る情緒的側面での教育効果に関する研究」にまで視野を広げて論じていて、大学における教育評価や教育改革を考えている方々には大いに参考となるに違いない。

また、同書はアメリカの大学に多く見られるIR(インスティチューショナル・リサーチ)部門の役割やFDのあり方についても論じている。教育評価とこれらがどのように関係するものなのかは、この本を読み進めていくうちに自然に理解が深まっていくので気にすることはないが、教育評価の本だと思って目次をはじめにご覧になった方は、ちょっと戸惑われるかもしれない。なお、IRは教育評価だけではなく、広く大学経営にも役立つ情報を収集し分析し、大学経営の中枢部門に報告するという役割を担っており、その点ではわが国の大学にある総合企画部門や大学教育センターのような組織の将来像を描くにも参考になることであろう。



「大学進学の機会」(東京大学出版会)・小林雅之著

さて、大学経営や政策立案に関わる者にとって、昨今関心が高まっているもう一つのことは、学生の支援であろう。小林雅之著「大学進学の機会」(東京大学出版会)は、そのような人々にとって、われわれの普段もっている常識を検証し、将来の大学のあり方を考えるのにぴったりの本である。同書は著者の記述によると「戦後日本における大学進学機会の格差是正政策の展開をあとづけるとともに、学生の大学進学機会の選択と学生生活を明らかにすることにより、大学進学機会の格差是正策を、包括的・実証的に検証し、将来の格差拡大の恐れに対して、今後の大学政策のあり方を検討すること」を目的としている。

私自身もそう思い、また著者も述べているように、わが国あるいは中国・韓国など東アジア諸国に根付いている「教育費は家計が負担する」という文化は、家計に相当無理を強いるものであり、教育費の高騰と経済状況の悪化の中で、いつまでもこれに頼っているわけにはいかない。教育費への公的投資は国家の将来に関わる重要事と思えばこそ、関係者はこの本からさまざまなことを学ぶべきである。



「大学の反省」(NTT出版)・猪木武徳著

最後に紹介したいのは、猪木武徳著「大学の反省」(NTT出版)である。著者は大阪大学教授を経て現在は国際日本文化研究センター長を務め、各方面に名前が知られた経済学者である。著者の問題意識を●度すれば、昨今の不完全な大学改革の中で、大学の教養教育は隙間に落ちてしまい、また財政基盤は損なわれ、その間大学教師の雑務が増えて繁忙を極めている。今こそ、大学教師という職業を再生し、総合のための教養教育を重視すべきで、そのために良質な私立大学への助成を充実すべきということになるようである。

高等教育を専門とする学者でないにもかかわらず、いやむしろそうでないからこそであろうか、話題はきわめて豊富であり、大学という組織の問題や知識そのものにかかわる課題、大学の自立性や学問の自由、産業と学問、競争と質の保証、大学の国際化など、もともとの豊富な見識を武器に縦横無尽に高等教育の問題点を論じる点は、さすがである。

引用文献などは、高等教育研究者なら引用すべきと思うものとはやや異なるものの、一般人や他分野の学者が考える大学像というものはおよそこういうものであるということを理解することは、大学問題を広い視野で考えるべきという点から大事なことである。

また、この本を大学問題のインデックスとして使うとこれほど便利なことはなく、私としては、今回紹介した本の中では、まずこの本から読み始めるのがもっとも効果的ではないかと思う次第である。